夜空のためにできること(11:09)

ルシアン・ウォーコウィッチ(Lucianne Walkowicz)
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対訳テキスト
講演内容の日本語対訳テキストです。
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空というのは本質的に 民主的なものです 基本的に誰だろうと どこでだろうと 接することができます ただ見上げさえすれば いいのです でも私たちのまわりの 美しいものの多くと同じで 気付かぬうちに 失われてしまいます みんな本当に 見てはいないからです では 他の何を 見ているのでしょう? 携帯を見たり パソコンを見たり 様々な画面を見ています 正直なところ私たちは 顔を上げて相手の顔を 見ることさえまれで さらに顔を上げて空を見ることなど 滅多にありません 暗い夜空が 失われていくのは 進歩や変化やテクノロジーの 避けられない帰結だと考えがちです これは単に正しくありません その理由は後で説明しますが

その前に 私自身の 暗い夜空の体験についてお話ししましょう 私は15になるまで 本当に暗い空というのを見たことがありませんでした ここアリゾナにやって来たんです 自動車旅行をしていて どこかに車を止めたんですが 一体どこにいるのか 州くらいしか分かりませんでした 空を見上げると そこには あり得ないくらい 沢山の星がありました 私はニューヨークの出身ですが ニューヨークで見えるのは 月と 星がいくつかくらいで 星かと思ったら飛行機だった ということの方が多いほどです

(笑)

他にはさして 見えるものはありません

天文学者仲間には 子供の頃 よく裏庭で夜空を見て 過ごしていたという人が多いのですが 私にはそういう経験がなくて キャンプ旅行では がっかりすることになります 知っている星座はわずかで 私が知っているものは 誰でも知っているようなのだけです でも暗い夜空を はじめて見たときのことは 決して忘れません 星がどれほど沢山あるかに ただただ驚いていました そして自分の小ささを 思いました それから疑問に思いました これまでいったい どこに隠れていたんだろう? 私から星を隠していたのは 誰なのか?

考えたら答えは もちろん明らかです ご覧の2枚の写真は 同じ場所で 左は停電のとき 右は普段の夜です 地上の明かりにかき消され 星は見えなくなります 私たち自身の星を 見てみましょう これは宇宙から見た地球です 熱くて光を放っている 恒星とは異なり 地球は天文学的に言えば ごく冷たく 光を放ってはいません 地球がこの写真のように 青緑のビー玉みたいに 見えるのは 太陽の光を反射しているためで それで海や雲や陸地が 見えているのです そうすると 日の光が当たっていなければ 地球は見えなくなってしまう— そうなのでしょうか?

これは夜の地球です 人間が地球にいかに 影響を与えているかを 劇的に示しています 地上の至る所に 光がクモの巣のように 広がっているのが見えます もちろん海の部分は暗いし 開発の進んでいない地域も 暗くなっています それでも地球の全体に影響が 及んでいるのが分かります 夜でも明るい場所というと タイムズスクウェアとかラスベガス・ ストリップみたいな極端な例を思い浮かべますが あの画像が示しているのは そういう極端な場所だけでなく 屋外照明のあるところは みんなそうだということです 照明は地上に 大きな影響を及ぼすのです

その理由を 理解するためには 電球の形を 思い浮かべるといいです 電球というのは 実際のところ 概ね丸い形をしています これは元々意図されていた 屋内の照明には良いことです 明かりを点けると あらゆる方向に光が行きます 1つの電球で 部屋全体を 照らすことができます 屋内照明には適していても 屋外照明となると 光があらゆる方向に広がる 従来の電球の形というのは 実際のところ非効率です 屋外で照らしたいのは 多くの場合 足下や 自分の周りです 外や上に向かって 広がる光は 自分の周りを照らす 役には立ちません 光が空へと広がって 「光害」と呼ばれるだけです たとえ星を見ることに興味がなかったとしても この問題は気にかけるべきで 屋外照明に使われる エネルギーの6〜7割は 無駄になっていて 星空を隠しているのです

私はテクノロジーが とても好きです 科学者としてテクノロジーは 日々使っています 進歩のためなんだと よく言われます 別に私だってロウソクの灯で 暮らそうと言うつもりはありません 実際テクノロジーは かつては不可能だった空への 接し方を可能にしています その良い例が ハッブル宇宙望遠鏡です ハッブルは宇宙にあって 日々写真を送ってきて 肉眼では到底 見ることのできないようなものを 見られるようにしてくれます 人類がその歴史において 1度も見たことのなかったようなものです 別の例はプラネタリウムです この数年プラネタリウムは すごくハイテク化していて 見事な映像を見せてくれます 空を直接見るのでは ないにしても 空についての知識に 触れられるようにしてくれます 実際プラネタリウムは 外に座って 夜空を 眺めるのでは不可能な 視覚体験を与えてくれます

