職が無くなる未来社会でのお金の稼ぎ方(14:38)

マーティン・フォード(Martin Ford)
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対訳テキスト
講演内容の日本語対訳テキストです。
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初めに怖い質問をします 私たちは仕事が無い未来に 向かっているのでしょうか? 自動運転車のような技術が 著しく進歩するのを目にして この問いに 爆発的な関心が集まっています しかし この問いは過去に 何度も問われてきたので 私たちが本当に問うべきことは 今回は今までとは違うのか ということです 自動化が労働者を駆逐し 失業者がたくさん 生まれるのではないかという恐怖感は 控え目に見ても 200年前の英国で起きた ラッダイト運動に遡り それ以来何度となく この不安は浮上してきました

おそらく皆さんは トリプルレボリューションの報告書を ご存知ないでしょう 実は卓越した報告書でした

これは ノーベル賞受賞者2名を含めた 大変優秀な人々が作成して アメリカ合衆国の 大統領に報告したものです 自動化によって アメリカでは 数百万人が失業することになるので 国は経済的 社会的な 動乱に瀕していると 警告しました さて その報告書は リンドン・ジョンソン大統領に 1964年3月に届けられました 50年以上前のことです もちろんそんなことは起きませんでした このような話は何度も繰り返されました

何度も警鐘は鳴らされましたが いつも誤報で済みました そして 今までいつも誤報でしたので このような事態に対する 典型的な考え方が導かれました その要点を言うなら 技術はいくつかの産業を 丸ごと破壊するかもしれない いくつかの職業や業種を 一掃するかもしれない しかしもちろん同時に 技術進歩は新しいものへと繋がるので 将来的には新産業が登場し 新たに人を雇用することが必要になる 新しい種類の仕事が出現し それらはまだ想像さえも できないものである これが今までの筋書であり 肯定的な話でした

実際に そのように生じた新しい職業は 以前にあった職業に比べて より良いものが多く 例えば もっと打ち込める仕事で より安全で より快適な環境での仕事で より収入の良い職業でした そういうわけで肯定的であり それが今までの展開でした しかし ある特別な種類の労働者には これとは全く異なる展開が 待っていました この労働者にとっては 技術が彼らの仕事を完全に破壊し 新しい機会など生まれませんでした この労働者というのは そう 馬たちです

(笑)

では 皆さんに挑戦的な質問をします 将来のある時点で 人による労働力の大部分が 馬たちのように余剰となってしまうことは あり得るでしょうか 皆さんは本能的 直感的に こう答えるかもしれません 「そんなのバカバカしい 人間と馬を 比較できるわけがないじゃないか」 もちろん馬の能力は限られています そのため 自動車やトラックや トラクターが出現した時 馬はどうすることもできませんでした それに対して人間には知性があります 私たちは新しい事を学び 適応できます そのため 理屈の上では いつでも新しく行う事を 見つけて 将来の経済に対しても ずっと関わっていけるはずです

しかしここで 理解しておくべきことがあります 将来 私たち労働者を脅かす機械たちは 馬を失業に導いた 自動車やトラックやトラクターとは 全くの別物です やがては たくさんの機械が考え 学習し 適応できるようになります そしてそれ故に テクノロジーは遂に 人間の根本的能力を脅かし始めます それは私たちと馬とを隔てる 重要な能力であり まさにその能力によって これまで私たちは 進歩に一足先んじることができ 経済に関わり続けられ さらに実際 経済に不可欠な存在でいられました では現在の情報通信技術は 今まで私たちが見てきたものと比べて 何がそんなに違うのでしょうか 私は3つの根本的ポイントについて 取り上げます

最初のポイントは 私たちが 指数関数的な加速を継続的に見てきたことです ムーアの法則は ご存知でしょうが それよりもずっと広範な現象です それはさまざまな事例にあてはまります 例えばソフトウェアや 通信における帯域幅などにも あてはまります しかし重要なポイントは この加速は長期にわたって 続いているということです 実際 今では数十年続いています 集積回路が初めて製造された― 1950年代末から数えると 計算能力の倍増は これまで30回も起きました それはどんな量に対しても とてつもない増大率となります そしてそれが意味するのは 私たちは今後 とてつもない量の圧倒的な 進歩を見ることになり もちろんそれは この時点から 加速し続けていくということです ということでこの後 数年から数十年を見てみると 今はまだ想像もできないような事を 私たちは見ることになるでしょう それは仰天するような事でしょう

