ホログラム時代の未来にあるもの(19:05)

アレックス・キップマン(Alex Kipman)
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対訳テキスト
講演内容の日本語対訳テキストです。
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数千年後の未来 コンピュータが登場した 世紀のことは 魅力的かつ奇妙な時代として 振り返られることでしょう 歴史上唯一 人類が 2次元空間に限定されて生き 自分が機械であるかのように テクノロジーに接していた時代です 悠久の時の中の この100年の特異な期間に 人類は画面の反対側から コミュニケーションや 娯楽や 生活の切り盛りを していました

今日 私たちは多くの時間を 画面を覗いたりタップしたりして過ごしています 人間同士の付き合いは どうなってしまったのでしょう? 皆さんはどうか 知りませんが 私はこの画面とピクセルでできた 2次元の世界にいるのを窮屈に感じます まさにこの制限と 人と繋がりたいという欲求が クリエーターとしての私の 刺激の源になっています 端的に言うなら 新しい現実を 作り出したいんです テクノロジーが人を互いに 限りなく近づけてくれ 機械ではなく 人間がすべての 中心にある現実です 私たちが見 触れ 感じることを テクノロジーが把握している世界を夢見ています テクノロジーが私たちの 邪魔をすることなく ありのままの私たちを 受け入れてくれる世界です 人の道の上にある テクノロジーを 夢見ています 人間が人間らしく振る舞い 自然なやりとりができるようにする テクノロジーや製品を 私たちは経験しています 音声操作や 生体認証のような

ここにあるのは 進化の次の段階です Microsoft HoloLens (ホロレンズ) 初の完全自立型 ホログラフィック・コンピュータです 3次元ホログラムを この世界の中に出現させ 通常の認識能力を越えて 日常の体験を増強します 私は別に遠い未来の話を しているのではありません 現在の話をしています ボルボのような自動車会社は 既にHoloLensを使って これまでとは違うやり方で 車のデザインをしています ケース・ウェスタンなどの大学では HoloLensで医学部生が学ぶ方法を変えています そして私の お気に入りの例ですが NASAでは科学者が HoloLensを使い ホログラムによって 惑星を探査しています

ここで重要な点は ホログラムを この世界に持ち込むというのは 新しいデバイスや より優れたコンピュータ というだけにとどまらず 従来のコンピュータにおける 2次元の檻からの解放を 意味するということです

こんな風に考えてください 時間軸をずらすと 私たちは コンピュータにおいては洞穴人のようなものです 木炭を発見したばかりで 洞窟の壁に最初の棒人形を 描き始めたところです これは私が日々 自分の仕事で 取っている観点です これからの数分間 皆さんにも同じ観点で このデモを見ていただければ と思います

私がHoloLensを 装着している間に 機器構成を 説明しておきましょう これは私たちの行ってきた HoloLensのデモの中でも 最もリスクの高いものです そして それをやるのに TED以上の場はないでしょう 間もなく私は このステージ上に 皆さんの姿と 同じくらいに明瞭な ホログラムを 見ることになります 同時に 今ステージに入ってきた 特別なカメラの映像によって 皆さんにも 一緒に それを体験してもらいます

では始めましょう 私たちの旅を始めるのに コンピュータの2次元洞窟より 相応しい場所があるでしょうか この新しいレンズを通して 周りの世界を探検し コンピュータの世界を 新しい視点で理解しましょう

コンピュータの宇宙は素晴らしく 同時に原始的です それは因果律に基づく宇宙です 開発者として私たちは 原因となるものを考え 様々な結果をプログラムします アイコンのダブルクリックは原因で アプリケーションが開くのは結果です 我々の住む 物質的な宇宙と比べると これは制限が強すぎます 我々の宇宙は デジタルではなく アナログだからです 宇宙は 0か1か 真か偽か 黒か白か とは考えません 私たちは量子力学が 支配する世界にいます 同時に 0でも1でもある 宇宙です 無限の可能性と 連続的な階調に基づく現実です この2つの世界が衝突するのも 無理はありません

では なぜ我々のアナログ的生活の中に こうも画面が溢れているのでしょう? 目を覚ました瞬間から 眠りにつく瞬間まで 画面ばかり見ているのは なぜなのでしょう?

