医者が知らない医療の話
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第52回

ワクチン騒動記Ⅳ

《 2022.1.10 》

 12月になってからコロナワクチンの接種件数が減ってきた。元来、11月末で1回目、2回目の接種の受付は終わっている。明確に「もう受けれません!」では無いけど、公的な接種場は大体が閉鎖。一般の医療機関も受け付けなくなっている。もともと、「すでにウチの病院にカルテのある患者さんにしか打ちません。」と言う所が多くて、12月の初回接種は難民化している感じがする。

 12月になると医療関係者の3回目が始まっているので、そんな方が来られている。「どうして自分のところで打たないの?」「ウチではやらないから、どっか他で打ってきてと言われまして。」クリニックなどの小規模のところではやっぱりめんどくさいんだろうな。ウチはまだまだワクチンの在庫があるから初回の方でも受け付けているのだが、なんだか駆け込み寺みたいになってる。「いやー調べたら、先生とこはまだ打ってくれるみたいで助かりました。」

 で、初回の人々である。中学生、高校生が多いのだが、「熱出たら嫌だから冬休みまで待ってました。」「試験が終わるまで待ってました。」と副反応を警戒した人が多い。でも中には年配の人がいたりする。「どうして今まで打たなかったんですか?」「介護してまして時間が無かったんです。」「入院してまして、やっと出てこれました。」と真っ当な話もあるが、「いやー何となく。でも、そろそろ打たないとまずいかなと。」みたいな方もいる「早く打っといた方がいいよ。」「はあーごもっともです。」しかし、もっと酷いのは「海外行くのにワクチンパスポートがいるって言われたので、至急打ってください。」大体この手の方々は、紹介が多い。中にはというかほとんどが「ワクチン反対ないし不要派」だ。「あのー、あれだけ言っといて今更なんですけど何とかなりませんか?」ほら、言わんこっちゃない。でもホトケの中川先生は「大丈夫だよ。在庫あるから。」ところが、「良かった。年末までに接種証明必要なんでお願いしますね。」「そりゃ無理だよ。」

 なんせ、公的接種証明は、本人の接種券に医療機関で2回分の接種したというロット番号などを記載したシールを貼ってもらった物を役所に持っていき、医療機関から問診票に接種券のシールとロット番号のシールやら記載したものとの情報とを都合させて初めて発行される。つまり、医療機関から各行政に書類を送付して、それを役所で処理(手入力)し終わってないと発行されないのだ。この書類の処理が大体、月末締めで送るから、打ったタイミングによるが早くて2回目接種してから1ヶ月はみとかないとダメなのだ。

 「えー!年明け早々に行くんですけど・・・」「ウチで接種したっていう診断書出してあげるよ。」「助かります!」ホトケだね。まったく。まあ、公的な接種証明が出来るまでは、これで海外渡航していたからね。

 一方、3回目接種の問合せが多い。2回目接種から8ヶ月経たないと打てないのだが、待ちきれない人が多いのだ。1回目、2回目は接種券なしでも打てたから、今回もと思うのは無理ないんだが。政府も早く打ちたいんだろうが、多分ワクチンの供給の問題があるのだと思う。前回は「何が何でも早く打て!」でやって、予想外に打ったモンだから供給が追いつかずに大騒動になった。まあそれを避けたいんだろうと思う。

 現に一般接種(一般の医療機関での接種)でも、今回はファイザーだけでなくモデルナも扱いませんかと言う問合せがあった。ただ、条件としてファイザーとモデルナを別途管理して云々とめんどくさいこと行ってきたので断った。ファイザー一社だけでも管理大変なのに、摂取量も異なるモデルナのワクチンまで扱うとなると、事務、管理の手間が2倍どころか何倍もかかる。第一、煩雑になると「打ち間違い」がおこると思う。

 「ファイザーで予約になってますよね?」「イヤ!モデルナって言ってたやろ!間違えたんか?!」なんて事になるのは容易に想像つくよね。

 行政も医療機関に過剰な手間をかけさせない様にしないと。自分達は人と予算が有り余ってるからなのか、1億枚以上あるはずの問診票を一枚一枚チェックして、接種日が3週間より1日でも早かったら理由の問合せが来る。日本はなんでこんなに非効率な紙の作業が多いんだろうね。結局はなんだかんだ言っても人と予算が有り余っているからなんだろう。無駄の多い紙仕事が無くならないのも、日頃はその程度の仕事量しかないからなんだろうと思う。いざとなれば高額バイトいっぱい雇えば済むしね。コロナ禍でそう言う所が白日の元に晒されたと思うけどね。年末に東京都の偉い役人さんと話してると、政治家さん(絶対知事の小池さんと思う!)に振り回されてるみたいだけどそろそろ限界じゃないかな。

 以前、東京都がコロナの感染者数情報をファックスでやり取りしてるニュースを見た中国人の知り合いに「21世紀でまだ、ファックス使ってる国があったんですか?!」と驚かれた話をしたけど、皆さんも知り合いに中国の人が居たら一度「We Chat」見せてもらって頂きたい。「We Chat」知ってます?これを単に中国でつながる「LINE」(LINEも結構なことできますけどね。)程度に思ってたら大間違いですよ。クレジットから銀行融資、ショッピング、病院の遠隔診療(日本からのも)などの民間サービスだけでなく役所の手続き、税金、年金などの手続きなんかも全てこのアプリで完結するのだ!私も中国の診察の時は使ってたのだが、日本人にはこの様なサービスは提供されてないからわからなかったが、中国の知り合いから「ねえ先生、これ見てね。ほら、こんなことやあんな事(いっぱいあり過ぎるので割愛)できるでしょう。」「おー!スマホの中に、銀行や病院、はては市役所から税務署、年金事務所までみんな入ってるみたいなもんだ!」

