絶滅種再生の夜明けとそれが意味すること(18:24)

スチュアート・ブランド(Stewart Brand)
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対訳テキスト
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絶滅は普通の死とは違います。より甚大です。それに気付いたのは1914年に マーサという名の最後の一羽だったリョコウバトが シンシナティ動物園で死んだ時です。この種はかつて世界で最も数多かった鳥で、北アメリカに6百万年もの間生息していました。それが忽然と消えてしまったのです。かつては幅2キロ、長さ500キロに渡る群れの帯が 太陽を遮ったものです。アルド・レオポルドは生物的嵐、羽根の吹雪と称しました。この鳥は重要な生物種として ミシシッピ川から大西洋 カナダからメキシコ湾にわたって 広く落葉樹林の生態系を支えました。ほんの数十年で生息数が 50億からゼロになったのです。その原因は――

商業狩猟でした。食肉として捕獲され大量に売られたのです。捕獲は容易でした。群れが地上に降り立つと あまりに密集していたので 多数の捕獲者がやって来ては 大量殺戮を繰り返したのです。肉はアメリカで最も安いたんぱく質でした。世紀末にはその名残は 博物館の標本箱に保管されたはく製のみになりました。

ひとつだけ良い話は 人々がアメリカ・バイソンも絶滅に 瀕していることに気づいたのです。いわば鳥がバッファローを救いました。

しかし他に多くの動物が死滅しました。カロライナ・インコはかつて裏庭でも見かけました。しかし羽毛が狙われ絶滅しました。東海岸に生息したニューイングランド・ソウゲンライチョウは 可愛がられ保護されたのに絶滅しました。地元紙が悲しみを伝えました。"生存者はない 未来もない もはやこの生き物が二度と誕生することはない" 絶滅には深い悲しみが伴います。人々に愛された鳥たちにも悲劇は襲いました。哺乳類も同様です。別の重要種で有名だった動物には オーロックスがいます。最近映画が作られました。オーロックスはバイソンに似ていました。この動物はいわば森と草原の仲介役として ヨーロッパ全土およびアジア大陸 スペインから朝鮮まで 広く分布していました。この動物はラスコー洞窟の壁画にも 描かれました。

絶滅種は他にもいます。スペインに生息したヤギの一種ブカルドは 2000年に絶滅しました。オーストラリア南部のタスマニア島には タスマニア・タイガーと呼ばれたすばらしい有袋類の フクロオオカミがいました。動物園で死滅した最後の数頭に減るまで狩りが続きました。貴重なフィルムが残っています。

後悔 怒り 悲しみ 悲しむのは止めて 計画を立てましょう。もしも博物館の標本や 20万年前の化石から DNAを採取してそれを基に 絶滅種を再生できたとしたらどうでしょうか。どこから手をつけますか。

まず バイオ技術の最先端を見てみましょう。妻のライアン・フィーランと話しました。彼女は DNAダイレクトというバイオ企業の経営者です。そして彼女の同僚のジョージ・チャーチ、彼は一流の遺伝子工学者ですが 彼もまたリョコウバトに取り憑かれていて 自分の研究成果を大いに 活用できるのではと 自信を持っていました。

そこで妻とジョージはハーバードの ヴィース研究所で会合を催しリョコウバトの専門家 鳥類保護学者 生命倫理学者に呼び掛けました。嬉しいことにベス・シャピロという分子生物学者が 既にリョコウバトのDNAを解読したことが分かりました。この学者はスミソニアン博物館にある 標本の爪先の組織を使いました。そこに古生代DNAがあったのです。DNAは極めて損傷していましたが 今日の優れた技術でゲノム全体を再構築できます。

