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  •  母乳などに含まれる栄養成分「トリカプリン」が、おなかの大動脈にできたこぶを小さくする可能性があるとして、大阪大の研究チームは、腹部大動脈瘤の患者を対象に、治療薬候補として服用してもらう臨床試験を行うと発表した。

     腹部大動脈瘤は、おなかの大動脈が動脈硬化でしなやかさを失い、もろくなった血管の壁が膨らんでこぶを作る病気。自覚症状がないまま進行し、突然破裂して命を落とすこともある。

     チームの樺敬人・同大特任研究員(循環器内科学)によると、国内の推定患者数は100万~180万人で、こぶが5センチ以上になると、有効な治療は、人工血管に置き換えるなどの手術に限られる。

     トリカプリンは母乳やココナツミルクなどに含まれる中性脂肪の一種で、主成分とする健康食品を同大などが開発。近畿大などと行ったラットの実験では、血管が丈夫になり、こぶを縮小させる効果がみられた。

     臨床試験は大阪大病院で実施する。こぶが4・5センチ以下の患者10人(50~85歳)に、この健康食品を毎日3回、1年間服用してもらう。樺特任研究員は「有効性がわかれば、手術の前に投薬治療ができるようになる可能性がある」としている。

     加藤雅明・森之宮病院(大阪市)心臓血管外科顧問の話「手術よりも薬の方が患者の負担は軽く、治療薬として実用化されれば積極的に使っていきたい。今回の臨床試験で、こぶが縮む詳しい仕組みの解明も期待したい」
  •  厚生労働省は今年度から、介護サービスの人員配置に関する統一見解の策定に着手する。施設管理者や従業員に求める資格や経験年数など、各自治体が独自に設定している要件の過度なばらつきを抑えることで、介護事業者の事業展開を後押しする狙いがある。厚労省は実態調査を踏まえ、2026年度までに統一見解を策定する方針だ。

     介護サービスの人員配置は、通所介護や訪問介護といった形態ごとに、厚労省令で職員や生活相談員の人数など最低限の基準が定められている。省令以上の要件は自治体の裁量に委ねられており、生活相談員に介護福祉士などの資格所持を義務付けたり、管理者に一定の実務経験年数や兼務禁止を求めたりするケースがあるとされる。

     複数自治体で広域展開する介護事業者にとっては要件の確認作業に手間がかかるほか、「限られた人材を効率的に配置できず、人手不足に拍車をかけている」との指摘が出ている。

     厚労省も自治体の独自要件を全て把握しているわけではなく、政府が昨年6月に閣議決定した規制改革実施計画には、自治体の独自要件の整理・公表の検討が盛り込まれた。

     こうした状況を受け、厚労省は今年3月、介護事業者から特に見直しの要望が強かった施設管理者の兼務制限について、「個別の事業所の実態を踏まえずに(兼務を)一律に認めないのは適切ではない」とする通知を全国の自治体に発出した。今年度は通知の順守状況や、その他の要件についての実態調査を行う予定だ。

     もっとも、自治体が設定する要件の多くは、主に介護の質の確保を目的としている。厚労省は、規制緩和が介護の質の低下を招かないよう、引き続き自治体の裁量は認めつつ、どのような要件が適切もしくは過剰なのかの線引きを統一見解で示したい考えだ。
  •  脳死下の臓器提供件数が増える中、東京医科歯科大、岡山大、愛媛大が新たに心臓移植を実施する方針であることが27日、分かった。日本心臓移植学会が今月発表した緊急調査では、移植施設の人員や病床が不足し、脳死者から提供された心臓の移植を断念した例が、2023年に16件あった。3国立大の参入により、心臓の移植施設は全国14か所に増え、移植医療体制の逼迫の解消につながることが期待される。

     東京医科歯科大は、東京大から約1キロの近距離にある。東大には、移植を待つ患者が集中し、23年の心臓移植の断念例16件のうち15件を占めた。東京医科歯科大では東大との連携を視野に、移植チームづくりを急ピッチで進めている。今年10月に東京工業大と統合し「東京科学大」になることが決まっており、心臓移植を実施することで、新大学の実力のアピールにつなげる狙いもある。

