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ドクターズゲートの配信する医療ニュースについて
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  •  激しいせきが続く百日せきの流行が拡大している。感染症を監視する国立健康危機管理研究機構によると、今年の累計患者数は3月30日時点で4771人(速報値)に達し、2024年1年間の4054人をすでに上回った。専門家は「重症化を予防するため、子どものワクチン接種を検討してほしい」と呼びかけている。

     百日せきは、細菌によって引き起こされ、主にせきやくしゃみなどの飛沫でうつる。せきで呼吸困難になることがあり、生後6か月未満の乳児が重症になりやすく、肺炎や脳症などを引き起こすと命にかかわる。感染症法で、18年から全ての患者を把握することになった。

     今年の患者数は1月6~12日に135人が確認されて、その後も増加傾向が続く。直近1週間の3月24~30日には578人と、18年以降で最多となり、都道府県別では新潟が73人、兵庫が36人、沖縄が35人となっている。治療には抗菌薬が使われるが、薬が効きにくい耐性菌が大阪や沖縄などで見つかり、国内で広がっている恐れがある。

     百日せきを含む5種混合ワクチンは、公費による定期接種の対象で、生後2か月から2歳半頃までに4回の接種が標準的となっている。日本小児科学会は、乳児の早期接種と、小学校入学前と高学年での任意接種を促している。

     浜松医科大の宮入烈教授(小児科学)は「コロナ禍では流行が抑えられ、免疫を持つ人が少なくなっている。ワクチンの効果が薄れる時期の追加接種も検討してほしい」と話している。
  •  iPS細胞(人工多能性幹細胞)から心臓の筋肉(心筋)の細胞シートを作って心臓病の患者に移植する治療法について、大阪大発の新興企業「クオリプス」(東京)は8日、細胞シートの製造販売承認を厚生労働省に申請した。iPS細胞を使った医療用製品の承認申請は世界初とみられる。

     対象となるのは、心筋梗塞などで心臓の動きが悪くなる「虚血性心筋症」の患者の治療。悪化すると心臓移植などが必要になるが、国内では臓器提供者が少ない現状がある。

     同社の最高技術責任者を務める阪大の澤芳樹・特任教授らは、人のiPS細胞から心筋細胞を作り、直径3・5~4センチ、厚さ0・1ミリのシートを作製。2020年1月~23年3月、阪大病院など4施設で患者計8人に対し、1人あたりシート3枚(細胞数は計約1億個)を心臓に貼り付ける治験を行った。

    澤特任教授や同社によると、移植を受けた8人全員で安全性を確認。移植後26週よりも52週の方が症状の改善がみられ、社会復帰も果たしているという。

     同社の草薙尊之社長は「ようやく第一歩を踏み出すことができた。一日も早く承認をいただき、患者さんに治療を届けたい」と話している。同社が作製したiPS細胞由来の心筋細胞のシートは、13日開幕の大阪・関西万博で展示される。

     iPS細胞を活用した医療用製品の開発は国内外で進み、製薬大手の住友ファーマなどが今年中にも、パーキンソン病の患者に移植するiPS細胞由来の神経細胞について承認申請を目指している。

     八代嘉美・藤田医科大教授(幹細胞生物学)の話「既存の治療では改善が見込めない患者に対し、治療の選択肢が増えれば大きな意義がある。iPS細胞の技術を新たな医療として申請できる段階に来たのは画期的なことだ」
  •  体調不良で救急を受診すべきかどうかを対話型AI(人工知能)サービス「チャットGPT」に答えさせた助言について、利用者が不正確に解釈する恐れがあるとの見解を日本救急医学会がまとめた。同学会は、判断に迷う際は医療関係者に相談し、分かりやすい言葉で解説してもらうことが必要だとしている。

     同学会は昨年、症状から緊急度を判定する総務省消防庁の救急受診ガイドの事例を使い、チャットGPTに救急受診の必要性を尋ねた。得られた回答について、救急の専門医ら7人が評価し、医療関係者以外の157人にどう解釈したかをアンケートした。

     その結果、胸の痛みが30分以上続くなど緊急度が高い314例のうち97%で合理的な理由を示した上で判断しており、回答は適切と専門家から評価された。一方、医療関係者以外の人が回答を見て「救急受診が必要」と解釈したのは43%だった。緊急度の低い152例では、回答の89%が専門家から適切とされたが、医療関係者以外の人で「救急受診が不要」と判断したのは32%だった。

     調査を行った東京慈恵医科大の田上隆教授(救急災害医学)は「対話型AIの回答の精度は思ったより高かったが、利用者に正しく解釈されない恐れがある限り、過度な依存は避けるべきだ」と指摘している。
  •  東京都墨田区の社会福祉法人「賛育会」は31日、運営する賛育会病院で、親が育てられない子どもを匿名で預ける「いのちのバスケット」(赤ちゃんポスト)と、妊婦が病院の担当者にのみ身元を明かして出産する「内密出産」の受け入れを始めたと発表した。国内の医療機関では熊本市の慈恵病院に続いて2例目。

