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ドクターズゲートの配信する医療ニュースについて
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  •  2018年にノーベル生理学・医学賞を受賞した本庶佑・京都大特別教授や近畿大などのチームは、肺がんの大半を占める「非小細胞肺がん」に対し、本庶氏が開発に貢献したがん免疫治療薬「オプジーボ」が効く患者と効かない患者を見分ける手法を開発したと発表した。採血した血中たんぱく質から簡便に判定でき、早期の実用化を目指す。論文が2日、国際医学誌に掲載された。

     オプジーボは、がんを攻撃する免疫細胞の一種「T細胞」を活性化する一方、効果の出ない患者が一定数いるのが課題となっている。年間約12万6000人が発症する肺がんでは約2割の患者しか効かないという。

     チームの林秀敏・近畿大主任教授らは、薬が効くかどうかの鍵となる血中の「PD―L1」や「CTLA―4」などのたんぱく質に着目。非小細胞肺がんの患者50人の血液を、医療機器大手シスメックス(神戸市)が開発した検査機器で分析した結果、この2種類の濃度が低い人ほど、オプジーボの治療効果が高い傾向を示すことがわかった。

     従来、患者の肺から採取した組織のたんぱく質濃度を調べていたが、採血で検査できれば、体への負担が軽く、予測精度の向上も期待できるという。本庶氏は「がん免疫治療の効果予測へ向けた重要な一歩」とコメントしている。

     河上裕・国際医療福祉大教授(免疫学)の話「血液検査は便利で、実用化に向けて症例を積み重ね、予測精度を確認することが期待される」
  •  新たな感染症危機に備え、医療機関に医療提供を義務づけることを柱とする改正感染症法が4月1日に完全施行される。病床や発熱外来が不足した新型コロナウイルス禍の教訓を踏まえ、医療体制を事前に確保する仕組みが整うが、義務化対象外の医療機関の協力取りつけには課題もある。

     改正法は、国や自治体、健康保険組合などが開設する「公的医療機関等」などに医療提供を義務づけ、都道府県知事は、具体的な提供内容として〈1〉病床〈2〉外来診療〈3〉自宅療養者への医療――などを通知する。義務化の対象外の医療機関は、合意の上で知事と協定を結ぶ。医療機関が通知や協定に従わない場合、知事は勧告や指示ができる。

     一方、確保見込みの病床は昨年12月15日時点で3万3723床と、政府が今年9月までの目標とする5万1000床の6割強にとどまる。新型コロナ流行時は、患者受け入れに伴う他の診療の縮小で大幅減収となったケースが多く、義務化対象外の医療機関には減収に対する懸念が根強い。厚生労働省は、国による財政支援について「感染症の特性や状況を踏まえて検討する」としており、引き続き協力を呼びかける考えだ。

     改正法ではこのほか、都道府県をまたいだ医療人材の派遣や、マスクなどの物資を確保するための規定なども盛り込まれている。
  •  新型コロナウイルスワクチンの無料接種が31日に終了する。東京都内で最後まで残る都庁(新宿区)の北展望室の大規模接種会場には今月に入り、「駆け込み接種」で通常の2倍近い人が訪れており、都は、受付時間を拡大するなどして対応している。(岡本立)

     都庁第1本庁舎の45階にある北展望室。22日夕、親子連れやスーツ姿の男性らが4か所のブースに次々と入り、接種を受けていた。小学生の子ども2人を連れて訪れた八王子市の会社員女性(44)は「地元で予約が取れず、困っていた。まだ感染が落ち着いたとは思えないので、これで少し安心できるかな」とほっとした様子だった。

     都が北展望室に接種会場を設けたのは2021年6月18日。当初は、東京五輪・パラリンピックの大会関係者らが対象だった。同25日には、南展望室も接種会場となった。展望室を選んだのは、「景色の良い場所なら、多くの人が接種を受けに来てくれるのではないか」(都幹部)との思惑もあったという。