2番目のポイントは 機械は 限られた意味でとはいえ 思考し始めているということです 私は人間と同じレベルの AI や サイエンス・フィクションのような 人工知能を指してはいません 単純に 機械やアルゴリズムが 意思決定することを言っているのです 問題解決に取り組んでおり さらに重要なのは 学習していることです 実際 これに関する主要な技術で ここでの原動力となっているものが 1つあるとしたら それは機械学習です それは信じられないほど 強力で破壊的で 大規模に適用できるテクノロジーに なりつつあります

最近私が目にした 最も良い例は Google のディープマインド部門が 囲碁プログラム「AlphaGo」で 果たした快挙でしょう これは囲碁の勝負で 世界最強の棋士を破ったシステムです 少なくとも私から見ると 囲碁には2つの際立った 要素があります 1つ目は 囲碁を打つ時に 想定しうる打ち手の数は非常に多く 本質的には無限であること 実際に 可能な打ち手の種類は 宇宙に存在する原子の数より多いのです これが意味するのは 囲碁で勝てるコンピューターを作るためには チェスで用いたような 力任せの計算能力を投入する取り組み方では 不可能だということです そのため 思考過程のように 洗練された手法が必要になります 囲碁の際立った点の2つ目は タイトル戦に参加する囲碁棋士に 話を聞いてみると これらの棋士たちは対戦中の 自分たちの思考過程を 必ずしも明確な言葉にできないことです それはしばしば直感的なものであり どの手を打つべきかは ほぼ感覚的なものなのです

この2つの特徴から考えると 世界チャンピオン大会レベルで 囲碁を打つことは 自動化からは かけ離れたものだと 言いたくなるところです しかしそうではないという事実に対して 私たちは警告信号を発するべきなのです なぜなら 私たちは明確な線引きをしがちだからです 境界線の一方に置かれるのは 基本的に規則的で反復的で 予想しやすいと考えられる仕事や業務です このような仕事は さまざまな産業にあり 職種や 技能レベルも さまざまかもしれません しかしこれらは本質的に予測可能なので いずれ自動化して 機械学習に 取って代わられると考えるわけです 間違いなく 多数の職業がそうでしょう おそらく経済の半数ほどの職業に あてはまることでしょう

しかし ここで境界線のもう一方を見てみると そこには人間だけが持っていると 私たちが考える能力を 必要とする あらゆる仕事があります 私たちはこれらの仕事は 安全だと考えています さて 私の囲碁の知識に基づいて考えれば 囲碁は境界線より安全な側のはずだと 考えかねないところですが しかし事実は異なり Googleがその問題を解いている事からすると この境界線はとてもダイナミックであり その位置は移動し そして現在私たちが 自動化とは無縁と考える職業や業務の ますます多くを飲み込んでいくでしょう

もう1つの重要なポイントは この傾向が当てはまるのは 低賃金の仕事や 肉体労働 つまり 低学歴の人々が受け持っている― 仕事や業務だけではないということです たくさんの証拠が示すように テクノロジーが獲得している技能は 急速に向上していて 私たちは既に専門職への影響を 見ているわけです このようなタスクは従来 会計士や 金融アナリストや 記者や 弁護士、画像診断医などによって 行われてきました そのため どのような職種や業務や仕事が将来 自動化に脅かされるかという見込みは 今後見直しを迫られるでしょう

このような傾向を考え合わせると 私たちの未来はこのようになるかもしれません 著しい失業者数 あるいは 少なくとも 多数の不完全雇用や 賃金の停滞に直面し 賃金の低下傾向さえ起こります そしてもちろん社会的不平等は急上昇し これらすべてが社会組織に とてつもない負荷を 与えるわけです それ以外にも根本的な経済問題があります それは現在の経済では仕事が 収入と それによる購買力とを行き渡らせる― 主要な仕組みであり こうして創り出された製品やサービスを 消費者が購入するからです

活気のある市場経済を 維持するためには 非常に多くの消費者が 生産された商品やサービスを 購入できるシステムが必要です それが無ければ 景気停滞の 危機に陥ったり 景気悪化の悪循環にも陥りかねません 生産された製品やサービスを 購入できる消費者が 充分にいないからです

重要な点として理解しなければいけないのは 私たち個人のすべてが 成功のため 市場経済へのアクセスに 頼っているということです ある並外れた人物のことを考えると 具体的に想像できるでしょう 例えば スティーブ・ジョブズを 考えてみてください 彼を離島にひとり上陸させたとします その離島で 彼は他の誰もがするように ココナッツ採取に走り回ることになります 特別な事など全くできません その理由はもちろん 彼の途方もない才能を 展開できる市場が存在しないからです このような理由で 市場経済へのアクセスは 個人にとって重要で システム全体を維持するためにも 重要なのです

