死刑囚から法学部の卒業生になるまで(08:51)

ピーター・オウコ(Peter Ouko)
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対訳テキスト
講演内容の日本語対訳テキストです。
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マンソンという人物について 話したいと思います マンソンは 28歳のインテリアデザイナーで 愛する娘と息子を持つ 2児の父親でした 彼は破綻した司法制度が原因で 刑務所に入ることになりました 犯していない殺人の 濡れ衣を着せられ 絞首刑を宣告されたのです この殺人事件には2人の被害者がいます その事件で実際に亡くなった被害者と 犯してもいない罪のために 実刑判決を受けたマンソンです 彼が閉じ込められた監房は 縦2.4m、横2.1mで その中で他13人の成人と 1日のうち 23時間半を過ごしました 食べ物にありつけるとは 保証されていませんでした 昨日のことですが 私はある部屋に入ったとき マンソンが過ごしていたであろう 監房を想像しました そこはトイレだったんですが あの監房よりわずかに大きい部屋が 数室 並んでいたからです

その監房の中で 死刑執行人を待つ間 彼は刑務所内で名前を持たず 番号で呼ばれていました 彼はただの統計でした どれくらい待つのかは 分かりませんでした 1分かもしれませんし 死刑執行人が現れるのは次の瞬間 あるいは翌日 あるいは30年後かもしれません ずっと待ち続けました そして 耐えがたいほどの苦痛や 精神的拷問 答えられていない多くの疑問に 直面するマンソンには 被害者を演じることはしないと 分かっていました 被害者の役を担うことを拒んだのです 彼は自身を刑務所に入れた 司法制度に怒っていました しかし彼は知っていました 司法制度を変えたり 他の人々が公正に扱われるのを 助ける唯一の方法は 被害者を演じることではないと

マンソンに変化が現れたのは 自分を刑務所に入れた人々を 許そうと決心した時でした 私はこれを事実として 話しています マンソンを知っているからです 私がマンソンです 私の本名は ピーター・マンソン・オウコです そして私が決心した後 つまり 許すということに目覚めた後 システムを変えるための 手助けをする行動を起こしました もう被害者にはならないと すでに決心していました しかし 家族と一緒にいて当然の 若い受刑者を 毎日拘引してくるようなシステムを どうやったら変えられるでしょうか?

そこで私は刑務所内の同士である 仲間の受刑者の力を結集し 手紙や覚書を書き始めました 司法制度や 司法サービス委員会や 私の国ケニアで設立されていた 多数の特別委員会へ向けてです その在り方を変える 手助けのためです そして私たちは 次のように決心しました こう言っても良いならですが 「藁をつかんででも立ち向かおう」 司法制度をあらゆる人々のために 機能させるためです

ちょうど同じ頃に 大学を卒業した イギリス出身の若者に出会いました アレグザンダー・マクリーンです アレグザンダーはギャップイヤーで 大学の仲間3、4人と来ており 彼らはカミティ重警備刑務所に 図書館を設ける手伝いを したかったのです グーグルで検索すると ここは世界最悪の 15の刑務所の1つとされています 当時はそうでした でもアレグザンダーが来た時 彼は20歳の青年でした そしてその時私は死刑囚でした 私たちは彼のことを気にかけました 信頼の問題でした 死刑囚だった私たちを 彼は信じてくれたのです そしてその信頼を通して 私たちが見たのは 彼や彼の大学の仲間が 図書館を最新の技術で改装し とても良い基準に適合するよう 医務室を整備する様子です これにより 刑務所で病気にかかる人が 必ずしも屈辱的に 死ななくてよくなるようにです

アレグザンダーに会ったことで 私はチャンスを得ました 彼は私が学位のため ロンドン大学に入学するための 機会と支援を 与えてくれたのです 南アフリカ大学の通信教育を受けた マンデラのように 私はカミティ重警備刑務所で 学習する機会を得ました そして2年後 私は刑務所の制度の中で ロンドン大学の課程を修めた 最初の人となりました 卒業したことで 次に起こったことは―

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ありがとうございます

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卒業したことで 力が湧いてきました 無力な被害者を演じるつもりは ありませんでした 湧いてきたその力は 自分自身の件を 起訴することだけでなく ここで話しているのと似たような 不公正に苦しむ受刑者を 助けることに向けたものでもありました そこで私は彼らのために 訴訟用の書類を書き始めました 刑務所の他の同士たちと共に 出来る限りを尽くしました それでは不十分でした アレグザンダー・マクリーンと 彼のチームは African Prisons Project (APP)で より多くの受刑者を 支援することにしました 今日の時点で お伝えできるのは 受刑者とケニア刑務所局のスタッフの 計63人が 遠隔教育を通してロンドン大学で 法律を学んでいるということです

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彼らは変化を起こしてくれる やる気のある人たちです 社会で最も 意欲を失っている人たちを 助けるだけでなく 受刑者やその他の人々が 司法制度を利用できるよう手助けします 監房にいた時 何かがずっと 私の心をかき乱していました マーティン・ルーサー・キングの言葉が 心に響き続けました 彼はいつも私に言うんです 「ピート 君が飛べないのなら 走ればいい 走れないなら 歩けばいい でも歩けないなら 這って行けばいい それが何であっても 何をしてでも 前へ進み続けなさい」 だから私は前に進みたくて 仕方がなかったのです 今でも 何をするにしても 前に進み続けたいと思っています なぜなら社会を変えるための 唯一の方法は 司法制度を変えるための 唯一の方法は― ケニアの司法制度は 本当に向上しましたが― システムを正すことだと思うからです

そして去年の10月26日 収監されて18年後に 大統領の恩赦により 私は刑務所から出所しました 今はAPPの支援に力を入れています 刑務所内では初となる ロースクールと 法律のカレッジを 設立し教育するという 任務を達成するためです その場所では―

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私たちは受刑者とスタッフを 教育するつもりです 受刑者仲間を助けるためだけでなく 公正な司法制度を使えない より幅広い 社会全体の 貧しい人を助けるためでもあります

今日ここで皆さんに話している私は このことを熟知しています 私たちは自分自身を見直し 状況を見直し 環境を見直すことができ 被害者を演じてはいけない ということです 被害者意識を持っていても 何も成功しません 私は刑務所にいましたが 囚人と感じたことも そうだったこともありません 私が学ぶことのできた 基本的なことは 私もそうだったように 自分ができると考えたことは 実現するということです でも できないといって動かずにいたら できません こんなに単純なことです

だから私はこのステージで聞いた 平和的な革命家たちの話に 勇気づけられています 世界は今 まさに今日 あなたを必要としています この話を終えるにあたって ここにいる皆さん1人1人に 伝えたいのです 素晴らしい思想家 変化を起こす人 革新者 そしてTEDに集う 素晴らしい 世界中の皆さん マーティン・ルーサー・キングの言葉を 覚えておいてください あなたの心と人生に 響かせ続けてください それが何であっても どこにいても 何をしてでも 前へ進み続けなさい

ありがとうございました

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ありがとうございます

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このプレゼンテーションについて

ピーター・オウコは18年間をケニアのカミティ刑務所の中で過ごし、時には1日のうち23時間半、他13人の成人と監房の中に閉じ込められることもありました。この感動的なトークで彼が話すのは、自身がどのように解放されたかについて、またAfrican Prisons Projectでの現在の任務についてです。彼の任務とは、刑務所内では初となるロースクールを設立し、前向きな変化を促すために刑務所の人々を力づけることです。

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