 最後はなんか役所批判みたいになったけど、一体いつまでこんな非効率のままでコロナに対応するんでしょう?これを機会に日本ももっと効率良くしていかないとねえ。

 「We chat」の件はそのうち後日談、乞うご期待。

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著者プロフィール

中川 泰一 近影Dr.中川 泰一

中川クリニック 院長

1977年関西医科大学卒業。1995年関西医科大学大学院博士課程修了。
1995年より関西医科大学附属病院勤務などを経て2006年、ときわ病院院長就任。
2016年より現職。


バックナンバー
  1. Dr.中川泰一の
    医者が知らない医療の話
  2. 62. 腸内フローラと「若返り」、そして発癌
  3. 61. 癌治療に対する考え方Ⅱ
  4. 60. 癌治療に対する考え方
  5. 59. COVID-19 第7波
  6. 58. COVID-19のPCR検査について
  7. 57. 若返りの治療Ⅵ
  8. 56. 若返りの治療Ⅴ
  9. 55. 若返りの治療Ⅳ
  10. 54. 若返りの治療Ⅲ
  11. 53. 若返りの治療Ⅱ
  12. 52. ワクチン騒動記Ⅳ
  13. 51. ヒト幹細胞培養上清液Ⅱ
  14. 50. ヒト幹細胞培養上清液
  15. 49. 日常の診療ネタ
  16. 48. ワクチン騒動記Ⅲ
  17. 47. ワクチン騒動記Ⅱ
  18. 46. ワクチン騒動記
  19. 45. 不老不死についてⅡ
  20. 44. 不老不死について
  21. 43. 若返りの治療
  22. 42. 「発毛」について II
  23. 41. 「発毛」について
  24. 40. ちょっと有名な名誉教授とのお話し
  25. 39. COVID-19と「メモリーT細胞」?
  26. 38. COVID-19の「集団免疫」
  27. 37. COVID-19のワクチン II
  28. 36. COVID-19のワクチン
  29. 35. エクソソーム化粧品
  30. 34. エクソソーム (Exosome) − 細胞間情報伝達物質
  31. 33. 新型コロナウイルスの治療薬候補
  32. 32. 熱発と免疫力の関係
  33. 31. コロナウイルス肺炎 III
  34. 30. コロナウイルス肺炎 II
  35. 29. コロナウイルス肺炎
  36. 28. 腸内細菌叢による世代間の情報伝達
  37. 27. ストレスプログラム
  38. 26. 「ダイエット薬」のお話
  39. 25. inflammasome(インフラマゾーム)の活性化
  40. 24. マクロファージと腸内フローラ
  41. 23. NK細胞を用いたCAR-NK
  42. 22. CAR(chimeric antigen receptor)-T療法
  43. 21. 組織マクロファージ間のネットワーク
  44. 20. 肥満とマクロファージ
  45. 19. アルツハイマー病とマクロファージ
  46. 18. ミクログリアは「脳内のマクロファージ」
  47. 17. 「経口寛容」と腸内フローラ
  48. 16. 腸内フローラとアレルギー
  49. 15. マクロファージの働きは非常に多彩
  50. 14. 自然免疫の主役『マクロファージ』
  51. 13. 自然免疫と獲得免疫
  52. 12. 結核菌と癌との関係
  53. 11. BRM(Biological Response Modifiers)療法
  54. 10. 癌ワクチン(樹状細胞ワクチン)
  55. 09. 癌治療の免疫療法の種類について
  56. 08. 食物繊維の摂取量の減少と肥満
  57. 07. 免疫系に重要な役割を持つ腸内細菌
  58. 06. 肥満も感染症? 免疫に関わる腸の話(2)
  59. 05. 肥満も感染症? 免疫に関わる腸の話(1)
  60. 04. なぜ免疫療法なのか?(1)
  61. 03. がん治療の現状(3)
  62. 02. がん治療の現状(2)
  63. 01. がん治療の現状(1)

 

  • Dr.井原 裕 精神科医とは、病気ではなく人間を診るもの 井原 裕Dr. 獨協医科大学越谷病院 こころの診療科教授
  • Dr.木下 平 がん専門病院での研修の奨め 木下 平Dr. 愛知県がんセンター 総長
  • Dr.武田憲夫 医学研究のすすめ 武田 憲夫Dr. 鶴岡市立湯田川温泉リハビリテーション病院 院長
  • Dr.一瀬幸人 私の研究 一瀬 幸人Dr. 国立病院機構 九州がんセンター 臨床研究センター長
  • Dr.菊池臣一 次代を担う君達へ 菊池 臣一Dr. 福島県立医科大学 前理事長兼学長
  • Dr.安藤正明 若い医師へ向けたメッセージ 安藤 正明Dr. 倉敷成人病センター 副院長・内視鏡手術センター長
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  • 技術の伝承-赤星隆幸Dr