毛糸テロ(ヤーン・ボミング)がどのように世界中に広がったのか(5:30)

マグダ・セイエグ(Magda Sayeg)
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対訳テキスト
講演内容の日本語対訳テキストです。
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私はテキスタイルアーティストです。ヤーン・ボミング運動(毛糸テロ) 創始者として最も広く知られてます。
ヤーン・ボミングとは、毛糸で編んだ生地で都市の街並みをグラフィティ的に飾ること。
もっと具体的に言えば、許可なく、認可なくやることです。

でも、10年以上前に始めたばかりの頃は、この活動には名前もつけず、これで何をしたいという野心も壮大なビジョンもなく、ただ暖かくてふわふわで人間的な何かを、毎日目にする冷たい灰色の金属の表面に与えたかっただけです。

まずは、ドアハンドルを毛糸で覆ってみました。作品第1号です。
こんな小さな物で自分の人生が変わるなんて思いもしませんでした。

だから周りの反応がすごく意外で、私は興味をそそられ、他に何ができるだろうか、公共の場でも同じ反応を得られるような何かができるかなって思って、家の近くの道路標識の柱を編み物で覆ってみました。大反響でした。停めた車を降りてまじまじと見る人、首をかしげまじまじと見る人、写真を撮る人、標識の横で写真を撮る人も。あまりの反響にすごくワクワクして、近所の標識全部やりたくなって、やればやるほど反響は高まるばかり。

すっかり夢中になりハマっちゃいました。ものすごい誘惑でした。
新たな情熱が湧き上がり、都市環境が私の遊び場になりました。

これは初期の作品の1つです。平凡なものを改良するという考えにとても惹かれていました。
つまらないもの、醜いものでさえも、改良しつつアイデンティティや機能性は奪わず、ただぴったりあつらえた服を編んであげるだけ。それが楽しかったんです。ただの無機物に命を吹き込むことが本当に楽しかったんです。

で・・・ これはみんな笑いますよね。でも・・(笑)

今度は真剣にやりたくなってきました。分析してみたくなりました。
どうして自分がこんなに夢中になっているのか。どうしてこんなに熱くなれて、どうしてこんなに反響があるのか知りたかったのです。そして気づきました。デジタル化し、せかせかした現代社会で、皆何か親しみを感じられるものを求めているし、欲しているんです。

私たち皆、感覚が麻痺しているんだと思います。進歩しすぎた都市に住んで、看板や広告、巨大駐車場に囲まれて無感覚になっています。誰もそんなことに文句も言わなくなりました。だからふと、毛糸に包まれた標識に出くわしたりすると、あまりの場違い感にだんだんと、そして奇妙にも繋がりを感じるようになる――そんな瞬間があるんです。
私の大好きな瞬間です。この瞬間を、すごく他の人と共有したいんです。

私の好奇心は膨らみました。消火栓や道路標識から始めましたが、毛糸で他に何ができるか考えました。
何かもっとスケールが大きくて、無理そうなものは?

そんなとき、バスを手がけました。
これでまったく流れが変わりました。この作品は、いつまでも私の心に残るでしょう。

その頃、私の作品は認知されてきてはいましたが、ここまで大きなものをニットで覆ったものはありませんでした。
ニットに覆われた市バスは史上初だったはず。

この時点で、面白い現象を体験、というか目の当たりにしました。ヤーン・ボミングは、始めた私の手をもう離れていました。世界に羽ばたいていました。世界中の人々がやっていました。
どうしてわかったかって、世界のどこかを旅して、行ったこともない国で、私はやってないのに道路標識が毛糸で覆われていたりするんです。

だから、自分のアートで目標を定めて追求する一方――これは最近の大作です――ヤーン・ボミングも同時に発展していきました。そういった経験から編み物に隠された力が見えてきて、世界中と通じ合える言葉があるんだとわかってきました。この年寄りっぽく目立たない趣味を通じて、関係があるなんて思いもしなかった人々との共通点を見い出しました。

今日ここで自分の話をしながらもお伝えしたいのは、一番目立たない場所にこそ隠された力があったりすることや、誰もが何かスキルを持っていて、ただ発掘されていないだけだということ。

私たち人間に備わる手という道具を見直し、何ができるか考えてみると、家を建てたり、家具を作ったり、巨大な壁を塗ったり――ほとんどの時間はリモコンや携帯を握ってますよね。私もまったくの同罪です。でも考えてみてください。携帯やリモコンを置いてみたらどうなるでしょう。自分の手で何を作り出せるでしょうか。

皆、私のこと編み物の達人だと思ってますが、実はセーターも編めないくらい編み物はダメでした。でも、編み物でそれまで前例のなかった面白いことをしたわけです。

あと、アーティストを目指してもいなかったし―専門教育を受けていなかったという意味ですが―数学専攻でしたからね。こんなことが起こるなんて思っていませんでした。でも、偶然こうなったわけでもありません。続ける努力もしたし、戦いもしました。今は誇りを持って、アーティストとして活動しています。

誰もが未来に想いを巡らせますが、思うほど滑らかには進まないかもしれません。
皆さんもある日、私みたいに退屈しのぎでドアハンドルカバーを編んだら世界が一変したりするかもしれません。

ありがとうございました(拍手)

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このプレゼンテーションについて:

テキスタイルアーティストのマグダ・セイエグの手にかかれば、なんでもないモノがカラフルなニット・編み物で飾られ、都市の街並みが彼女の遊び場に生まれ変わります。暖かくふわふわした毛糸で街を「爆撃」する「ヤーン・ボミング」は、当初セイエグの地元の道路標識や消火栓など小さいものから始まり、間もなく人々がこの手芸活動に繋がりを見出し、世界中に広めたのでした。「デジタル化し、せかせかした現代社会で、私たちは今でも何か親しみを感じられるものを強く求め、切望しているのです。」とセイエグは言います。「最も目立たない場所にこそ、隠された力があるものです。私たち皆、何かしらスキルを持っています。ただ発掘されていないだけなのです。」

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