恐れずに共に未来へ向かうには(12:36)

ラビ、ジョナサン・サックス卿(Rabbi Lord Jonathan Sacks)
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対訳テキスト
講演内容の日本語対訳テキストです。
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「今こそ—」 トマス・ペインは言いました 「人間の魂を試す機会である」 私たちは今試されています

今というのは西洋の歴史の運命的な瞬間です 選挙や社会での分断的な動きが起こり 過激主義が 政治や宗教に於いて増長して来ました 不安 見えない先行き 恐怖 私たちが耐え得る以上の速度で 変わっていく世界 そして確かなことは 変化はまだ加速するということです ワシントンに友人がいます 彼に聞きました 「最近の大統領選挙中に アメリカにいてどう感じました?」 「そうだね こんな感じかな タイタニック号のデッキに座って ウイスキーのグラスを片手に 『氷が欲しいと言ったのは確かだけど――

観衆:(笑)

――こりゃ馬鹿げてる』」

私たちに何かできることはあるでしょうか 私たちそれぞれが 恐れることなく未来と対峙する術は? 私は あると思っています おそらく最も簡単な一つの方法は その文化と時代についてこう問うことです 「人々は何を崇拝しているだろうか?」 人々は様々なものを崇拝して来ました 太陽、星々、嵐— ある人々は多神教を崇拝し またある人々は唯一神を または神を持たず 19世紀と20世紀には 人々は国家を崇拝しました アーリア人種 共産主義国家を では 私たちは何を崇拝しているでしょうか? 未来の人類学者はおそらく 私たちの読んだ本を参考にするでしょう 自己啓発 自己実現 自尊心などについての本です 私たちが道徳について どのように考えているのかを見るでしょう 自己に忠実で 個人の権利の問題として捉える 政治についての考え方も それから私たちが生んだ 新たなすばらしい 宗教的儀式にも目をつけるでしょう 何だか分かりますか? 「セルフィー(自撮り)」ですよ そして人類学者たちの結論はこうでしょう この時代に私たちが崇拝したのは 「自己、自分、私」だったと

それはそれで素晴らしいんです 開放的で 力を与えてくれます 素晴らしいことです でも私たちは生物学的には 社会的動物だということを忘れてはなりません 私たちは人間の進化の歴史の殆どを 小さなグループで過ごしてきました 私たちが実際に顔を合わせ 利他主義の調整を学び 友情や信頼 忠誠心や愛など 私たちの孤独な心を満たす 精神的な産物を作ります 「I(自分)」が大き過ぎて 「we(私たち)」が小さ過ぎると 自分が傷つきやすく 恐怖して 孤独であることが分かります MITのシェリー・タークルが ソーシャルメディアの影響についての著書を 『Alone Together(一緒にいても孤独)』 と題したのは 偶然ではありませんでした

だから未来のあなたを守る最も単純な方法は 3つの面において未来の「私たち」を 強くすることです 関係性における私たち アイデンティティーにおける私たち 責任における私たち

まず関係性について説明しましょう ここで個人的な話をするのをお許し下さい 昔々 とても大昔に 私は哲学を学ぶ20歳の大学生で 私は哲学を学ぶ20歳の大学生で ニーチェとショーペンハウアー そしてサルトルとカミュにハマっていました 私は 存在の不確実性と実存的な不安に 満ちていました 素敵でしたよ

観衆:(笑)

私は自分に陶酔した 知り合いになるには不快なやつでした しかしそれはある日 中庭の向こうに 私とは 全く違うタイプの 女の子を見かけるまでのことでした 彼女は陽の光を放ち 喜びに溢れていました 彼女の名前がエレインだと知り 私たちは出会って 語り合い 結婚をしました そして47年が過ぎ 3人の子供と 8人の孫たちに恵まれ 確信を持って言えることは それが私の人生での 最良の決断だったということです なぜなら私たちを成長させてくれるのは 自分とは違うタイプの人々だからです なぜなら私たちを成長させてくれるのは 自分とは違うタイプの人々だからです それが私が そうすべきだと思う理由です

Googleのフィルターや フェイスブックの友達や ネットニュースの問題は ブロードキャスティング というよりもナローキャスティングで つまり私たちが完全に自分と同じような人々に 囲まれているということを意味します 物事の見方、意見、偏見すらも 同じなんです ハーバードのキャス・サンスティーンが 示したように もし私たちが自分たちと 同じ意見を持つ人々だけで寄り集まると 私たちはより極端になってしまいます こうした自分たちとは違うタイプの 人々との現実での出会いを 続けるべきです それが必要なのは 私たちが強く意見を異にすることがあっても 友人でいられるということに気づくためです 現実での出会いにより 自分達と違うタイプの人々もまた 自分たちと全く同じように 人間なのだと発見するのです 実際に毎回 階級や信条や肌の色が自分たちと違う 自分たちとは違う誰かに 友情の手を差し伸べるとき 傷ついた私たちの世界の 傷口の1つを 癒しているのです それが関係性における私たちです

