都市の住人とは誰か?(12:04)

オル=ティメヘン・アディグベイェ(OluTimehin Adegbeye)
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対訳テキスト
講演内容の日本語対訳テキストです。
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都市とは まるで複婚家族における 兄弟姉妹のようです それぞれに独特の性格があり 別々の方向に向かっています しかし 全員がある程度の 起源を共有しています 時々 私が思うのは 旧植民地の都市は 最も嫌われている二人のお嫁さんの 子供たちのようだということです そして 次のように言われ続けます 「もっと お姉さんのようにできないの?」 (笑)

「なぜ」都市が起こるのかは どこであろうとほぼ同じです 商業や行政を可能にする ロケーションの強み 熟練、非熟練労働者 両方に広がる チャンスの可能性 不断の変化を進んで受け入れる 住民の意思 そして もちろん レジリエンス(生き抜く力)です しかし 「どのように」都市が働くかは 全く別の話です 都市はどのように 運営されるのでしょうか? どのように成長するのでしょうか? 誰がその都市の住民で 誰がそうでないかを どのように 決めるのでしょうか?

(ナイジェリア)ラゴスが私の故郷です ナイジェリア人を確実に見つける方法は 騒音とダンスについて行くことです (笑)

他の主要都市と同じように ラゴスの街には多くのものがあります 非常に矛盾したものも 多くあります 公共交通は ほとんど機能していないので 私たちは 個人経営の 鮮やかな黄色のバスを使いますが しばしば交通事故を起こします 高級車のショールームは 維持管理が悪く 洪水がよく起こる道沿いにあります 路上での布教活動は ハラスメントと同じくらい活発で 売春婦の中には 学位を二つ持ち 銀行で働き 教会で重役を担う人もいます (笑)

どんな日でも パーティーあるいは 焼死体が 道の真ん中にあるでしょう

ラゴスには 可能なことも 不可能なこともたくさんあります 多くの場合 可能なことと不可能なことの差は あなたが誰なのか ラッキーかどうか 誰と繋がっているかです ラゴスに属するというのは 流動的な概念で それを決めるのは 民族的な出身 性的指向、性別 しかし 最もあからさまで しばしば最も暴力的なのが 社会階級です

ナイジェリア建国の前 内陸部の小川にいた漁師が 徐々にラゴスの潟にやってきました そして 海岸沿いに村を作りました その約60年後 私の祖父 オルドトゥン・アデクンレ・クコイも ラゴスにやってきました 私と同じく 彼もイバダン大学の卒業生で 独立期に 教育のある若いエリートの一人でした 次第に 彼は土地の測量士として 輝かしいキャリアを築きました 今ではにぎやかになった地域が まだ腰の高さほどの草で覆われていた頃 地図を作りました 私が9歳の時に 祖父は亡くなり その頃までには 私の家族は 他の漁師の家族と同じように ラゴスを故郷だと考えていました

私たちヨルバ族のことわざに "Èkó gb’olè, ó gb’ọ̀lẹ" というものがあります 「ラゴスは誰でも歓迎する」ほどの意味です しかし これは 次第に 真実味を失っています 多くのラゴス市民が 祖父よりずっと昔にやってきた 漁師の子孫も含め 追い出されようとしています 「ニュー・ドバイ」といわれる 新興都市を作るためです このように ラゴスは 指導者層にさえ 大きな夢を与えるのです 歴代の政府は 貧困の存在しない メガシティを建設すると 宣言してきました 残念ながら 戦略の中心は 皆さんが期待するような 貧困の撲滅ではなく 貧困層を追い出すことでした

この10月に 政府が発表した計画は ラゴスの海岸沿いの居住地区を 一つ残らず取り壊すというものでした 40以上の先住民のコミュニティが 街全体に存在していて 30万人以上の人々が そこで暮らしています オトド・バメは 100年の歴史がある漁師の村で 人口はモナコ公国の4分の3程度で モナコ同様 海沿いの高級エリアになる ポテンシャルがあり (笑)

真っ先にターゲットになった地区の一つです

私がオトド・バメの話を最初に聞いたのは 取り壊し開始後でした 2016年11月に私が訪問した時に マグダリーン・アイェフォジュに会いました 彼女は 家を失ってしまいました 彼女の名字は「世界は盲目」という意味です マグダリーンさんの息子 バジルさんは 土地が接収された時に 射殺 溺死または死亡が推定された 20人を超える被害者の1人です 彼女のシェルターの外に立つと バジルさんがプレイしていた 2面の白砂のサッカー場がありました 見渡す限り広がるのは 廃墟になった学校や教会 一次医療センター 店舗 何千もの家でした 幼い子供たちは やる気満々で シェルターを建てるのを 手伝いました そして 他に行くところのない 5千人あまりの住人が その場に残りました そして4月に 州の保安担当者が 再びやってきました 今度は コミュニティを完全に一掃しました 殴打したり、銃を使ったり 火を放ったりしたのです 現在 建設スタッフらが オトド・バメのビーチを 「数百万ドルの眺望」の購買層のために 整備しています この新しい開発は "Periwinkle Estate" と呼ばれています

強制退去は 非常に暴力的であり もちろん 憲法違反です それにもかかわらず 強制退去は 頻繁に 多くの都市で 起こるのです なぜなら 私たちが 貧しい人々について 最初に忘れるように 教わることは 彼らが人間だということです 私たちは 家を持つ権利は 誰にでも絶対的にあると信じています ただし その人が貧しく その家がある地区で ある方法で建てられると その権利は否定されるのです ただ 「家」の定義は 1つではありません 結局のところ スラムとは 深刻な住宅不足と所得格差に対する 生き物のような反応に 他なりません そして 掘っ建て小屋とは 困難に負けず 自分の手で建てた家に 他ならないのです スラムは 住宅問題の 完全な解決策ではありません しかし それは 全ての機能的な都市の 基盤や中心にある 革新性 適応能力 そして レジリエンスの 模範例でもあります すでに ラゴスなのに 新しいドバイになる必要はありません (拍手)

