「憎しみ」の文化に対して私たちができること(17:47)

サリー・コーン(Sally Kohn)
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対訳テキスト
講演内容の日本語対訳テキストです。
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人々は私のことを いい人だといいます それは私の人格や職業人として 誰に対しても とても親切で 猛烈な反対者とさえも 仲良くなれるほどです それが私の本来の姿だ と 皆にも知られています

(笑)

でも 私が人をいじめていたことは 誰も知りません 正直 私自身も あまり考えていませんでした 長い間そんな記憶を闇に葬り 今でも多くの記憶がぼやけています ところで それを否定する自分も 本来の姿の一部です

(笑)

しかし多くの人が私のことを 保守的な人とも上手くやっていける 進歩的な人と褒めたり 優しさについて記事を書いたり 優しさについて講演をすればする程 私の中に偽善がじわじわと 広がるのを感じます もし 私が実際には ひどく意地悪だとしたら?

私が10歳の時 学校のクラスメートにビッキーという 女の子がいました

(溜息)

私は彼女をいじめました 容赦なく 皆そうしました 先生たちまで彼女をいびりました だからって 私の罪が軽くはなりませんが ビッキーは明らかに 問題を抱えていました 自分で自分を殴って 鼻血を出していましたし 衛生面にも問題がありました それも かなり深刻な なのに私たちは 明らかに 生きることに苦しむ この女の子を助けるどころか 「ベトベト ビッキー」と呼びました 私もそう呼んでいました

はっきり覚えているのは 5年生の教室を出た 誰もいない廊下に立って ビッキーがトイレから出てくるのを 待っていたことです クリップボードとペンと 自作のアンケート用紙を持って 好みのシャンプーを尋ねていました まるで理科の授業か何かの 調査をしているみたいにです ビッキーがトイレから出てくると 私は彼女に飛びつき 何のシャンプーを使っているか尋ねました その頃を思い起こしてみると 先生の名前は だれも覚えていませんし その年に読んだ どの本の名前も覚えていません 5年生にあった出来事を ほとんど思い出せないのです でもビッキーが答えた シャンプーの名前は覚えています まるで昨日のことのように はっきりと覚えています 授業が終わると 私は廊下に出て 生徒達にこう叫びました 「ベトベト ビッキーは ホワイトレイン・シャンプーを使ってるわ そのシャンプーを使ったら ベトベト ビッキーのように臭うわよ」

私は 長い間その出来事を忘れていました ついに思い出した時には 急に詳細を知りたくなりました 友達やソーシャルメディアなど 思いつく全ての方法を使って ビッキーを探しました どうしても知りたかったのです 彼女は元気か 私が彼女の人生を台無しにしなかったか

(溜息)

しかしすぐに 私が知りたいのは ビッキーに起こったことでななく 私自身に起こったことだったと 気がつきました

私が10歳の時 私は他の人間をあたかも 価値のない生き物のように扱ったのです まるで 私はビッキーよりも優れていて 彼女はクズであるかのように いい人が こんな事しやしません 私はまだ子どもでしたが どの子でもする事ではありません 大抵の子はそんな事しないでしょう

結局 私がいい人でも何でもなかったら? 私は本当に 他人を嫌うただの化け物でした

それからというもの 意地悪な衝動に駆られ 意地悪を企て 人に悪口を言いたいのは 自分だと気付きました 確かに 意地悪な気持ちは 大抵 保守派に向けられていました

(笑)

でも保守だけでなく 弱腰の中道リベラルや 強欲なウォール街の銀行家や イスラム嫌いに対しても 気づくと意地悪な事を 考えていたのです あとノロノロ運転をする人 ノロいのは本当に我慢できません

(笑)

そして自分の偽善を察知すると それに気づくだけの時もあれば 偽善が酷くなることもありました ここ数年は特にそうでした そして自分が憎しみを— いや 怒り感じるにつれて 周囲も一層 憎しみを持つようになるのに 気づきました まるで根底に流れる 変わることのない憎しみが 周りであちこちと泡立ち 溢れるようです

この状況の良い点は 憎しみが私だけの問題ではないと わかったことです 良い点と言っても 実に利己的ですが

(笑)

というのも 私は今 自分の憎悪や残酷さを理解するより 世界中の憎しみの原因を究明し 理解し解決したいからです

そこで私は理解すべき問題に直面した 過度に知的な人なら 誰もがするように 本を書きました

(笑)

私は憎しみについての本を書きました ネタバレ注意ですが 私は憎しみに反対です

(笑)

ここで皆さんはこう思うかも知れません 「なぜみんな憎悪を気にするの? あなたはビッキーを憎んでなかった いじめと憎しみは違うわ」 そうでしょうか?