     ただ、展望室ならではの苦労も。ワクチンは紫外線に弱いため、大きな窓から差し込む日光を避け、冷凍庫から出したらすぐアルミホイルで覆うようにした。冷凍庫はフロアの電気容量が足りず、別の階にも設置。ワクチンが足りなくなるたび、スタッフがフロアを行き来した。都幹部は「とにかく、ワクチンが駄目になって使えなくなるのを防ごうと必死だった」と明かす。

     都の接種会場はピーク時の21年夏には約20か所に達したが、感染状況の落ち着きとともに徐々に閉鎖された。南展望室は22年8月に役目を終え、一般開放を再開。北展望室とともに今月まで残っていた千代田区の教職員互助会三楽病院の会場も、29日に閉鎖された。

     接種は4月から、高齢者や重度の基礎疾患を持つ60~64歳の人を除き、原則、全額自己負担(1回あたり1万5300円程度)となる。詳細は未定だが、接種を希望する場合、インフルエンザなどと同様、自身で医療機関などを探して受けに行くことになるという。

     そのため、今月中に接種を受けようとする人も多く、1~2月は1週あたり1000人前後だった北展望室会場の利用者は、3月に入ると徐々に増加。第4週は約1800人に上った。

  •  厚生労働省は新年度、重い障害がある医療的ケア児らが成人した後の支援に乗り出す。ケアを行う看護師を増やした事業所の報酬を手厚くするなどし、国内の受け入れ施設が増えるよう促す。学校卒業後、ケアのために付き添いを迫られていた家族も含めてサポートする。

     特別支援学校などには、医療的ケア児の人数の8割以上にあたる看護師らが配置され、たん吸引といったケアを行っている。

     一方、厚労省が、成人を受け入れる事業所(約1万か所)について抽出調査をしたところ、医療的ケアが必要な人が利用する施設は2割に満たなかった。看護師がおらず、家族に付き添いを求める施設もあり、関係者は成人への移行期を「18歳の壁」と呼んで支援を求めていた。

     このため、厚労省は新年度以降、成人を受け入れる施設を増やそうと、障害福祉サービスの基本報酬を今より細分化し、事業所の規模やケアの提供時間に応じて報酬を増額することにした。

     具体的には、主に重い障害がある利用者を5人以下に絞って手厚いケアを行う事業所の報酬区分などを新設する。従来20人まで利用できた施設の基本報酬が1人当たり1日1万2880円だったのに対し、新たな区分だと新年度以降に7~8時間ケアすれば1万6720円に増える。

     さらに医療的ケアを行う看護師らの人数に応じて加算し、入浴などの生活介護や、医療的ケアを行う場合の報酬も上乗せする。厚労省は今後、多くの事業者が参入し、家族の負担が軽減されると見込んでいる。

     東京都日野市にある生活介護事業所を運営し、医療的ケアが必要な重症心身障害児の親(41)は、「これまでは成人すると、お世話になる生活介護事業所が少なくて困っていた。今後、地元に事業所が増えるとありがたい」と語る。

     厚労省によると、在宅で療養する国内の医療的ケア児は推計2万人。医療的ケアが必要な成人の人数を示す公的な統計はなく、医療関係者は「数万人に上る」とみている。

     厚生労働省が新年度、医療的ケア児と家族を支える新たな施策に着手する。

     家族の多くは、子どもが幼い頃から、ケアで心身をすり減らしている。子どもが成人になると、
  •  感染力が強い麻疹(はしか)の患者が、国内で相次いで確認されている。世界的な流行の影響で、今年は海外渡航者を中心に少なくとも20人になり、昨年1年間の3分の2を超えた。子どものワクチン接種率が下がっており、専門家は感染の拡大を懸念する。

     「世界で流行している感染症です」。厚生労働省の関西空港検疫所は、入国エリアに各国の麻疹の感染状況などを示したポスターを貼り、自動音声でも注意を促している。2月24日にアラブ首長国連邦から到着した旅客機の乗客10人と、関空などにいた3人が麻疹と診断されたことを受けて警戒を強めている。

     日本は2015年、世界保健機関(WHO)から土着ウイルスが存在しない「排除国」と認められた。以後の感染は海外から持ち込まれたウイルスによる。厚労省などによると19年は744人の患者が報告された。コロナ禍の20~22年は各10人以下だったが、23年は28人に増加。今年は3月22日現在、8都府県で少なくとも20人になる。