     同会によると、いのちのバスケットは生後4週間以内の子どもが対象で、病院1階に受け入れ専用の部屋を設けた。子どもが預けられた場合、病院は児童相談所(児相)と警察に連絡。児相が乳児院などにつなぐ。

    東京都墨田区の社会福祉法人「賛育会」は31日、運営する賛育会病院で、親が育てられない子どもを匿名で預ける「いのちのバスケット」(赤ちゃんポスト)と、妊婦が病院の担当者にのみ身元を明かして出産する「内密出産」の受け入れを始めたと発表した。国内の医療機関では熊本市の慈恵病院に続いて2例目。

     同会によると、いのちのバスケットは生後4週間以内の子どもが対象で、病院1階に受け入れ専用の部屋を設けた。子どもが預けられた場合、病院は児童相談所(児相)と警察に連絡。児相が乳児院などにつなぐ。区は戸籍を作成し、区長が命名する場合もある。

     内密出産についても、国の指針に沿って行政と連携する。子どもは病院から連絡を受けた児相が保護。成長して出生の経緯などを知りたくなった場合に備え、病院は母親の身元情報などを保管する。出産費用は原則、母親側に負担を求めるが、相談に応じるとした。

     31日に記者会見した賛育会病院の賀藤均院長は、「赤ちゃんの遺棄や虐待死などを回避するための緊急で最終的な手段」と述べた。

     慈恵病院では2007年に赤ちゃんポストの運用を始め、24年3月末までに179人が預けられた。19年に導入を表明した内密出産では、21年12月からの3年間で約40人が生まれた。
  •  病院を受診した患者の約4割は診察までに30分以上待たされる一方、診察時間は10分未満で終わるケースが7割近くに上ることが、厚生労働省が公表した2023年の受療行動調査で明らかになった。

     調査によると、外来で訪れた病院での待ち時間について、「30分以上」と答えた患者は43%に上っており、大規模な病院ほど割合が高い傾向にあった。診療などの満足度を尋ねると、待ち時間について26%が「不満」を感じていた。

     一方、外来での診察時間を「10分未満」とした患者は69%だった。ただ、診察時間について「不満」と回答したのは7%にとどまっていた。

     病気別では、循環器や呼吸器の病気で診察時間が短く、「10分未満」が7割を超えた。消化器や精神の病気での診察時間が長くなる傾向があり、「30分以上」との回答が、消化器疾患の9%、精神疾患の7%を占めた。

     受療行動調査は、医療機関を利用した患者に状況などを聞き取るもので、厚労省が3年ごとに実施している。今回の調査は23年10月17~19日、全国の488病院を訪れた患者に調査票を配布し、10万3630人分の有効回答を得た。
  •  厚生労働省は24日、全国約5000か所の定点医療機関から10~16日の1週間に報告された新型コロナウイルスの感染者数が1医療機関あたり3・85人だったと発表した。前週(4・07人)の0・95倍となり、6週連続で減少した。

     一方、インフルエンザは1医療機関あたり2・23人で、前週(2・02人)の1・10倍と、2週連続で増加した。都道府県別では新潟が5・86人と最多だった。
  •  脳死者からの臓器を移植する施設が人員や病床の不足などを理由に臓器の受け入れを断念している問題を巡り、手術実績で国内トップの東京大病院が2025年度、移植専門の外科医ら8人を採用する方針であることがわかった。指導者として移植に携わる人材を育成し、日本の移植医療の底上げを図りたい考えだ。

     同病院は、移植医療で実績のある外科、内科、麻酔科、集中治療の医師計8人を採用。チームで心臓と肺、肝臓の移植手術を担う。同時に、移植手術の経験を積む希望を持ち全国から集まる医師の指導にあたる。

     採用にかかる費用は、同病院の男性患者(68)からの寄付金5億円を充て、移植専門の講座も開設する。開設期限は27年度末だが、追加の寄付などで予算が確保できれば、延長を検討する。

     このほか、▽移植優先の手術室の整備▽移植手術の前後に患者が入る集中治療室の整備(3床程度)▽移植手術を補佐する臨床工学技士や臨床検査技師の採用▽移植後の患者の健康状態を把握するシステムの開発――なども予定している。

     同病院で、脳死者から提供された臓器の移植手術は23年が心臓、肺、肝臓で計88件、24年は計100件となった。いずれも全国最多だが、移植を希望する患者は24年12月時点で515人が待機している。

     一方、移植手術は、外科医などが一般診療と両立しながら実施している。臓器提供の打診があっても、医師ら人員や病床などのやりくりがつかず、23年は3臓器で36件、24年もほぼ同じ水準で移植手術を見送った。同病院の23年度の収支は11・8億円の赤字で、移植医療も含め、増員や増床の余裕はないという。

