映画で描かれることの誇りと力(14:21)

ジョン・M・チュウ(Jon M Chu)
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対訳テキスト
講演内容の日本語対訳テキストです。
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シリコンバレーとインターネットが 私にくれたのは スーパーパワーと 戦うための道具 銃弾をも通さない服 そして戦いの時を告げて 空を照らす合図でした

とはいっても これを証明はできません 私は「科学者」でもなければ 「裏付ける事実」もありません 実は 映画評論サイトでの 私の評価は50%くらいなので なぜここに呼ばれたのか わかりません

(笑)

でも 自分より大きな力に ぶつかっていくことについて お話しするのであれば 私は適任だと思います なぜなら昨年 私の映画『クレイジーリッチ!』で 興味深い経験をしたからです

(拍手と歓声)

どうもありがとう

それに「結びつき」が 今回のテーマであり 私の物語が実現し得たのは これまでの人生で起こった 様々な結びつきのおかげなので 願わくば私の物語を 少しお話しすることで 誰かが私よりも早く自分の道を 見つける助けになればと思います

私の物語は 聖典を 初めて開いた時に始まりました ガジェットの聖典 「Sharper Image」カタログです

(笑)

分かる人には分かりますね これは夢の詰まった 魔法のような雑誌で とてもありえないと 思うような物が 載っているんです 通販で注文もできます ない方がマシなものもありましたが リアルな持ち運び可能なマネキンの 「グレゴリー」とか― 強面な佇まいで 犯罪を防ぐと謳っています これは本当に―

(笑)

本当にあるんですよ

(笑)

でも私の目が釘付けになったのは Sima Video Ed/it 2でした 10歳の私の目には とてもかっこよく映りました VHSプレイヤーとつないで ビデオ編集できるんです 両親を呼んで 買ってほしいとお願いしました その話の前に ちょっと両親の話をさせてください 両親は若い時に アメリカにやってきました 台湾と中国の出身です 2人はカリフォルニア州 ロス・アルトスに居を構え― シリコンバレーになる前の シリコンバレーですね― 「シェフ・チュウの店」という 中華料理店を始めました 半世紀経った今も 両親はその店をやっていて 同じ場所にいます 私はそこで育ち いい環境でした 結びつきといえば この場所は結びつきの中心でした 人々は誕生日や記念日や 契約成立を祝いにやってきて 飲んだり食べたりし 結びつきが生まれるのです 私はその中で育ちました 両親はいつもアメリカは 世界一の場所だと言っていました 誰だって― 何か好きなことがあれば 努力して何でも叶えられるのだと 両親は私たち5人の子供を アメリカ人として育てました 私は末っ子で― あの目をつぶっているのが私です 姉をジェニファー 私をジョナサンと名付けたのは 『探偵ハート&ハート』の 2人の主人公にちなんでのことでした

(笑)

それくらい両親は アメリカが大好きだったんですね うちはケネディ一家のようだと 思ってもいました 母は特にそうです だからよく子供に お揃いの服を着せたり エチケットのレッスンや 社交ダンスのクラスに通わせて 歯をきれいに矯正させました

(笑)

私の写真です 本物ですよ これはひどいですね

休暇旅行のときにビデオを撮るのは 私の担当でした だから 撮りためたビデオを 持て余していたんです そこで Sima Video Ed/it 2 です 買ってくれるよう 両親を説得して 兄や姉の部屋にあった 家じゅうのビデオレコーダーを集め コードに絡まりながら接続し 一晩かけて なんとか 見せられるものができました ある晩 家族をリビングに集めました 1991年くらいだったでしょうか みんなをリビングに座らせて 胸はドキドキして 深く呼吸をしながら― 今みたいな感じですね 再生ボタンを押しました すると驚くようなことが起きました みんな泣いたんです ずっと泣いていました 家族が泣いたのは 史上最高のホームビデオだったからではなくて 出来は確かに良かったですが―

(笑)

みんなが泣いたのは 自分たちの家族が 普通の家族として 目の前の画面に 映し出されていたからでした まるで大好きな憧れの映画や 子供の名前をもらったテレビドラマのように 5人きょうだいの末っ子の私は 自分の意見を初めて 聞いてもらえた気がしました 頭の中に渦巻いているアイデアが 大きな電子空間へと入っていき そして出ていく そんな場所があったのです まさにその瞬間から これを一生の仕事にしたいと 思うようになりました お金になろうとなるまいと