     岡山大は現在、肺、肝臓、腎臓の移植を担う。脳死下の臓器提供例は国内最多の実績を持つ。心臓移植施設となれば、中国地方で唯一となる。愛媛大は四国初の心臓移植施設となる。

     医療機関が心臓移植を行うにはまず、日本循環器学会などでつくる協議会の推薦を受け、日本医学会の委員会で選定される必要がある。その上で、臓器あっせん機関「日本臓器移植ネットワーク(JOT)」が、移植施設として登録すると実施できる。

     東京医科歯科大、岡山大は来年度にも協議会への申請を行う。JOTによると、愛媛大は登録まで済ませ、実施に必要なシステムの導入などを準備している。

     心臓移植に詳しい福嶌教偉・千里金蘭大学長(看護学、心臓血管外科)の話「移植施設が増え、待機患者の偏りが緩和されれば、臓器の受け入れを断念する問題を解決する一助となる。併せて個々の移植施設の受け入れ態勢の充実も図ることが求められる」

     臓器移植法の運用指針に基づき、医療機関が、臓器ごとに組織される学会協議会などに申請し、選定される。その後、JOTが施設として登録すると移植を実施できる。心臓の場合、2020年、国立成育医療研究センターが登録されたことで11施設になった。
  •  国立がん研究センターなどの研究チームは25日、悪性脳腫瘍の患者を対象に、がん細胞に放射性物質を送り込んで攻撃する「放射性治療薬」を投与する最終段階の治験を今月に始めたと発表した。生存率などから治療効果を検証する。実用化されれば、国内で開発された初の放射性治療薬となる。この治療薬は、体内でがんの病巣に集積し、ベータ線などの放射線を出して内部からがんを攻撃する。

     研究チームは、2018年以降に悪性脳腫瘍の再発患者らを対象に行った第1段階の治験で安全性を確認した。この治験では、難治性の「膠芽腫」の再発1年後の生存率は56%で、従来の30~40%よりも高いなどの有効性も示唆されていた。

     最終段階の治験の対象は、膠芽腫を含む、悪性神経膠腫のうち、抗がん剤治療などを受けた後に再発した患者。治験は29年3月まで行う予定。

     治験の責任者を務める成田善孝・同センター中央病院脳脊髄腫瘍科長は「治験に参加したい患者は、まず主治医に相談してほしい」と話している。
  •  政府は、救急治療や手術で入院した患者に早期からリハビリを実施し、身体機能を回復させて退院につなげる取り組みの強化に乗り出した。6月から適用された診療報酬で、入院後48時間以内に患者全員の状態を評価し、必要に応じてリハビリ計画を作成するよう後押しした。入院の長期化を防ぎ、医療費の抑制を図るとともに、患者には日常生活を早く取り戻せる利点がある。

     入院患者は寝たきりの状態が続くと筋力が低下し、入院が長期化したり、退院後に介護が必要になったりする恐れがある。

     今回、リハビリの強化を促したのは「急性期病床」と呼ばれる病床だ。医師や看護師が手厚く配置されているが、重症者などに対応するのが本来の役割で、リハビリが遅れたり十分に実施できていなかったりするケースがある。一方で入院基本料が高く設定されており、入院が長引けば、医療費が膨らむ可能性がある。

    早期リハビリでは、入院から48時間以内に理学療法士や看護師らが、患者が車椅子からベッドに移動できるかなどの身体機能や、食事ができるかなどの栄養状態をチェックする。その判定結果に基づき、患者ごとにリハビリ計画を作成し、ベッドで手を動かしたり起き上がったりする訓練や、筋力トレーニングなどを実施する。

     リハビリは平日だけでなく、土日祝日も取り組めるよう求めた。厚生労働省が入院患者約15万人分のデータを分析した結果、休日にもリハビリをした人は平日のみの人と比べ、退院時に身体機能が1・3倍回復していた。

