徳島大歯学部から生まれた徳島市のベンチャー企業「amidex(アミデックス)」が、デジタル技術を駆使した精巧な型枠を使うことで、虫歯治療や矯正などで歯科医院に「削らない治療」をしてもらうサービスを提供している。「未来歯科治療」と名付け、全国で導入が広がっている。(吉田誠一)
従来の虫歯治療では、周囲の健康な歯の部分まで大きく削って型を取り、銀歯やセラミックをはめるのが中心。接着に使うセメント部分は再び虫歯になりやすく、再治療を受けるケースも多い。
近年は詰め物に使うコンポジットレジン(CR)というセラミックとプラスチックの混合素材の開発が進み、それを固めるペン形のLED光照射器の進化もあり、治療の幅が広がった。小さな虫歯を詰めるだけだったCR治療が歯の形を整えたり、再構築したりする治療へと発展してきている。
白いペースト状のCRを注射器形の注入器で歯に塗り、光を当てて固める。直接歯に接着させるため、健康な歯を削ったり、型取りして作った詰め物を削って修正したりする手間が不要になる。一方で、治療範囲が広くなれば、美しく仕上げるのに歯科医の高い技術が必要で、治療時間が長い難点もある。
同社は国産CRとデジタル技術の進化を背景に、歯科医院で簡単に美しくCR治療を仕上げてもらおうと、「未来歯科治療」として社名と同じ新サービス「アミデックス」を始めた。
各地の歯科医が患者の口腔内をスキャナーで読み取り、データを同社に送信。同社の専門医、歯科技工士らのチームが患者に合わせた歯の型をパソコンで設計し、3Dプリンターで透明な樹脂製の型枠(特許出願中)を作る仕組み。
各歯科医院では、送られてきた透明な型枠を患者の歯に添え、歯の色に合わせたCRを注入。LED光で固めれば、短時間で周囲の歯と見分けがつかないように仕上がる。病気やけがで歯が複数本なくなったり、欠けたりした歯でも、アミデックスで隣の歯にCRを直接接着させて新たな歯を作ることも可能だ。
昨年4月からアミデックスを解説するセミナーを開催、オンライン配信もして、受講した歯科医にサービスを提供。全国で130以上の歯科医院が導入し、利用が広がっている。
厚生労働省は、情報機器に不慣れな高齢者らが、公民館や駅の中など身近な場でオンライン診療を受けやすくする体制づくりに乗り出す。診療所の開設許可がなくても、受診施設として届け出れば、オンライン診療を受ける場として認める。一方、診療の法令基準を設け、医療機関に対し順守を義務化して安全性の向上を図る。24日に召集される通常国会に医療法改正案の提出を目指す。
スマートフォンやパソコンの画面越しに行うオンライン診療は、新型コロナウイルスの流行を契機に広がっている。厚労省によると昨年10月現在、医療機関の1割にあたる約1万2500か所で対応している。
患者の通院の負担が減るだけでなく、地方の患者が、都市部に集中する専門医の診察を受けることも容易になる。医師偏在の対策として注目される。
厚労省は今回、公民館や郵便局、駅の中などで、オンライン診療を受けられる新たな仕組みをつくる。施設は、都道府県に届け出た上で個室や仕切りで患者のプライバシーを守れるスペースを設けるなど体制を整える。診療を担う医療機関は、施設の体制をチェックし、患者の急変時に受け入れる近隣の医療機関を確保する義務を負う。
現在、公民館などの施設がオンライン診療に対応するには、都道府県から診療所の開設許可を受ける必要があり、ハードルが高い。許可が不要になれば対応する施設が増え、高齢者らが施設の職員らの助けを借りて、オンライン診療を受けやすい環境が整う。働き盛りの世代が、移動の合間に施設に立ち寄って受診することも可能となる。
また、オンライン診療を行う医療機関の届け出制度を創設、現行の指針を踏まえて法令基準を定める。基準には、医師と患者がお互いに身分証明書を示し、本人確認を行うほか、効果や副作用に応じた薬の処方、急変時に対面診療できる体制を盛り込む。