この情熱が生まれて ツールが必要になりました 父は仕事に出かけると 私のホームビデオの編集技術を レストランのお客さんに よく自慢したものです 幸い シリコンバレーでしたから お客さんたちはハードウェアや ソフトウェアの仕事をしている エンジニアたちで デジタルビデオ編集に必要なものを 提供してくれました 90年代半ばか もっと前の話ですから 子供が使うようなものでは なかったのです HPや Sunや Adobeのラッセル・ブラウンの ベータ版ソフトやハードウェアを 手に入れました マニュアルなどありません 自分で解明していくことで さらに好きになりました

私は南カリフォルニア大学の 映画芸術学部へ行きましたが 父や母は思いつきで電話してきては お前が受け継いでいる中国的なものを描く 映画を作らなきゃいけないと言いました 中国はいつか映画産業の 一大市場になるはずだからと 私は「はいはい」 という具合でしたが

(笑)

親の話はちゃんと聞きましょうね

(笑)

私はゼメキスやルーカス スピルバーグを目指していました 自分自身の文化的背景や 民族性など 扱いたいとも思いませんでした 実際 話す相手もおらず 大学で率直に語り合える人は いませんでした いたとしたって 何を話すと言うんでしょう? ですから それは無視して 人生のコマを進めました

早送りすること15年後 私はハリウッドにいました スピルバーグに見いだされ ドウェイン・ジョンソンや ブルース・ウィリス ジャスティン・ビーバーと仕事をし 自分のダンスカンパニーLXDを紹介するのに TEDの舞台にも上がり とても順調でした でも 数年前に 創作面でちょっと行き詰まりました エンジンの調子が少し悪くなり そして合図を受け取りました 空から声が聞こえたんです 声というより さえずりのような ぶっちゃけ Twitterです Twitterで―

(笑)

コンスタンス・ウーも ダニエル・デイ・キムも この会場にも来ている ジェニー・ヤンも アラン・ヤンも― こういった人たちが ハリウッドの人種的偏りに 不満を綴っていました 私は はっとしました 感じてはいても 意識していなかったことでした 私は仕事に集中して 働けることを 幸運に思っていたんです でも気づきました ハリウッドは何をしているんだ? なんで正さないのかと そして鏡で自分の姿を見て 自分もハリウッド側なんだと気づきました 文字通り― ステージに上がる前に 襟を立ててきたくらいに ハリウッドに染まっているのです

(笑)

まだ襟立ってますか? よし

(拍手)

多くのものを与えられながら 自分は映画界に何を返しただろうと ずっと感じていました 確かに幸運だったけれど ここで仕事ができるのは運だけではないと そのとき気づきました ここにいる資格があるんだ 資格を勝ち取ってきたんだと 寝る間も惜しんで 金曜の夜に パーティーにも行かず働いたり 映像編集ばかりしていて 友人や彼女をなくしもしました そうして 勝ち取ってきたのは 発言力を得るためだけではなく 何か大事なことを 言うためなのだと 実は 自分には 物事のあり方を変えたければ変えられる スーパーパワーがあったんです

自分の物語を語ることや 自分や家族に似た人たちの 話をするのは 怖くもあります 疎外感を感じた日々が 蘇りもしました でもインターネットが 教えてくれたんです 私を待っている味方が たくさんいて 私を支えてくれ 好きになってくれることを そこでケヴィン・クワンの素晴らしい小説 『クレイジー・リッチ・アジアンズ』に出会い これをやろうと思いました 映画化したんです 全キャストをアジア系で― 現代物として25年ぶりの 全アジア系キャストです

(拍手と歓声)

製作当初 成功の保証は 全くありませんでした こういった映画に 無料招待券はありません 市場調査をする度に分かったのは 客が入らないということでした 実際に 無料で鑑賞券を配る 試写会でさえも 実際に 無料で鑑賞券を配る 試写会でさえも 25分の1の割合でした 25人に配ってようやく 1人が来るといった具合で 試写会にしては 非常に低い割合です 小説を知っているアジア系の人々は ハリウッドを信用しておらず 小説を知らないアジア系の人々は タイトルが失礼だと感じ アジア系でない人々は 自分向きの映画ではないと思ったのです かなりの窮地でした 幸い ワーナーブラザーズは 見捨てませんでした それから また電子空間で 何かが起こりました 多くのアジア系アメリカ人の 作家や記者やブロガーたち― それぞれの媒体で何年もかけて 地位を築いてきた人たちが 私の知らぬ間に 力になってくれ 様々な投稿を始めました ここにいるテック企業の創業者も ソーシャルメディアに書き込みをし 『LAタイムズ紙』や 『ハリウッド・リポーター』 『エンターテインメント・ウィークリー』に 映画のことを書いてくれました 自分たちをニュースにしようという 草の根運動さながらでした 実に素晴らしい光景でした

