AIを用いて新しい抗生物質を発見する(7:07)

ジム・コリンズ(Jim Collins)
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対訳テキスト
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この新型コロナウイルスに どうやって打ち勝てるのでしょう? 私たちの持つ最良の道具 科学とテクノロジーを使います 私の研究室では人工知能(AI)と 合成生物学を使って 今回のパンデミックと戦う スピードを上げています この技術の本来の用途は 抗生物質への耐性という 危機的状況への対策でした このプロジェクトで探っているのは 機械学習の力を使って 抗生物質という武器を補強し 世界にとって壊滅的な 抗生物質時代後の世界を回避することです ここで重要なのは 同じテクノロジーを使って 抗ウイルス化合物を探し 今のパンデミックとの戦いに 役立てられることです

機械学習により 従来の治療薬発見モデルが 完全な様変わりを遂げようとしています このアプローチでは 苦労して何千もの既存の分子について 一つひとつ 研究室で その効用を検査せずに コンピューターに学習させることで はるかに大きな規模での探索をして 合成可能なすべての分子を あたることができます したがって 干し草の山の中にある 1本の針を探すのではなく 計算能力という巨大な磁石を使って 複数の干し草の山で 同時に たくさんの針を見つけられるのです

すでに初期的な成功がいくつか出ています 最近 機械学習を使ってコロナ感染と 同時に発生する可能性がある 細菌感染症に効果が期待される 新しい抗生物質を発見しました 2か月前に TEDの 「Audacious Project」の助成で 私たちの研究を大幅に スケー ルアップでき 7つの新しいクラスの 抗生物質の発見を目的として 世界中の7つの致死率の高い 細菌病原体との戦いを 今後7年かけて行うことになりました この背景として 新しいクラスの抗生物質が 過去30年以上の間に 1つも発見されていません

新しい抗生物質を探す旅は 中期的な未来のためのものですが 新型コロナウイルスは 差し迫った 死の脅威をもたらします 喜ばしいことに 同じテクノロジーを使って このウイルスと闘う治療薬を 探せそうなのです どのようにするのでしょうか? まず 化合物トレーニング ライブラリを作って 共同研究者とともに これらの分子を コロナに感染した細胞の培養に加えて どれが効果的に働くかを 確認します これらのデータは機械学習モデルの 精度を向上するのに用いられ 10億を超える分子からなる コンピュータライブラリに適用され 可能性のある 新しい 抗ウイルス化合物を探し出します 上位の予測を統合して検証し 最も有望な候補に臨床試験を行います

話がうますぎますか? いや そんなことはありません 抗生物質AIプロジェクトは 概念実証研究に基づいており 新しい広域抗生物質の 発見につながりました ハロシンと呼ばれるものです ハロシンは強力な 抗菌活性を持っていて ほとんどすべての抗生物質耐性のある 細菌性病原体に対抗できます 治療不可能な汎耐性感染症も 含めてです 重要なのは 現在の抗生物質とは対照的に 細菌がハロシンに対して 耐性を生じる頻度は 顕著に低いのです 細菌が耐性をつくる能力が あるかどうかを ハロシンと シプロに対して 研究室で検証しました シプロの場合は たった一日で 耐性が見られました ハロシンの場合は 一日たった後では 耐性は全く見られませんでした 驚くべきことに 30日後でも ハロシンに対する耐性は 全く見られなかったのです

予備プロジェクトでは まずO-157に 対する約2,500の化合物を検証しました このトレーニングセットには 良く知られた抗生物質 つまりシプロやペニシリン さらに抗生物質以外の 多くの薬物が含まれていました これらのデータで モデルをトレーニングし 抗菌作用に関連する 分子の特徴を学ばせました そして このモデルを 数千の分子から構成された 薬物再利用ライブラリに適用し 抗菌作用をもつと予測されるが 既存の抗生物質とは似ていない分子を 見つけるよう そのモデルに指示しました 面白いのは そのライブラリの中で この基準に当てはまった唯一の 分子がハロシンだったのです ハロシンは既存の抗生物質とは 全く似ていないため 抗生物質の専門家であっても 人間には この方法でハロシンを 見つけるのは不可能だったでしょう この技術によって コロナウイルスに対して 何ができるか想像してください

それだけではありません 合成生物学の手法を使って DNAや細胞内分子を模倣して いろいろな分子を合成し コロナウイルスとの戦いのような 人類の目的に貢献します さらに注目すべきは 迅速な診断検査にも役立てられる 保護マスクを開発していることです どのように機能するのでしょう? 最近 私たちは 生きている細胞から 細胞内容物を取り出し 紙の上にRNAのセンサーと ともに凍結乾燥し 低コストでエボラやジカの 診断キットを作れることを証明しました センサーが 患者のサンプル 例えば 血液や唾液などで 湿潤されると活性化されます 実は このテクノロジーは 紙に限らず 布を含む別の素材にも 応用可能なのです コロナウイルス・パンデミックに対しては ウイルス検出を目的として RNAセンサーをデザインし 必要な細胞内容物とともに 凍結乾燥して マスクの布地に組み込みます そうすると呼吸するだけで 呼吸に伴って生じる水分で RNAセンサーを活性化できます したがって 患者が コロナウイルスに感染していると マスクが蛍光シグナルを生成し 単純で安価な手持ち機器で 検出できるようになります このようにして 1~2時間のうちに患者は 安全に 離れた場所で そして正確に診断されます

また 私たちは合成生物学を使って コロナウイルスのワクチン候補の デザインもしています 私たちは結核の予防に 百年近く使われていた BCGワクチンを再利用しています これは弱毒生ワクチンで コロナウイルス抗原を 発現するようにデザインし 免疫機能による防御抗体の生産を 誘発します 重要なのは BCGが非常に大量生産しやすく 報告されているワクチンの中で 最良の安全性を持つことです

合成生物学とAIという手法を用いて 新型コロナウイルスとの戦いに 勝つことができるのです この研究はごく初期の段階ですが 実に将来性があります 科学技術は我々に 重要なアドバンテージを与え 人知と超耐性菌の遺伝子との 戦いにおいて 勝利をもたらしてくれます

ありがとうございました

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このプレゼンテーションについて

コロナウイルスのパンデミックが起こる前から、バイオエンジニアのジム・コリンズと彼のチームは、迫り来る別の危機、抗生物質耐性の超耐性菌と戦うためにAIの力と合成生物学を組み合わせました。コリンズは、コロナウイルスとの闘いに役立つ一連のツールと抗ウイルス化合物の開発を開始するための取り組みをどのように推進したかを説明し、今後7年間で7つの新しいクラスの抗生物質を発見する計画を共有します。

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