そこで問題は そのゲノムを使って 絶滅した鳥を再生できるかどうかです。ジョージ・チャーチはできると考えています。彼の著書「再創造」はお勧めです。絶滅種を再生する科学について記述しています。彼は複合自動ゲノム工学機という装置も保有しています。彼は複合自動ゲノム工学機という装置も保有しています。いわば進化用の装置です。様々な遺伝子の組み合わせを細胞 そして器官レベルでチップに記述して、成功した個体を 生体の器官に移植すると機能するのです。この方式の精度はというと、この読解不能なジョージのスライドによると精度は各々の塩基対まで至ります。リョコウバトのゲノムには13億の塩基対があります。

そして今日ではひとつの遺伝子を その派生形で置き換えられます。対立遺伝子と呼びます。対立遺伝子は普通の交配でも起きます。この場合は絶滅種および よく類似する生存種の ゲノム同士の合成交配です。研究中にジョージが指摘するのは、彼が取り組んでいる合成生物学の技術はムーアの法則の4倍の速さで加速中という点です。2005年以来加速しており今後も継続するでしょう。

さてリョコウバトに一番近い生存種は オビオバトです。多数生息しておりこの辺でも見かけます。遺伝子的にはオビオバトはほとんど 生きたリョコウバトです。オビオバトの違いはほんのわずかです それらの違いをリョコウバトに置き換えれば 絶滅種が復活してクークー鳴くのです。

すべきことは色々あります。重要な遺伝子の識別が必要です。オビオバトの短い尻尾を成す遺伝子と リョコウバトの長い尻尾を成す遺伝子があります。目の赤い色 桃色をした胸、群れの習性等も同様です。全てを混ぜた結果は完璧ではないでしょう。しかし十分に近いでしょう。自然も完璧ではないですから。

ボストンでの会合では3つの成果がありました。

まず妻と私はリバイブ・アンド・リストアというNPOを興し 絶滅種再生活動の推進と責任の所在を 明確にした上で研究を進め、リョコウバトの 再生に取り込むことにしました。

次にベン・ノバックという若い大学院生に出会いました。彼は14歳からリョコウバトに興味を持ち、独学で古生代DNAを学習し 家族と友人の資金を頼りに リョコウバトのDNAを解析したのです。彼を正規採用することにしました。これは去年スミソニアン博物館で撮った彼の写真です 彼が見つめているのがリョコウバト 最後の一羽のマーサです。再生が成功すれば最後の一羽にはなりません。

ボストン会合の3つ目の成果は、絶滅再生に取り組んでいる科学者が世界中にいるにも関わらず、一同に会したことがない事実に 気づいたのです。そこでナショナル・ジオグラフィックも注目しました。ナショナル・ジオグラフィックの考えでは 前世紀の発見は新たに見つけることだったが 今世紀は発見とは新たに作ることだ と言うのです。絶滅再生はそれに該当します。そこで別の会合が設定され 35人の科学者が集合しました。彼らは自然保護生物学者や分子生物学者で 共同研究する分野を話し合ったのです。自然保護生物学者の数人はとても大胆です。特にその中の3人は死滅種を再生するだけでなく 破壊された生態系を 北シベリア オランダ ハワイで復元しようというのです。

オランダのアンリです オランダ名の苗字を発音するのはお許しを 彼はオーロックスに取り組んでいます オーロックスは家畜の牛全ての祖先ですから ゲノムは引き継がれています ただ散在しています 彼らは上に見えるずんぐりした マレンマーナ原種のような7種類の原始種をかけ合わせ 人為選択を時間をかけて行いオーロックスを 再現しようとしています 野生環境の復元は米国よりも韓国が先行しています 野生環境の復元は米国よりも韓国が先行しています 計画では欧州中で復元された 野生環境にオーロックスを導入し 元来の生態的役割で 痩せた土地を豊かな森林にしてもらい 多様な生物種を育もうとしています。

別の驚くべき話です 主人公はアルベルト・フェルナンデス-アリアスです 彼はスペインでブカルドに取り組みました 最後のブカルドはシーリアというメスでした 当時はまだ生存しており一時的に捕獲して 耳から小さな細胞を採取しました そして液体窒素で冷凍保存したうえで 自然に戻したのですが 数か月後に倒木の下敷きで死亡したのです 彼らは耳からDNAを摘出し 山羊にクローン卵を移植しました 妊娠期間が過ぎ 生きたブカルドの赤ちゃんが誕生したのです 歴史上初の絶滅種再生でした。