ハッブルやプラネタリウムのことは 皆さん聞いたことがあると思いますが 皆さんの知らないような テクノロジーが人々の 夜空の体験を助けている例が 他にもあります 「市民科学プロジェクト」と 呼ばれるものです 市民科学というのは 大きな研究プロジェクトがデータをネットで公開し 皆さんのような一般の方に データの扱い方を教え 興味深い あるいは 必要な特徴付けをして 研究に貢献できる ようにするものです

そのようなものの1つに ここに示した Galaxy Zooがあります Galaxy Zooでは まず20分弱の チュートリアルを受け 銀河の画像の扱い方を 学びます 画像への注釈の付け方を 学んだら すぐに取りかかることができ 銀河の分類に 大変有用な 貢献ができるのです Galaxy Zoo が 参加者を集めやすい だろうことはわかります きれいな画像がありますから 銀河というのは 一般にとても魅力的なものです でも市民科学プロジェクトには 他にも様々なタイプのものがあって 抽象度のレベルも異なり どうしてみんな参加しているのか 分かりにくいものもあります

そのようなものの例として 私も関わっている ケプラープロジェクトに関する 市民科学プロジェクトがあります ケプラーというのは 宇宙望遠鏡です 恒星の光を正確に計測することによって 恒星の周りにある惑星を見付けようというもので 惑星が光を遮ることによる 光の減少を観察しています そしてそのための市民科学プロジェクトが Planet Huntersです Planet Huntersでは Galaxy Zoo同様 数分の短いチュートリアルのあと すぐに取りかかれます ケプラー宇宙望遠鏡の データを使って 惑星を探すのです アイデア自体は 魅力的なものですが 惑星探しの実際の作業は ここに出ているようなグラフを沢山見て 注釈を付けるというものです 一日中そういうことをやっている私から見ても あまり興味深い話には聞こえません でも多くの人が この作業に関心を持つばかりか Planet Huntersの 市民科学者たちは 他の方法では見つけられ なかったような惑星を 実際に発見しているのです

これは発見された 惑星についての論文の 著者一覧です 下には貢献者が みんな列挙されていて 本名とログイン名とが 奇妙に混在しています よく見ていただくと これが発見過程における— アイリッシュコーヒーの重要性に謝辞を述べている 初の学術論文であることが分かります

(笑)

こういうものに惹かれるのは 失業中の科学者や オタクの集団というわけではありません このプロジェクトに参加する 6万人の多くは 専門的な教育を 受けてはいません だから これは人々の好奇心や 科学的発見に関わりたいという気持ちに 訴えているのです みんなやりたくて やっているんです

しかしこれらのテクノロジーや デジタルを介した 星空の体験は 私には動物園の動物を 見ているような感があります ちゃんとした体験を 与えてはくれます 檻の中にいても 本物のライオンに違いはないし ハッブルの画像だって本物です 動物園なら野生のよりも 近くまで行けます それでも何かが欠けています 画面を通したのではない 生の自然そのものを 体験することの美が 欠けているのです

空を見上げ 今見ている空は 我々の知る宇宙の命のすべてを 包んでいると自覚するというのは とても深い体験です そのことを少し 考えてみてください 地球は我々の知る 唯一生命を持つ星です 皆さんの見る空は 我々の知るすべての生命が 共有するものなのです 私にとって自分の仕事の 好きなところは 日常から一歩下がって より大きな文脈を 感じさせてくれるところです 宇宙にある地球に似た惑星を 見付けようとするときにはいつも この地球がいかに大切かを 思い起こさせられます 夜空というのは 自然の賜であり そこへ行かずにして 訪れることのできる 公園のようなものです しかし他の自然の賜同様 それを守り 大切にし保護しないなら 私たちの手を離れ 失われてしまうでしょう

もし ご興味があって もっと学びたいと思うなら ぜひ darksky.org のサイトに行って 暗い夜空を守るために 何ができるか 知ってください 夜空はみんなのものであり それを体験するのも 失うのも 私たち次第だからです

ありがとうございました

(拍手)

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このプレゼンテーションについて

夜空の本当の美しさを目にすることはどれくらいあるでしょう? 宇宙を直接見るというこの素晴らしく、また忘れられがちな体験が光害によっていかに損なわれているかを、TEDフェローのルシアン・ウォーコウィッチが訴えます。

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