
連載バックナンバー
『医者が知らない医療の話』
現代のがん治療は、大きく分けて「外科手術」「抗がん剤」「放射線治療」を組み合わせたものが一般的です。しかし、がんは世界中で研究がされており、重粒子線治療や分子標的治療薬、免疫療法といった新たな治療法が世界中で次々と生まれています。
この連載では、がん治療を専門にされている中川泰一先生に、がん治療の現状や問題点、最新の治療法などについて語っていただきます。
バックナンバー一覧
2021.02.10
この頃COVID-19関係の話が続いたが、私自身感染症の専門でも無いので重症患者の相手なんかは当然していない。たまに外来に「感冒症状」の患者さんが来られるが、大体の方はすぐに回復される。先日、初診で肺炎のお年寄りが来られた。生活保護の方なので医療券もらいに行くのが... [ 続きを読む ]
2021.01.10
いい加減コロナも飽きて来たが、最近ちょっと有名な名誉教授とお話しする機会があってコロナの話題で盛り上がったのでもう少しお付き合い願いたい。本当は腸内フローラに関しての話だったのだが、免疫系から必然とコロナの話になってしまったのだ。フローラに関しては非常に... [ 続きを読む ]
2020.12.10
前回から1ヶ月の間に様相は一変して、第3波とかで、COVID-19が再々流行してしまってる。新幹線も「GoToTrabel」の所為だろうけど、平日のグリーン車でも年配の団体客で埋まってる。半値だからだろうけど、平日から年配者がこれだけ旅行に出掛けてれば、そのうち何人か... [ 続きを読む ]
2020.11.10
最近はワイドショーでの新型コロナニュースが減って、世間と言うかマスコミも関心が少し薄れてきた様ですね。マスクの着用で多少揉めてるみたいだけど。マスクに関しても、ほとんど「エチケット」の範疇で、医学的にどうこう言っても、もはやあまり意味がない... [ 続きを読む ]
2020.10.10
現代のがん治療は、大きく分けて「外科手術」「抗がん剤」「放射線治療」を組み合わせたものが一般的です。しかし、がんは世界中で研究がされており、重粒子線治療や分子標的治療薬、免疫療法といった新たな治療法が世界中で次々と生まれています。この連載では... [ 続きを読む ]
2020.09.10
COVID-19のワクチンがいよいよ現実のものになって来た。政府も億単位のワクチンを確保するという。一定の効果はあるだろうし、何よりこれだけ不安を煽られている人々に対しては少し冷静になれる良い材料になるのでは無いかと思う。少なくとも日本では... [ 続きを読む ]
2020.08.10
そこで前回の冒頭の話「エクソソーム化粧品って何?」だ。そもそも、幹細胞の上清液(培養後の液)がアンチエイジングなどに効果が有るとなったのは、前回書いたように再生医療法が出来てからだ。当時、「幹細胞」は再生医療法の規制で使えなくなった... [ 続きを読む ]
2020.07.10
第34回 エクソソーム (Exosome) − 細胞間情報伝達物質
「なあ先生~、エクソソームって何なん?」「ハ?Exosome(エクソソーム)?なんでまた、そんなん知ってんねん?」(大阪弁で「先生、エクソソームって何なんですか?」「どうしてそんな単語知ってるの?」の意味。念のために。)うちの秘書は大阪弁に京都弁が混ざって... [ 続きを読む ]
2020.06.10
ウイルス感染は当然免疫に関わる話になる。で、もって「コロナに効く薬ないですか?」とよく訊かれる。この「効く」と言うのが曲者で、一般的に「ウイルスを排除する」と言う意味に取られる。ご存知のように、色々言われている薬も、「ウイルスを殺す」... [ 続きを読む ]
2020.05.10
空腹ともう一つよく言われるのが「風邪をひいたら暖かくして寝てろ!」だ。私も経験上正しいと思う。調子が悪い時はポケベル(古いかな?知ってます?)切ってとにかく暖かくして寝てた。医師たるもの自分の身は自分で守らないとね。皆さんもそう思うでしょう?... [ 続きを読む ]
2020.04.10
新型コロナがますます酷いことになっている。医療関係の皆さんも色々影響を受けられていると思いますが如何ですか?開業医の先生方は「コロナ感染の患者さんが来てしまったらどうしよう?」「受診抑制で売上が半分になった。」。勤務医の方々は一般業務が... [ 続きを読む ]
2020.03.10
今回はちょっと遺伝子治療についてと思っていたのだが、周りがあまりにコロナで騒がしい、まあこの騒動の記録の意味もあると思うので、もう少しお付き合いください。新型コロナCDVID19は2020年2月末から3月にかけて感染が急拡大しそうで、マスク... [ 続きを読む ]
2020.02.10
