医者が知らない医療の話
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第29回

コロナウイルス肺炎

《 2020.02.10 》

 今回はちょっと話がそれるが、武漢発の「コロナウイルス肺炎」の話諸々。
 免疫が大切って、まあ当たり前だけど、この辺の説明はありきたりで特に面白くない。で、あまり医学的な話でもないんだけど。結構振り回されている。医者というだけで色々問い合わせがある。皆なさんもそんな事ありません?

 私の場合、海外の患者さんが多いのはなんとなくご存知と思うが、やはり中国の方も多い。ご存知の方も居ると思うが、中国は共産党でちょっと偉いと海外に出られない。パスポートを取り上げられている。有り体に言うと国外に逃げ出さない為にだ。癌患者さんでもそうだ。特別に申請したら許可が降りる場合もあるらしいが、かなりの時間がかかるらしい。そこである北京の癌患者さん。全身状態が悪くなって来たので、北京の病院に行くように指示したら「今は一般の人は病院に来るな」と言われたから、薬送ってくれないかと。癌患者、しかも所謂「末期癌」の患者さんを「一般」って・・・。
 なんか北京の病院もピリピリしてそう。想像だが、中国は元々大手の病院は患者で溢れてる所が多いから、熱があったり「新型肺炎かも?」という患者さんが殺到していて、「一般」の患者さんは来てくれるな!になってそう。

 上海の知り合いは春節前に日本に来ていて運が良かったって。同伴の博士(研究者だけど医師ではない人)が風邪を引いていて上海の空港でマスク売ってなかったので、医務室にマスク貰いに行ったら「武漢から来たのか?」ってしつこく聞かれたらしい。新型ウイルスのことは日本に来てから知ったので、その時は「何で武漢?」と思ったそうだ。今年は春節が例年より早く1月25日からだったからそのちょっと前まではそのくらいの呑気さだったんだけど。上海って武漢から東に一直線だよね。絶対多くの人が往来しているはず。その1100万都市の武漢が突然「封鎖」。

 誰でも「よっぽど今度のウイルスはマズイんじゃないか?」って思いますよね?イギリスにいる中国の人が核爆弾で都市ごと消滅させられるんじゃないかって不安がってたけど、やっぱ、やりかねないのかな、あの国は。
 ヨーロッパ出張中の知人からは「周り(スペイン人)は日本に帰るなって言ってるんですけど、どうしましょう?」ヨーロッパ人は中国も日本も一緒に思ってる人多いからなぁ。って朝の5時前にかかって来た。本人は時差どころじゃないのだろうがなぁ。美人の女社長だから「風邪もインフルエンザも新型コロナウイルスも所詮、手洗いうがいをよくして、あったかくして十分睡眠摂って免疫高めとくしかないよ。日本は特にパニクってないよ。銀座と心斎橋(中国人観光客密度が異常に高い!)に近づかない様にしたら大丈夫だろう(笑)。」って返事しといたよ。おっさんだったら即、「着拒」だ! 前の晩は2時まで寝れなかったから特に機嫌悪い。相手によっては「3年ぐらい帰ってこない方が良いよ。」ってアドバイスしたかも。

 この辺りはまあ、医者やってれば仕方のない事だが。もっと酷いのがマスク争奪戦だ。
 「マスク手に入りませんか?」って知り合いの中国のおばちゃんから連絡が来た。中国ではマスク不足してるだろうし、当然儲ける気でいてるのは分かる。「どのくらいいるの?」「たくさん手に入りますか?」「知り合いに聞いてみてあげるよ。」まぁ日頃の付き合いもあるので聞いてあげる事にした。秘書を通してこの前マスクの会社を買収した知り合いの社長に聞いてもらった。なんか「秘書を通して」って「ええカッコすんな!」って思ってるでしょ? 違うんだなぁこれが。世の中、悲しい事に私が頼むと知らん顔でも、うちの秘書が頼むと皆さん仕事が速い。「まったく男って奴は!」だ。この社長も私から言わせると彼女の「言いなり状態」。とんでもない無理難題を押し付けられてる。気の弱い中川先生ではとてもこんなお願いできないわ。
 で、マスクだが6万枚なら倉庫に残ってるからすぐに回してくれるって。なんか1億枚ぐらいはけたらしい。ところが「ちょっと高いです。」とか言って結局買わない。元々高級マスクだからそんなに安いわけないし、今、この状況下で3倍ぐらいの値段で引く手数多なのにそんなに安く譲ってくれる訳ない。結局、翌日に再度連絡来たけど、その時はもう売り切れ。やっぱ稼ぐ人は即断即決だわ。   

 因みにこのマスク社長。本業は製薬、調剤なんだけど「もうワクチン作ってるからマスクなんかいらなくなりますよ。」だって。マスク売り切ったらワクチンかい。あまりにタイミングが良すぎる。秘書に「社長がウイルス撒いたんじゃないか?12月武漢行ってたか聞いてみてよ。」と言ったんだが、「そんな失礼な事、聞けません!」って拒否られた。なんだかんだで気は遣ってるみたい。
 笑い話はいいんだけど、その他、予定の患者が来られなかったり、送ったEMSが着かずに追跡不能になったりで、シャレになら無いこともあり今回はこれにて。
 皆さんもご自愛ください。

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著者プロフィール

中川 泰一 近影Dr.中川 泰一

中川クリニック 院長

1977年関西医科大学卒業。1995年関西医科大学大学院博士課程修了。
1995年より関西医科大学附属病院勤務などを経て2006年、ときわ病院院長就任。
2016年より現職。


バックナンバー
  1. Dr.中川泰一の
    医者が知らない医療の話
  2. 29. コロナウイルス肺炎
  3. 28. 腸内細菌叢による世代間の情報伝達
  4. 27. ストレスプログラム
  5. 26. 「ダイエット薬」のお話
  6. 25. inflammasome(インフラマゾーム)の活性化
  7. 24. マクロファージと腸内フローラ
  8. 23. NK細胞を用いたCAR-NK
  9. 22. CAR(chimeric antigen receptor)-T療法
  10. 21. 組織マクロファージ間のネットワーク
  11. 20. 肥満とマクロファージ
  12. 19. アルツハイマー病とマクロファージ
  13. 18. ミクログリアは「脳内のマクロファージ」
  14. 17. 「経口寛容」と腸内フローラ
  15. 16. 腸内フローラとアレルギー
  16. 15. マクロファージの働きは非常に多彩
  17. 14. 自然免疫の主役『マクロファージ』
  18. 13. 自然免疫と獲得免疫
  19. 12. 結核菌と癌との関係
  20. 11. BRM(Biological Response Modifiers)療法
  21. 10. 癌ワクチン(樹状細胞ワクチン)
  22. 09. 癌治療の免疫療法の種類について
  23. 08. 食物繊維の摂取量の減少と肥満
  24. 07. 免疫系に重要な役割を持つ腸内細菌
  25. 06. 肥満も感染症? 免疫に関わる腸の話(2)
  26. 05. 肥満も感染症? 免疫に関わる腸の話(1)
  27. 04. なぜ免疫療法なのか?(1)
  28. 03. がん治療の現状(3)
  29. 02. がん治療の現状(2)
  30. 01. がん治療の現状(1)

 

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