ジカ熱などの蚊媒介感染症に対抗する秘密兵器(15:10)

ニーナ・フェドロフ(Nina Fedoroff)
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対訳テキスト
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ジカ熱 ― 最新の恐ろしい病気です それは何でしょう? どこから来たのでしょう? どう対処すれば? それは 多くの大人にとっては 比較的軽い疾患です。微熱 軽い頭痛 関節痛 発疹も出るかも。実際 それに罹ったほとんどの人は 気付きもしないでしょう。

しかし ジカ熱ウイルスについて 知れば知るほど 恐ろしさは増して来ます。例えば 最近この疾患が流行した時 医師たちは ギラン・バレー症候群と呼ばれるものの 頻発に気づきました。ギラン・バレー症候群では あなたの免疫系が神経細胞を攻撃し あなたを部分的にあるいは完全に 麻痺させてしまうことがあります。幸いなことに それは非常に稀で ほとんどの人は回復します。でも もしあなたが妊娠している時に 感染したのなら、あなたは恐ろしい危険に晒されています。

奇形の頭部を持つ赤ちゃんです。こちらが普通の赤ちゃんで こちらが小頭症の幼児です。脳に対して頭が小さすぎるのです。そして 治療法はまだありません。ちょうど1年前 ブラジル北東部で ジカ熱の勃発後に 小頭症の発生率が 急上昇したのに 最初に気付いたのは医師でした。それがジカ熱ウイルスが原因だと 医師たちが確認するまで もう1年を要しましたが、彼らは今確信しています。「証拠を見るまで信じない」タイプの方は こちらをどうぞ [ジカウイルスと先天性異常]。

それは どこからどのようにして 来たのでしょうか? アメリカまで 他のウイルスの多くと同じく それは アフリカで発生しました。具体的にはウガンダのジカ森です。付近にある黄熱病研究所の研究者たちが ジカ森のサルから未知のウイルスを検出し この名前がつけられました 最初に人が感染したジカ熱の症例が 数年後にウガンダ・タンザニアに現れました。

ウイルスはその後 西アフリカ中に広がりました。それから赤道アジアを通って パキスタン、 インド、マレーシア、インドネシアへと。しかし ほとんどはサル そしてもちろん蚊に感染していました。それが最初に同定された1947年から 2007年までの60年間で 人間がジカ熱に罹ったという 報告例はたった13件でした。

そして ミクロネシアのヤップという小島で ある異常な事態が発生しました。人口の75パーセントが影響を受けた 感染症大流行(アウトブレイク)です。ウイルスはどうやって辿り着いたのでしょう? 空路です。

こんにち 民間航空会社の 利用客は20億人います。感染した乗客が飛行機に乗り 症状を発症するまでに 世界を半周することだってあります。症状が出たとして、ですが。そして 乗客が上陸すると 地元の蚊によりジカ熱が広まり始めます。ジカ熱は その後 2013年にフランス領ポリネシアで発生し、同年の12月までに 蚊によって局地的に感染していました。それは爆発的な流行につながり、およそ3万人が影響を受け、そしてそこから 太平洋中に広まりました。クック諸島や ニューカレドニアや バヌアツや ソロモン諸島、そして 南米の沿岸地域やイースター島に 至る範囲でアウトブレイクが起こりました。そして 2015年初頭に デング熱のような症候群の 急増が見られました。ブラジル北東部にある ナタールの街です。ウイルスは デング熱ではなく ジカ熱で 急速に広まりました。海沿いにあるブラジルの大都市 レシフェはすぐに感染の中心地となりました。

人々は国内にウイルスをもたらしたのは 2014年のワールドカップの サッカーファンだったと推測しました。あるいはその年リオで開催された カヌーレースのチャンピオンシップに 参加した太平洋諸島の住民が 伝染病をもたらしたと考えた人もいました。

それからたった1年しか経っていませんが、このウイルスは各地域で 蚊によって媒介されています。南米全域、中央アメリカ、メキシコ そしてカリブ海諸島です。今年までは 米国での 数千に及ぶ診断例は 他の場所で感染したものでしたが、この夏から マイアミでは 域内の感染が認められています 国内感染です。