今回はちょっと話がそれるが、武漢発の「コロナウイルス肺炎」の話諸々。免疫が大切って、まあ当たり前だけど、この辺の説明はありきたりで特に面白くない。で、あまり医学的な話でもないんだけど。結構振り回されている。医者というだけで色々... [ 続きを読む ]
2020.01.10
前回の続き。母親のストレスが養育によって子供に伝達されるという話だが、その機序として、幼少期に与えられたストレスは、脳の神経回路の変化とともに、ストレスに対する腸の反応の鋭敏化をもたらすという。そして幼少期のストレスが、腸や脳ばかりか... [ 続きを読む ]
2019.12.10
脳と腸とは密接に連携している事はご存知かと思う。そして、この腸からのシグナルの内に、腸内細菌の出すシグナルが少なからず影響している。先ずは脳から腸への影響について。これは誰しも経験したことがおありだろうからわかりやすいと思うが... [ 続きを読む ]
2019.11.10
前回までの糖尿病と腸内細菌の関係から、ちょっと柔らかめでダイエットのお話。最近、と言ってもかなり以前からだが、「痩せ薬」として糖尿病治療薬が利用されているのはご存じだろうか?美容系の先生方はよくご存じと思うが、意外と内科の先生はご存知ないかも... [ 続きを読む ]
2019.10.10
第25回 inflammasome(インフラマゾーム)の活性化
慢性炎症を起こす原因の一つは大腸の腸管バリアー機能の低下だ。前述したように、腸管腔には食物抗原や腸内細菌をはじめとしたさまざまな「異物」が存在する。そして、それらが、循環血中に入らないように防御するのが、腸管バリアー機能だ。腸管バリアー機能は... [ 続きを読む ]
2019.9.10
前回、前々回とちょっと横道に逸れたが、再びマクロファージと腸内フローラの話題に戻そうと思う。これまでに、肥満とマクロファージの関係及び腸の蠕動運動自体をマクロファージがコントロールしていることを説明した。その上で今回は「糖尿病」... [ 続きを読む ]
2019.8.10
前回、いろいろ書いたCAR-T。一部の癌には非常に有効だが、問題点は2つ。1つは拒絶反応のため自家の細胞しか使用できない事。2つ目は基本的にT細胞はほとんど癌細胞を認識・攻撃しない。その為にCAR技術によって導入された遺伝子により... [ 続きを読む ]
2019.7.10
第22回 CAR(chimeric antigen receptor)-T療法
今回はちょっと趣旨を変えて、トレンディーな話題を。この度、保険収載された「免疫療法」であるCAR(chimeric antigen receptor)-T療法について。実は、先日中国の研究機関と共同研究並び顧問の契約をしたのだが、その時あちらの研究者... [ 続きを読む ]
2019.6.10
組織マクロファージが全身の各種臓器で色々な働きをしているのは分かってもらえたと思う。では、各臓器に存在する組織マクロファージ間のネットワーク、つまり連携は本当に為されているのか?と言う点について。腸内細菌とマクロファージは密接に関係して... [ 続きを読む ]
2019.5.10
今回は肥満とマクロファージ。こんな所にもマクロファージは関与しているというお話。 アレルギー物質によって誘導される誘導型M2マクロファージについては色々研究されていましたが、もともと組織に常在している組織常在型M2マクロファージに ... [ 続きを読む ]
2019.4.10
Aβタンパク質は神経細胞にとって毒性を持つため、特に蓄積したAβタンパク質の周囲に活性化したミクログリアが多く観察される。一般的にアルツハイマーの脳では、ミクログリアが活性化している つまりミクログリアは貪食能を持っているため、蓄積 ... [ 続きを読む ]
2019.3.10
近年では肥満や認知症などが体内の慢性炎症によってもたらされていることが明らかになってきており、これらの疾患概念自体が変って来たのをご存知だろうか? 癌については明らかな発癌リスク、例えば、肝細胞癌におけるC型慢性肝炎感染や胃癌に ... [ 続きを読む ]
2019.2.10
ちょっと腸について長くなるが、免疫系にとって腸は非常に重要で面白いのでもうしばらくお付き合い願いたい。 そもそも腸内細菌もそうだが、日々口にしている食物自体が免疫的には「抗原」に当たる。本来ならばこれら食物に対して免疫が働かなく ... [ 続きを読む ]
2019.1.10
現在でも発展途上国では乳幼児はウイルスや細菌などの病原微生物にさらされている。結果、感染症で命を落とす乳幼児が依然多いことも事実だが、一方でT細胞には Th1優勢(Th1>Th2)へのシフトがほぼ確実にみられる。反対に良好な衛生環境の先進国 ... [ 続きを読む ]
2018.12.10
マクロファージの働きは非常に多彩で色々面白い。どれから話題にしようかと思うのだが。 最近、「腸内フローラ」がウケている。いや、私のところの話だ。元々は腸内細菌はマクロファージと密接に関係しており免疫系の調整に深く関わっているのは聞かれたことがあると思う。... [ 続きを読む ]
