医者が知らない医療の話
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第41回

「発毛」について

《 2021.02.10 》

 この頃COVID-19関係の話が続いたが、私自身感染症の専門でも無いので重症患者の相手なんかは当然していない。たまに外来に「感冒症状」の患者さんが来られるが、大体の方はすぐに回復される。先日、初診で肺炎のお年寄りが来られた。生活保護の方なので医療券もらいに行くのが億劫で自宅でじっとしていたらしいが(生活保護者は先に役所にどこそこの医療機関にかかりますと申告しなければならないので。)、さすがに我慢できなくて受診されたらしい。
本当はこのご時世、一般の診療所だと受診前に受け付けるかどうか問い合わせしてから来られるのだが、「私は味覚障害がないのでコロナじゃ無いです。」と言い張る。最近は熱発のある患者さんを拒否する診療所が多いらしく、結構遠くから来られる方もいる。もちろん初診の方々だ。
ところで、この方、まあ来られたものは仕方ないので、胸のレントゲンを撮ると案の定「肺炎」だった。抗生剤の点滴と投薬したが、やはり新型コロナの検査はしとかないと。という事で保健所に連絡したが、「緊急を要しませんか?」「まあ、歩いて来院されてますからね。」結局、3日後に検査だった。陰性の結果が出る頃にはほぼ回復していて、「コロナは陰性でした。」と報告に来たきり受診しない。念のためせっかく時間外に診療所開けていたのに。病識の無い方って仕方ない。

 日常の一般診療ではこんな感じで大きな変化は無いが、海外の患者さんは来日出来ないので遠隔で診ている。と言っても、殆どアドバイスしか出来ないが。「じゃあ、この癌が疑わしいから、この腫瘍マーカーも含めて検査してみてね。」とか「腹水抜く前に、アルブミン点滴してから利尿剤投与してもらって。」などだ。新型コロナの影響でいろんな国も癌の患者さえ後回しにされている。
何年か診ていた中国の方も末期の肝臓癌だったが、入院させてもらえずに結局亡くなってしまった。最近は従来の患者さんの他、来日の緩和を見込んで、まず遠隔でみて欲しいという中国の患者さんが少しづつ出てきた。実際来てもらうまではボランティアみたいなものだけど。

 一方、「新型コロナには免疫の強化しかない。」と言うことで、マクロファージを活性化するウチの薬も人気だ。認可の問題で「院内製剤」だから、ウチと「共同研究契約」してるクリニックにしか出してないので、従来からのリピーターがほとんどだけどね。でも、非公式だけど前アメリカ大統領のトランプさんが新型コロナにかかった時、治療に使ったのはウチの薬の5番目のレシピ「TN-5」とほぼ同成分らしい。風の噂ですよ。裏付けの書類などがないか探してもらっているけど入手出来てないもので。
多分、正式に認可されてない薬剤なので公表はされないでしょうが。抗体がまだ無い新型のウイルスには自然免疫の強化しかないから、マクロファージの活性化は正にドンピシャなんだけど。トランプさん宣伝してくれないかな。でも、ウチの呑むヤツは「サプリメント」扱いだから売ってますよ。これも関連のクリニックだけだけど。あまり商売上手じゃないねえ。

 で、いま何に凝ってるかと言うと「毛髪」平たく言うとハゲ治療。実はTirtuin遺伝子関係で「老化」について色々やっている。
ウチの製剤TNシリーズもNo.9はNMN(nicotinamide mononucleotide)を入れているが、一番実用になってるのがハゲ治療、いや響きが悪いから「発毛」にしておこう。

