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認知症の人々と意味のある繋がりを作る方法(14:40)

アートと創造性を高齢者の介護に組み入れることにより認知症の人々が愛する家族と再び繋がるような支援に、老年学者であるアン・ベースティングは取り組んでいます。この感動的なトークでベースティングは、正解も不正解もない「美しい質問」は発見と想像と感動を共有できる経路を開くものだと語ります。「介護の中に創造性を取り入れることができれば、介護者は意味づくりに伴侶を招き入れることができます」「そうすると その瞬間に、ややもすると喪失と結び付けられる介護が、何かを作り出すものになり得るのです」とベースティングは語ります。

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30年前 介護施設に足を踏み入れた時 私の人生は永遠に変わりました 介護施設に行ったのは 祖母のアリスに会うためでした アリスは 非常に強い人でしたが 脳卒中で倒れ 言葉を話す能力を失いました アリスにはコミュニケーションの方法が 3つしか残っていませんでした 「ツ ツ ツ」というような音を出し 調子の変化で 強い「違う 違う」から 「そうよ もう少しで正解よ」と 励ますことまでできます 人差し指で気持ちを表現するのも 非常に上手で イライラすると 指を振ったり指したりしました アリスは大きな薄い青色の目を 開いたり閉じたりして 強調に使いました 目を大きく見開くと 「そうよ もう少しで正解よ」という意味で ゆっくり閉じると その意味は 言わなくても分かりますね

アリスに教えてもらったのです 皆 語りたいことがあると 誰にでも語りたいことがあるのです 聞き手にとって難しいのは いかにしてそれを引き出し 理解するかということです

「アルツハイマー病」と「認知症」は どちらの言葉も人前で発すると 暗雲が垂れ込めてくるのがわかります ディナーパーティーをご想像ください 「お仕事は?」 「アルツハイマー病や認知症の人に 自己表現を促しています どこに行くの?」

(笑)

恐れと烙印がしっかりと まとわりついているのです 世界中で4千7百万人もの人が患い 診断後 10年から15年も生きるのです しかも この4千7百万人は 2050年には3倍になると予測されています 家族も友人も 離れて行ってしまうかもしれません 一緒に過ごす方法が分からないのです 共通の話題もありません そして突然 誰かを最も必要としている時に 本当にひとりぼっちだと痛感することになり 自分自身の人生の意味も価値も 分からなくなってしまうのです

科学者が 治療方法を追求しており 完治という大志も抱いています でも 烙印と恐れの力を 少し緩めることができれば 今すぐに たくさんの人々の 痛みをやわらげることができます 幸いにして 意味のある繋がりを作るには 薬は要りません 必要なのは 手を差し伸べ 耳を傾けることです ちょっとした好奇心も必要です

私の終わることのない探究が 始まりました アリスがきっかけでしたが その後は 無数の高齢者が続きました 介護施設や デイセンターや 自宅でなんとか頑張っている方々でした つまるところは「どうやって」なのです どうやって意味のある繋がりを作るのか?

結婚生活が長いある夫婦から その回答の大きな部分を得ました 私が生まれた ウィスコンシン州ミルウォーキーの フランとジムです どんよりした冬の日に 本当に小さな キッチンでお会いしました ミシガン湖の近くにある 質素なアパートでした 私が入って行くと フランと介護者とケアマネージャーが 暖かく迎えてくれ ジムは真っ直ぐ前を向いたまま 立っていました 何も言わずに ジムは認知症という 長く ゆっくりとした旅路の途中で もはや言葉を失っていました 私はプロジェクトチームの一員として お会いしたのです そのプロジェクトは「芸術的家庭訪問」といい 目的は単純明快で ジムに創造的な表現を促すことでした また モデリングによって フランと介護者に学んで欲しかったのが 想像力と好奇心を活かした 意味のある繋がり方です もちろん 簡単なことではありません というのも ジムは何ヶ月間も 口をきいていません 私が表現するように誘えば ジムは反応できるのでしょうか? 分かりませんでした

家族が 繋がりを持とうとする時には 共有した思い出を 使おうとすることが多いのです 「あの時のことを覚えてる?」 とか聞いてみます ただ 10回中9回は その1つの出来事を思い出すための 脳内の経路は損なわれていて 霧の中に取り残された愛する人と 家族は繋がることが出来ません

でも 別の繋がり方があるのです それを「美しい質問」と言っています 美しい質問は 発見という 誰にもある経路を開きます 正解も 不正解もなく 美しい質問は 何かの記憶を探る代わりに 自由な想像を促し 認知に障害がある人に 千通りもの答えを可能にします

さて キッチンに戻りましょう ジムについて 分かっていたのは 彼がミシガン湖の周りを 歩くのが好きだということでした キッチンを見回すと コンロの近くの トランクボックスの上に流木が たくさん置いてあったのに気づき 考えが浮かびました 「ジムが言葉を使わなくても 回答できる質問をしてみよう」 聞いてみました 「ジム 水がどんなふうに動くか 見せてくれる?」 しばらくは 何の反応もありませんでしたが 非常にゆっくりと ジムが1歩踏み出し トランクボックスに向かいました 流木を1つ手に取り それを差し出しました それから 非常にゆっくりと 腕を動かし始めました 流木を使って 導くかのように ジムが手にする流木は浮かび上がり 腕が作る波の動きに伴って動きます ゆっくりとした動きで 穏やかな水面を渡り始めました こんなふうに 陸に向かって 緩やかに転がっていきました 体重を左から右へと移し 逆に戻しているうちに ジムは波になりました ジムの優美で力強い動きに 私たちは息を呑みました 20分間にわたって ジムは 流木を次々と動かしました ジムの障害は 消えていました キッチンに集まっていたのは 介護の危機のためではなくなりました ジムは人形づかいの名手であり アーティストであり ダンサーでした