違反の疑いがあれば、都道府県が調査、改善命令を出せるようにする。従わない場合の罰則も検討している。
2024年夏、厚労省の有識者検討会で、医師でない職員が美容医療のオンライン診療を担った疑いがある事例などが報告され、安全対策の強化が求められていた。
民間信用調査会社の帝国データバンクは22日、2024年に倒産や休廃業・解散した医療機関が786件で、比較可能な00年以降で最多だったと発表した。新型コロナウイルスの流行に伴う受診行動の変化や物価高騰などによる収入減のほか、経営者の高齢化などの影響としており、増加傾向が続くとみている。
786件のうち倒産は64件、負債総額は282億4200万円だった。これまでの倒産件数の最多は09年の52件だった。
倒産に至った主な理由は、「収入の減少」が41件(64%)を占めた。背景には、コロナ禍をきっかけに受診控えや受診先を見直す患者が増えたことや、コロナ関連の補助金の削減、医薬品や検査キットなど医療資材の高騰があると分析した。
休廃業・解散に至った722件のうち診療所は587件と8割にのぼった。残りは歯科医院118件、病院17件だった。
同社が全国の診療所の経営者約1万人の年齢を調べたところ70歳以上が54・6%だった。同社は「経営者の高齢化が進み、健康問題や死亡により、急速に診療所の廃業が増えていくだろう」としている。
エボラウイルスなど危険な病原体を扱うために長崎大が建設した「高度安全実験(BSL4)施設」について、政府は病原体の管理者として同大を指定できるようにした政令改正案を閣議決定した。
決定は21日付で、月内にも長崎大が正式に指定される。予防法や治療法の開発目的で研究が行えるBSL4施設は国内初となる。
BSL4施設は、天然痘ウイルスなど危険性が最高ランクとされる病原体を扱うことを想定し、職員の感染防止や病原体の流出防護など高度な安全対策が施されている。政令改正にあたっては厚生労働省が安全対策などを確認し、昨年、同大の指定を認めた。実際に危険な病原体を同大に移送するには、改めて厚労相の承認などが必要になる。
すでにBSL4施設として稼働している国立感染症研究所村山庁舎(東京都武蔵村山市)は、地元との合意で患者の診断や治療の目的に特化している。
厚生労働省などは22日、マイナンバーカードに保険証の機能を持たせた「マイナ保険証」を巡り、最大で患者37人分の薬剤情報が、本人が同意していないにもかかわらず医療機関側に提供されていた可能性があると発表した。
発表によると、昨年10月から今年1月15日の間に、訪問診療で医療機関が患者のマイナ保険証の確認を行った際、患者が過去に処方された医薬品情報の提供に同意していなかったものの、医療機関側に提供されていた事例が確認された。患者の自宅などで医療機関側が使用する専用アプリの不具合が原因で、同意したとして登録されていた。アプリの不具合はすでに修正されたという。
厚労省は「今回の事象の経緯を検証し、再発防止策を実施したい」としている。
厚生労働省は17日、全国約5000か所の定点医療機関から6~12日の1週間に報告されたインフルエンザの感染者数が、1医療機関あたり35・02人だったと発表した。前週(33・82人)の1・04倍で2週ぶりに増加に転じた。今後も流行が続く可能性があり、専門家は「今からでもワクチンの接種を検討してほしい」と呼びかけている。
日本感染症学会の石田直・インフルエンザ委員会委員長は「コロナ禍でインフルエンザが流行せず、ウイルスから防御する抗体の保有率が低下していることが今季の流行要因の一つではないか」と分析する。現在流行しているウイルスは、2009年に「新型」として流行した「A型」(H1N1)で、2月以降は、「B型」が広がる可能性がある。
