他の恒星系からの初の訪問者オウムアムア(13:24)

カレン・J・ミーチ(Karen j Meech)
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対訳テキスト
講演内容の日本語対訳テキストです。
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NASAは小惑星衝突の危険がないか いつも監視しており 毎晩 Pan-STARRS望遠鏡で 空を走査しています 毎朝 それを思わせる異状があれば Pan-STARRSの職員が調べますが たいていの場合 問題がないと判ります ところが2017年10月19日のこと Pan-STARRSは星と星の間を 高速で移動する天体を見つけました いつものように 位置と速度を求めてみると 全く様子が異なっていました 10月22日までに 十分なデータが集まり これは太陽系の天体ではないと 判明したのです

「なんてこと」 電話を受けた時の私の反応です 太陽系を研究している天文学者なら 誰もが待っている報せでした どれほど興奮する出来事か 説明しますね

(笑)

NASAは 1970年代以来 恒星間彗星が 太陽系を通過するところを 捉えようとしてきました しかし 今まで 何も発見されませんでした 太陽系自体も広大ですし 最も近くにある恒星系は 4.4光年も離れていて ちょっとした届け物を 受け取るにも 5万年の時間がかかります これは大変な出来事なのです 恒星間を飛来した物体は 太陽系の惑星の軌道面に対して 斜めの角度にある― こと座の方向からやってきました 水星の軌道よりも内側に入り 9月9日には 太陽に最接近しました とりたてて近づいたり 異常に接近したわけではありませんが 近くの物体のほうが ずっと容易に観測できます 発見前の10月14日に 地球に最も接近しており その距離は 約2400万キロメートルでした これは天文学的基準では かなりの接近です

面倒なカタログ番号の代わりに 我々はこの天体を 単に「ラマ」と呼びました アーサー・C・クラークが 1973年に書いたSFの名作に登場して 太陽系を通過する円柱状の宇宙船に ちなんだ呼び名です しかし これも適切な名前とはいえないので ハワイに設置された望遠鏡で 発見されたことを称する意味で ハワイの文化に詳しい2人の専門家 ポリネシア航法の航海士と 言語学者に 名前を提案してもらいました 彼らが提案した名前が 「オウムアムア」で 遠い昔からやってきた 斥候や使者を意味する言葉です

これが重要な発見である理由は 数多くありますが 私にとって最も重要なことは オウムアムアから 太陽系の過去に関する情報を 得られることです 太陽系が新たに誕生し 惑星が形成される過程は 激しく 込み入ったものでしょう 太陽を周る塵は円盤状になって 巨大惑星を生み出し これが移動するにつれて 余った氷や岩石の破片は 新しい太陽系からはじき出されます

皆さんは 何か興奮するようなことを目にして 感情的な震えを感じ 背筋にぞくっとするものが 走ったことはありませんか? もしくは 心が ひどく動かされたことがありませんか? 私はまさにそれを経験したのです 「わあ!」と思った瞬間でした 他所の恒星系から 一片の物質が飛んできて 観測できるほど近づくなんていうことが 本当に起きたんですから

他所の恒星系からの初の訪問者である オウムアムアから 知りたい情報は何でしょうか? 数え切れないほど考えつきますが 欲しいと思う情報と 取得できる情報とは別物です また オウムアムアは遠ざかりながら 急速に見えにくくなりつつありました 約1週間のうちに 明るさは [10分の1] に減少したのです 容易に調査できる時間は 全部で この程度です だから望遠鏡利用の申請手続きを 手際よくやらねばなりません 通常は 激しい競争の中で 提案が査読を受けるので 何か月もかかる手続きです これを数日以内に済ませるのです 限られた観測時間のための 「優雅な」争奪戦が始まりました いや はっきりと言いましょう 激しい争奪戦でした 他の全てを投げうって 昼夜ぶっ通しで作業して 観測所の所長に提出する提案書を 隙のない仕上がりにしようと頑張りました そして朗報です 観測時間を確保しました

