コンクリートによる二酸化炭素排出量をマイナスにする方法とは(4:42)

トム・シューラー(Tom Schuler)
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対訳テキスト
講演内容の日本語対訳テキストです。
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コンクリートは そこらじゅうにありますが ほとんどの人は それに気づきません コンクリートは道路 建物 橋 空港などの建設に使われ どこにでもあるのです コンクリートより多く使われている資源は 水くらいしかありません そして 人口増加や都市化に伴い コンクリートの需要は かつてない程に高まっています しかし 問題があります

セメントは コンクリートをくっつける 糊のようなものですが セメントをつくるには 石灰石とその他の原料を窯に入れて とても高い温度で燃やします この過程でできる副産物のひとつが CO2 つまり 二酸化炭素です セメントを1トンつくると 1トン近い量のCO2が 大気中に排出されます その結果 セメント産業は 産業界で 2番目に多くのCO2を排出しており 世界の総排出量の8%を占めています 地球温暖化の解決を目指すのであれば セメント製造とCO2再利用の両方で 技術革新が必ず必要となります

さて コンクリートをつくるには セメントと石 砂 その他の原料を混ぜて 大量の水を加えて養生させ 硬くなるまで待ちます 舗石やブロックのような 成形された製品をつくる場合は 蒸気を養生室に吹き込むことで プロセスを加速させることもあります 建物 道路 橋の場合は いわゆる生コンクリートを 作業現場で型に流し入れ 固まるまで待ちます

50年以上前から 科学者の間では 水の代わりにCO2でコンクリートを 硬化させることができれば より頑丈になると 考えられていましたが ポルトランドセメントの 化学的性質がネックでした セメントは 水とCO2の両方に反応しますが 両者の相反する化学的な性質により 良質のコンクリートが作れないのです そこで セメントの 新たな化学的製法を考えだしました

同じ設備と原材料を使用しますが 石灰石の使用量が少なく 窯の温度も低くて済み 結果としてCO2排出量が 最大30%削減できます 私たちのセメントは水と反応しません コンクリートをCO2で硬化させますが そのCO2は アンモニア工場やエタノール工場などの 産業施設の排ガスから回収したもので 回収しなければ 大気中に排出されていたものです 硬化中 セメントとの化学反応により CO2が分解され 捕捉された炭素で 石灰石が生成されて その石灰石により コンクリートが固まります

私たちのコンクリートで作られた橋が 取り壊されても 中にCO2はもう存在しないため 排出される心配はありません セメント製造時のCO2排出削減量に コンクリート硬化時に取り込まれる CO2の量を合わせると 私たちのセメントは二酸化炭素排出量を 最大70%削減します また水を消費しないので 何兆リットルという水の節約にもなります

2千年の歴史があり 過去2百年間に大きな進歩のない 業界を説得することは 一筋縄ではいきませんが その課題に取り組んでいる 新旧の業者がいます 私たちの戦略は 持続可能性だけにとどまらない ― 解決策の模索による 導入の容易さです コンクリートを製造する プロセス 原材料 設備は 従来と変わりませんが CO2で硬化させる新しいセメントで コンクリートを作ると 強度と耐久性が優れ 色合いが薄く 硬化には 28日間ではなく 24時間しかかかりません

生コンクリート用の新しい技術は テスト中で インフラへの応用も開始しています また さらなる研究も推進し 二酸化炭素吸収源となり得る コンクリートの開発を目指しています セメント製造中に排出されるよりも 多くのCO2を取り込もうというのです 工事現場では気体のCO2を 使用できず 固体または液体の形で 届けなければならないため 排出されたCO2を捕捉して有用な 化学物質に変換する企業と提携しています たとえば シュウ酸や オレンジジュースにも含まれる クエン酸に変えます そういう酸が私たちのセメントと 反応すると コンクリートに 4倍多くの炭素を詰め込めて 二酸化炭素収支を マイナスにできます それはつまり 道路1kmあたり 10万本の木が1年に摂取するくらいの CO2を取り込むことになります

化学技術とCO2再利用により 私たちは コンクリート産業を変革し 地球上で2番目に多く 使用されている原料を 炭素吸収源へと 転換しようとしているのです

ありがとうございました

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このプレゼンテーションについて

コンクリートはそこらじゅうにあり、道路、建物、橋などの建設に使われていますが、過去2千年間、セメントを使いコンクリートを固める技術は大きく進歩せず、世界最大の炭素排出源の1つとなっています。 起業家のトム・シューラーは、コンクリートを建材でありながら大気中のCO2を閉じ込める炭素吸収源に変えられる可能性がある革新的製法をいち早く紹介します。

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