コンピュータが私たちに すごい力を 与えてくれるからです デジタルの宇宙では 私たちは空間を飛び越えることも 時間を飛び越えることもできます テクノロジーを使う目的が 娯楽だろうと 仕事だろうと コミュニケーションだろうと 関係ありません 考えてみてください 今夜家に帰って 好きなテレビ番組を 見るとき これは劇場であり 時間と空間が 飛び越えられています このTEDトークが 終わったらすぐ 私はシアトルにいる 愛しい家族に電話しますが — そこでは空間が 飛び越えられています そんなにも すごい力があるからこそ 現在のデジタル世界にある 2次元的制限にも 我慢しているのです でも我慢する必要が なかったとしたら? この世界に居ながらにして 同じデジタルの力を 使えたとしたら? その兆しを既に 目にしているかもしれませんが 私たちの子供達の 子供達が育つのは 2次元テクノロジーのない世界 だろうと私は思っています そのような世界を夢想するのは 素晴らしいものです テクノロジーが私たちのことを 真に理解する世界 人間らしさを制限する機械を 使うのではなく 人間的な体験を 強化するツールを使って 私たちが暮らし 働き コミュニケートする世界です

どうすれば 実現できるでしょう? それに答えるために 私は問題を別の視点から 見る必要がありました 機械の視点で世界を 知覚する必要がありました 自分が世界を知覚しようとする コンピュータだとしたら 問題をどのように 分割するでしょう? おそらく「もの」を 人と 環境と 物体に分類するでしょう でも そのコンピュータは世界と どのようにやり取りするのでしょう? 3つの方法が あると思います

第1に 機械として 現実を 観察ないしは 入力します 音声認識や生体認証というのは 入力という観点で 機械が人間と接している 良い例です 第2に 機械として 現実世界の中に デジタル情報を 配置 ないしは 出力します ホログラムは 出力という観点で 機械が環境と接している 良い例です 最後に 機械として 接触を通して世界と エネルギーの交換をします 仮想的な物体の温度が感じられるのを 想像してみてください あるいは ホログラムを 押してやると 同じ力で押し返してくるのを

この観点により 現実を単純な行列に 変えることができます 打ち明けますと エンジニアとして私は 何かを行列に落とし込めるとき すごく興奮します 自動運転車や スマートホームから 私が頭に付けているこの ホログラフィック・コンピュータまで 機械が私たちの世界を 理解できるようになりつつあります ずっと個人的なやり方で 私たちに接するように なっています

世界のあらゆるものを 細かくコントロールできたとしたら どうでしょう ダイヤルをある方向に回すと 現実の世界が見えます ダイヤルを別の方に回すと 仮想現実が見えます ダイヤルを使って 環境全体を 現実と仮想現実の間で 切り替えられたとしたら? この場所にいるのが好きです 私の目に映る皆さんの姿を ダイヤルで人間からエルフへと 変えられたとしたら? テクノロジーが私たちの世界を 真に理解するようになったとき 私たちが交流する方法 働く方法 遊ぶ方法は 変わるでしょう

半世紀ほど前 勇気ある2人の男が 月に降り立ちました 皆さんのポケットにある携帯よりも 貧弱なコンピュータを使ってです 6億人が 不鮮明な白黒テレビで その様子を見ていました そして全世界が 魅了されました

私たちの子供達の子供達にとって 空間を探査していく体験が 現実の世界を理解している テクノロジーによって どのようなものになるか 考えてみてください 私たちは既にリアルタイムの 万能翻訳機が存在する世界に生きています 近い将来にホログラムを使った テレプレゼンスが現れる だろうことも予想できます 幸い ここまでのところ デモはうまくいっているので もっとすごいことに 挑戦してみましょう ご覧いただくのは 世界初のものになりますが このTEDのステージ上で 等身大ホログラムの テレポーテーションを 私と NASA JPL にいる友人 ジェフリー・ノリス博士の間で 行おうというものです

うまくいくことを祈りつつ 聞こえる ジェフ?

