南極の微生物たちの多彩な世界(5:37)

アリエル・ウォルドマン(Ariel Waldman)
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対訳テキスト
講演内容の日本語対訳テキストです。
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これが何か分かりますか? ガラスでできた生き物のいる場所が あると言ったら どう思いますか? 私たちの目には見えないけど 宇宙飛行士たちはいつも目にしている 生物がいると言ったら?

目に見えないガラスの生き物というのは 彼方の惑星に棲む異星生物ではありません 珪藻のことです 光合成をする 単細胞の藻類で 地球規模で酸素を生成して 雲の形成を促し その精妙な 幾何学的造形の外殻は ガラスでできています 海面に渦巻く色として 宇宙から見ることができます 死ぬと そのガラスの体は 海の底に沈み 取り除いた大気中の炭素を 墓へと道連れにして 海洋における炭素隔離に 大きく貢献しています

私たちはSFみたいな惑星に 住んでいるのです 地球上には研究すべき奇妙な 生き物がたくさんおり その多くが 世界の辺境にいて 私たちの目が届かず 理解も及びません そういう辺境のひとつが 南極です

南極というと 不毛な生命のない場所で ペンギンくらいしかいないと 思われがちですが 南極は極地にある 生命のオアシスであり まったく素晴らしい無数の生き物に 満ちているんです ではなぜ 野生生物ドキュメンタリーで そういう生き物を目にしないのでしょう? 雪や氷の下に隠れていて 私たちには見えないからです 微生物なんです 氷河の中に埋もれ 海氷の下に潜み 氷河下の湖を遊泳する ちっちゃな動物や植物たちです 自然物の番組でよく見る 大型動物にも劣らず 魅力的な生き物です

でも どうしたら 見えもしないものを 探しに行こうと思わせられるでしょう? 最近私は南極への 5週間の調査遠征を率いて 微生物サイズの 野生生物映画を製作しました 84キロの機材を抱えて 軍用機に乗り込み 顕微鏡を現地に持ち込んで そういう小さな極限環境微生物を 調査し映像にしようというわけです この地球上にありながら よく理解されていない生態系のことを もっと知ることができるように

そういう目に見えない生き物の 生きる姿を捉えるため その棲み家である氷の下へと 赴く必要がありました 毎年 海氷で南極の大きさは 倍近くになります 3メートルの氷の下を 覗き見るため 海氷に通した 長い金属のトンネルを下り 生命に溢れた隠れた生態系を 目撃しました 海の底と 光る氷の天井の間に 宙吊りになりながら 外から見ると こんな感じです まったく魔法のような世界です そこで見つけた生き物には 貝虫のような可愛らしものや 美しく幾何学的な 珪藻がいました

そこからさらに進んで ドライバレーで2週間 野営しました 南極の98%は 氷に覆われていますが ドライバレーは 氷の下の大陸が どのようかを実際に見られる 最も開けた場所です 「血の滝」で 細菌を採取しました 氷河下の湖が 酸化鉄を噴き出していて ほんの十年前まで まったく生命がないと 考えられていた場所です 氷河を登って 穴を掘りに行きました 氷の層に埋もれながら 生命を謳歌している 無数の強靭な生き物たちを 見るために これはクリオコナイト・ホールです 暗色の塵が 氷河の上に吹き寄せられ 氷を溶かして穴を作り それがまた氷で覆われたもので 氷河の中に何百という 塵の塊が保持されていて そのそれぞれが固有の生態系を持つ 島宇宙のようになっています

そこで見つけた生き物には みなさんもご存じだろう 愛らしい緩歩動物がいて 私も大好きですが 爪のあるちっちゃな グミの熊みたいです クマムシの名でも知られ 宇宙の真空を含む 極端な条件でも生存できる すごい生命力で有名です でもクマムシを見るために 宇宙や南極まで行く必要はありません 道端や公園をはじめ 地球上至るところの コケの中に棲んでいます 皆さんは毎日 そういう目に見えない 沢山の動物たちのそばを通り過ぎているんです

見慣れているようでいて 少し奇妙なのが 線形動物です ヘビでも ミミズでもなく 独自の生き物です ミミズのように再生したり ヘビのように這うことはできませんが 短剣のような小さな針が 口の中にあって それを獲物に銛のように突き刺して 中身を吸い出します 地球上には人間1人当たり 570億匹の線虫がいます

あまり知られていないけど 同じように素敵な生き物もいます ルンバみたいな口になる すごい冠を持った輪形動物 消化器官が透けてほとんど おはじきみたいな繊毛虫 パーティ用の紙吹雪を ペトリ皿にぶちまけたような藍藻

私たちがメディアで よく見かける微生物の姿は 恐ろしい化け物みたいな 電子顕微鏡写真ですが 生きて動いているところを 見なければ たとえ身の回りの至るところにいても その生活は分からないままです どんな生き方をしているのか? 周りの環境と どう関わっているのか? ペンギンを動物園の写真で 見たことはあっても よちよち歩いたり 氷の上を滑ったりする姿を 見たことがなければ ペンギンをちゃんと理解することは できないでしょう 生きて動いている微生物を 見ることで 目に見えない生き物たちについて より良い理解が得られます 南極や裏庭の見えない生き物を 記録しなければ 私たちがどれほど多くの生き物たちと この世界を分かち合っているのか分からず 奇妙で気まぐれな故郷の惑星の 全体像はつかめないのです

ありがとうございました

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このプレゼンテーションについて

この微生物の世界のツアーでは、探検家でアーティストのアリエル・ウォルドマンが南極の広大な氷床の下にいる魅力的な生き物たちをご紹介します。抱きしめたくなるようなクマムシもいれば、ガラスでできた幾何学的な藻類もいて、この一見不毛な大地は、見方さえわかれば極地にある生命のオアシスであることをウォルドマンが示します。

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