私たちには 私たち自身のアイデンティティや リズムがあります ラゴスを知っている人なら 誰でも言うように 多くの場合 貧しい人々こそが ラゴスの特徴を作っているのです 貧しい人々がいなければ ラゴスは音楽や 無限の活力 そして車の窓から冷たい飲み物や 仔犬が買えることで 有名にはならなかったでしょう (笑)

ある地区がスラムと 呼ばれる所以となっている課題は 効果的に改善できますが そのためには その地区に住む人々の 人間性や主体性を 認める必要があります ラゴスでは 公共財が 広く市民に 提供されることはほとんどなく スラムの住人は しばしば 創意工夫あふれる解決策を切り開いています 電力会社が 集金方法を見つけ出せないため 電力網から何ヶ月も切り離された後 ある地区は 料金支払いの 集団化システムを考え出し 全住民の料金引き下げを達成しました 他のある地区は 更生プログラムを考案し 地元の不良少年たちを セキュリティガードとして雇いました 彼らは あらゆる手口や 潜伏場所を知っているので より多くの問題人物が目撃され 警察に通報されるようになりました さらに 犯罪に手を染める若者の数も 減ったのです さらに別の地区は 最近 洪水にも耐え 環境にも優しい 共用トイレシステムを整備しました このような実例は ラゴス中で採用されています

非正規居住地を 問題だとするのは間違っています その本当の問題は それを作り出す要因にあるのです 例えば 固定化された貧困 社会的排除 国家の失敗などです 私たちの政府がスラムを脅威だと位置付け 暴力的な土地の接収や 強制退去を正当化する際 政府は 私たちのように 正規の家に住んでいる人々が 黙って そして知らないうちに 同意することを当てにしています しかし政府の存在意義は 高級な家を建て そこに住む人々だけでなく その家の清掃や警備をする人々にも 奉仕することにあると 釘を刺さねばなりません 私たちは― (拍手)

私たちは違った現実に 生きているかもしれません でも同じ権利を持っています

ラゴス州政府は アフリカ大陸の他の多くの政府と同じく 口では 多様な人々を 受け入れると言いながら 実際は ある集団を 犠牲にしてよいものと見なし 無視し 利用し 排除してはじめて 発展が成し遂げられるかのように 振る舞っています ラゴスの路上で 商品の販売や 物乞いをする障害者を 一斉に検挙し 恫喝し 拘留します 低所得の地区に住む女性を 実際の職業に関わらず 売春の容疑にかけ 告発します 本来の政治課題から目をそらすために 同性愛者に責任転嫁します しかし 人々は 都市と同様に 強い生存力を持っています どんな法律や脅し、暴力があろうとも 誰かを完全に排除することはできません 売春婦として働く女性は 未だに ゼロになっていません 何世紀にもわたる 強い圧力にも関わらずです 性的マイノリティのアフリカ人も 存在し続けます それが アフリカのほぼ全土で 犯罪とされる今もです そして 私は ほぼ確信しているのですが 貧しい人々は 通常 全財産を奪い取られたから 消えていくわけではありません

私たちは すでに ここに存在します そして それが 都市に属しているかどうかの 答えなのです

漁師たちが 新しい家を探して このラゴスの潟を下ってきたとき 将来 その周りに発展する都市が 彼らを部外者だと言い渡すとは 思ってもみなかったでしょう 私は 祖父がラゴスの未開拓地を 測量することを通して 自分と同じように 他の人々が 迎え入れられる場所を 開拓しようとしていたのだと 信じたいのです 私がここに向かっている途中 私の祖母が電話をくれて 祖母が 私のことを誇りに思っていると そして 私の祖父や母も きっと同じはずだと伝えてくれました 私は 彼らの夢を実現したのです しかし 彼らの夢 — そして私の夢の 実現は許されるのに 他の人の夢が 悪夢に終わっていい訳がありません そして 忘れてはいけません 夢のためには 少なくとも 安心して眠れる場所が必要です

バジルには 今となっては手遅れですが マグダリーンには間に合います ラゴスや他の都市で 恐怖に晒されている 何十万 何百万という人々も間に合います 世界は 人々の人間らしいあり方が否定される苦しみを 無視し続ける必要はありません あらゆる働きを認め 評価した場合の 大きな発展の可能性を 無視し続ける必要はありません

私たちの政府も 私たち自身も 都市という共有物を 全住民にとって安全であるよう保つ 責任を果たさねばなりません なぜなら 築く価値がある都市— そして 夢見る価値がある将来とは みなを含むものだからです 私たちがどんな人であろうと 自分の手で どのように家を建てようとです

ありがとうございました (拍手)

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このプレゼンテーションについて

政府がメガシティを作ろうとするとき、多くの場合、真っ先に立ち退きを迫られるのが貧困層です。オル=ティメヘン・アディグベイェ氏は、この感動的で詩的なプレゼンテーションの中で、「新しいドバイ」を作るために、憲法に違反して政府が行った土地の強奪が、どのようにナイジェリア、ラゴス市の海岸沿いのコミュニティの生活を破壊しているのか説明します。彼女は、都市が全ての人にとって安全であるように、政府や私たち自身が責任を果たすよう訴えかけます。「築く価値のある都市、そして夢見る価値のある将来とは、どんな人であろうと、自分の手でどんな家を建てようと、みんなが含まれるものだ」と彼女は言います。

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