医者が知らない医療の話
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第5回

肥満も感染症? 免疫に関わる腸の話

《 2018.2.10 》

 前回までで、癌治療における免疫療法の優位性を書いた。実は免疫療法は癌治療に有用なだけでは無い。特に「腸内フローラ」や「マクロファージ活性化」は「免疫」関連の治療法だが、他の疾患にも有効性が高い。現在の難病と言われる疾患はその原因の殆どが免疫異常だ。癌などは免疫の低下であるが、アトピー、花粉症はじめ、潰瘍性大腸炎などもいわゆる自己免疫疾患だ。つまり、免疫のターゲットが狂って自分の臓器を攻撃している状態のことを言う。どうして狂うのかはまだよくわかっていないが、食事、生活習慣、ストレスなどの環境要因だろうと言われている。実際、原因は患者さんごとに異なっていると思うので、これらの疾患は、言わば「症候群」だ。だから、代替医療も含めて「この人には効果があるが、この人には効果が無い」ということになってしまうのだろう。

 20世紀の初めまでは「感染症」が致死的な病気であった。結核など現代の癌より恐れられていた。有効な治療法がなかったからだ。しかも、癌と異なり感染するのである。ところが、抗生物質の登場によりこれらの感染症はもはや脅威ではなくなった。一方この頃から、生活習慣病や自己免疫疾患が増え出している。

 ここで、免疫に深く関わる「腸」のお話しをしよう。「腸内細菌」だが、細菌の分布を表現するのに「お花畑」を意味する「フローラ」という綺麗な単語が使われて「腸内フローラ」という言い方が有名になってきた。ちょっと前まで「便移植」などと言っていたものだが、正確には「便」ではないし、何よりイメージがよろしくない。そのフローラの話になると必ず「痩せ菌」の話になる。特に女性は100%食いつく。いや、むしろ腸内細菌と自己免疫性疾患や自閉症の話をしていても、「痩せ菌」ってあるんでしょ? と聞かれることが多い。確かにあるのだが、この話は後ほど。まあ、ダイエットは男女問わず現代人の最大の関心事のようで。

 疫学的に言えば、肥満も感染症だとする説がある。1950年代アメリカから発生し、第二次世界大戦後、生活が豊かになった国々から全世界に広がっていったからだ。単なるカロリーの過剰摂取だけでは説明がつかない部分が多いからだが、これも複合要因が有るのではないだろうか? 世界中の成人の3人に1人が過体重で、9人に1人が肥満だ。飢餓が蔓延している国々を含めての数字で、だ。5万年前からほぼ変化していない人間の体型が、僅か50年程で劇的に膨らんでしまったわけだ。カロリー神話は通用しない。身近な例では、特別養護老人ホームなどの介護施設などで、胃瘻だけで長生きしておられる方は沢山おられる。また、家族の希望で「看取り」と言って、積極的に医療はおろか栄養補給もしない事になる方々もいる。長年寝たきりで認知症の方で、食事が出来なくなるとこの様なケースになることが多い。家族が拒否しているから、点滴なども出来ない。要するに「餓死」を待っている様なものだが、そんな状態でも何ヶ月も持つのだ。介護系をされている先生方はご経験があると思うが、「カロリー」では説明出来ないはずだ。

 ちょっと、話が飛んだ。では肥満の原因は何だろうか?「遺伝子」が関与しているという説がある。新薬で太らなくなるという期待からか、センセーショナルに取り上げられていたりするが、約21,000個あるヒトゲノムの中で体重増加に関係している遺伝子は僅か32個だけだ。この32個の遺伝子の影響は最大で体重8kgと言われている。遺伝のせいにしてもせいぜい数kg程度のことにしかならない。「基礎代謝」もあてにならない。太っている人の方が、痩せている人より基礎代謝は高いからだ。

 では、何が原因と考えられるのか? というお話は次回に。

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著者プロフィール

中川 泰一 近影Dr.中川 泰一

中川クリニック 院長

1977年関西医科大学卒業。1995年関西医科大学大学院博士課程修了。
1995年より関西医科大学附属病院勤務などを経て2006年、ときわ病院院長就任。
2016年より現職。


バックナンバー
  1. Dr.中川泰一の
    医者が知らない医療の話
  2. 05.肥満も感染症? 免疫に関わる腸の話
  3. 04.なぜ免疫療法なのか?(1)
  4. 03.がん治療の現状(3)
  5. 02.がん治療の現状(2)
  6. 01.がん治療の現状(1)

 

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