2018.11.10
前回、免疫系の概要に触れた。自然免疫の主役であるマクロファージだが、近年それ以外にも様々な働きをしていることがわかってきた。 私自身はマクロファージは免疫系全体のコントロールにも深く関与していると思っている。 そもそもマクロファージに対するイメージは細菌や... [ 続きを読む ]
2018.10.10
免疫には自然免疫と獲得免疫があるのはご存知だろう。 自然免疫はマクロファージや好中球を主体として最初に異物を攻撃し破壊するとともに、その情報を樹状細胞などとT細胞に伝え、より強力な免疫システムである獲得免疫を発動さる。例えば軽い風邪なんかは自然免疫で対応... [ 続きを読む ]
2018.9.10
色々あるBRM(Biological Response Modifiers)療法の中でも最も興味深いのがBCGだ。カルメット・ゲラン桿菌(Bacille de Calmette et Guérin)とフランス語を略したものだ。フランス語は知らなくとも、結核の予防に用いる弱毒のウシ型結核菌製剤である事は日本では... [ 続きを読む ]
2018.8.10
第11回 BRM(Biological Response Modifiers)療法
免疫療法はまず、ここから始まり、1980年代頃までこれが主流だった。BRM(Biological Response Modifiers)生体応答調節療法と呼び、生体に何らかの変化を起こすものを用いて免疫応答を強化する方法だ。 何のことか分かりにくいですよね? 要は「原理はわからないが、... [ 続きを読む ]
2018.7.10
樹状細胞(Dendritic cell)は、その樹木が枝を出しているような形状から樹状細胞と命名されており、強力な抗原呈示能力がある。 異物である癌細胞の抗原を、これの細胞表面の主要組織適合性抗原(MHC:Major Histocompatibility Complex)に加えると癌細胞を強力に攻撃する... [ 続きを読む ]
2018.6.10
癌治療に関しての免疫療法だが、以前少し触れたが、色々な名前の療法があり混乱し易いと思う。更に「オリジナル」を強調する為かクリニックが独自の名前をつけた免疫療法があったりで、なんかややこしい事になってる。そこで現在行われているものでどのような種類の免疫療法... [ 続きを読む ]
2018.5.10
「免疫とは非自己を見つけ出し破壊する作用である」と思っていないだろうか? もう少し詳しく言うなら「非自己」に癌細胞などの「異常な自己細胞」を加えても良い。自己の細胞を攻撃するのは免疫システムの異常で「自己免疫性疾患」とされている、と。ところが免疫系は自己を攻撃することもあるし、非自己を攻撃しない事もある... [ 続きを読む ]
2018.4.10
「免疫系と腸内細菌の関係へと話が進んだのだが、どうも肥満に対する関心が高いようで。そこで今回はもう少し掘り下げてみよう。以前、肥満は単にカロリー摂取だけでは説明できない。腸内細菌の分布により体内にどれだけ吸収されるかが大切と書いた。じゃどうすればいいの?を書いてないから突き放したように思われたみたいだ... [ 続きを読む ]
2018.3.10
腸が免疫系に大いに影響している事はご存知だと思う。人には腸だけでも100兆個もの微生物が存在している。消化管は人体の構造から見れば、皮膚と同様に「体外」との接点だ。よって、腸を通過するあらゆる分子や細胞を免疫系が監視している。免疫細胞の6割が腸にあり、その基地が虫垂だ。では、なぜ腸内細菌は免疫系によって排除されないのか。それは、人体にとって腸内細菌が必要であるからだ。簡単に言うと... [ 続きを読む ]
2018.2.10
実は免疫療法は癌治療に有用なだけでは無い。特に「腸内フローラ」や「マクロファージ活性化」は「免疫」関連の治療法だが、他の疾患にも有効性が高い。現在の難病と言われる疾患はその原因の殆どが免疫異常だ。癌などは免疫の低下であるが、アトピー、花粉症はじめ、潰瘍性大腸炎などもいわゆる自己免疫疾患だ。つまり... [ 続きを読む ]
2018.1.10
一般的に10mm以下の癌は画像で捉えられない。「オレは5mm以下でも見付けるぞ!」と言われるエコーの名人の先生もおられるが、はてそんな先生が何人おられるか? 一般の患者さんがそんな先生に見てもらえる確率は限りなく低い。早期癌にしろ再発にしろ、画像に捉えられない癌は、オペや放射線治療の対象にならない。腫瘍マーカーが高いと言うだけで、副作用の強い抗癌剤を投与するわけにも... [ 続きを読む ]
2017.12.10