フランが後で教えてくれたのですが この一瞬が 彼女の転機になったそうです フランはジムと繋がる方法がわかり ジムの認知症が進行してからも 繋がることができました 私にとっても転機となりました この創造的でオープンエンドな 問いによるアプローチは 家族が方向転換をし 認知症の理解を広げ 悲劇的な空虚と喪失ではないことを理解し 意味のある繋がりと 希望と 愛へと広げて行きます というのも 創造的な表現は どんな形であっても 何かを作り出します そのおかげで 美しさと意味と価値が 全く何もなかったようなところにも 作り出されます 介護の中にその創造性を 入れ込むことができれば 介護者は意味づくりに 伴侶を招き入れることができ そうすると その瞬間に介護が

喪失と結び付けられることなく 何かを作り出すものになり得るのです

でも介護の場で提供されるのは 多くの場合 ビンゴゲームや 水風船投げ等の 受動的な活動で 主に娯楽です 高齢者は 座って 見て 拍手をして 次の食事の時間までの 気晴らしをしているに過ぎません 愛する伴侶と家での暮らしを頑張っていても 何もやることがない場合もあり 1人でテレビを見ているなんてことに なりかねません この状況では 認知症の症状は悪化します 最近の研究で分かったことですが 実は これは社会的隔離や孤独がもたらす 破壊的な影響なのです

もしも意味づくりが

高齢者とその伴侶の誰もが どこに住んでいても 使えるものだとしたら? 私は本当に根本的に 考え方が変わり 虜になりました こういった創造的なツールを 介護者が使えるようにして 喜びと繋がりの煌めきを 目の当たりにして 創造的な遊びによって 高齢者は 何かをする理由を 思い出すことができると発見しました

この創造的な介護が広まっていけば 介護の分野を変える可能性があります でも 果たして可能でしょうか? 介護組織全体に ましてや 介護制度全体に 導入できるのでしょうか?

その目標に向かって私が踏み出した第1歩は アーティストと高齢者と介護者でなる 巨大なチームを結成することでした ミルウォーキーのある介護施設で作りました 2年間にわたって 力を合わせ ホメロスの「オディセイ」を 再考する作業に取り組みました テーマを調査し 詩を書きました 一緒に作った織物は 1.6キロもの長さになりました 独自のダンスの振り付けをしました 古代ギリシャ語も調べて学習しました 古典学者の力を借りたのです 何百という創造力を培うワークショップを 日常活動の予定の中に組み込み 家族も一緒に参加できるように招待し 介護のあらゆる分野で働く 介護者と職員が 一堂になってプログラム作成に 協働するのも初めてのことでした クライマックスは オリジナルの劇の上演で 制作にはプロの力も借りました 高齢者と介護者がプロの役者と一体となり 観劇料を払った観客を招き 場面から場面へと一緒に 移動しました 1つは 施設内の 介護付きダイニングルームで 最後にはチャペルに移動しました ここでの最終場面では 高齢者のコーラス全員が ペネロペを演じ 愛を込めてオデッセウスと観客を 家に迎え入れたのです 力を合わせて ある美しい物を作ることに 挑戦しました 認知症やホスピスの人も含めた 高齢者を招き入れ 時間をかけて意味のある物を作り出し アーティストとしての学習と成長に 挑戦したのです それも 毎日のように亡くなる方がいる 環境において成し遂げました

私は 今 自分自身が この課題に直面しないといけなくなっています 認知症の人とギャップを越えて繋がることが より個人的な課題になりました 連休中に家族が集まった夕食の席で 私の隣に座っていた母が 私の方を向いて 「アニーはどこ?」と言いました 面白く 美しく 元気な私の母は アルツハイマー病と診断されていました 私は 皆が恐れる立場に 自分が置かれていると気づきました 母は 私が分からなかったのです 私は即座に判断する必要がありました 何千人にも指導してきたことを ここで適用して ギャップを越えて繋がれるだろうか 「エレンのことを言ってるの?」と聞きました テーブルの向かい側の妹の席が 空いていたからです 「エレンは今 お手洗いに行ったのよ」 母は 私を見つめました すると 奥深くで何かが パッと繋がったようです 母は手を伸ばして 微笑むと 私の肩に触れて こう言ったのです 「あなたは ちゃんとそこにいたのね」 「そうよ 私はちゃんとここにいるわ」と 答えました

このような瞬間が これから 何度も 何度も起こることを知っています 私と母の間だけではなく 世界中の4千7百万人の人々に起こり その人たちを愛する 何億人の人たちにも起こるのです

この課題に どう応えればいいのでしょうか? 全ての家族の人生に影響することです 私たちの介護制度は この課題にどう応えるのでしょうか? 美しい質問を使ってほしいと思います お互いを見つけることを促し 繋げるものを 私は次のような回答を望みます 「私たちは介護の価値を認めており 介護は 何かを作り出し得て 美しい物であり得ます」 そして その介護が 私たちの人間性の 最も深いところを つまり 人と繋がり 一緒に 意味を作りたいという切望を 最後まで満たしていくことを願います

ありがとうございます

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