心理学者で 1900年代初期の憎悪に関する研究の 草分けであるゴードン・オールポート氏は 「偏見の尺度」と呼ばれる理論を 展開しました 偏見の片方の極には 集団虐殺や 先入観に動機づけられた暴力があり 反対の極にあるのは 自分が生まれつき属している集団は 他の集団よりも 本質的に優れていると信じたり 他の集団との社会的交流を 避けたりすることです それは全て憎しみではありませんか? つまり 私のような裕福な子どもが 貧しい子どもをいじめていたことや ビッキーが結局ゲイになったことは 偶然ではなかったのです 貧しい子どもやゲイの子どもは よくいじめられます 私のように 後に自分がゲイと気づく 子どもにまで いじめられます 当時 10歳の小さな頭の中では 色んなことを思い巡らしていました ビッキーをいじめたのが 全て憎しみのせいだとか 自分が意識的に他人を憎んでいたと 言っているのではありません しかし実際は 私たちの公共政策や共通の価値観の中で 差別される人々は 大抵 学校でいじめられやすい集団に 属しています それはただの偶然ではありません それが憎しみです

私たちは大きな問題を抱えているため ここでは憎しみを広く定義します 私たちは極端な場合だけでなく 全ての憎しみを解決しなければなりません 例えば ある集団に属する人々の 皮膚の色や 性別を理由に その人達の権利を剥奪すべきと連呼し デモ行進するのは 憎しみだということに 多分賛成しますね そうでしょ では ある集団の人々のことを 劣っていると信じながらも 口にしない場合はどうでしょう? それは憎しみでしょうか? ある集団の人々のことを 劣っていると信じながらも 自分がそう思っていることに気づかない いわゆる無意識の偏見はどうでしょう? それは憎しみでしょうか? それらは全て同じ根から 発していませんか? 歴史的に繰り返し起こる 人種差別や性差別は 歴史を形作り 今なお私たちの社会に 影を落としています それらは全て憎しみではありませんか?

全てが同じだと言うのではありません いじめがナチ党員であるのと同じくらい悪いと 言っているわけではありません ナチ党員であることと その人を殴ることが 同じではないのと一緒です

(笑)

でもナチスを憎むことも やはり憎しみですね? 自分より見識を持たない人を嫌うことは どうでしょう? お分かりのように 私たちは皆 憎しみに反対し 憎しみを問題視しています 私たちは 憎しみは他人事であって 自分たちの問題とは思いません 人を憎むのは自分以外の誰かだと もし自分と同じ党に 投票しなかった人を アメリカ人を名乗る資格のない バカな人種差別の化け物と考えたら? なるほど 私はいい人ではないですね 分かります

(笑)

私は憎しみ深い人間ではなく 正しいだけ ― ですよね?

(笑)

間違いです 私たちは皆 人を憎みます 何か抽象的で一般的な意味で 言っているのではありません 誰でも人を憎むのです 私も そしてあなたもです 私たちは 他人は憎しみ深く自分は違うと 優越感を抱いて偉そうにしていますが それが憎しみの根本の現れです― 私達は基本的にいい人で 他人はそうではない これを変える必要があります

憎しみについて理解し 解決するにあたり 私は探し得る全ての関連書物と調査研究に 目を通しました それだけでなく 元ナチスと元テロリスト そして元大量虐殺者たちに 会いに行きました 彼らが憎しみから脱出する術を見出したなら 私たちにもできるはずだからです

ここで 私がヨルダン川西岸で 出会った元テロリストの 例をご紹介しましょう バッサム・アラミンは16の時 手榴弾でイスラエル軍の車列を 爆破しようとしました 幸い計画は失敗に終わりましたが 彼は禁錮7年を言い渡されました 服役中 彼はホロコーストについての 映画を観せられました その時まで バッサムは ホロコーストは 大半が作り話だと思っていました ユダヤ人が殺される光景は 観ていて楽しいに違いないと思い 映画を見ました しかし実際に何が起こったかを 目の当たりにして 彼は泣き崩れました そして出所後 最終的に バッサムはホロコーストの研究で 修士号を取得し 元パレスチナ戦闘員とイスラエル戦闘員が 一緒に働き お互いの合意点を見出せるような 組織を立ち上げました 彼自身 かつてイスラエル人を 憎んでいましたが イスラエル人や彼らの歴史について学び 平和のために共に働くことで 憎しみを乗り越えることができたのです バッサムはイスラエル人を 憎んでいないと言います イスラエル軍が 登校中だった 彼の10歳の娘アビールを 射殺したのにです

(溜息)