     栄養状態が悪化すると身体機能の低下につながるため、管理栄養士による栄養管理も強化する。

     新たな診療報酬では、急性期病床でこうした取り組みを実施した場合、患者1人につき1日あたり1200円を上乗せする。最長で14日間算定できるため、最大1万6800円になる。

     病棟に理学療法士や作業療法士などのリハビリ専門職を2人以上、管理栄養士を1人以上、常勤で置くことが条件だ。誤嚥性肺炎などを防ぐため、かむ力やのみ込む力などの 口腔こうくう 機能が低下しないよう必要な管理体制の整備も求める。

     日本理学療法士協会の斉藤秀之会長は「入院から2週間は簡単なものでも
  •  がん治療を受ける男児の精巣の一部を凍結して長期保存し、成人後に正常な精子を作れるようにする不妊治療技術の開発に、大阪大など日米共同研究チームが着手した。将来の実用化を見据え、男児の精巣の一部を採取する「精巣バンク」の運用を、来年にもスタートさせる計画だ。

     がんで放射線照射や抗がん剤の投与を受けると、治療が成功しても不妊になるケースが多い。成人は治療前に卵子や精子を凍結温存する技術があり、女児は凍結した卵巣を成人後に体に戻し出産した事例の報告があるが、精巣が未成熟な男児の治療法はない。

     大阪大の伊川正人教授(生殖医学)らの研究チームは、未成熟な精巣を体外で培養し、精子を作る研究を始めた。同大はマウスで子どもを産ませることに成功しており、サルなどの動物で研究を進める。同大の林克彦教授らがiPS細胞から精子を取り囲む細胞を作り、体外で精巣の環境を再現して、人間の精子を成熟させる技術を確立する。

     米ペンシルベニア大は人工的に成熟させた精子に異常が起きないかを調べ、米ベイラー医科大は精子を正常に育てる薬剤を探し、不妊治療の安全性を高める。国内チームはAMED(日本医療研究開発機構)、米国チームはNIH(米国立衛生研究所)の支援を受けて研究を進める。

     現在の男児患者が成長して適齢期となる20年後をめどに、育てた精子を体外受精させたり、精巣の細胞を移植したりする不妊治療の実用化をめざす。男児の精巣バンクには複数の国公立大が参加を検討している。

     国立がん研究センターによると、0~14歳の男児は年間約1000人が小児がんと診断されている。精巣バンクの登録は年間10人程度から始める計画だ。

      がん患者への生殖補助医療に詳しい吉村泰典・慶応大名誉教授の話 「小児がん患者の生存率が大きく向上し、将来の不妊治療へのニーズが高まっている。実験動物とは精子が成熟する仕組みが異なるなど課題はあるが、10年以上先なら実現する可能性は高く、患者や家族の大きな希望になる」
  •  日本臓器移植ネットワークは23日、松戸市立総合医療センター(千葉県)に入院していた6歳未満の女児が、改正臓器移植法に基づく脳死と判定されたと発表した。

     発表によると、家族が19日までに臓器提供に同意し、20日までに脳死判定された。23日に臓器が摘出され、心臓が10歳未満の男児に、腎臓が10歳未満の女児と10歳代の女性にそれぞれ移植される予定。同ネットワークによると、6歳未満からの提供は36例目になる。
  •  新型コロナウイルスの感染状況について、厚生労働省は21日、全国約5000か所の定点医療機関から10~16日の1週間に報告された感染者数が、1医療機関あたり4・16人だったと発表した。前週(3・99人)の1・04倍で、6週連続で増加した。前年同期(5・6人)よりは低かった。

     地域別では、沖縄県が18・11人で、前週(19・58人)より下がったものの、最多だった。
  •  デング熱などを媒介するネッタイシマカが「腹八分目」で血を吸う行動をやめるメカニズムを解明したと、理化学研究所と東京慈恵会医科大のチームが発表した。針を刺すことで血液中に生じる物質が、蚊に満腹感をもたらしているという。蚊の被害を防ぐ薬の開発に役立つ可能性があり、論文が21日、科学誌セル・リポーツに掲載される。