 事の発端は2年ぐらい前、いつもの研究室で、いつもの変てこな天才マッドサイエンティストの「K」とブレインストーミングという雑談してた時に、突然「今度、発毛剤作ったんですよー。」「へー、じゃサンプル頂戴よ。」「いやー手作りなんで今無いんですよね。」「あ、そうなんや。」で終わってた。関心は新しいTNのレシピに行ってたから。
ところがである。ウチの秘書がそれを聴いていたらしい。彼女は難しい話になると、よく目を開けたまま失神していて、美容なんか関心のある話題になると急に目が覚める。「頼んだら、直ぐ送ってきてくれたよ。」だって。

 そこで、「K」を詰めた。「確か無いって言ったよな。」「むにゃむなにゃ」「マッドなくせして女に甘い!」などなど。
「ところで、アレって何なの?」「へへへ、実はねえー」。何と数年前からいろんな大学の研究室と共同で、テロメア関係の研究してたのだが、その成果だと言う。「え!そっち?」アンチエイジングの行き着く先が「不老」だ。老化防止とか若返りとかに気が行ってたから、最初は何で「発毛?」と思ったけど、何処をどうすれば何を活性化出来るか調べていたらしい。

 共同研究している大学や特許の事があるから、余り詳しく書けないけど、要するにその物質が毛髪のバルジ領域を刺激して発毛を促すと言うモノだ。

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著者プロフィール

中川 泰一 近影Dr.中川 泰一

中川クリニック 院長

1977年関西医科大学卒業。1995年関西医科大学大学院博士課程修了。
1995年より関西医科大学附属病院勤務などを経て2006年、ときわ病院院長就任。
2016年より現職。


バックナンバー
  1. Dr.中川泰一の
    医者が知らない医療の話
  2. 48. ワクチン騒動記Ⅲ
  3. 47. ワクチン騒動記Ⅱ
  4. 46. ワクチン騒動記
  5. 45. 不老不死についてⅡ
  6. 44. 不老不死について
  7. 43. 若返りの治療
  8. 42. 「発毛」について II
  9. 41. 「発毛」について
  10. 40. ちょっと有名な名誉教授とのお話し
  11. 39. COVID-19と「メモリーT細胞」?
  12. 38. COVID-19の「集団免疫」
  13. 37. COVID-19のワクチン II
  14. 36. COVID-19のワクチン
  15. 35. エクソソーム化粧品
  16. 34. エクソソーム (Exosome) − 細胞間情報伝達物質
  17. 33. 新型コロナウイルスの治療薬候補
  18. 32. 熱発と免疫力の関係
  19. 31. コロナウイルス肺炎 III
  20. 30. コロナウイルス肺炎 II
  21. 29. コロナウイルス肺炎
  22. 28. 腸内細菌叢による世代間の情報伝達
  23. 27. ストレスプログラム
  24. 26. 「ダイエット薬」のお話
  25. 25. inflammasome(インフラマゾーム)の活性化
  26. 24. マクロファージと腸内フローラ
  27. 23. NK細胞を用いたCAR-NK
  28. 22. CAR(chimeric antigen receptor)-T療法
  29. 21. 組織マクロファージ間のネットワーク
  30. 20. 肥満とマクロファージ
  31. 19. アルツハイマー病とマクロファージ
  32. 18. ミクログリアは「脳内のマクロファージ」
  33. 17. 「経口寛容」と腸内フローラ
  34. 16. 腸内フローラとアレルギー
  35. 15. マクロファージの働きは非常に多彩
  36. 14. 自然免疫の主役『マクロファージ』
  37. 13. 自然免疫と獲得免疫
  38. 12. 結核菌と癌との関係
  39. 11. BRM(Biological Response Modifiers)療法
  40. 10. 癌ワクチン(樹状細胞ワクチン)
  41. 09. 癌治療の免疫療法の種類について
  42. 08. 食物繊維の摂取量の減少と肥満
  43. 07. 免疫系に重要な役割を持つ腸内細菌
  44. 06. 肥満も感染症? 免疫に関わる腸の話(2)
  45. 05. 肥満も感染症? 免疫に関わる腸の話(1)
  46. 04. なぜ免疫療法なのか?(1)
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