映画が変える世界の見方(12:19)

シャルミーン・オベイド=チノイ(Sharmeen Obaid Chino)
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対訳テキスト
講演内容の日本語対訳テキストです。
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私は話を語るストーリーテラー 同時にトラブルメーカーでもあります

(笑)

そして厄介な質問をしたがる癖があります それは10歳の時に始まりました 6人の子を育てていた母には いちいち構っている暇がありませんでした 14歳の時 さらに拍車がかかる 私の厄介な質問にうんざりした母は パキスタンにある地元の 英字新聞に 記事を書いてはと勧めました そうすれば全国の人に 疑問を投げ掛けられるからと

(笑)

17歳にして私は 潜入調査の事件記者になりました 編集長も私がそんなに若いとは 知らずにいたと思います 私が執筆した記事の中で 何人かの権力者を名指して 恥をかかせた時のことです

私が記事で吊し上げた男たちは 私に思い知らせてやろう 私と私の家族を 辱しめてやろうと 家の門いっぱいに さらには隣近所にまで 口にできないような 汚い言葉を 私や家族の名前とともに スプレーで落書きしました 伝統を重んじる 厳格な人だった父が 私の言動を戒めると 思ったのでしょう しかし父は私の前に立って こう言いました 「お前が真実を伝えるなら 私も一緒にそこに立つ 世の中の人も そうするだろう」 それから父は-

(拍手)

みんなを集めて壁を白く塗り 落書きを消してくれました

(笑)

私は自分の描く話で 人々を揺さぶり 刺激して 話しづらい会話をさせたいと いつも思ってきました そのためには視覚的な表現のほうが 有効的だと考えるようになりました そこで21歳の時 ドキュメンタリー映画作家になり カメラを紛争地帯の前線にいる 社会から取り残された 人々に向けました その後 故郷のパキスタンに戻ると 女性に対する暴力を題材にしたいと 思うようになりました

パキスタンには 2億人の人が住んでいます 識字率の低い国のため 社会の問題の見方を 映画を通して変えられる可能性があります 優れた語り手は 私たちの感情に訴え 共感と 思いやりの気持ちを起こさせ ものの見方を変えさせます 私の国では 映画には娯楽の枠を 超えた可能性があり 人々の生き様を変えうるのです 私がずっと取り上げたかった問題ですが- 私は前から社会に鏡をむけたいと 思っていました- 怒りのバロメーターが 問題を追跡するよう駆り立てます 2014年に その怒りのバロメーターが 導いた先が「名誉殺人」でした 「名誉殺人」は世界のあらゆる所で 起きています 男が決めた規則に背いた女性を 罰するならわしで 自分の意思で結婚相手を選ぶ女性や 離婚を求める女性 不倫を疑われた女性などが 殺されます 他の国では名誉殺人は 単なる人殺しです

私はこの話を生存者の視点から伝えたいと 前から思っていました でも通常は 被害者の女性が生きて 話を伝えることはなく そのかわりに 名もない墓に入れられます ある朝 新聞を読んでいて 一人の若い女性が奇跡的に 助かった記事を読みました 自分の意思で 選んだ男性との結婚を理由に 父親と叔父に顔を 銃で撃たれたのです 私の語り手が見つかったと 確信しました

サバは父親と叔父を刑務所に送る 決意を燃やしていましたが 病院から退院すると毎日 彼らの行いを許せと 圧力をかけられました 実は法律に抜け穴があり 犠牲者が加害者を許すことで 加害者は懲役を 免れることができるのです 彼女は そうしないと 除け者にされると言われ 彼女の家族や義理の家族も 社会から疎外されると言われました 彼女の「罪」を考えれば 父親のしたことは当然だと 多くの人が思っていたのです 彼女は戦い続けました- 数ヶ月にもわたり- ところが裁判の最終日に 彼女は加害者を許すという 陳述をしました

私たち映画制作者には 大きな落胆でした これでは私たちが作ろうと思っていた 映画になりません 今考えると 彼女が告発し 裁判で戦い 勝訴したとしても 彼女のケースは 例外にしかならなかったでしょう このような強い信念の女性さえ 沈黙させられるのなら 他の女性にどれだけ チャンスがあるでしょう? そこで私たちは この映画を使い 人々の「名誉殺人」への 見方を変えさせ 法律の抜け穴を塞ぐことに 繋げたいと考えるようになりました

その後 この映画がアカデミー賞に ノミネートされ 「名誉殺人」がニュースの 見出しになりました 総理大臣からの祝いの言葉と共に 最初の試写会を首相官邸が 主催すると申し出てくれたので もちろんその機会に飛びつきました この国の首相がそのような提案をすることは かつてなかったことでしたから 国営テレビで中継された 試写会の席で語った首相の言葉が 全国で反響を生みました 「名誉殺人に名誉はない」

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ロサンゼルスのアカデミー賞の授賞式では 多くの評論家が受賞の可能性はないと 予想していましたが 法律の見直しを要求し続けるには 受賞は必要だと思っていました そうしたら私の名前が読み上げられ 私は舞台にゴムサンダルで駆け上がりました- 舞台に立つとは思っていなかったので

(笑)