     ネッタイシマカは東南アジアや南米などに生息するヤブ蚊の一種で、デング熱やジカ熱などのウイルスを媒介する。

     人や動物の血液に含まれるATPという物質が蚊の「食欲」を促していることはわかっていたが、腹部が吸った血で満たされる前に逃げることが多く、何をきっかけに「食事」をやめるのかは分かっていなかった。

    理研の佐久間知佐子・上級研究員らは、ネッタイシマカが好むATPの溶液に、血液から赤血球などを取り除いた上澄みだけを加えると、あまり吸わなくなることを発見。上澄みの中に、蚊に満腹感をもたらす物質があると推定して成分を絞り込んだ結果、「フィブリノペプチドA」という物質が関わっていることを突き止めた。

     この物質は、血液の凝固に欠かせないフィブリノーゲンというたんぱく質から作られる。蚊が血管に針を刺した刺激で血液の凝固反応が進んでこの物質が増え、蚊の体内にある程度蓄積すると血を吸う行動を終えることがわかった。

     ネッタイシマカと同じヤブ蚊の仲間で、国内に多いヒトスジシマカなども、同じ仕組みを持っているとみられ、佐久間上級研究員は「蚊の体内でどのような反応が起きて満腹と感じているかが分かれば、吸血を抑える薬を作れるかもしれない」と話す。

     蚊の感染症対策に詳しい愛媛大の渡辺幸三教授(熱帯疫学)は「独創的な研究成果だ。血を吸うのはメスの蚊で、卵が成熟する栄養となる。蚊の吸血行動を抑えることは個体数を減らすことにもつながるだろう」としている。
  •  脳死者から提供された臓器を移植する医療体制が逼迫する中、厚生労働省は18日、移植を待つ患者数や移植後の生存率などを移植施設ごとに公開する方針を表明した。臓器あっせん機関の日本臓器移植ネットワーク(JOT)などが構築を進めるデータベースを活用し、今年度中の公開を目指す。手術実績の多い移植施設に待機患者が集中する事態の緩和が期待される。

     移植を希望する患者は現在、手術を受ける移植施設を原則1か所選ぶ。施設ごとの詳細なデータは公開されておらず、主治医の意見や移植手術の実績などを参考に決めるしかなかった。

     脳死下の臓器提供件数の増加に伴い、東京大など有数の移植手術実績を持つ施設では待機患者が集中する一方、人員や病床の不足から、提供された臓器の受け入れを断念する事例が相次いでいる。施設別のデータが公開されることが、断念問題の解消につながる可能性がある。

     今回の方針は、同日の参院厚労委員会で、大坪寛子健康・生活衛生局長が、日本維新の会の梅村聡参院議員の質問に対して答えた。

     厚労省が公開にあたって活用するのは、JOTが国の補助金を受けて日本移植学会とともに構築中のデータベース「TRACER」。国内で行われる臓器移植に関する情報を一元化する。

     公開はこのデータベースを基に、施設ごとに〈1〉臓器別の待機患者数〈2〉登録から移植までの平均待機期間〈3〉移植後の生存率の3項目を示すことを想定している。データベースは今年度中にも運用が始まる見通しで、大坪氏は「国民から信頼される移植医療の推進のために、施設ごとのデータ公表が重要だ」と答弁した。

     JOTは、今後公開を検討する3項目について、臓器ごとにまとめた数のみを公表してきた。待機患者数は5月時点で、腎臓1万4194人、心臓842人、肺615人の順に多く、6臓器全体で1万6000人超にのぼっている。

     データベースの構築に携わる日本移植学会前理事長の江川裕人・浜松ろうさい病院長は「移植施設別の(生存率などの)治療成績に大きな違いはないとみられる。各施設のデータが公開されることで、待機患者の一部の施設への偏りを解消することが期待できる。JOT、厚労省、学会が緊密に連携し
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