脳をコンピューターにアップロードしたらどうなる?(12:16)

ロビン・ハンソン(Robin Hanson)
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対訳テキスト
講演内容の日本語対訳テキストです。
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いつかロボット達は人間のような 知性を持つようになるかも知れません 人工知能、AIです どうやって? ひとつには 過去70年やってきたように より優れたソフトウェアを 蓄積したりすることでしょう 今までの進化の速度だと それまでに数世紀かかるでしょう 私たちが新しい強力な 知性の論理を見つけたら もっと早く実現するだろう という人もいます 私は信じていませんが

しかし3つめのシナリオを 今日はお話しします 人間の脳からソフトウェアを 移植するというアイデアですが そのためには3つの技術の成熟が必要ですが そのうちのどれも実現していません まず 多くの安価で高速な 並列計算機(コンピューター)が必要です 2つ目には個人の脳を 空間的、化学的組成の詳細まで スキャンする必要があります どの細胞がどこにあり どんな種類の 何と繋がっているかまでを理解する為です 3つ目はそれぞれの脳細胞が どのように働くのかを コンピューターモデルで表すことです 入力シグナルを受け取って インターバル状態を変えて 出力シグナルを送ります もしあらゆる脳細胞と脳の 十分に良いモデルがあれば それらを統合して 脳全体の十分に良いモデルができ そのモデルが オリジナルの脳と同じ 入出力活動をするでしょう それに話しかけると 答えを返してくれるかもしれません 何かを指示すると それを遂行するかも もしそうなれば すべてが変わります

人々はこのアイデアを 「アップロード」と呼び 何十年も議論して来ました それを「em」と呼びましょう [emは人の脳を模倣するモデル] 人々はこう言います [emは人の脳を模倣するモデル] 「そんなこと 本当に可能なのか? もし実現したら それに意識はある? それともそれは空っぽのマシン? 自分がemになったら それは別人の人格になる?」 こうした興味をそそる質問は 全部無視して話しますが――

(笑)

こう問うのを忘れています 「具体的に何が起こるんだろう?」 私はこの問いに夢中になりました 4年このことを考えて来て 標準的な学術的ツールを用いて 何が起こるかの予測を試み そうして見出した結果をお話しします 言っておきますが— 私はインスピレーションではなく 分析を共有します 私の仕事は それを避けようとしないと 何が一番起こりそうか 皆さんに伝えることだと思っています もしあなたが私の話に驚かなかったら 注意を払っていないということです

(笑)

ではまず emは一生のほとんどを 仮想現実(VR)世界で過ごします みなさんが仮想現実を使っている姿は このようなものでしょう そしてこんなものが見えます 太陽光が水面に反射し 空にカモメの鳴き声 風を頰に感じ 潮の香りすらするかもしれません 最新式のハードウエアです ここで多くの時間を過ごすならば ダッシュボードが必要です 電話をかけたり 次の仮想世界に移動したり 銀行口座を確認したりします

みなさんは仮想現実世界ではこんな姿でしょう これは emの仮想現実世界での姿です どこかのサーバーラックにある コンピューターです でもみなさんと 同じものを見て体験できます ただ emにとっては違う点も いくつかあります まず みなさんは仮想現実が完全には 現実とは同じでは無いと分かっているでしょうが みなさんがこの部屋などに感じる現実感を em は感じているでしょう 更にemの活動にはもっと可能性があります

例えば皆さんの思考は いつも同じ速さで走りますが emはコンピューターハードウェアを 増減させて速くあるいは遅くでき それで周囲が自分より速すぎると感じたら スピードアップすれば 周囲の速度も落ちてくるように思うでしょう

加えてemはその時点での 自分を複製できるので このコピーは全てを同じく覚えているでしょう emが同じ処理速度で始動すると その処理速度から区別はつかず 「お前はコピーだ」と 言われないと自覚しないかも知れません emはアーカイブコピーを作ることもでき それが十分な数になると emは不滅になります 理論上です 実際にそうなることはないでしょう emはその脳を — 脳として機能するコンピューターを 物理的に動かせます emは光の速度で世界を動き回れます そして新たな場所に移動し その地点付近のemとより速く会話できます