     講座の開設を担当する佐藤雅昭教授(呼吸器外科)は、「移植に携わる医師の育成は大きな課題だ。人材養成の『東大モデル』を築きたい」と話している。

     東京大病院は、移植の経験を積むことを希望する医師を全国から受け入れ、育成する。育った人材が各地域で移植を担うようになることで、日本の移植医療全体が大きく前進する可能性がある。

     東大のように多くの移植希望者を抱える施設は、臓器の受け入れ要請の集中で、移植を担う医師らスタッフや手術室のやりくりが
  •  厚生労働省は、障害者に配慮した医療機関を探しやすくするため、情報提供の拡充に乗り出す。月内に医療法施行規則を改正し、障害者向けの駐車場の台数など、新たな項目の報告を全ての病院、歯科診療所、助産所などに義務づける。医療情報ネット「ナビイ」を改修し、来年4月から公表する方針だ。

     ナビイは、同省と都道府県が管理・運営するインターネットの検索システムで、診療科目や現在地、受付時間などから、医療機関を探すことができる。現在も駐車場や車いす対応のトイレの有無などは表示されるが、障害者団体から「障害を理由に、外来診療を断られることがある」などの声が出ており、障害者が利用しやすい医療機関を見分けられるようにしてほしいとの要望が寄せられていた。

    新たに医療機関に報告を義務づけるのは、電話・メールによる診療予約の可否や、入院中に家族が付き添えるかどうか、障害に関する研修を職員に実施しているか、手話通訳ができる人がいるか、筆談や音声認識アプリの活用、点字や代筆による支援を行っているかどうかなど。ナビイでは改修後、聴覚、視覚、言語などの障害別の配慮を分かりやすく表示する予定だ。
  •  慶応大などの研究チームは21日、脊髄損傷で体がまひした患者4人にiPS細胞(人工多能性幹細胞)から作製した細胞を移植した世界初の臨床研究で、2人の運動機能が改善したと発表した。2人は食事を自分でとれるようになり、うち1人は立つことができたという。チームは「移植した細胞が損傷を修復した可能性がある」とみている。

     臨床研究を行ったのは慶大の中村雅也教授(整形外科)、岡野栄之教授(生理学)らのチーム。横浜市で開かれている日本再生医療学会で結果を報告した。

     発表によると、患者は受傷後2~4週間の18歳以上の4人で、受傷した首や胸から下の運動機能や感覚が完全にまひした。チームは健康な人のiPS細胞から神経のもとになる細胞を作り、2021~23年、患者1人あたり約200万個の細胞を傷ついた脊髄に移植。患者は機能回復を促す通常のリハビリなどを続けた。

    移植の約1年後に有効性を検証した結果、運動機能の5段階のスコアが1人は3段階、1人は2段階改善した。残る2人は治療前と同じスコアだったが、改善はみられたという。

     今回の臨床研究は安全性を確認するのが主な目的で、重い健康被害は確認されなかった。有効性はさらに精査する。チームはまひが固定した慢性期患者を対象にした治験を27年に行う方針を明らかにした。脊髄損傷は交通事故などが原因で、国内の新規患者は年間約6000人。慢性期の患者は10万人以上とされる。
  •  筑波大付属病院(茨城県つくば市)は19日、同病院で約3年にわたり体外式補助人工心臓(体外式VAD)を装着し、心臓移植を待っていた10歳代の男児が昨年、移植に成功したと発表した。体外式VADには合併症を起こすリスクがあり、これを装着した子供が無事に移植に至ったのは県内初という。

     同病院によると、男児は、本来なら二つある心室が生まれつき一つしかない心臓病を患っており、心臓移植のほかに治療法がない重症心不全となって同病院に救急搬送され、体外式VADを装着してドナーが見つかるのを待っていた。昨年にドナーが見つかって東大医学部付属病院で心臓移植手術を受け、現在は自宅で過ごせるまでに回復しているという。

     補助人工心臓は、機能が落ちた心臓の血液の送り出しをポンプで助ける。大人はポンプを体内に埋め込めるが、体の小さな子供は埋め込むことができず、体外にポンプを設置する。胸部に穴を開けてポンプにつながる管を体内に通すため、傷口から細菌が入って感染症になるリスクがある。

     さらに1台約4000万円と高額で、17日現在、国内で利用できているのは12施設の22人のみ。装置が少なく、希望しても着けられなかったり、着けても合併症で亡くなったりする例もある。

     これまで移植医療の実績を積み重ねてきた筑波大付属病院では今回、医師や看護師、臨床工学技士や理学療法士ら他職種のスタッフが連携し、男児を24時間体制で見守ってきた。保護者は「医療チームの皆さんが、息子が前向きに過ごせるようにと心がけてくれたことは心の支えだった。安定して過ごせていることに感謝の気持ちでいっぱい」とコメントした。

     同病院の平松祐司院長は都内で19日に開いた記者会見で、「移植医療は高度な技術が必要で不安も伴うが、国や自治体からのサポートは少ないと感じる。今回のことが、(社会全体が)移植医療を考えるきっかけになってほしい」と述べた。
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