(拍手)

ただし短命でした 時折 種をまたがるクローンには呼吸器系の障害が起きます この個体は肺が未発達だったため10分後に死亡しました しかしアルベルトはクローン技術の 進展を確信しており やがては ブカルドの群れが北スペインの 山々に蘇ると考えています。

冷凍保存技術の優れた先駆者であるオリバー・ライダーです サンディエゴ動物園内には冷凍された 千種以上の細胞が過去35年以上に渡り 保管されています 零下196℃の温度で 冷凍されている 細胞とそのDNAは いわば 生きたままの状態です アドバンスト・セル・テクノロジー社のボブ・ランザは ジャワ・バンテンという絶滅危惧種の細胞を 採取して牝牛に移植しました 牝牛は妊娠し やがて健康な ジャワ・バンテンの赤ちゃんが生まれ 順調に育ち今も健在です。

今ボブ・ランザが注目しているのは iPS細胞を使って あらゆる細胞から 卵子や精子等の 胚細胞を作ることです。

次にマイク・マグリューです 彼はスコットランドにあるロスリン研究所の科学者で 鳥に奇跡を起こそうとしています 例えばタカの皮膚細胞を使って iPS細胞を作製します iPS細胞から胚プラズマを作ります 彼はこの胚プラズマを 鶏卵の胚細胞に埋め込む技術を確立しました いわば鶏がタカの生殖腺を持つのです いわば鶏がタカの生殖腺を持つのです 鶏のつがいを用意すれば タカが生まれるというわけです (笑) 少しだけ細工した鶏がタカを生むのです。

ベン・ノバックは最年少の参加者でした まとめ役を彼は買って出ました こんな具合です オビオバトとリョコウバトの ゲノムを集めます ジョージ・チャーチの技術を使って リョコウバトのDNAを取得します そしてロバート・ランザとマイケル・マグリューの技術で DNAを鶏の生殖腺に移植します そして生んだ卵の中からハトが生まれ リョコウバトの群れが再生するのです。

そこで起きる問題は 新しい群れにリョコウバトの習性を教える 親バトがいないことです どうしましょうか 実は鳥の習性の多くは先天的です つまりDNAに受け継がれているのです それを補完するために伝書鳩を 使うことをベンは考えています それでリョコウバトの若鳥が群れを作ったり 営巣地や餌場を探す方法を 学べるでしょう。

自然保護活動家の中には 自然保護生物学の創始者として 有名なスタンリー・テンプルや レッドリストに関わっているIUCN(国際自然保護連合) のケート・ジョーンズがいます 彼らも大いに興味を示しています 同時にまだ生存している 絶滅危惧種の非常に重要な 保護活動と競合しないか 心配もしています つまり野生動物の保護活動は継続したい アジアの象牙市場を壊滅する取り込みをして 毎年殺戮される2万5千頭の象を保護したい。

しかしその一方自然保護生物学者は暗い話題が 人々を委縮させることにも気づいています レッドリストは絶滅危惧や絶滅寸前の 種を守るためにとても重要です 一方彼らはグリーン・リストを作成しようとしています グリーン・リストは健全な種を列挙します 白頭ワシはじめ以前は絶滅に瀕したものの 人々の努力や世界中の管理が とても行き届いた保護区のおかげで 順調に回復した種のリストです 明るい話題で活動を盛り上げようとしているのです 絶滅種の再生はそんな明るい話題の 一環として有意義です。