インフルエンザの感染拡大を受け、厚生労働省は17日、製薬会社や卸売業者の治療薬の在庫量について、12日時点で約1110万人分あると発表した。国立感染症研究所によると、定点医療機関の報告をもとに推計される6~12日の医療機関の受診者数は約145万人で、厚労省は「在庫は確保できており、医療機関は適切に発注してもらいたい」としている。
インフルエンザが猛威を振るっている。国立感染症研究所によると、昨年12月29日までの1週間の感染者数が1医療機関あたり64・39人と、過去最多となった。年末年始を挟んで感染者数が減ったものの、今後も流行が続く可能性がある。コロナ禍でインフルエンザに対する免疫力が低下していることが要因とみられる。
東京都渋谷区の「KARADA内科クリニック渋谷」では16日午前、発熱を訴える患者が次々と訪れた。1日30人ほどの発熱患者のうち、半数がインフルエンザと診断される。田中雅之院長は「年末には1日100~150人が受診に来た。感染状況には波があるので、再度、患者が増える可能性がある」と語る。
日本感染症学会の石田直・インフルエンザ委員会委員長は「コロナ禍でインフルエンザが流行せず、ウイルスから防御する抗体の保有率が低下していることが今季の流行要因の一つではないか」と分析する。感染研の調査では、コロナ禍の間に生まれた0~4歳の抗体保有率が低くなっている。
子どもはまれにインフルエンザ脳症を起こし、命に関わることもある。日本大の森岡一朗教授(小児科)は「けいれんを起こす、目線が合わない、ぼーっとしているなど、いつもと異なる様子が見られる時は、迷わず医療機関に受診を」と注意を促す。
現在流行しているウイルスは、2009年に「新型」として流行した「A型」(H1N1)で、2月以降は、「B型」が広がる可能性がある。型が異なると、再度感染する恐れもある。石田委員長は「今からでもワクチンの接種を検討してほしい」と呼びかけている。
政府は救急患者の搬送にあたり、患者情報を多数の病院と共有して短時間で受け入れ先を確保するシステムの全国展開を目指す。患者のたらい回しを回避する狙いで、一部自治体が先駆的に実施している搬送調整システムを全国に拡大させる。政府は、搬送時間の短縮によって、患者の救命率向上につなげたい考えだ。
新たな搬送調整システムについて、政府は2025年度にも希望する自治体から先行導入を始める方向だ。システムでは、現場に駆けつけた救急隊が患者の氏名や患部の画像などを入力し、医療圏を指定して送信すると、情報が圏内の病院に即時共有される。病院側は受け入れの可否をシステム上で返答し、救急隊は電話で最終確認を取って搬送する。
システムは、災害時に都道府県をまたいで医療機関の状況を共有できる「広域災害救急医療情報システム」(EMIS)を母体とし、平時でも使いやすい仕組みに改修することを検討している。独自の救急システムを構築している自治体との情報連携も目指す。
さらに、「マイナ保険証」とも連動させ、救急車内の端末でカードを読み取ると、登録された通院歴や処方薬などの情報が病院に共有されるようにする方向だ。
厚生労働省と総務省消防庁は近く、一部自治体の協力を得て、救急隊がウェブ上で患者情報などを入力・送信し、医療機関と共有するモデル事業を実施する。結果を踏まえて、来年度から希望自治体を募り、新システムの実装に着手する方針だ。
従来の搬送調整では、救急隊が病院に個別に電話連絡し、搬送先を探す方法が一般的だった。受け入れ不可の場合は別の病院に改めて電話をかける必要があり、搬送開始まで長時間かかるケースも多かった。
政府は、一部自治体が独自のシステムやアプリで行っている搬送調整を国が用意することで、財政事情が厳しい自治体でも採用できる状況を整えたい考えだ。システムの活用によって各病院の病床の 逼迫ひっぱく 度合いが可視化されるため、救命救急医療にあたる医療機関ごとの負担の偏りが解消される効果にも期待を寄せている。