私は オスカー像を受け取ると 放送を見ている十億人の人に パキスタン首相が 法律の見直しを約束したと伝えました そう言われたら 首相として後に引けませんから

(笑)

それから-

(拍手)

故郷では 受賞のニュースが 見出しを独占し さらに多くの人が 私たちの訴えに賛同し この法律の抜け穴を塞ぐよう 要求しました そして2016年10月 何ヶ月も続いた運動の末に この法律の抜け穴は 正式に塞がれました

(拍手)

今は名誉を守るという名目で女性を 殺害する男性には 終身刑が言い渡されます

(拍手)

ところが その決議の翌日には また一人の女性が 名誉を理由に殺されました そして同じことが 繰り返し続きました 私たちの活動で 法律は変わりましたが それだけでは十分でなかったのです この映画とそのメッセージを携えて 問題の核心地である この国の小さな町や村を巡ることが 必要でした 映画は社会を前向きな方向へと 変化させ 形作るのに 重要な役割を果たせると 私は思っています しかしどうやって そういう場所に届けられるのか? そんな小さな町や村へ?

そこで移動式の映画館を作りました この国を南北東西と巡るトラックを走らせ 小さな町や村に停まります トラックには夜空を照らし出す 大きなスクリーンを備え付け 「見てください 愛と共に」と 名付けました これで地域の人たちが夜に 映画を見に集まる機会をつくれます

男性や子供たちが移動式映画館に 興味を引かれるのは分かっていました 彼らはやって来て 映画をみるでしょう でも女性はどうでしょう? 女性は隔離されて暮らすような 小さな田舎の集落では どうしたら女性を 引っ張り出せるでしょう? そのためには既存の社会の常識を 考慮する必要がありました そこで この映画館の中に 上映室をつくりました 座席とスクリーンを設置し 女性が中で 恐れを感じることなく 映画を見られるようにしました 恥をかくことも 嫌がらせを受けることもなく

私たちは対立する世界観に 心を開くような 映画を紹介し始め 子供たちが批判的思考をして 物事に疑問を抱くよう 働きかけました 私たちが対象範囲とすることは 「名誉殺人」から広がっていき 所得の不平等の問題や 環境問題を論議し 民族間の関係や 宗教に対する寛容と理解について話しました 中の上映室では 女性たちに 女性が 犠牲者ではなく 英雄として描かれた映画を見せ 司法制度や刑事制度を 利用する方法を教え 女性の権利について教育し 家庭内暴力の犠牲者であれば どこに逃げられるか どこに助けを求められるかを 教えました

私たちがいたる場所で 歓迎されたことに驚きを感じました 多くの町ではテレビも ソーシャル・メディアも見たことがなく 子供達の教育を強く願っていました もちろん私たちが紹介する考えに対し 抵抗や否定的な反応もありました 移動式映画館の2人のメンバーは 村人の脅迫に耐えかねて辞任しました 他の村では 映写会をしていて 中断させられました 村の女性たちに 女性の権利を 知ってほしくないと ところが その反対の例もありました 映写が中断させられた他の村では 私服警官が仲裁に入って 元に戻すよう命じ 上映中 私たちチームの 警備にあたり 若い人に違う世界観に触れさせ この問題を考えさせることは 自分の役目だと みんなに説明しました 彼は日常の中の英雄です 実際 私たちが旅を続ける中で 日常の英雄にたくさん出会いました 他の町では 男達が 映画が見られるのは男だけで 女は家にいなくてはならないと言うと コミュニティの長老が立ち上がり 人々を集めて議論をし 男女共に映画が 見られることになりました

私たちはこの活動を記録しています 人々と話し 状況に対応し 上映する映画の内容を 変えることもします 暴力行為が原因で刑務所に 入った人が題材の映画を 男性に見せるのは 暴力行為には必ず 罪の報いがあることを 痛感してほしいからです 同時に女性を守る男性の映画も 見てほしいです そういう役割を受け持つよう 促したいので 女性には 女性が元首や 弁護士や医師 リーダーの立場にいるような 映画を見せ そういう地位を目指すよう 励まします

私たちの活動で 村の人の接し方は変化しており そこで学んだことを 他の場所へと広げています つい最近 私たちの移動式映画館を バングラデシュとシリアで やりたいという相談を受けました そこで私たちが学んだことを 共有しています 私たちの活動を 世界中に広めることは 大変意義あることだと 思っています

パキスタンの小さな町や村では 男性の女性に対する接し方が 変わりつつあります 子供達の世界を見る見方も 変わりつつあります 村ひとつずつ 映画の力で

ありがとうございました

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このプレゼンテーションについて

映画には、自分や自分の文化の見方を変える力があります。ドキュメンタリー映画作家でTEDフェローのシャルミーン・オベイド=チノイは、パキスタンの風習である「名誉殺人(家族が名誉を守るために、婚前交渉や同性愛等の恥と思われる行為を行った者を自ら殺害する風習)」にカメラを向け、映画の力で女性に対する暴力と戦っています。この心揺さぶるトークでは、自らの撮ったアカデミー賞受賞映画を上映する移動式の映画館と旅に出て、パキスタン全土にある小さな町や村を巡り、上映を重ねながら、女性、男性、社会の関係をいかに変えてきたかが語られています。

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