これまでemが出来ることについて 話してきました ではemは何をすることを選ぶでしょう? それを理解するために 3つの主な事実を理解する必要があります 同じ状況では emは手本である人間と同じ行動を 選ぶものです ですから彼らの生活や行動は とても人間らしく 彼らが人間と違うのは 人間とは違う世界に生きているためです 2点目 emは生存に 物理的な資源を必要とします 皆さんも生きるのには家屋や食糧が必要ですね emが生きるためにはハードウェアと エネルギー、冷却装置などが必要です emの主観における1分ごとに 通常そのem自身が その分を稼がなければなりません 3点目 emにはお金がありません

(笑)

emの数はem経済の成長よりも速く増え これはemの最低生活可能レベルまで 賃金が下がることを意味し emはほぼ常に 働かなければならないことを意味します つまりemが通常見る風景は このようなものです 美しく豪華ですが 机しか無く— 彼らはほとんどの時間 働いています 最低生活賃金シナリオは 珍しく奇妙なものに思えるかも知れませんが これは実は人類史に於いて普通のことで あらゆる野生生物も このシナリオで生きて来ました だから人間がこの状況下で どう行動するか分かります 人間は生き延びる為に生活します それがemの世界についても言えます みなさんのように豊かであれば それらの行動を予測するのに それらの欲求を熟知する必要があります 生命体が貧しい存在であれば 大抵それらは 生き延びる為だけに行動しています

emの世界について emの視点から語ってきましたが 次は視点を変えて 彼らの世界全体を見てみましょう まず emの世界は 我々の世界よりも速く成長します およそ100倍の速さで 我々が1~2世紀の間に経験する変化を 彼らは1~2年で経験します その後を予測することは止めておきます きっと何かが起こり変化していくでしょうから 私には分かりません 次に典型的なエミュレーションは 人間の速度のおよそ1千倍速く走るため 数千年を1~2年で経験し 彼らにとって世界は 皆さんが感じるよりも もっとゆっくりと過ぎて行きます 3つ目にemは少数の とても混み合った都市に詰め込まれています これは彼らが仮想現実世界でも 実際でも 物理的に押し込められている姿です emの感覚では物理的な移動は 痛々しい程に遅く感じられるので ほとんどのemの都市は自給自足しています ほとんどの戦争はサイバー戦争になり emの都市から離れた場所が 人間達の居住地として残されるでしょう emはそこに大して興味を持ちません

人間といえば みなさんが聞きたがっていますが 人間は即刻永遠に 引退しなければならないでしょう emと競合することはできません 人間は この世界の 資本のすべてを手にしていましたが 経済が非常に速く成長し 彼らの富は非常に速く成長し 人間は 集団として 豊かになります ご存知かも知れませんが 殆どの人は 実際には仕事をする能力のほかに あまり何も持っていません 今からその時までに 彼らは十分な資産を取得し保険や資産共有の 取り決めをしなければならず さもなくば彼らは餓死します そんな結末を避けることを強くお勧めします

(笑)

不思議に思うかも知れません emはなぜ人間を生かしておくの? 人間を殺して財産を奪うこともできるのに? でも人間も非生産的な退職者達を 殺して財産を奪ったりしないでしょう

(笑)

ひとつにはそんなことをすれば emと私たちが共有する社会が崩壊するからです 他のグループは次は誰の番だと 訝しがるでしょうし emの時代に 人間は穏やかに退職させられるかも知れません それよりemの時代が1~2年しか 続かない事の方を心配するべきでしょう その次に何が起こるかは分かりません

emは人間によく似ていますが 典型的な人間とは違い 典型的な1つのemは 数百人の最も生産的な人間のようなものです ですからemは普通の人間からすると— 億万長者やノーベル賞受賞者 ゴールドメダリストや 国家元首並みに優れています emはおそらく人間に対して 郷愁と感謝を感じるでしょうが 尊敬の念はそれほど感じないでしょう 考えてみると 私たちが先祖を思うようなものです 皆知っている通り人間の生産性は様々です これに基づいてemの機能を予測できます 例えば彼らは賢く、良心的で 勤勉で、結婚していて、信仰があり 中年だという傾向があります これらはemの特徴です

