アフリカの発展と気候変動との戦いに必要なエネルギーについて(6:20)

ローズ・M・ムティソ(Rose M. Mutiso)
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対訳テキスト
講演内容の日本語対訳テキストです。
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考えてみて下さい カリフォルニア州で ビデオゲームに使われている電力が セネガル一国の電力使用量よりも多いことを また 新型コロナで ジムが閉鎖される前は ニューヨーカーは室温10℃のジムで 運動をしていたことを 寒いとカロリーをより多く 燃焼できるからです 一方 ナイジェリアでエアコンを 所有するのは3%の人にすぎません

驚かされるのは エネルギーを持つ者と 持たない者の格差です 地球上には信じられないほどの エネルギーの不平等があります より良い生活のための 安価で豊富で安定したエネルギーが 数十億人分 不足しています 日々 停電することなく 事業を営み 作物が腐らないよう保存し 命を守る医療設備を動かし 在宅勤務や 同僚とのテレビ会議を行い 鉄道や工場を動かし 基本的に 成長し繁栄するための そして 尊厳や機会を 手に入れるためのエネルギーです 裕福な国には そのようなエネルギーがありますが 大半のアフリカ諸国や 他の多くの国々にはありません 数十億もの人々が 世界の他の国々から ますます置き去りにされています

裕福な人々は エネルギーが豊富にあることを 当たり前に思うだけでなく 気候変動に対して 皆が全く同じ様に 戦うべきだと思っています 気候変動と戦うには 低炭素エネルギー源への 急速な移行が必要ですが 炭素排出量は 年々 増加し続けており 限られたカーボンバジェット(炭素予算)を 破綻させる勢いです これが今日の話のポイントです

カーボンバジェットとは 地球の大気が安全に吸収しうる 累積排出量の推定値です このカーボンバジェットを破綻させないという 緊急課題に直面しながら アフリカに対する世界の見方には 大きな矛盾があります 一方では 私たちが成長し 絶望的な貧困から脱却し 中間層を構築し 車やエアコン その他の文明の利器を 所有するよう求めています 何と言っても アフリカは 次なる世界市場ですから

他方では 気候変動に対して行動しているところを 示したいと躍起になっている 西側の裕福な国々は 資金の提供先を再生可能エネルギー源に 制限するようになり アフリカや他の貧困国に対し 脱炭素による発展か 発展を諦めるかという 選択を迫っています

アフリカに発展が 必要なのは明らかです 議論の余地はありません 私が今日 主張したいのは カーボンバジェットの残りは 優先的にアフリカが使えるように すべきだと言うことです つまり アフリカは短期的には より多くの 炭素排出が許されるべきで そうすれば 私たちは成長できます 一方で裕福な国々は 大胆な排出量削減が必要です

他国の人々と同様に アフリカの人々にも 豊かさを望み 享受する権利があります 私たちは仕事や教育 尊厳や機会を 平等に与えられるべきです 同時に私たちは世界全体が ゼロカーボンの未来を必要としていることを 十分理解しています 矛盾しているように聞こえるかもしれませんが 次の3点を考えてみて下さい

第一に アフリカは気候変動の 加害者ではありません 被害者です アフリカとそこに住む10億人以上の人々は 地球上で気候変動による被害を 最も受けやすく 異常気象や干ばつ 猛暑による 最悪の被害に直面しています 一方で アフリカ大陸全体の 炭素排出量を見てみると アフリカの48か国を合算しても その量は大気中に蓄積された 二酸化炭素の1%にも満たないのです 仮に サハラ砂漠以南に住む 10億人の一人一人が 一晩で3倍の電気を消費し その新しい電力すべてが 天然ガス火力発電所由来のものだとしても アフリカが追加することになる 二酸化炭素の排出量は 地球全体の排出量の1%ほどと 推定されます

第二に アフリカが気候変動と戦うには より多くのエネルギーが必要です アフリカは 気候からの被害を受けやすいため 気候との戦いの鍵は 「適応」と「回復力」となります 気候への適応には 大量のエネルギーが必要です 異常気象に対応するため 更に回復力のある インフラが必要となります 防波堤 高速道路 安全な建物などです 干ばつに対応するため ポンプを利用した農業用灌漑が 必要となります 淡水を作るための脱塩も 多くの人に必要となるでしょう 急上昇する気温を乗り切るため 冷蔵保管の手段やエアコンが 何億もの住宅や オフィス 、倉庫、工場 データセンターなどに必要となります 大量のエネルギーを 必要とする活動ばかりです 気候変動の「緩和(排出抑制)」に失敗すれば 裕福な国々からの代替案は「適応」です アフリカの人々は 適応のために 同等のエネルギー量が当然必要です

第三に 世界の貧困層に排出量の軽減を 課すことで経済的不平等は拡大しています エネルギー版アパルトヘイトの 構築です 世界のエネルギーや開発に 携わる中 よく耳にするのは 「気候のせいで 我々のような生活を 全員には与えられない」との意見です 人を蔑むよりもひどい見方です ある種の人種差別です お金持ちのための 豊かなエネルギーシステムと アフリカ人用の 小さなソーラーランプという 二つの階層を構築しているのです

天然ガスの世界市場はその典型例です 西側の大企業はアフリカ諸国で 積極的にガス田の開発を行い アジアやヨーロッパで 事業や発電を行っています しかし 同じアフリカ諸国が 自国に発電所を建設し 国民のために天然ガスを 使用したいと言うと 西側の開発金融機関から 「資金は出せない」と言われます

皮肉なのは 多くの貧困国が 低炭素のエネルギーシステムへの移行で すでに西側のかなり先を 行っていることです 故郷ケニアの電力の大半には 炭素が使われていません 地熱や水力 風力などの 再生可能なエネルギーが ケニアの電力のおよそ80%を 供給しています アメリカではたった17%です

もう一度繰り返します ゼロカーボンの未来を 達成しなければなりません その移行過程で アフリカと他の貧困国は 世界のカーボンバジェットの残りを 当然得られるべきです 経済的な競争や 気候への適応 世界の安定 経済的な公平性のため 裕福で排出量の多い国々は 自国の経済から着手し 脱炭素化を牽引する 責任を持たなければなりません

気候変動の潮目を変える責任は 全ての国々にあります もし上手くいかなくても それはセネガルや ケニヤ、ベニン、マリが 国民に経済機会を 与えるために作った わずかな数の天然ガス発電所の せいではありません

ありがとうございました

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このプレゼンテーションについて

この目からうろこのトークで、エネルギー研究者のローズ・M・ムティソは世界のカーボンバジェット(炭素予算)の残りをアフリカのニーズに優先的に振り分け、成長を促し、炭素排出のより少ない世界を公平に達成すべきだと主張します。

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