(ジェフ) ああ アレックス

(アレックス) やれやれ うまくいった! 調子はどう ジェフ?

(拍手)

(ジェフ) いいよ 今週は特に良かった

(アレックス) 君がどこにいるのか 説明してもらえるかな?

(ジェフ) 私は同時に 3つの場所にいます 通りの向かい側の 部屋に立っていて 同時に アレックスと一緒の ステージに立っており 同時に200万キロ以上離れた 火星の上に立っています

(アレックス) 200万キロも 離れたところに! すごいね! その火星のデータが どこから来ているのか 教えてもらえる?

(ジェフ) いいとも これはホログラムによる 火星の正確な複製です 火星探査ローバーのキュリオシティが 集めたデータから作られています お陰で地球上にある場所のように 簡単に探査できます 人間というのは 天性の探検家で その場にいるだけで 即座に環境を把握できます 人類は火星探査ローバー のような道具を作って 目や手の届く範囲を 拡張してきましたが この何十年かの間は ずっと 画面とキーボードの前に 座って探査をしていました 今やすべてを 飛び越えようとしています 大きなアンテナも 中継衛星も 2つの世界の間の 大きな距離も あたかも その場にいるかのように この風景の中へ 第一歩を踏み出しています 私たちのミッションで 働く科学者たちは 火星をこれまでにない 見方で見ています ようやく人間らしいやり方で 探査できるようになったことで この異星の世界も 少し馴染みやすく感じます

でも私たちの夢は それで終わりません ダイアルを現実世界から 仮想世界に切り替えることで 魔法のようなことができます 不可視の波長で見るとか 山の頂上に瞬間移動するとか いつかきっと 触れるだけで 岩の中の鉱物が何か 感じ取れるようになるでしょう 私たちはその第一歩を 踏み出していますが 次の一歩には 全世界の人にも 参加してほしいと思っています これは少数のための ものではなく 万人のための ものだからです

(アレックス) 素晴らしいね ジェフ 今日はTEDのステージに 参加してくれてありがとう

(拍手)

(ジェフ) こちらこそ ありがとう じゃあね アレックス

(アレックス) じゃあね ジェフ

(拍手)

このような未来を私は 毎日夢見ています 私はご先祖から インスピレーションを得ています 人類は かつては部族の中で 一緒に暮らしながら やり取りし コミュニケーションし 働いていました 今日まで我々を連れて来てくれた 人間的なものへと 帰ることのできるテクノロジーを 私たちは作り始めています モニタとピクセルの 2次元の世界で暮らすのを やめられるようにしてくれる テクノロジー この3次元の世界に生きるのが どんな感じだったのか 思い出させてくれる テクノロジーです 人間であることが こんなに素晴らしい時はありません

ありがとうございました

(拍手)

(ヘレン・ウォルターズ) どうもありがとう いくつか質問があります

(アレックス) どうぞ

(ヘレン) メディアで論じられて いることでもあり ストレートに聞くので ストレートに答えてください デモと実際の製品の 違いについて いろいろ言われています 視野の問題です 今のは製品を買った人が 実際に体験できるものなんですか?

(アレックス) いい質問ですね それは この1年の間 私たちが メディアからよく 受けてきた質問ですが 調べれば 私がそれには答えて いないのが分かるでしょう 意図的に 無視していたんです 聞くべきことが 違っているからです それは私が誰かに初めて ホログラムを見せたときに 「そのテレビの大きさは何型?」 と聞くようなものなんです この製品に視角は ほとんど意味がなく 表示される 光の密度 ないしは 放射輝度を 問うべきなんです 角解像度はいくらか というのが より良い質問でしょう ご覧いただいたもの について言うと あのカメラに HoloLensを付けているので 誤魔化したくても 誤魔化しようがありません

(ヘレン) でもカメラのレンズは 人の目とは違いますよね?

