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注意を向けた時、脳では何が起きているのか(06:33)

注意とは、何に焦点を当てるかではなく、どの情報を遮断するかということでもあります。計算神経科学者のメディ・オディカニ=セイドラーは、集中しようとする時の脳の状態を調べることで、脳とコンピューターをより密接に結びつけて、ADHD(注意欠如・多動性障害)の治療や、コミュニケーションをとることができなくなった人を手助けするモデルを構築したいと願っています。簡潔で魅力的なこのトークで、エキサイティングな科学にもっと触れてください。

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何かに細心の注意を払う そう簡単ではないですよね 私たちの注意というのは 同時に様々な方向に引き付けられているからです むしろ ずっと集中していられる方が よほど すごいことなのです

多くの人は 注意を向けることは 何かに焦点を当てることだと思っていますが 脳が どの情報を遮断するか ということでもあります

注意には2つの種類があります 一つは 顕在的注意 顕在的注意では 何かに注意を払う時に 視線もその対象に向けます そして もう一つが潜在的注意 潜在的注意では 何かに注意を向けるのに 視線は動かしません 例えば車の運転を考えてみましょう あなたの顕在的注意 つまり あなたの目は 前を向いています しかし 潜在的注意でもって 周りの空間を常にチェックしていますよね 実際には目を向けていないのにです

私は計算神経科学者として 認知分野における ブレイン・マシン・インターフェース つまり 脳とコンピューターを 結びつけることに取り組んでいます 私は脳のパターンが大好きです それは私たちにとって重要なものです なぜなら その脳のパターンを元に コンピューター用のモデルを構築し そのモデルを使って どのように脳が機能しているか コンピューターで把握できるからです もし脳が充分に機能していなければ そのコンピューターは 治療のための補助的な機器として 活用できます ただ それには別の側面もあります 間違ったパターンを選ぶと 間違ったモデルができてしまい 間違った治療をしかねません ですよね? 注意の場合 視線の動きだけではなく 思考によっても 注意の対象を変えることができます そうした事実があるから 潜在的注意は コンピューターの モデルとするのに興味深い題材なのです

ですので 私は 人が潜在的に また顕在的に注意を向けた時 脳波のパターンがどうなっているか 知りたいと思いました そこで こんな実験を用意しました 実験では 2つの点滅する四角を用います 一方は もう一方よりも 点滅の速度が遅くなっています どちらの四角に 注意を向けているかによって 脳の 決まった部分が その点滅の速度に同調して 反応し始めます ですので脳が出す信号を解析すれば 実際にどこを見ているのか どこに注意を向けているか 突き止めることができるのです

顕在的注意を向けている時の 脳の状態を見るために 被験者に一方の四角をしっかり見つめ 注意を向けるよう お願いしました このケースでは 当然ですが 脳の後部から発される信号に 四角形の点滅が 現れているのを確認できました 脳の後部は 視覚情報の処理を司る部分です 一方でとても興味深いのが 潜在的注意を向けた場合です 今度は被験者に スクリーンの中央を凝視し 視線を動かさずにどちらかの四角形に 注意を向けてもらうようにお願いしました このとき 脳の信号には どちらの点滅速度も 確認できましたが 興味深いことに そのうち注意を向けた方がより強い信号を 発しているのです つまり 脳のどこかが この情報を処理したわけですが それが前頭野の活性化につながったのです 脳の前頭部分は 人間の高次の認識機能を司っています 前頭野は フィルターのように働いていて 注意を向けた方の点滅からは 情報を取り入れて 無視した方からは 情報を入れないようにしています

この脳のフィルタリングの機能は 注意の鍵となるものですが この機能が欠けている人もいます ADHD(注意欠如・多動性障害) の場合などです ADHDの人は 注意をそらすものの情報を遮断できず 1つの作業に長時間 集中することができません しかし もしそうであっても 脳をコンピューターと繋げて 専用のコンピューターゲームをして 気をそらすものの情報を入れないよう 脳を訓練することができるとしたら?

ADHDは一例に過ぎません このような認知における ブレイン・マシン・インターフェースは 他の認知分野でも使えます 数年ほど前 私の祖父が脳卒中で倒れ 全く話すことができなくなりました 人の話は全て理解できましたが それに反応する術がありませんでした 書くこともです 元々 読み書きができませんでしたから 祖父は沈黙のうちに亡くなりました 当時 こう思っていたのを覚えています もし祖父の代わりに話してくれる コンピューターが あったら良いのに 数年後 私はこの分野に携わり それが可能ではないかと思ってきました 想像してください イメージや文字を人が思い浮かべたとき その脳波がどうなるか 特定できたとしたら 例えば Aという文字を考えたときは Bという文字とは 違う脳波のパターンを描くなどです いつか コンピューターが話せない人の思いを 伝えられるようになるのでは? もしコンピューターで 昏睡状態の人の思いが 分かるようになったら? まだ それは先の話ですが 注意して見ていてください すぐに そこに辿り着きますから

ありがとうございました

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