emの世界は莫大な多様性を内包しています emは人間達のように多様性と直面します 様々な産業や職業に加え 新たな種類の多様性も持ちます その最も重要なものの一つは マインド・スピードです emは人間の速度から 百万倍速くも 10億分の1に遅くもなれます より速いemはより高い地位に就き 富を持ち 議論に勝ち 絶好の場所に鎮座します より遅いemの多くは退職者達で 文学に登場する幽霊のような存在です 思い出してください 霊はそこら中にいて お金を出せば降霊だってできます でも彼らはあまり物事を知らず 影響力も無く 過去に囚われ— 取るに足りません

(笑)

emの生涯には多様な形態があります これはあなたの一生です 初めと終わりがある—単純です emの一生は 毎日短命なコピーを作り出し それらは短期的なタスクをして命を終えます この短命なemについて後ほど触れますが 彼らははるかに効率的です 次の日の為に休息する必要が無いので このemは隙あらば増殖し 需要次第で自身のコピーをたくさん作ります 彼らは未来がどうなるか知りもしません

これはemデザイナーで 大きなシステムを構想し 繰り返しコピーに分かれて行き emはより大規模で一貫性のある デザインを実現します これは配管工タイプです 過去20年間毎日2時間しか働かなかった 悠々生活の記憶を持っています 毎日1千のコピーを作り それぞれが2時間配管の仕事をして 1つだけが次の日まで生きます 客観的に見ると 彼らは99%以上の時間働いていますが 主観的には悠々生活を覚えています

(笑)

またあなたの一生です 初めと終わりがあるります これはパーティーの始まりのあなたで [忘却は『死』?] パーティーが終われば すっかりその記憶を失うクスリを 飲みました そんなことをする人々がいるんだそうです パーティーの終わりに あなたは呟きます 「もう死ぬんだ こんなの酷い 明日はもう自分ではなくなる 誰も自分の事を覚えていないから」 それか こう言うでしょう「今日のことは 覚えていなくても明日もちゃんと生きるさ」 このemは短命のコピーを生み出し それは短期タスクを遂行し死にます 彼らには2種類の態度を取る可能性があります 「自分は短命な生命だ 最悪」 あるいは 「自分より大きな生命体の一部で それは記憶されないんだ」 彼らはおそらく後者でしょう それが哲学的に正しいからでは無く 彼らが共存する為に有効だからです

今日もし大統領がイラク侵略を提案すれば あなたは「何故?」と思うでしょう 返ってくる答えは「国家機密」 あなたは彼らを信じて良いか分かりませんが [金庫が秘密を守る] emなら大統領のemと あなたのemとが安全な部屋に入り 理由を全て説明します そしてあなたのコピーが 1ビットの情報を出し 自分が納得したかどうかを知らせます そうすれば正当な理由が あったことが分かります

皆さんはこの世界が気にいるかどうか 結論を出したくてウズウズしていますね わかります でも考えてみてください 何千年も前のあなたの祖先も 2~3を聞いて 今の世界の好き嫌いを即決したでしょう この世界が本当に奇妙に思えて ですから奇妙な未来世界を拒絶する前に それについてまずじっくり学んでください 本を丸一冊読むとか それでも気に入らなければ より良く変える努力をするんです

ありがとうございました

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このプレゼンテーションについて

「em」をご紹介します。人の脳をエミュレートし、思考し、感じ、コピーした元の脳とそっくりに機能するマシンです。フューチャリストであり社会科学者のロビン・ハンソンが語る未来の姿はこんなものです。超高速コンピューター上で機能する em が世界経済を肩代わりするようになり、マルチタスクをするために自らをコピーし、人間に残された唯一の選択肢はリタイアすることだけ。 ハンソンの描き出す奇妙な未来をご覧ください。ロボットが地球を治めたらどんなことが起きるでしょうか。

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