どうしたら良いでしょう? 感染症の予防というのは 人々を守るか 蚊を駆除するかのどちらかです。まず人々に焦点を当ててみましょう。予防接種という手段があります。ジカ熱の発生している地域に 行かないようにすることもできます。もしくは 服で防御したり 虫除けを使ったり。ワクチンはまだ無いので 予防接種は選べません。おそらく今後数年間はできないでしょう。自宅に閉じこもるのも 確実な方法ではありません。性的接触でも感染するからです。服で皮膚を覆い 虫除けを塗布するのは効果的です――忘れなければですが。

(笑)

だから蚊を駆除するという手段が残され、その方法は次のとおり 殺虫剤の散布です。殺虫剤は有毒化学物質なので 防護服が必要です。虫だけでなく人も死んでしまうので。それでも虫を殺すよりも 多い量が必要ですが、これらはブラジルと ニカラグアからの写真ですが、フロリダ州マイアミでも光景は同じです。そしてもちろん 飛行機からも殺虫剤は散布できます。

昨年の夏 サウスカロライナ州 ドーチェスター郡で害虫防除職員が ある日 メーカーが推奨する通りに「ナレド」という殺虫剤を 散布することを許可しました。その日の午後、ある養蜂家が 記者団にこう語りました。彼女の養蜂場が 壊滅的打撃を受けたと。まずいですね。

ミツバチは良い生き物です。フロリダ州の市民が抗議しましたが 散布は続き 残念ながら ジカ熱症例数の増加も続きました。殺虫剤はあまり効果的ではないからです。ならば有毒化学物質よりも害が少なく、おそらく殺虫剤よりも効果的なアプローチが他にあるのでは?

私は 生物的害虫防除の大ファンで、これについては環境運動の発端となったと言われる「沈黙の春」の著者、レイチェル・カーソンも同じ意見です。この本の中で 彼女は一例として どのように非常に厄介な 家畜の害虫が 前世紀に駆逐されたかを解説しています。こんにち、その驚くべき物語を 知る人はいません。

それで [ジョン]・ブロックと私で社説に、現在の蚊の問題について書いた時に 再びこの話をしました。カプセルの中に蛹を入れ―蛹とは未熟な昆虫です―放射線照射で子供を産めなくし、成体まで成長させると、その後 飛行機から 南西部へ放たれ、南西部からメキシコへ そして中央アメリカに文字通り 何億もの 小さな飛行機から放たれた虫は、最終的に西半球のほとんどから その恐ろしい害虫を 一掃しました。

この社説を書いた真の意図は こんにちでは 放射線でなく、遺伝学の知識を使って 行うことができることを 読者に紹介することでした。

説明しましょう ネッタイシマカが問題の昆虫です。これは 最も一般的な 病原媒介生物です。ジカ熱だけでなく、デング熱、チクングニヤ、西ナイルウイルス、古代のペストである黄熱病も 媒介します。都市に生息する蚊で 手を汚すのはメスです。メスは子どものために 人を刺し血を吸いますが、オスは人を刺しません 噛むための機能も持っていません。

Oxitecという 英国の小さな会社は、その蚊の遺伝子を組み換え、それが野生のメスと交尾しても 生まれた卵が成長しないようにしました。こういうことです。これは正常な生殖周期です。Oxitecはオスが野生のメスと 交尾をした後も卵が孵化しないように 蚊をデザインしました。不可能に聞こえますか? 図式的にご説明しましょう。

さて これは 蚊細胞の核を表し 真ん中のもつれは そのゲノム、その遺伝子の全てです。科学者たちは 遺伝子を1つこれに加えました。このオレンジ色のボールで表される タンパク質をコードし、そのタンパク質は自らを生み出し続け、ゲノムにフィードバックし続けます そして余分なコピーは 蚊の遺伝子にくっつき その蚊を殺します 実験室で蚊を生かしたままにするために テトラサイクリンという化合物を使います テトラサイクリンは その遺伝子を抑制し 通常の発育を可能にします。