     WHOによると23年、世界の患者は約32万人で前年の1・8倍だ。浜田篤郎・東京医大特任教授(渡航医学)は「コロナ対策に注力した結果、主に途上国で子どもの麻疹ワクチン接種が滞り、流行した」とする。

     麻疹の感染力は極めて強い。免疫を持たない集団では、1人が平均12~18人にうつすとされる。空気中に浮遊する粒子を吸う感染もあり、マスクや手洗いだけで予防できない。

     有効な対策は2回のワクチン接種だ。1990年4月2日生まれ以降は、公費助成がある定期接種を2回受ける機会があった。50歳代以上は、接種していなくても、幼少期に感染して免疫を持つ可能性が高い。

     現行の定期接種は1歳と小学校入学前の子どもだが、接種率は低下傾向にある。特に2回目は深刻だ。2022年度は過去10年で最低の92・4%となり、流行を防ぐための目標値「95%以上」を下回った。神奈川県衛生研究所の多屋馨子所長は「定期接種の対象年齢になったらすぐ接種してほしい。感染歴がなく、母子手帳などの記録から2回の接種が確認できない人は、免疫が不十分な可能性が高いので、海外渡航前にワクチン接種の検討が望ましい」と呼びかける。

     
  •  富士通は、AI(人工知能)を活用して防犯カメラの映像から認知症の患者を発見するシステムの開発に乗り出す。認知症患者の特徴的な歩き方をAIに学習させて映像から検出できるようにし、街頭や小売店などの防犯カメラに搭載して自宅や施設から出た患者を早期に発見できるようにする。2027年度以降の実用化を目指す。

     富士通子会社のリッジラインズが、国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)などと連携して取り組む。

     認知症患者は、意識せずに足を引きずったり、歩幅が狭くなったりする特徴があると言われている。認知症患者と、それ以外の高齢者の歩き方を比較して特徴を把握し、頭や腰、膝など約20か所の動きをAIに学習させる。

     富士通は、体操競技の選手の演技をAIで分析して採点を支援するシステムを国際体操連盟(FIG)と共同で開発し、国際大会でも実用化されている。この技術を応用して25年までにAIによる分析技術を確立させ、実用化に向けて精度を高めていく方針だ。
  •  NECと東京医科歯科大は21日、AI(人工知能)を活用し、スマートフォンで撮影した人の動きや問診結果などから腰痛の原因を分析する技術を開発したと発表した。症状を改善する体操などの提案も行う。2024年度に実証実験を行い、その後は自治体や企業向けの販売を目指す。

     AIや画像認識に関するNECの技術とデータ化した東京医科歯科大の医学的知見や理学療法士の知識を活用する。

     新技術では、撮影する角度によるゆがみをAIが補正し、骨格を高精度に推定する。さらに、前屈や体をひねる動きを撮った映像から、腰や股関節といった体の部位ごとに「屈曲不足」などの分析を行う。腰痛の原因は、分析データと問診結果を組み合わせて突き止める。原因に応じて、約30種類の運動プログラムから適したものを提案する。

     腰痛は慢性化することも多い。時間や場所の制約をなくし、腰痛の改善に適切な運動を促すことで、症状の悪化や再発の防止につなげていくという。
  •  政府は、世界保健機関(WHO)、世界銀行と連携し、途上国の保健医療強化に向けた人材育成を担う国際機関を国内に整備する方針を固めた。2025年度の設立を目指している。複数の政府関係者が明らかにした。

     新たに整備する国際機関は、全ての人が適切な保健医療サービスを支払い可能な費用で受けられる「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)」の拠点となる「UHCナレッジハブ(仮称)」。途上国の保健や財務を担う官僚など、各国から人材を招き、研修を実施する方向で調整している。「健康への投資」の重要性を学んでもらい、保健医療の財政強化を図ることなどを想定している。先進国などからの支援ありきから脱却し、途上国が自国の財源で医療資源を拡充するようになることを目指す。