バッサムは娘を殺した兵士を 許しさえしました その兵士は 昔の自分のように 憎悪を生む仕組みの産物なんだ 彼は私にそう説明しました

もし元テロリストがー もしテロリストが 憎むことをやめるのができ 自分の子が殺されてさえ 憎まないなら 残りの私たちも お互いを卑しめたり 人間性を奪ったりする習慣を 必ず断ち切ることができます バッサムの経験に似た話は 世界中で耳にしますし あらゆる調査が示しているのは 私たちが憎しみを持つのは 生まれつきでも 運命でもなく 私たちを取り巻く世界が 憎しみを植え付けるということです 私たちの誰一人 黒人や共和党員を憎むために 生まれてきたのではありません イスラム教徒やメキシコ人を憎むDNAなど 存在しません 良くも悪くも 私たちは皆 自分を取り巻く文化に作り上げられました よい知らせは その文化を形成するのは 私たちですから 自分たちで変えられることです

まず私たちは自分が抱えている憎しみに 気づく必要があります 私たちは皆 私たち皆にある あらゆる憎悪を認め 自分の考え方や思い込みを 疑う必要があります 一晩でできることではありません それは一生の課題ですが 挑戦する必要があります

第二に 社会にはびこる憎しみを取り除きたいなら 私たちを共同体として結びつける 政策や機関や慣行を 推し進める必要があります 文字通り地域や学校から 差別を撤廃するのです 差別の撤廃を支持する理由は それが正しい行いであるだけでなく 全ての側面で 憎しみに打ち勝つからです 複数の調査によれば 10代の子どもたちが 人種統合をした教室や活動に参加した場合 人種偏見が減るのです 人種差別のない幼稚園や 小学校に通う子どもは そもそも あまり差別意識を持ちません しかし世界中の至る所で またあらゆる手段で 私たちはお互いに引き離されています 例えばアメリカでは 白人の4分の3にあたる人々には 白人以外の友達がいません

ですから 予防措置を講じたうえで 行う必要があることは 私たちの組織や政府の中にある 憎悪を一掃することです 組織や政策は 時に 非人間化や差別や排他性や憎しみを 恒久化するからです これは 職場における 性的嫌がらせや性的暴力だとか 根深い人種的不平等と 人種的偏見に満ちた― 本来「正義」を守るべき 刑事司法制度と同様です それを変えなければなりません 一晩で変わることではありませんが 実現させる必要があります

そして― つながりを促す仕組みが生む 相互交流の場で 私たちがつながる時 お互いに言葉のかけ方を変え 人とのつながりを大事にし 寛大で 偏見がなく 親切で 思いやりに満ちた態度で 人と付き合う必要があります 憎しみではありません 以上です それだけです

(拍手)

全て解決できましたね? それだけなんです まあ そういうことです 細かいことはありますが それがまあ 私たちのすべきことです 複雑ではないでしょう? ただ難しいのです 私たちは ある特定の集団に対して 相手の人格や信念が原因で 憎しみを感じます そういう憎しみは 私たちの 心や社会にすっかり染み込んでいるため 避けられないと感じられ 変えることは不可能に思えます でも変えることは可能です 平和活動家になったテロリストや いじめの犠牲者に謝ることを学んだ 加害者をご覧ください

私は 中東やルワンダ そしてアメリカ中を 旅してまわり 憎悪の歴史を全て過去のものとした 地域住民たちが語る 驚くべき話を聞きましたが その間もまだ ビッキーを探し続けていました 彼女を探し出すのはとても困難で 私は私立探偵を雇い 探偵が彼女を見つけました ある意味 見つけたということですが 実際には 私がビッキーと呼んでいる人物は 大変な苦労をして 身元を隠していました ともかく 旅を始めてから1年が経った頃 私はビッキーに手紙で謝罪しました そして数ヶ月後 彼女から手紙がきました

(溜息)

嘘は言いません 私は許して欲しかったのです ですがダメでした (溜息) 彼女は条件付きで 許してくれたようでした 手紙には こうありました 「手紙で謝ったくらいで あなたの過去の行いは許されないわ あなたが許される唯一の方法は 世界をよりよくし あなたのような過ちを 人々が犯さないようにし 思いやりの心を育むことよ」 ビッキーの言う通りです だから私はここにいるのです

有り難うございました

(拍手)

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このプレゼンテーションについて

誰でも人を憎むことに反対ですよね。みんな憎しみは問題だと思っています。もっとも、自分の問題ではなく、誰かの問題と思っていますが。でも、サリー・コーンが気づいた通り、私たちは誰でも、人を憎みます。表にはあらわさない人もいれば、あからさまな人もいますが。彼女は自分自身の苦い体験と向き合いながら、私たちが自分を取り巻く社会や自分自身の中に憎悪があることを認め、それに立ちむかい、解放される方法について提案してくれます。

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