前回までで、私の治療スタンスはなんと無く解っていただけたと思う。一言で言うと「やれる治療は全部しましょう」だ。残念ながら、どれか一つの治療法で癌が完治することはほとんどない。早期発見で、Opeが出来、その後生活態度が改まったりした場合ぐらいか。その他の標準療法で対応できない症例に対して、何か良い方法がないかと常に模索... [ 続きを読む ]
2017.11.10
「自然治癒派」についてだが、標準治療も含めて全く治療を否定するのは流石に論外だが、一理ある部分もあると思う。癌とは究極の生活習慣病である。癌遺伝子があるだけで癌になる訳ではない。後天的なイニシエーションが働いて発癌していくのである。例えば、肺癌の遺伝子を持っている人が一日60本タバコを吸っていれば... [ 続きを読む ]
2017.10.10
医師としての私の専門分野は「癌」と「医療情報」である。大学で肝臓癌に電極を刺して焼灼する「経皮的マイクロウエーブ焼灼術」という治療法の開発に携わっていた。学会内で各大学が提案してくる治療法の中から、優位性が認められ、保険収載されるまでをつぶさに経験してきた。近年は、名人芸の必要なこの治療より、誰でも広範囲を焼灼できる「ラジオ波」が主流になっている... [ 続きを読む ]
著者プロフィール
中川 泰一
中川クリニック 院長
1977年関西医科大学卒業。1995年関西医科大学大学院博士課程修了。
1995年より関西医科大学附属病院勤務などを経て2006年、ときわ病院院長就任。
2016年より現職。
- Dr.中川泰一の
医者が知らない医療の話 - 41. 「発毛」について
- 40. ちょっと有名な名誉教授とのお話し
- 39. COVID-19と「メモリーT細胞」?
- 38. COVID-19の「集団免疫」
- 37. COVID-19のワクチン II
- 36. COVID-19のワクチン
- 35. エクソソーム化粧品
- 34. エクソソーム (Exosome) − 細胞間情報伝達物質
- 33. 新型コロナウイルスの治療薬候補
- 32. 熱発と免疫力の関係
- 31. コロナウイルス肺炎 III
- 30. コロナウイルス肺炎 II
- 29. コロナウイルス肺炎
- 28. 腸内細菌叢による世代間の情報伝達
- 27. ストレスプログラム
- 26. 「ダイエット薬」のお話
- 25. inflammasome(インフラマゾーム)の活性化
- 24. マクロファージと腸内フローラ
- 23. NK細胞を用いたCAR-NK
- 22. CAR(chimeric antigen receptor)-T療法
- 21. 組織マクロファージ間のネットワーク
- 20. 肥満とマクロファージ
- 19. アルツハイマー病とマクロファージ
- 18. ミクログリアは「脳内のマクロファージ」
- 17. 「経口寛容」と腸内フローラ
- 16. 腸内フローラとアレルギー
- 15. マクロファージの働きは非常に多彩
- 14. 自然免疫の主役『マクロファージ』
- 13. 自然免疫と獲得免疫
- 12. 結核菌と癌との関係
- 11. BRM(Biological Response Modifiers)療法
- 10. 癌ワクチン(樹状細胞ワクチン)
- 09. 癌治療の免疫療法の種類について
- 08. 食物繊維の摂取量の減少と肥満
- 07. 免疫系に重要な役割を持つ腸内細菌
- 06. 肥満も感染症? 免疫に関わる腸の話(2)
- 05. 肥満も感染症? 免疫に関わる腸の話(1)
- 04. なぜ免疫療法なのか?(1)
- 03. がん治療の現状(3)
- 02. がん治療の現状(2)
- 01. がん治療の現状(1)
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精神科医とは、病気ではなく人間を診るもの 井原 裕Dr. 獨協医科大学越谷病院 こころの診療科教授
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がん専門病院での研修の奨め 木下 平Dr. 愛知県がんセンター 総長
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医学研究のすすめ 武田 憲夫Dr. 鶴岡市立湯田川温泉リハビリテーション病院 院長
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私の研究 一瀬 幸人Dr. 国立病院機構 九州がんセンター 臨床研究センター長
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次代を担う君達へ 菊池 臣一Dr. 福島県立医科大学 前理事長兼学長
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若い医師へ向けたメッセージ 安藤 正明Dr. 倉敷成人病センター 副院長・内視鏡手術センター長