孤児院が栄える時代を終焉させるべきなのはなぜか(13:11)

タラ・ウィンクラー(Tara Winkler)
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対訳テキスト
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これは2006年 私がカンボジアの孤児院で ボランティアをしていたときの写真です 撮影された当時 自分はすごくいいことを しているつもりでしたし 子供たちを助けていると 思っていました 何も分かっていなかったのです

ことの始まりは 私が19歳の時 東南アジアをバックパッカーとして 旅したことでした カンボジアに到着すると 周りは貧困だらけであるというのに 自分だけ休暇を楽しむのは気が引けて 何かお返しがしたいと思いました そこで 私は孤児院を訪ね 子供たちの役に立てばと 衣服や本やお金を 寄付しました

中でも ある孤児院は 非常に困窮していました あそこまでの貧しさは それまで 目にしたことがありませんでした 十分な食料や 清潔な水 医療のためのお金がなく 子供たちの哀しげな顔には 心が痛みました もっと助けになりたいと思ったのです オーストラリアで資金を集めて 翌年カンボジアに戻り その孤児院で数か月間 ボランティアをしました 英語を教えたり 食料や浄水器を購入したり 子供たち全員を生まれて初めての 歯医者に連れて行ったりしました

しかし それからの1年で 自分が支援していた孤児院が 非常に腐敗していることが 発覚しました 施設長は孤児院に寄せられた寄付を 一銭残らず横領しており 私のいない間 子供たちは ひどいネグレクトの被害に遭い ネズミを捕って食べるような 生活を強いられていたのです 後に分かったことですが 施設長は子供たちに 身体的・性的虐待も行っていました 自分が気にかけ 親しんできた子供たちに背を向けて オーストラリアの生活に 戻る気にはなれませんでした そこで地元の人々や 地元の当局と協力し 新しい孤児院を作って 子供たちを救い出し 安全な住まいを提供しました

しかし ここで再び 思いがけないことが起こります カンボジアの孤児院を運営する 新たな生活に慣れた頃 (クメール語で) クメール語を習得しました クメール語を流暢に 話せるまでになりました 子供たちときちんと 意思疎通ができるようになると 奇妙なことに気づき始めました 孤児院から救い出した 子供たちの多くは 実は 孤児ですらなかったのです 彼らには両親がおり 親を亡くした数人の子にも 親戚がいました 祖父母やおじやおばに きょうだいもいました

では どうして この子供たちは 孤児でもないのに 孤児院にいるのでしょう? 2005年以来 カンボジアの孤児院の数は 実に75%も増加し 孤児院で暮らす子供の数は ほぼ倍になりました にもかかわらず こうした孤児院に暮らす 子供たちの多くは いわゆる「孤児」ではありません 貧困家庭に生まれた子供たちなのです 孤児院に住む子供たちの大多数が 孤児ではないとすれば 「孤児院」という言葉は 「児童養護施設」の 都合のいい別称に過ぎないわけです こうした施設には 他の名称が当てられることもあります 「シェルター」や「保護施設」 「こどもの家」や「こどもの村」 「寄宿学校」などです

この問題はカンボジアに 限ったことではありません この地図には 養育保護施設の数と こうした施設に 収容された子供の数に 劇的な増加が見られた国々が 示されています 例えば ウガンダでは 施設に暮らす子供たちの数が 1992年以来 1600%以上も増加しました 子供たちを施設に 収容することに伴う問題は 私が子供たちを救い出した施設のような 腐敗と児童虐待が起こる 施設だけの話ではありません あらゆる種類の保護養育に 問題がつきまとうものなのです

60年にも及ぶ 国際的な研究によると 施設で育てられた子供たちは たとえ最高の環境にある施設でも 精神疾患を患うリスクや 愛着障害を患うリスク 成長や言葉の遅れが出るリスクが高く 多くの子供たちが 後に社会へと復帰する際 再適応するのに苦労し 大人になってからも 健全な関係性の構築が困難であるそうです こうした子供たちは 模範となる家族を知らず また子育ての仕方を 目にすることがないため 自らが子を持つ際にも 苦労することになります ですから 多くの子供たちを 施設に収容することで 今の世代だけでなく 後の世代にまで影響が及ぶのです

この教訓はすでに オーストラリアで見られたものです まさに「盗まれた世代」に 起きたことです これは家族から隔離された 先住民族の子供たちを指します 白人の方が 子育てに優れているという 考えに基づくものでした

少し考えてみてください 子供にとって養育保護施設が どんなものであるかを まず 世話をする者が 常に変わります 8時間のシフトごとに 別の誰かがやって来ます その上に 訪問者や ボランティアが 頻繁にやって来て 子供たちの求める愛情を注いでは また去って行きます 見捨てられたという感情を 呼び起こし 何度も何度も 自分には愛される資格がないのだと 思わせるのです

