医者が知らない医療の話
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第58回

COVID-19のPCR検査について

《 2022.7.10 》

今回はチョット日常臨床に戻って、COVID-19のPCR検査について。まあ、言いたいことがいっぱいある訳ですよ。

ウチでもPCR検査をすることになった。去年の話なんだけど。毎度のことだけど、自前でやってる関係上、どこかのニシ〇〇クリニックみたいに、ブームに乗って大儲け!というわけに行ってない。遠隔システムの一環としてアプリで結果報告から、診察予約、証明書発行まで行えるように一から開発したんだけど、結構大変だった。アプリの開発に3ヶ月。システムのトラブルシューティングもそこそこあったが、コレは想定内。問題は、ビックリ患者さん達。この人達には振り回されてます。まあこの事は後程。

そもそも機材の購入からして大変。今はほぼCOVID-19専用の測定器があったりして、大学の研究室時代のPCRと隔世の感があった。「なるほど。これなら楽勝だね。」と思っていたら、ウチの「出来る総務」が、「厚生労働省が機材やら試薬まで指定してるからそれ使わないとダメです。」だって。

「えー!そんなんじゃ、〇〇グループみたいな値段じゃ出来ないじゃないか。安い試薬使えないの?」「ダメです!」かくて、価格勝負では敗北が決定した。名誉のため?に言うと、ウチは大阪府内の医療機関で、安さではトップと数百円差の堂々3位!。儲からん訳だ!大体大儲けしてるのは、〇〇クリニックだって、オーナーはwifi屋さんだし、〇〇グループも建築屋さんだし。大体、大々的に営業かけたり、検査場の前で

客引きしたりなんて、医療機関には出来ないからね。でしょ?

で、肝心の機材なのだが、うちのスタッフは厚労省やメーカーに問い合わせてやったみたいなのだが、要らない機械が多すぎる気がする。

まず、検体採取時に不活化液を入れなければならない。うーん、そんなに強毒性のウイルスか?しかも、検体を分注した後にウイルス不活化する為に、専用の熱処理器にかけなければいけない。費用と手間と時間の無駄以外の何者でも無いと思うのだが、メーカーが必要だと言うと、「必要です!」となる。もっと酷いのは、検体を扱うのに安全キャビネットを使えだと。こんなもん、有機溶媒でも扱わない限り使わんだろ。新しいクリーンベンチは必要と思っていたが、まさか安キャビなんか買わされるとは。もちろん別の工程用にクリーンベンチも買わされた。ついでに言うと、安キャビがデカすぎて、クレーンで2階の窓から搬入になり、気が遠くなりそうになった。共同研究の相棒が見にきて大笑いしてた。日本の研究室って予算ないから、もっと見窄らしくやってるのでなんか大袈裟過ぎる!手袋はおろか、防護服まで全て一回毎に取り替え。

ここまで、手間とコストかけさすなら、行政はもうちょっと検査代出してくれよ。これだけやって今、7,000円ですよ。利益率悪すぎなんだけど。ワクチンだって2,000円だし。大体一般の医療機関に対しては安過ぎる。一方、大阪府はワクチン300人ぐらいに打つのに60億円かけて会場やら人を手配したらしい。本当に馬鹿馬鹿しいと思う。余りにも、一般の医療機関のことがわかってなさ過ぎか、誰かが大儲けしてるかだな。

ちなみに大阪の3会場の管理医師というのが、女と覚醒剤やってるところを逮捕されて、一時管理医師不在になって大騒ぎしていたが、市立の病院はいっぱいあるし、呼吸器専門家なんかいっぱい居るのに、なんでこんな「美容外科医」が大規模接種会場の管理医師やってるんだ?

維新は橋下さんの時代に散々医療費削って、医療機関縮小させといて、コロナになると急に「病院を強制的に協力させないと!」なんて堂々と言ってる。民間企業、しかも斜陽産業だからね。出すもん出して貰わないと出来ないよ。この辺は医療関係者って妙に真面目だから、コロナ指定病院の看護師さんなんか不満たらたら。リスクかけてしんどい思いした上に、収入減ってひど過ぎると思いません。みんな恨み節しか言わない。一部の公的病院や企業だけ儲けてるって、日本の医療が事実上崩壊してるって言ってもわからないんだな。国民皆保険制度なんてもう崩壊してますからね。誰でも最先端の治療受けれると思ったら大きな間違いですよ。誰も最先端の治療受けれないんですから。日本の保険診療だけしか見てない人は解らないんだろうな。

まあこの辺りはいつか機会のある時に。

つまりは、新型コロナに対する行政のだらしなさが露呈したと思う。無料PCRの支払いにしたって、早い自治体で3ヶ月後ですよ。東京都なんか4ヶ月後で、それまで経費も何もかも立て替えろって。うちの東京の代理店達から泣きが入って、結局皺寄せがウチに来てしまった!

ね、ちょっとぐらい愚痴ってもいいでしょ?

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著者プロフィール

中川 泰一 近影Dr.中川 泰一

中川クリニック 院長

1988年関西医科大学卒業。
1995年関西医科大学大学院博士課程修了。
1995年より関西医科大学附属病院勤務などを経て2006年、ときわ病院院長就任。
2016年より現職。


バックナンバー
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