支持の盛り上がりが オンラインでの対話へとつながり アジア系アメリカ人たちの間で 議論が交わされ 話し合われました どんな物語を伝えたいか 伝えるべきことと そうでないことは何か 自虐はありなのか? キャスティングは? 何が許されるのか? 意見は一致しなかったし 今もしていませんが それは重要ではないのです 対話が起こったこと自体が 重要でした 対話の流れがインフラとなりました 同じことを成し遂げたいと考える 様々なグループが集まって 互いに結びついた組織になったのです もちろん完璧ではありません でも映画で自分たちをどう描くかを 決める出発点になりました

映画館に足を運ぶと もっと実感として迫ってきました あのオープニングの週末を 忘れることはないでしょう 映画館に入ると アジア系だけでなく 様々な人々がいて 私も席に着くと 観客は笑ったり泣いたりしました 終わってロビーに出てみると 観客が残っていました まだ帰りたくないという風に ハグをし合ったり ハイタッチをしたり セルフィーを撮ったり 議論をしたり 笑い合ったりしていました 色んな反応がありました この映画は自分にとって すごく近しいものでしたが 実際に公開され そういうことが起きるまで 自分たちの作っているものを 本当には理解していませんでした あの日 家のリビングで ホームビデオを見て両親が感じたことと 同じだったのです 画面に映る自分たちの姿を見るのは 力強い経験です 誇りとしか 言いようがないものです この言葉を ずっと頭では分かっていて 口にもしていたでしょうが 実際に 誇りを感じることは― 感じたことのある人は 分かってくれるでしょうが ひたすら そこら中の人を触ったりつかんだり 走り回りたい気分になるんです ものすごく 説明できないような― 身体に湧き上がってくる感情です それもすべて長い長い 結びつきが生み出すものです

映画は私にとって贈り物でした 何年もかけて 多くのことを学びました 計画を立て 脚本を書き 絵コンテを描いていると ある時点で 自分の映画が 語りかけてくる瞬間があります それに耳を傾けなければなりません 映画は生き物で主張してきます それが手をすり抜ける前に 捕まえなければなりません それが映画づくりの醍醐味です 人生を考えてみても 実は結構似ています 私は多くの結びつきという パンのかけらを辿ってきました それは人であったり 状況であったり 幸運であったりしました 物事が変わったのは こう気づいてからです 静かな間や 周囲の雑音に 耳を傾け始めれば 自分のために作られた美しい交響曲が そこにあるのだと 自分の運命へ 真っ直ぐ伸びる道のりであり 自分のスーパーパワーです

映画は私にとって贈り物でした 両親によって刺激されて コミュニティに支えられた贈り物です そうなるべき時に なりたい自分になれました 先日 母がFacebookに 何か投稿していました 大抵は声に出して言うのも はばかられるようなことで Facebookをすべきじゃないと 思いますが

(笑)

先日の投稿はメッセージ入りの画像でした よくあるやつです 「変わりたくない人を 変えることはできないが 種を植えることの力を 見くびってはいけない」 このトークの最後の仕上げを している時に 人生で起こった 強力な結びつきはすべて 寛容と親切心と愛と希望の おかげだったと気づきました 『クレイジーリッチ!』や 制作中の『イン・ザ・ハイツ』など 自分の映画について考える時は―

(拍手と歓声)

良い話ですよ

喜びと希望を表現することだけを 考えています 良い時代は過ぎ去ったなどと 考えたくはないからです 本当は すぐそこで待ってるんです なぜなら 愛が― 愛こそが私に与えられた スーパーパワーなのだから 愛は私に受け継がれた スーパーパワーです 愛だけが 加速する銃弾を 銃から飛び出す前に 止めることのできるものです 愛だけが 建物をゆうに飛び越えて コミュニティのみんなに 空を仰がせるものです 手に手を取って 自分たちより遙かに大きなものに 立ち向かう勇気をくれるものです

ここにいる皆さんと 自分への宿題があります 自分のやりたいことや会社に 取り組んでいる時には 物事に命を注ぎ込み 不可能を可能にしようとする時には 互いへのやさしさを 忘れないようにしましょう なぜなら それこそが 私達が世界に与えられる 最も力強い結びつきだからです 私たちの未来が それにかかっています

ありがとうございました

(拍手と歓声)

ありがとう

(拍手)

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このプレゼンテーションについて

映画『クレイジーリッチ!』の最近の大ヒットを経て、映画監督のジョン・M・チュウが自身を創作へと突き動かすエネルギーの源について振り返ります。そして結びつきの持つ力と、映画に描かれることによって生まれる力について力強く主張します。

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