他に例を見ない最高の幼稚園(9:47)

手塚貴晴(Takaharu Tezuka)
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対訳テキスト
講演内容の日本語対訳テキストです。
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こちらは私たちが 2007年に設計した幼稚園です 円形になるように幼稚園を作りました 屋根の上を 行き止まりのない形にしたのです 皆さんが親御さんなら 子供たちが ぐるぐると回りたがることは お分かりになりますよね 屋上はこんな風になっています

どうしてこんなデザインにしたのかって? 園長先生はこんなことを言いました 「手すりなんか やめましょう」 私は言いました「それは無理ですよ」 それでも彼は言い張ります 「軒先から網を突き出して 落ちてくる子供たちを 受け止めるっていうのは?」 (笑) 「それは無理ですよ」

もちろん 国の役人はこう言いました 「当然 手すりは設置して頂かなければ なりません」 でも 木の周りだけ そのアイデアを残せました 屋根を突き抜けて立つ 3本の木があるのです このロープを 手すり代わりとすることが許されました 子供たちにとって この手すりは全然関係ないのですね わざとネットに落っこちるのです 何人か落ちると もっと もっと落ちていきます (笑) 一本の木の周りに40人もの子供が いることもあります 枝には男の子がいますね 彼は木が大好きで 木を食べています (笑)

何かイベントがある時は みんな手すりの周りに座ります 下から見ると面白いですよ まるで動物園のお猿さんです (笑) 餌の時間ですね (笑)(拍手)

私たちは屋根をなるべく低く設置しました 下にいる子供たちだけではなく 屋上にいる子供たちも 見えるようにしたかったからです 屋根が高すぎると 天井しか見えませんからね

これは足洗い場 ― いろんな水栓があります ホースがありますね 友達に水をかけてみたり 水浴びをしたくなりますよね 前にいる子はまともに見えますが 良く見てみると この子は長靴を洗っているのではなく 靴の中に水を入れていますよ (笑)

この幼稚園はほぼ一年中 完全に開けっ放しになっていて 内と外の境目がありません つまりこの建築の基本的な部分は 屋根にあるのです 教室と教室の間の境目もありません だから音を遮るものが全く無いのです 沢山の子供たちを静かな 箱のような場所に閉じ込めると 落ち着きがなくなる子もいますからね でもこの幼稚園では ナーバスになる理由なんかありません だって境界が無いのですから

園長先生が言います 隅にいるあの男の子が 部屋にじっとしていられないときは 好きにさせます すると結局戻って来ちゃうんですね なにしろ円形ですから (笑)

要はこういう状況では 子供はどこかに 隠れたがるものですが ここでは ただ放っておけば 戻ってくるということです 自然なプロセスですね

2つ目に 雑音が入ってくることが とても大切だということです 子供たちは ざわざわしていると 良く寝れますよね 静かな場所では寝ないんです それに この幼稚園では 子供たちは授業で すばらしく集中できるんです 我々の祖先はざわざわとする ジャングルで育ってきましたよね そう 雑音が必要なんです 騒がしいバーでも 友人に話しかけますよね 静けさの中にいることが 前提になっていないんです

近頃では 何でもかんでも 管理下に置こうとしますが ここは完全に自由です 考えてもみてください 我々は冬にマイナス20度の中 スキーに行くことができます 砂の温度が50度にもなっている夏に 泳ぎにも行きます それに 人間は防水性です 雨の中でも溶けたりしません 子供たちは 外にいるべきなんです だから そのように彼らを 扱わなければなりません

教室はこんな風に分けられています 先生たちのお手伝いを することになっていますが 手伝ったりしません (笑) 私が押込めたんではないですよ 教室です 手洗い場です 皆で井戸端会議していますね 教室には 必ず木があります 上にいるお猿さんが 別のお猿さんを 釣り上げようとしています (笑) お猿さんたちです (笑) どの教室にも少なくとも1つは 天窓があります クリスマスになると ここから サンタクロースが降りてきます

これは別の建物で 楕円形の幼稚園のすぐ横にあります この建造物ではわずか5メートルの高さに 7つのフロアがあります もちろん 天井はとても低くなっています だから安全性を考慮しなければなりません そこで自分たちの娘や息子に 入ってもらいました 彼は頭をぶつけました でも大丈夫 彼の頭はとても丈夫にできています 立ち直りが早いんです 僕の息子ですから (笑) 飛び降りても大丈夫か のぞいています それから他の子供たちにも入ってもらいました

東京では交通渋滞は ひどいもんです (笑) 前の運転手 この女の子は 運転の仕方を覚える必要があるようです この頃では 子供たちはちょっとした 危険を経験しなければなりません こういった場所では 互いに助け合うことを学びます それが共同社会 そんな機会が今日では失われています

この図はある男の子の 9:10から9:30までの動きを示したものです この建物の周囲の長さは183mあるので 決して小さくありません この子は朝に 6千m走ったことになります まだ驚くべきことがあります この幼稚園での平均は4千mで この幼稚園の子供たちは 数ある幼稚園の中でも もっとも運動能力があるということです 園長先生は言います 「別に訓練している訳じゃあないですよ 屋上で好きにさせているだけです まるで羊のようにね」 (笑) 彼らは走り続けます (笑)

大切なのは 子供たちを管理しないこと 過保護にしないこと そして 時には転ぶことだって 必要だということです 怪我することも時には必要です そこから世の中で生きていく 術を学んでいくのです 私は 建築にはこの世と人々の生活を 変える力があると思っています そして これは子供たちの生活を 変えていく試みの一つなのです

どうも有難うございました(拍手)

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このプレゼンテーションについて

東京にあるこの幼稚園では、5才の子供たちが交通渋滞を引き起こしたり、サンタクロースのための窓があったり・・・。建築家の手塚貴晴氏が設計した、世界で最も素晴らしい幼稚園です。この魅力的なトークで、彼が皆さんを案内するのは、子供が子供らしくなれる設計です。

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