コラム・連載

~内藤証券アナリストが書く~中国よもやま話

世界に目を向けよう~国際分散投資の魅力

2023.6.20|text by 千原 靖弘(内藤証券投資調査部 情報統括次長)

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“なぜ中国株投資を勧めるのか?”

それは日本の投資家による国際分散投資で、中国株が有望な選択肢の一つだからだ。

“なぜ国際分散投資が必要なのか?”

“日本株投資だけでは、ダメなのか?”

そうした疑問に対しては、「資産運用を実践するうえで、日本という枠組みの限界を越えるため」と、いつも答えている。

日本の銀行預金は
利息が少ない
分かりやすく、ノーリスクの資産運用手段である銀行預金を例に挙げよう。2023年6月8日に調べたところ、日本の大手銀行では、期間1年の定期預金金利が0.002%だった。

1000万円を預けたところで、1年間の利息は、税引き前でも、たったの年間200円。さらに税金が引かれ、雀の涙となる。

同じ日に中国本土の大手銀行は預金金利を引き下げたが、最大手の中国工商銀行では、期間1年の定期預金金利として1.65%を提示している。

中国本土の利息は
日本の825倍
1.65%の金利だと、1000万円を預金で、年間16万5000円の利息が得られる。日本で得られる利子所得の825倍であり、海外旅行や家電購入も可能な金額だ。しかも、中国では預金利息が非課税。なんともうらやましい話だ。

逆に日本の銀行に預金して、年間16万5000円の利子を得るには、82億5000万円が必要。1000万円の預金なら、日本のサラリーマン世帯でも可能かもしれないが、82億5000万円の預金は、宝くじに当選したとしても無理だろう。

日本中の銀行をいくら探しても、中国工商銀行のような預金金利を提示するところは、どこにもない。これが日本という枠組みの限界だ。

投資先は日本だけではない しかし、そうした限界を越え、世界に目を向ければ、中国工商銀行のように、日本よりも高い預金金利を提供する銀行もある。こうした事実を知れば、投資家として世界に目を向けること、すなわち国際分散投資の魅力や重要性が、ご理解いただけるだろう。

ただ、残念なことに、日本で暮らす人は、中国で銀行口座を開設することはできない。ノーリスクで1.65%の利息は魅力的だが、日本にいながら中国で預金することは不可能だ。

では、リスクのある株式投資だったら、どうだろう。中国工商銀行に預金できないが、その株式を買うのは、日本からでも可能だ。

中国工商銀行は香港に上場している。2023年6月7日の終値は4.3香港ドル。2023年7月6日に権利落ちを迎える配当は、1株あたり0.3035人民元であり、1人民元=1.1香港ドルで計算すると、約0.33385香港ドル。配当利回りは約7.8%となる。

なお、日本最大手の三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は、6月7日の終値が957.5円であり、2024年3月期の予想配当金は年間41円。これに基づく予想配当利回りは約4.3%だった。

配当金には税金がかかる
ちなみに2014年今年の漢字は「税」
配当金は課税対象だ。日本株の配当では20.315%の税金が徴収される。税金を引くと、MUFGの配当利回りは約3.4%となる。

一方、中国工商銀行の配当金の場合、中国で10%が源泉徴収され、その残りに対して日本でさらに20.315%の税金が引かれる。

その結果、日中両国で徴収される税金は、配当金の約28.28%に達する。

だが、日中両国の税金を抜いたとしても、中国工商銀行の配当利回りは約5.6%だ。同じ最大手の銀行への株式投資でも、日本株と中国株では、税引き後でも2%以上も差がある。

“配当利回りが高いのは分かるが、中国工商銀行なんて聞いたことがない。不安だ!”

中国工商銀行(ICBC)は世界最大の銀行
実質的な筆頭株主は中国政府
そんな疑問には、こう答えよう。中国工商銀行は英誌「ザ・バンカー」の“世界の銀行トップ1000”で、直近の2022年度版まで10年連続の世界1位。順位の基準となる中核的自己資本(Tier1)だけではなく、総資産と税引き前利益でも世界トップだ。中国の銀行最大手は、世界の銀行最大手でもある。

そのうえ、筆頭株主はソブリン・ウエルス・ファンド(SWF)のCIC(中国投資)であり、中国の財政部(財政省)も主要株主として名を連ねるなど、中国政府の後ろ盾もある。

一方、日本最大のMUFGは2022年度版で世界12位であり、前年度の10位から順位を2つ落とした。このランキングの1990年度版では、日本の銀行がトップ10内に6行も名を連ねていた。うちトップ3は、すべて日本の銀行だった。しかし、2022年度版ではトップ10内に日本の銀行はいない。

いまだバブル期の日本のイメージから脱しきれない人がいるかも知れないが、この30年あまりで世界の金融業界は激変した。日本にはないチャンスもあり、それが国際分散投資の魅力だ。

さあ、世界に目を向けましょう!