何が起きるかを調べるための ちょっとした細工も加えてありました 紫外線の下で虫が光るような遺伝子を 加えたのです それで蚊を正確に追跡できるようになり どのくらいの時間生きたかなどの 科学的研究データを 集められるようになりました さて これは蛹の段階です この段階では メスはオスよりも大きいので メスとオスを区別でき オスのみが成虫まで育てられます さて オスは噛まないことを 思い出してください そこからはかなり単純です。

彼らは オスの蚊でいっぱいのビーカーを取り 牛乳パックに詰めて 車で運び GPSに導かれて蚊たちを街中に放ちます 「友好的なヤブカ 」の 最初のバッチを放っているのは市長です これがアメリカの都市だと 言いたいところですが 違います ブラジルのピラシカバです 驚くべきことは その1年で デング熱を91パーセントも減らしたのです これは どんな殺虫剤よりも効果的です。

ではなぜ私たちは米国でこの優れた 生物的駆除策を用いていないのでしょう? それが遺伝的に改変された生物 「遺伝子組み換え生物」だからです このサブタイトルを見てください 「アメリカ食品医薬品局 (FDA)が許せば ジカ熱が来たときにここでも 同じことができる」 そしてもちろん ジカ熱は来ました。

長い長い米国における 遺伝子組み換え規制の拷問物語を ごく手短にお話ししましょう 米国では 3つの機関が 遺伝子組み換え生物を規制しています アメリカ食品医薬品局 (FDA) 環境保護局 (EPA) そして米国農務省 (USDA) 彼らは2年かかってやっと 遺伝子組み換え蚊を規制するのは FDAだという結論に達し それを新しい動物薬として扱うのが 理にかなっていると考えました これは人にも環境にも 害を及ぼさないと FDAを説得するのに さらに5年間延々とやり取りを続け ついにこの夏 フロリダキーズで 小規模な実験を行う 許可が下りました 数年前にそこでデング熱の流行が起こった際 研究で招かれた場所です。

しかし簡単ではありませんでした 遺伝子を組み換えられた蚊の実験が そこで行われる予定だと 地元住民たちが聞いたとき 抗議運動を組織し始める人々も現れました その上 請願書もこのカワイイロゴと 共にネットで始まって 最終的に16万ほどの署名が集まり 彼らは投票を要求しました これは数週間後に実施される予定で 実験自体が認められるか否かが決まります まあ害虫を抑制する良い方法が 本当に必要のあるのはマイアミなんですが。

そして 人々の考えも変化しています 実際ごく最近 60人以上の議員の超党派グループが 保険福祉省長官 シルビア・バーウェルに 連邦レベルで フロリダのこの新技術への アクセスを促すように求めました つまり 害虫の生物的防除は 有毒化学物質である 殺虫剤を使用するよりも より効果的であると同時に より環境に優しいのです それはレイチェル・カーソンの時代にも こんにちでも それが真実なのです。

異なるのは 私たちには 遺伝学について 当時よりも 非常に多くの情報があるということです したがって その情報を 生物学的駆除に利用することが 以前よりもできるということです。

そして私は十分に皆さんの好奇心を かき立てたことを願っています そして皆さんが GM蚊だけでなく こんにち議論されている 他の遺伝子組み換え生物について 独自の調査を始めるように そうして情報を掘り下げ— 誤った情報や 有機食品業界の一部や グリーンピース(団体)による マーケティング情報を越えて 正確な科学に辿り着くと きっと皆さんは 驚き 喜ばれると思います ありがとうございました。

(拍手)

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このプレゼンテーションについて

ジカ熱はどこから来て我々はそれにどう対処できるのでしょう? 分子生物学者ニーナ・フェドロフはジカ熱の起源とそれが世界的に伝播した経緯を追い、ウイルスやその他の致命的な病気を抑制するための物議を醸す方法を提案します—感染した蚊が増えるのを防ぐのです。

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