気候問題における揺るぎない楽観の擁護論(7:09)

クリスティアナ・フィゲレス(Christiana Figueres)
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対訳テキスト
講演内容の日本語対訳テキストです。
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私たちの直面する現実のどれも 決定的ではなく 変えることが可能です 私の出身地のコスタリカは 平和への深いこだわりと 高い教育レベル そして 先見的な自然への責務で知られています でも常にそうだったわけではありません

ずっと昔の1940年代 私の父 ホセ・フィゲレス・フェレールは 若い農夫として ここにある山の土を耕しながら 社会の公平性に根ざし 法の支配に導かれた国の姿の 展望を育んでいました そんな父の展望が試されたのが 1948年に 政府が民主的な投票による選挙の 結果を拒否し 軍を投入した時です

父はこれを黙認することも可能でしたが 民主制度の回復に必要なことをすると決め 家と農地が焼かれる事態を 生き延びました そこから数人の勇敢な男女で構成された 革命軍を立ち上げ この軍は奇跡的に 政府軍を倒しました 父は目的を達成すると軍を解散し 国家軍の設立を禁止すると 余剰となった軍事予算を 他の用途に向け直し 今あるコスタリカの独特な国家の姿の 基盤作りに着手しました 私が父から学んだのが 揺るぎない楽観 — それは私たちに託された現実を 私たちの望む現実へと 変化させるのに必要な考え方です

今 グローバルな規模で直面する 急加速に進行する気候危機は 対応が遅れ過ぎた為に 拡大した大変な問題です 私たちに残されたのは 真から方向転換する最後のチャンスです この10年で人類の歴史の成り行きが 決定付けられます おおげさに聞こえるでしょうが 事実です 今行く道をそのまま進めば 私たちの子供たち そして その子孫に残されるのは ますます 住み続けるのが厳しくなり 病気の急増や 飢餓や紛争 そして元に戻せぬエコシステムの破綻が 避けられない世界です

逆に言うと 現在の温暖化ガス排出量を これから10年の間に半減すれば 胸が高鳴る可能性を秘めた 社会への扉を開くことができて そこにはグリーン化した都市 きれいな空気 効率性高いエネルギーや交通手段 公平な社会にある多くの雇用 そして 再生された森林や 土地や水が待ち受けています もっと安全で健全な社会となり 今ある社会よりも もっと安定した正当な姿です

この10年は 今まで見たことのないような 選択を迫られる時です 現代を生きる全ての人に その共同の責任が委ねられ 同時に可能性も分け与えられます この10年の間に多くの変化を強いられますが その道のりを誰もが違う歩調で歩みます しかし変化への出発点は同じです それは考え方を変えることから始まります 今直面している事実を前に 無関心でいて 何もせず 問題がそのまま解決するのを 願うこともできます 落胆し 無気力に落ち込むこともできます 或いは 揺るぎない楽観主義者として どんなに困難であろうと この問題に立ち向かうべきであり できるのだという信念を 持つこともできます

楽観とは 私たちをとりまく現実に 無頓着でいることではありません それは全く愚かです 私たちが何もしなくても 勝手に解決するだろうという 非現実的な盲信でもありません それは全くの無責任です 私の言う楽観とは 何かを達成して初めて得られるものではなく 問題に立ち向かうのに必要な決意を 持つことなのです それはむしろ 成功への確率を 上げるための唯一の方法です あなたが掲げた個人的な目標を達成する上での 前向きな思考の影響を考えてください マラソンを完走する 新しい言語を習得する 新しい国家を築き上げる- 私の父のように 又は私のように 気候変動抑制に向けた国際協定を締結させる

2015年に成立したパリ協定は 歴史的な突破口だと賞賛されました 私が2010年に 国際気候変動交渉の責任者として 就任した当初は お先真っ暗な状況でした 合意できずに終わった コペンハーゲン会議から6ヶ月後 世界は気候変動問題を解決する糸口のない 暗闇にありました 脱炭素化対策への国際的な合意が可能だと 信じる人は誰もいませんでした 私でさえその可能性に悲観的でした ところがその時私が気付いたのは 共通の展望と 世界的な展望に向かって歩む道が 不可欠だということです その為には まずは私自身が 意図的に考え方を変えることから始まり それから全ての参加者が 少しづつ 勇気を持ちながら 失望から決意 対立から協調へと思考を変え 最終的には共に国際的合意に 到達しました しかし十分に迅速な行動には 落とせていません

こんにちでは 多くの人が この10年間でCO2排出量を 半減させるなんて無理だと言っています だからと言って私たちには 諦めることも 歩みを緩めることも許されません 楽観とは 私たちの望む未来の姿を描き そしてその姿へ 積極的に近づこうとすることです 楽観は可能性の場を開き 変化をもたらしたいという 気持ちを掻き立たせ 問題意識と希望を同時に感じて 毎朝元気にベッドから飛び起きる 気分にさせられます

しかし決して生易しい道ではありません 進む途中で何回もつまづくでしょう 他のグローバル危機の発生が 急速な進展の妨げになることもあるでしょうし 今の地政学的な現状によって 私たちの楽観が簡単にくじけることもあります そんな時に必要なのが揺るがない姿勢です 楽観とは ただ陽気に前向きでいるだけではなく 肝を据え 覚悟を決め 諦めを許さぬことであり 私たちに日々迫られる選択なのです 道先で行き当たる全ての障壁は 違う道を探すべきだと暗に示しているのです 徹底的に協力し合う事によって 私たちは達成できます

私は何年にも渡り 繰り返し起きる悪夢に悩まされました 7人の子供の目が私を見ているというもので 7世代に渡る子供たちの眼差しが 目で訴えかけてきます 「あなたは何をしたの?」と 今 何百万人もの子供たちが 街中で行進しながら 私たち大人に同じ質問をしています 「あなたたちは何をしているの?」 私たちはそれに応えなくてはなりません

私たちの前にいた父や母が そうであったように 私たちは未来を耕す農夫です 皆さんそれぞれが 自分自身に問いかけてみてください あなたが望む未来はどんな姿ですか それが現実になる為に あなたは何をしていますか? それぞれに返事は異なるでしょうが まずは世界中で増え続ける 揺るぎない楽観主義者から成るファミリーに 加わることから始められます みなさん このファミリーにようこそ

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このプレゼンテーションについて

「これからの10年は、今まで体験したことの無いような選択の時です」と語るのは、歴史的な2015年パリ協定の立役者、クリスティアナ・フィゲレス。国民に崇拝されたコスタリカ前大統領ホセ・フィゲレス・フェレールの娘であるフィゲレスが伝えるのは、愛する母国を見捨てるのを拒み、戦い続けた父親の姿勢から、揺るぎない楽観を持てば、行動と変化を促進できると学んだということです。後世のために断固とした決意で戦うフィゲレスが、「揺るぎない楽観」とは何か、逆に何がそうでないかを説明します。そして誰もが人類の未来の姿を描き、その未来が可能となる努力をするように呼びかけます。

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