そのため 次の質問は この問題をどう解決するべきかでしょう これを理想郷的な視点から考えてみてください 誰もがそれほど働かなくてもよい 未来社会において 余暇や娯楽の時間は増え 家族と過ごす時間も増え 心からやりがいがあると思える事への時間も 増えたりするでしょう 素晴らしい未来像です 私たちはそれを目指して 懸命に努力するべきです しかし同時に 私たちは現実的でなくてはいけません そして収入の配分という重大な問題に 直面するだろうと 認識しなければなりません たくさんの人々が取り残されるでしょう その問題を解決するためには 最終的に私たちは 収入を従来の仕事から分離する方法を 探し出さなければなりません そして私の知る限り 最良で簡単な方法として 収入保障すなわち最低所得保障があります

最低所得保障は 重要なアイデアになりつつあります 注目を集め 受け入れられ始めています 沢山の試験的なプログラムが 実行されていますし 世界中で実験が行われています 私の考えでは 最低所得保障は 万能薬ではありません 導入してすぐ役立つ即戦力ではなく ただのスタート地点です 私たちがそれをもとに作り上げて 改良するべきアイデアです 例えば 私が頻繁に書いてきた事としては 最低所得保障に 明確な報奨制度を取り入れることです その例をあげます 例えば あなたが 悪戦苦闘している高校生だとします あなたが今 中退の瀬戸際だとしましょう しかし 何があったとしても 将来はいずれ 他の人々と同じ最低所得保障が 得られるとなったらどうでしょう そのシステムは 簡単にあきらめて中退を選ばせる― 不適切な動機を生みだすと 私は思います

そのため 私はその仕組みには反対です その代わりに 高校卒業者は 中退者よりも より多くの収入を得られるようにしましょう 最低所得保障に 報奨制度を取り入れるというアイデアは おそらく他の領域にも拡張できるでしょう 例えば 地域社会サービスで人々を助けたり 環境保護に貢献することへの 報奨制度が考えられます このように報奨制度を 最低所得保障に取り入れることで これを改善していくことができます または 私たちが直面するであろう 別の問題の解決に向けた 数歩の前進にもつながるでしょう それは私たちが 従来の仕事への需要が減少する将来に どのようにして 人生の意味や充実感を得るかとか どのように時間を過ごしていくかの 問題だったりします

最低所得保障を発展させ 洗練させることで それをより良いものにできるでしょうし そしておそらく政治的 社会的にも受容され 実現性の高いものに できるでしょう もちろんそうすることによって そのシステムが実際に施行される 見通しが高まるのです

私が思うに 私たちの多くが 最低所得保障という発想に対して抱く― もっとも根本的で ほとんど直感的な異論は あるいは社会保障がどんな形であれ 拡大することへの異論は いずれ 経済にタダ乗りする人が増えすぎて 経済のけん引力が 不足してしまうことへの懸念です しかし ここがこの話のポイントです 未来の社会では 機械が私たちに代わって経済をけん引する 能力をつけているはずで それが私たちに社会や経済を構築する上での 選択肢をさらに増やし 最終的にはそれが選択肢以上のものになり 必要不可欠なものになるでしょう その理由はもちろん これらのすべてが 私たちの社会に大変な圧力をかけるとともに 仕事が消費者に購買力を配分し 経済を動かしていくための 仕組みだからです もしも将来 その仕組みが 損なわれることになれば 私たちはそれを別のもので 置き換えていかなければなりません そうでないと すべてのシステムが 維持不可能になる危機に 直面することになります

しかしながらこの話の要点として 私が本当に思っているのは このような問題点を解決し 未来の経済を築くために 社会のあらゆるレベルで 誰もが 成功できる方法を探していくことは 私たち全員が今後数年から数十年に直面する― 大変重要な課題になるということです

ありがとうございました

(拍手)

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このプレゼンテーションについて

テクノロジーの発達によって、考え、学習し、適応できる機械が出現し始めています。それが私たち人間にもたらすのは著しい失業かもしれません。私達はそれに対しどうするべきでしょうか。未来学者のマーティン・フォードが、収入をこれまでの仕事と切り離し、最低所得を保障するというコンセプトを簡潔に述べます。

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