アイデンティティーにおける私たちについて ちょっと思考実験をしてみましょう ワシントンに行って いくつか 記念碑を見たことがおありでしょうか? 全く魅力的です リンカーン記念館 ― 建物の一方にはゲティスバーグ演説 もう一方に第二期大統領就任演説があり ジェファーソン記念館に行くと そこにも長文があります マーティン・ルーサー・キング記念館 彼のスピーチからの十以上の引用があります 気がつきませんでした アメリカでは記念館は読むものなんですね ロンドン議会広場には デイビッド・ロイド・ジョージの記念碑があり 3つの単語が刻まれています 「デイビッド・ロイド・ジョージ」

観衆:(笑)

「ネルソン・マンデラ」なら2語 チャーチルなら1語だけです 「チャーチル」

観衆:(笑)

この違いはなぜでしょう? ご説明します アメリカは初めから 移民の波が押し寄せて来た国だったので アイデンティティを創り出す 必要性があったのです それは物語を語ることで為されました 皆さんはそれを学校で学び 記念館で読み 大統領就任演説で繰り返し耳にします イギリスは近年まで 移民の国ではなかったので アイデンティティーを 当り前のように捉えることができました 問題は今 同時に起こるべきではない2つのことが 起こってしまったということです まず西洋では私たちが何者であり それは何故かという話を語ることを 止めてしまいました アメリカでさえもそうです 同時に 今まで以上に移民は増える一方です 物語りを語るとき あなたのアイデンティティは確立されていて 見知らぬ人も歓迎できます しかし物語を語ることを止めてしまったら あなたのアイデンティティは脆くなり 見知らぬ人に脅威を感じるようになります それは良くありません

ユダヤ人たちは2千年もの間追放され 方々に散らばって生きてきましたが アイデンティティーを決して失いませんでした なぜでしょう?少なくとも1年に1度は 過ぎ越しの祭りに 物語を子供たちに教え 奴隷の苦渋を味わう無発酵の苦難のパンと 苦いハーブを食べます こうして私たちは アイデンティティーを保ってきました 私たちは皆 立ち戻って 物語を語るべきだと思います 私たちが何者でどこから来たのか どのような理想のもとに 生きているのかを語るんです そうすれば 私たちは見知らぬ人々を歓迎し こう言えるほど強くなります 「こっちに来て 私たちの生活 私たちの物語 崇高な願望や夢を共有しましょう」 これが私たちのアイデンティティです

最後に私たちの責任ということについて ご存知ですか 私の好きな政治の一説ですが とてもアメリカ的なものです 「我ら人民(We the people)」です なぜ「我ら人民」と? それは私たちが皆 お互いに 皆の未来のための責任を 共有するという意味だからです それが私たちの本質であり あるべき姿です

政治の場に妄想的な考えが 現れるようになったのに 気づきましたか? 私たちは強力な指導者を選べばいいと考えます 彼あるいは彼女は あらゆる問題を解決してくれるだろうと それは幻想です それから極端な思考に陥ります 極右、極左 極端な信仰主義や極端な反宗教主義 存在しなかった黄金時代を夢見る極右 存在しないユートピアを夢見る極左 信仰者も反宗教主義者も同じく こう信じています 私たちが救われるのは 神の存在あるいはその不在 それだけにかかっているのだと それもまた幻想です 自分自身から私たちを救えるのは 私たち人民です 私たち全員が共に— そうしたら 「自分」だけの政治から 「私たち皆」という政治に移り 美しく 反直感的な真理を見出すんです 国家は 弱者を省みる時に強く 貧しい者を 思い遣れる時に豊かで 弱き者を守る時に 真に力強い存在になります それが偉大な国家の礎です

観衆:(拍手)

私からの簡単な提案は あなたの人生を変えてしまうかもしれませんし 世界が変わるきっかけになるかもしれません あなたの心の中を探して 言葉を置き換えてみてください あなたの心の中を探して 言葉を置き換えてみてください あなたが「自己」という言葉に遭遇したら 「他者」という言葉に置き換えるんです 自分を助ける代わりに他者を助け 自尊心の代わりに 他者の尊厳を守り そうすれば 「私にとって」という言葉が あらゆる宗教的な文章の中でも 最も感動を呼び覚ます一節に変わる 力を感じ始めるでしょう 「たとい死の陰の谷を歩くことがあっても 私はわざわいを恐れません あなたが私とともにおられますから」 私たちは 一人で立ち向うのではないと 知っている限り 未来に恐れず立ち向かえるのです

だから未来の「あなた」のために 一緒に未来の「私たち」を 強くしましょう

ありがとうございました

観衆:(拍手)

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このプレゼンテーションについて

歴史的にみて運命の時が訪れています。不安や不確実性に煽られ、分断的な選挙や分断的な社会、過激主義の増長が見られるようになってきました。 「恐れることなく、将来に立ち向かうことができるように、私たちそれぞれが行えることがあるだろうか?」ラビ、ジョナサン・サックス卿はこう問います。 この精神的指導者は鮮烈なトークで、「私」の政治から「私たち全員が共に」の政治へと移行するための3つの方法について語ります。

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