いくつか例をあげましょう 飼育下繁殖は絶滅種再生に有効な手段になります カリフォルニア・コンドルは1987年には22羽に減りました 絶滅は時間の問題と思われました しかしサンディエゴ動物園の飼育下繁殖のおかげで 今は405羽に増えてそのうち226羽は野生に戻っています この手法を絶滅種再生にも応用できます 次の成功例は中央アフリカのマウンテン・ゴリラです 1981年にダイアン・フォッシーは絶滅を覚悟しました 254頭が生存するのみでした 今では880頭になり 毎年3%増加しています 今では880頭になり 毎年3%増加しています 秘訣はとてもすばらしいエコ・ツアーの仕組みです 秘訣はとてもすばらしいエコ・ツアーの仕組みです この写真は妻が先月 iPhone で撮影しました この写真は妻が先月 iPhone で撮影しました これほど野生のゴリラが観光客に慣れているのです。

次も興味深いですが 更なる支援が必要です シロサイの例です つがいはいません それでもこの動物の 様々なDNA検体が保存されています クローンすれば再生可能です。

では次のステップは何でしょうか これまで行われたのは私的な会合です 私はこの話題を公けにすべきだと思います 世論に問いかけるのです 世論は絶滅種再生を望むでしょうか 皆さんは絶滅種再生を望みますか。

(拍手)

ティンカー・ベルが飛んでくることでしょう まさにその瞬間です とても期待している人も 心配な人もいるでしょう。

私たちはリョウコウバト再生を継続するつもりです ベン・ノバックはカリフォルニア大サンタクルーズ校の ベス・シャピロのグループと共同研究をはじめました リョウコウバトとオビオバトのゲノム解析をするのです リョウコウバトとオビオバトのゲノム解析をするのです 完了したらジョージ・チャーチに送り 魔法のようにリョウコウバトのDNAを抽出します そこでベン・ランザとマイク・マグリューが引継ぎ DNAを胚プラズマに挿入し鶏に移植します 鶏からリョウコウバトのひな鳥が生まれ オビオバトが育てるのです あとはリョウコウバトに 全てを託せば おそらく向こう6百万年は安泰です コストが下がれば同様なことを カロライナ・インコ オーロックス ニューイングランド・ソウゲンライチョウ ハシジロキツツキ エスキモーコシャクシギ カリブモンクアザラシ マンモスに応用できます。

事実上 人間は過去1万年に渡り 自然界に巨大な穴を開けてきたのです 今の私たちにはそのダメージを 少しでも修復する能力とおそらく義務があります できることは自然を回復し保護し そして絶滅危惧種の 個体数を回復し保護することです 既に死滅した種の幾つかは その復活を待ち望む 世界に呼び戻すことが 可能なのです。

ありがとうございます。

(拍手)

ありがとうございます 質問があります これは感情的なトピックです 立ち上る人もいるでしょう 一方座ったままで次のような 辛い質問をする人もいるでしょう ちょっと待ってくれ このように人間が自然界に 介入するのは問題ではないか 予期せぬ事態を引き起こし パンドラの箱か何かを 開けることにならないのか これについてどう思いますか。

先に述べた点は我々こそが 大いに介入して動物を絶滅に追い込み しかもその多くは重要種であり 絶滅させた結果 生態系全体を 変えてしまったことです 基準レベルの変動が問題です すなわち絶滅種が 基準レベルの変動が問題です すなわち絶滅種が 復活したら現在生息していて 人々が愛する鳥を駆逐しないか 私はそれも自然の摂理だと思います 長くゆっくりした過程なのです 多世代におよぶのは好ましいことだと思います マンモスだって再生できるでしょう。

お話もその可能性も非常にスリルがあると感じました お話もその可能性も非常にスリルがあると感じました お話いただきありがとうございました。

ありがとう (拍手)

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このプレゼンテーションについて

人類の歴史上、私たちは多くの種を絶滅に追いやりました。リョコウバト、イースタンクーガー、ドードー等です。しかし、スチュアート・ブランドは、人類が死滅に追いやった種を再生する技術と生物学的知識を私たちは今や手にしていると言います。はたして、そのような試みをすべきなのでしょうか。その場合、どの種から始めるのでしょうか。氏は大きな問題を問いかけます。その答えは皆さんが考えるよりも身近にあることかもしれません。

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