さて 全く個人的な考えですが 得るべき情報の中で最優先されるのは オウムアムアがどれほど重いかだと思いました なにしろ地球にかなり接近したのですし そのことを後になって ようやく知ったのですから もし 軌道が地球を逸れていなかったら どれほどの惨事が起きたでしょうか? 衝突のエネルギーは 速度の2乗に質量を 乗じたものになります 質量は大きさと組成に依存します では オウムアムアの大きさと 形状はどうなのでしょうか? これは光度から分かります 分かりにくければ 裏庭にいるホタルと 遠方の飛行機の明るさを 比較することを考えてみてください 本当は飛行機の方が ずっと明るいですが 微かな光に見えるのは とても遠くにいるからです また オウムアムアの表面が どの程度の反射率なのかも 知っておきたいところです それを知る手掛かりはありませんが 太陽系にある小惑星や彗星の反射率と 同程度と考えるのが自然です 専門用語で説明すると その反射率は木炭としめった砂の 中間程度になります

こんにちでは 大型望遠鏡の多くは 「サービスモード」で運用されています つまり こちらでは 注意深く全ての手順を記述して これをオペレータに送り 後はデータが送られてくるのを 気を揉みながら待つばかりです 天気の神様にも祈ります 夜に雲が出ていたかどうかが 決定的な問題になるような仕事を 経験された方は少ないでしょう でも我々にとっては もう2度とチャンスは訪れません 天気の神様はごきげんでしたが オウムアムアは意地悪をはたらきました 光度が一定ではなかったのです この映像ではオウムアムアは 星間を勢いよく移動していますが 中央にくるように撮影しています 望遠鏡はオウムアムアを追跡しているので 星々は移動し枠外へと消えていきます オウムアムアは暗くなったり 明るくなったりを繰り返しました 直方体状の天体では太陽光が 4つの面で反射されるからです

この極端な光度の変化から 形状に関する信じがたいような 結論が得られました この想像図で示されているように オウムアムアは見たところ とても細長い形をしており 縦横比はおよそ 10:1 になっています その暗さからおよそ [400メートル] 程度の 長さだと考えられます 太陽系にはこんな形をした 天体はありません 縦横比が 5:1 以上の天体でさえ 数えるほどしかないのです こんな形になった理由は 分かりませんが 母なる恒星系で誕生した過程を 物語っているのでしょう

オウムアムアの明るさは 7.34時間の周期で変化していました 我々はこう考えたのですが さらにデータが入ってくると 異なる数字を報告する 観測グループもいました より多くの情報を得るに伴って 解釈が難しくなるのは どういうわけでしょう 実はオウムアムアの回転は 単純なものではないことが分かりました こま回しのようにぶれています 短軸回りの回転の他に 長軸回りにも回転しており さらに上下の首振り運動もしています このエネルギッシュで 激しい動きは 母なる恒星系から 乱暴に放り出された結果に ほぼ間違いありません 光度から推定される形状は 回転の仕方に 著しく左右されます 形状については 見直す必要が生じました 宇宙画家ビル・ハートマンが描く この美しい想像図のように オウムアムアは むしろ 平べったい楕円の形だと考えています

エネルギー論に話を戻しましょう この天体は 何で できているのでしょうか? オウムアムアのサンプルを ラボに持ち込み 詳細を調べられたら理想的ですが 民間企業であっても 1週間以内に この様な天体に向けて 宇宙船を打ち上げるのは不可能で 天文学者は遠方からの 観測に頼らざるを得ません 光が表面でどのように作用するかを 観測します 一部の色が吸収されることで 化学的な指紋が作られますが 吸収されない色もあるでしょう また逆に ある種の化学成分が 青い光ないし 赤い光を より強く反射することも起こります オウムアムアの場合 赤い色をより強く反射し 探査機ロゼッタが最近到達した彗星の 有機物を豊富に含んだ表面に とても良く似た色でした しかし 赤っぽい天体の成分が 全て同じだというわけではありません 事実 表面にほんのわずかな 鉄分が含まれれば やはり赤く見えます 探査機カッシーニが撮影した これらの画像に見られるように 土星の衛星イアペトゥスの 暗い側がその例です ニッケルと鉄 ― 要は金属でできた隕石も 赤い色に見えます 表面に何があるのかが はっきりしませんし 内部のこととなれば 一層分かりません でも はっきりしていることは 自転してもバラバラにならないだけの 強度があるのだから おそらく岩石型の小惑星と 同程度の密度を有するのでしょう あるいは 金属のような もっと密度が高いものかもしれません