     社会全体で支え合う日本の「国民皆保険制度」や介護サービスの仕組みは、各国で先進事例として知られている。医療と介護の連携など、日本の先行的な取り組みやノウハウも各国に共有する。

     政府は今後、拠点の設置場所や研修プログラムの内容、事務局の体制などについて、WHO、世界銀行と協議する。25年度当初予算案に関連経費を要求する方向で、調整を進めていく考えだ。

     UHCは2012年、国連総会で国際社会の共通目標として掲げられた。予防や治療などの基礎的な医療サービスは、医療機関や人材の量と質で、国や地域間に大きな格差があり、長年、問題視されている。全世界的な新型コロナ禍では、重要性が再認識された。各国で感染症対策を強化すれば、次なる危機で、自国内に流入する確率を低くすることにつながる。昨年5月に広島市で開かれた先進7か国首脳会議(G7サミット)の首脳声明でも、「UHCの達成に向けた取り組み」が盛り込まれていた。

     ◆ ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC) =誰もが必要な医療を、必要な時に、負担可能な費用で受けられること。世界保健機関(WHO)が普及を進め、2030年までに全世界・地域での達成を目指している。WHOなどの報告では、全世界で、いまだ人口の半分が健康を守るための基礎的サービスを受けられていないとされている。
  •  厚生労働省は19日、2022年12月末時点の女性医師が初めて8万人を超え、現在の方法で調査を始めた1982年以降最多を更新したと発表した。大学の医学部入試で女性の受験生を不利に扱っていたことが明らかになった18年以降、不公平な対応を改める動きが進んでおり、今後もさらに増える見込みだ。

     厚労省によると、22年の医師は34万3275人で、前回調査した20年から1・1%増え、過去最多だった。うち女性は20年から4・6%増えて8万1139人で、全体の23・6%を占めた。

     女性の歯科医師も1・9%増の2万7413人、薬剤師も0・9%増の19万9507人で、いずれも過去最多だった。
  •  4月に始まる「医師の働き方改革」を前に、医療現場が抱える課題を探る連載「2024年の医師 働き方改革」にメールやLINEで多くの反響が寄せられた。過重労働の解消を訴える医療関係者の声のほか、改革による医療への影響を懸念する声もあった。

     勤務医の残業時間はこれまで事実上の青天井だったが、4月以降、原則年960時間の上限が設けられる。連載では、本来は残業にあたる時間を知識や技能を習得するための「自己研さん」と扱われたり、「宿日直許可」で宿直中に働いても残業とみなされなかったりし、改革が骨抜きにされかねない医療現場の実情を伝えた。

     関西の公立病院に勤務する40歳代の外科部長は「改革は実態を伴っていない」とメールを寄せた。

     勤務先は昨年、労働基準監督署に申請し、宿日直許可を得た。許可は宿直中に十分睡眠が取れることなどが条件だが、実際はほとんど睡眠は取れていない。しかし、外科部長は労基署には「宿直中は自宅より眠れます」と説明したという。

     許可を取らなければ、宿直中は労働時間と扱われ、たちまち残業の上限に抵触する。そうなると、残業時間を抑えたい大学病院から医師の派遣を受けられなくなる。

     外科部長は「派遣が止まるとシフトが回せなくなり、大学病院の医師にとっても収入が減ってしまう。医療関係者の多くが目をつぶっている」と打ち明けた。

     労働時間の削減で、各地で患者の受け入れを停止したり、土日の診療を休止したりする影響が出ている。

     中部地方の病院で働く60歳代の男性医師は「労働時間の削減は大切だが、医師は命を守る仕事。働く質を高める視点が不足しているのではないか」と訴える。

     国はデジタル技術などを使った業務効率化を医療現場に求めているが、病院によって対応はまちまちだ。

     男性は「働いている医師と働いていない医師の差が大きい。どう医療サービスを維持していくか、あるべき働き方を医療界全体で考える必要がある」と話した。

     業務効率化と並んで必要なのが、医師の仕事を看護師らに振り分ける「タスクシフト」だ。国は高度な医療を担える「特
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