 

~内藤証券アナリストが書く~中国よもやま話
次回は7/5公開予定です。お楽しみに!

バックナンバー
  1. ~内藤証券アナリストが書く~
    中国よもやま話
  2. 33. 労働力需要で犯罪組織が誕生~明治日本と改革開放中国の共通点 NEW!
  3. 32. 香港裏社会に暗躍する三合会~返還後の表社会にも及ぶ影響力
  4. 31. 香港犯罪組織の系譜~数百年に及ぶ「洪門」の伝統
  5. 30. なぜ犯罪組織が人気?~中国起源の任侠道が果たした社会的役割
  6. 29. 21世紀版のグレート・ゲーム~ウイグルをめぐる情報戦
  7. 28. 現代の屯田兵~新疆生産建設兵団
  8. 27. 新疆ウイグル自治区は東西交易の要衝~現代も続く「西域経営」
  9. 26. 東トルキスタン独立運動と西側諸国の連帯~ウイグル人が歩んだ歴史
  10. 25. 中国の街で目立つウイグル人~民族移動と人種的変容
  11. 24. チベット発展の秘策とは?~天国に最も近いタックス・ヘイブン
  12. 23. 神秘な世界の複雑な裏側~チベットの“化身ラマ制度”
  13. 22. 人を拒む神秘の地~異質で過酷なチベットの環境
  14. 21. 情報の真偽をめぐる混乱と論争~昔も今も中国は“遠い国”
  15. 20. 隋王朝に始まる中国経済の挑戦~言葉に映る南北の相違と一体化
  16. 19. 黄河文明と長江文明の融合と摩擦~中国の南北対立
  17. 18. 中国南北相違の原点~東アジアで異色な中国北部の小麦食
  18. 17. 漢字は同じでも、ひと味違う~複雑に絡み合う“麺料理”の概念
  19. 16. 現代中国の“漢服ルネサンス”~漢民族の服飾文化の探求
  20. 15. “人民服”の歴史的変遷~国民服から最高指導者の正装へ
  21. 14. 元々同じ圓が結ぶ奇妙な縁~東アジア一円の通貨
  22. 13. 誰もが彼らを無視できない~香港の摩天楼に潜む陰の実力者
  23. 12. 中国の人々を鼓舞する名曲~中国国歌の「義勇軍進行曲」
  24. 11. 伝統的バイオテクノロジーの傑作~茅台酒が高価な理由
  25. 10. 世界に目を向けよう~国際分散投資の魅力
  26. 09. なんでも漢字で表記~奥深い中国語名の世界
  27. 08. 自由を追い求める姿~中国の投資家たち
  28. 07. “口にすべし、楽しむべし”~中国的可楽世界
  29. 06. “いままで”と“これから”~EV投資をめぐる視点の違い
  30. 05. 株式市場を育てる順序~ミャンマーと中国の違い
  31. 04. 対中情報戦の犠牲者~王立強事件の空騒ぎ
  32. 03. 全国展開可能な中華料理~アメリカザリガニの恵み
  33. 02. 強烈すぎるこだわり~中華的な数の世界
  34. 01. イメージの先に在るもの~中国株投資の魅力

筆者プロフィール

千原 靖弘 近影千原 靖弘(ちはら やすひろ)

内藤証券投資調査部 情報統括次長

1971年福岡県出身。東海大学大学院で中国戦国時代の秦の法律を研究し、1997年に修士号を取得。同年に中国政府奨学金を得て、上海の復旦大学に2年間留学。帰国後はアジア情報の配信会社で、半導体産業を中心とした台湾ニュースの執筆・編集を担当。その後、広東省広州に駐在。2002年から中国株情報の配信会社で執筆・編集を担当。2004年から内藤証券株式会社の中国部に在籍し、情報配信、投資家セミナーなどを担当。十数年にわたり中国の経済、金融市場、上場企業をウォッチし、それらの詳細な情報に加え、現地事情や社会・文化にも詳しい。


バックナンバー
  1. ~内藤証券アナリストが書く~
    中国よもやま話
  2. 33. 労働力需要で犯罪組織が誕生~明治日本と改革開放中国の共通点 NEW!
  3. 32. 香港裏社会に暗躍する三合会~返還後の表社会にも及ぶ影響力
  4. 31. 香港犯罪組織の系譜~数百年に及ぶ「洪門」の伝統
  5. 30. なぜ犯罪組織が人気?~中国起源の任侠道が果たした社会的役割
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  22. 13. 誰もが彼らを無視できない~香港の摩天楼に潜む陰の実力者
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