さて どうしても お見せしたいものがあります 地上の望遠鏡で撮影した 美しいカラー写真の1枚です まあ確かに 息をのむような写真ではありません

(笑)

解像度が低いんです ハッブル宇宙望遠鏡を使っても それほどよく見えるようにはなりません しかしハッブル望遠鏡のデータの 重要性は画像よりも 発見後の観測期間が 2か月半まで延長できるという点にあります 軌道の位置情報を より多く得ることによって オウムアムアがどこからやって来たのか 解明できることが期待されるからです

では オウムアムアは 一体どういう天体なのでしょう? 我々は 他の惑星系が 誕生する過程で生じて 漂流している 考古学的な残滓 つまり天空の流木なのだろうと 強く信じています 科学者の中には オウムアムアは 太陽よりずっと密度の高い恒星の ごく近くで形成されたもので 恒星系の歴史の初期に 恒星の潮汐力によって 分解された惑星の物質だと 考える人もいます 一方で 恒星の終焉に起きた衝撃 ― おそらくは超新星爆発によって バラバラにされた惑星物質から 生じたと考える科学者もいます

いずれにしても自然に形成された物だと 考えていますが 宇宙人が造ったのではないと 証明することもできません 色、奇妙な形状 首振り運動について それぞれ別の説明も可能です 我々は宇宙人の技術によるものとは 思っていませんが すぐに思いつく実験として 電波信号を探査するのはどうでしょう? それはまさに「Breakthrough Listen プロジェクト」が行ったことです しかし オウムアムアは今のところ まったく沈黙を保っています

究極的には 宇宙船を オウムアムアまで飛ばし この疑問に対する答えを 得る方法があるかもしれません これを実現する技術はあるものの 遠方へと向けた 費用の掛かる 航行となるでしょう また 到着する頃には 太陽からたいへん離れていて 最終接近軌道の操縦は とても難しいものになるでしょう

オウムアムアから学ぶことは おそらくもっと多くあると思います 私と同類の科学者達が データ分析を続けることで さらなる驚きの事実が 明らかになるかもしれません さらに重要なことは この遠方からの訪問者が 私たちの太陽系が 孤立した 存在でないことを示したことです 私たちは ずっと大きな宇宙環境の一部であり 実は それと知らないままに 他の恒星から訪れた天体に 囲まれているのかもしれません この予期せぬ贈り物からは 得られた答えよりも多くの 新たな疑問が生まれました ともあれ 今回初めて 他の恒星系からの訪問者を出迎えたのでした

ありがとう

(拍手)

(ジュダイダー・アイスラー) カレン ありがとう 本当に興味深いトークでした ありがとう お話では この星が発見されたのは 軌道の終盤になってからでした LSST望遠鏡のような 今後登場する望遠鏡は このような天体の早期発見に 役立つでしょうか?

(カレン・ミーチ)ええ こういう天体が たくさん観測できるようになるでしょう 太陽に近づいてくる段階で 発見できるのが理想です さまざまな科学的な調査を行うための 十分な時間が欲しいからです さらに理想を言えば 宇宙船を 地球の近傍にある L4またはL5ラグランジュ点に待機させ 何かが接近してきたら 追跡を始められたらと思います

(ジュダイダー)すばらしいです ありがとう いま一度拍手を

(拍手)

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このプレゼンテーションについて

2017年10月、天文学者なら誰でも待ち望んでいる連絡を受けたのは天体生物学者のカレン・J・ミーチでした。NASAが他所の恒星系からやってきた天体を特定したのです。この恒星間起源の彗星は、長さ400メートルほどでした。「オウムアムア」という斥候や使者を意味するハワイの言葉で呼ばれることになったこの天体をめぐり、興味深い疑問が生じました。これは太陽系が誕生した時の岩石の破片なのか、超新星爆発によって吹き飛んだ惑星の物質なのか、それとも宇宙人の技術の産物なのか、もっと違うものなのでしょうか。目の離せないこのトークで、ミーチは彼女の研究チームが、遠方からやって来た予期せぬ贈り物のなぞ解きに、限られた時間の中でどう取り組んだかを語ります。

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