(アレックス) あのカメラは 魚眼レンズを付けていて 人の目よりも 広い視野があります カメラの視点から出る 放射状の光の点を考えたとき 大切になるのは 容積あたりに どれだけの 光点があるかということです それは このHoloLensと あのHoloLensで同じです このカメラはずっと 広い範囲を見ています

(ヘレン) うわっ!

(笑)

(アレックス) 彼が出てくるとは 言ったでしょう? 落ち着いてくださいよ

(笑)

(ヘレン) いまいましい

(アレックス) ホログラムの ジェフ・ノリスです

(ヘレン) 何か起きてるとは思ったけど それが何なのか分からなかったのよ

(アレックス) 手短に ごく明確に言うなら あのカメラには 人の目よりも 広い視野がありますが 目にするホログラムの 角解像度 単位面積あたりの 光の点の数は 同じなんです

(ヘレン) ジェフ あなたには 後で話があるから 長い時間をかけてこのステージの マッピングをしていましたよね

(アレックス) ええ

(ヘレン) 教えて欲しいんだけど 私がHoloLensを買ったときは 自分のアパートのマッピングは しなくていいのよね?

(アレックス) HoloLensはリアルタイムで 毎秒5フレームのマッピングをしていて これは空間マッピングと 呼ばれるものです だから ご自宅で HoloLensを付けたら すぐにホログラムが現れ始め それを配置でき 家の中の様子を 学んでいきます このステージ環境では 私の頭にあるやつから 向こうのやつへと 全ワイヤレス接続を使って 送ろうとしているんですが 通常すべての回線を 落とすことになるので それをライブで行うという リスクは避けました それで あらかじめ 家庭でやるのと同じ 空間マッピング技術を使い 毎秒5フレームで ステージのマッピングして 保存しておき このような環境における ワイヤレス接続が カメラのHoloLensと私のHoloLensの間の 通信に悪さをしても 映像が消えたりしないように したんです ホログラムは このHoloLensから出ていて あのHoloLensは 見ているだけなので 接続が切れると 画面上の素敵なものが 見えなくなってしまいます

(ヘレン) あれはすごく綺麗だったわ ところでジェフ

(ジェフ) 何でしょう?

(ヘレン) どうも

(アレックス) 私は下がっています

(ヘレン) あなたは火星にいて ここにいて 通りの向こうの 部屋にいるということですが 教えて欲しいのは ホログラムは 目に見えるけど 触ったり 嗅いだりはできません 現時点でも科学に 有用なものなんでしょうか? それが私の ホログラムさんへの質問です

(ジェフ) 質問ありがとうございます 間違いなく 現時点で この技術は 科学にとって 有用なものだと思います それがNASAのいろいろな部門で 使われている理由です 火星探査の方法を 改善するために使っているし 宇宙ステーションの 宇宙飛行士のためにも 次世代宇宙探査機を デザインするのにも 使っています

(ヘレン) 素晴らしいですね ジェフ お願いだから消えてくれる? どうもありがとう

(笑)

アレックス 本当にすごかったわ どうもありがとう

(アレックス) こちらこそ

(ヘレン) 本当にありがとう

(拍手)

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このプレゼンテーションについて

実現の近いものから遙か先の未来像まで入り交じったこの想像力を刺激されるデモで、画面のないデジタル世界の可能性を探検しましょう。HoloLensヘッドセットを付けたアレックス・キップマンがここで披露するビジョンは、現実の世界に3次元ホログラムを持ち込んで人間の認識力を拡張し、デジタルコンテンツを触り、感じることができるようにしようというものです(最後にTEDのヘレン・ウォルターズによる質疑があります)。

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