オーストラリアやアメリカ イギリスには孤児院はもうありません それには正当な理由があります ある研究によると 施設で育った若者は そうでない者に比べ 性労働に従事する可能性が10倍高く 犯罪歴を持つ可能性が 40倍も高く さらには自殺をする可能性が 500倍も高いのです 世界中では およそ800万人もの子供たちが 孤児院のような施設で暮らしています そのうち約80%が 孤児ではないにもかかわらずです その子供たちの多くには 適切な支援があれば 世話になれる家族がいます

しかし 私にとって なかでも最もショックだったのは このように 非常に多くの子供たちの 施設への不必要な収容を 急増させている要因が 私たちだということです 旅行者やボランティア そして寄付をする人々です 善意からの支援もです 2006年の私がしたように 子供たちを訪ねたり ボランティアをしたり 寄付したり そうやって 子供たちを搾取する産業を 知らず知らずのうちに 増長させ 家族を引き裂いているのです

こうした施設の多くが 旅行者にとって 寄付と引き換えに訪問したり ボランティアしやすい場所に 構えられているのは偶然ではありません ネパールにある600軒もの いわゆる「孤児院」のうち 90%以上が 最も人気のある観光地にあります 受け入れがたいですが 真実は非情なものです こうした施設を支える資金が 流入すればするほど 施設は新しく増えていき その収容人数を埋めるため 家族から引き離される子供たちが 増えるのです 需要と供給の法則です

私はこうした教訓を 自らの苦い経験から学びました それもカンボジアに孤児院を 開いてしまってからです 私は胸に手を当てて 深く反省しました 自分が間違いを犯したこと そして図らずも問題の一部と なってしまったこと 私は観光の一環で 孤児院を訪れる— ボランティア・ツーリストでした さらに自ら孤児院を開いて その資金繰りのために 観光で孤児院を訪れる お膳立てをしました 何も分かっていなかったのです 私が学んだのは 自分の孤児院がいかに いい環境であろうと 子供たちが本当に必要としているものを 与えるのは不可能だということです それは家族です

か弱い子供たちに手を差し伸べ 貧困を克服することは 単純な話であると思いきや 実はそうではないのだと知ると とてつもなく沈んだ気持ちに なるかもしれません しかし 幸い 解決法はあるのです こうした問題は 逆転させることも 防ぐことも可能です 理解が深ければ深いほど 上手くやれるものでもあります

私が現在運営している団体は カンボジア子供基金 (CCT)と言い これは孤児院ではありません 2012年に運営モデルを変え 家族単位での支援にしました 今私は現地人のソーシャルワーカーや 看護師や教師からなる― 素晴らしいチームを率いています 私たちは地域社会に入り込んで 複雑に絡み合う社会問題を解きほぐし 住民が家族ごと貧困を脱する 手助けをしています 主な目的はそもそも 最も弱い立場にある家族が 現地の地域社会の中で ばらばらにならないように することです しかし 子供が血縁関係のある家族と 暮らすことのできないような場合には 里親のもとで支援します どんな場合においても 家庭を基盤にした支援の方が 子供を施設に入れるよりも 有効なのです

最初にお見せした写真を 覚えておいでですか? ボールをキャッチしようと している女の子がいます トーンという子で 強くて 勇敢で とても賢い女の子です しかし 2006年に初めて会った時は 虐待が横行する 腐敗した孤児院に住み 就学していませんでした ひどいネグレクトに遭い 母親の温もりと愛情を 切実に欲していました これは現在のトーンと その家族の写真です 母親は今や安定した仕事に就き 弟と妹は高校で よい成績を修め トーン自身は大学で 看護の学位を修めようとしています トーンの家族にとって―

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トーンの家族は 貧困の悪循環を断ち切ったのです カンボジア子供基金が作り上げた 家族ベースの支援モデルは 大きな成功を収め ユニセフのカンボジア支部と カンボジア政府が推進する— 国策にまでなりました 子供を家族と一緒に 暮らさせるというものです そして―

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そして皆さんがこの問題の解決に 一役買う最善の方法は 800万人という子供たちに 声を授けること そして 家族を基盤とした支援の 提唱者となることです

私たちが共に 意識の向上を目指して努力すれば 世界に向けた発信ができます 立場の弱い子供たちを 必要もないのに施設に収容するのは 終わりにするべきだと どうすればいいのでしょう? 私たちの支援や寄付を 孤児院や養護施設ではなく 子供たちを家族の元に留めようと 尽力する団体に向けましょう

この変革は 私たちが生きている間に 起こせるはずです その結果 発展途上の地域社会は 繁栄するでしょうし いかなる場所にいる 弱い立場の子供たちに対しても 子供であれば誰もが必要とし 手にして然るべきものを与えられます そう 家族です

ありがとうございました

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このプレゼンテーションについて

孤児院を開くことによって、貧困にあえぐ子供たちを助けることは間違っているのでしょうか? タラ・ウィンクラーは、海外から資金提供する人がいるせいでもある、発展途上国での孤児院の増加に反対を唱え、家族から引き離されて施設で育てられることで子供たちが受ける悪影響についても解説します。よかれと思ってしたことが悪い結果を招いたという事例を語る、目が覚めるようなトークです。

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