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ドクターズゲートの配信する医療ニュースについて
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  •  低体重で生まれた人は、標準範囲となる3キロ台で生まれた人と比べ、中高年になった時に心筋梗塞などの心血管疾患や高血圧、糖尿病になりやすいとする大規模調査結果を、国立成育医療研究センター(東京)などの研究チームがまとめた。1・5キロ未満では心血管疾患が1・76倍、高血圧が1・29倍、糖尿病が1・53倍で、軽いほど3疾患のリスクが高まった。

     海外では、出生時の低体重と大人になってかかる病気の関連を示す報告が出ている。チームは国内のデータで裏付けようと、2011~16年に40~74歳の約11万人が協力したアンケート結果を分析した。

     その結果、40~74歳時に3疾患になるリスクは1・5キロ未満だった人が最も高かった。1・5~2・4キロ台だった人も、心血管疾患になるリスクは1・25倍、高血圧は1・08倍、糖尿病は1・26倍と高かった。

     国内では2・5キロ未満で生まれる低出生体重児が全体の1割を占め、先進国の中で高い水準にとどまる。主な背景には若い女性のやせ志向による母体の栄養状態の悪化がある。同センター社会医学研究部の森崎菜穂部長は「妊娠前から適切な食生活を心がけてほしい。低体重で生まれた人も、生活習慣の乱れに気をつければ、リスクは抑えられる」と話している。

     福岡秀興・福島県立医科大特任教授(産婦人科学)の話「糖尿病など生活習慣病の発症に出生時の体重が影響することを示す極めて重要な成果だ。低出生体重児の割合を少なくする取り組みを社会全体で進めていく必要がある」
  •  精子や卵子を使わずに、受精卵が胎児になるまでの初期段階の「胚」に近い状態を人の細胞で作り出すことに成功したと、京都大などのチームが発表した。受精卵が子宮に着床する前の段階から着床後までの9日間の変化を連続的に再現できたという。不妊や流産、先天性疾患などの仕組みの解明に役立つと期待される。論文が5日、科学誌ネイチャーに掲載された。

     精子と卵子が融合してできる受精卵は、受精後5~7日頃の「胚盤胞」の段階で子宮に着床し、胎児へと成長する。生命倫理の観点から、精子と卵子を受精させることなく、このような生命の初期段階のモデルを作ったとする報告が近年、欧米などで相次いでいたが、着床前か着床後の一方の再現にとどまっていた。

     京都大iPS細胞研究所の高島康弘准教授(幹細胞学)らは、特定の遺伝子を操作して強く働かせた人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)やES細胞(胚性幹細胞)を、操作していない細胞と混ぜて培養した。すると球状の集合体になり、4日目には着床直前の胚と似た構造ができた。

     さらに培養の方法を工夫すると、9日目には集合体の内部に、着床後の胚と同じような多彩な細胞が出現した。それぞれ体の様々な臓器や、精子・卵子のもとになる細胞と類似していた。

     集合体には受精卵からできる胎盤になる細胞がないため、母胎に戻しても着床できず、クローン人間のような新たな生命が誕生する懸念はないという。高島准教授は「胚の成長を研究するモデルとして生命の不思議に迫れる可能性がある」と語る。

      東北大の有馬隆博教授(分子生物学)の話 「人の体が形成される初期の仕組みは不明な点が多く、人に近い形で再現できた意義は大きい。不妊などの研究につなげるには、さらなるモデルの改良と解析技術の進歩が必要だ」
  •  【ドバイ=渡辺洋介】アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開かれている国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)は3日、COPで初めて設けられた「健康の日」を迎え、地球温暖化が健康に与える影響や対策を議論した。議論に先立ち、2日にはアジア開発銀行やロックフェラー財団などが、気候や健康の危機に対処するための資金として10億ドル(約1470億円)を投入するとの誓約も発表された。

     世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム事務局長は3日の会合で、「気候変動がもたらす健康への脅威は差し迫った具体的なものだ。強靱な保健システムを構築することは重要」と訴えた。

     温暖化の進行によって、蚊が媒介するデング熱などの感染症リスクは高まっている。WHOの統計では、デング熱の感染例は2022年には00年の8倍を超える約420万件に達した。また、22年までの10年間で暑さに関連して死亡した65歳以上の人は、00年までの10年間と比較して85%増加したとの報告がある。大規模化した山火事による大気汚染などもあり、COP28では気候変動と健康に関する議論の場が設けられた。

     温暖化対策の中心に健康対策を据える「気候と健康に関する宣言」には、日本や米国など先進国から途上国まで120か国以上が賛同し、健康への影響に対して危機感を強めていることを象徴する場となった。「ビル&メリンダ・ゲイツ財団」を通じて世界の感染症対策や貧困などの問題に取り組む米マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏も登壇し、「健康と気候は密接に結びついている。気候に関する取り組みは、人間の状態の改善にもつながる」と述べた。

     会場内の一角では医療関係者らが地球を心臓マッサージで「蘇生」させるパフォーマンスもあり、参加者から「化石燃料の段階的廃止が健康問題の解決につながる」などの声が上がった。
  •  熊本市南区の熊本中央病院が、自動運転機能を備えた電動車いすを導入した。足腰が不自由で院内の移動が難しい患者向けのサービスで、病院スタッフの介助の負担軽減も図る。九州での導入は初めてという。那須二郎院長は「負担が軽減した分を医療ケアの向上につなげたい」と期待を込めた。(小波津晴香)

     付属のタッチパネルで行き先を選ぶと、車いすがゆっくりと動き出した。病院で11月6日に導入され、2人が試乗した。2階にある外来受付から出発し、速さは時速2キロほど。備え付けた四つのセンサーが通行人らを感知すると、自動で減速する。ぶつかりそうになって一時停止すると、「道をおゆずりください」と自動音声が流れた。

     目的地に着くと、自動で乗車地点まで戻っていった。介護経験がある熊本市の女性(71)は、エスカレーター前まで約70メートルを体験走行し、「病院で迷うこともあり、不便に思っていた。とても助かる」と笑顔で話した。

     製品は、電動車いすの製造会社「WHILL(ウィル)」(東京)が開発した。2020年に羽田空港で初めて実用化され、成田、関西国際空港などで利用されている。医療機関への導入は熊本中央病院が全国で3例目という。年齢制限はなく、運転免許がなくても利用できる。

     9月に行った実証実験では、試乗した62人のうち、53人が満点の5点を付けた。「作りがしっかりしていて安心」「体がふらつくのであって良かった」との声があった。

     同病院では2台を導入し、エスカレーター前と、外来受付前に1台ずつ配置した。今後の運用実績をみながら、追加導入や運用エリアの拡大、エレベーター移動にも対応する入院患者向けのサービスの提供などを検討するという。
  •  厚生労働省は1日、全国約5000の定点医療機関から11月20~26日の1週間に報告された新型コロナウイルスとインフルエンザの感染者数を発表した。

     新型コロナは1医療機関あたり2・33人と、前週(1・95人)の1・19倍で、12週ぶりに増加に転じた。9月上旬から減少が続き、感染状況は落ち着いていた。都道府県別では、北海道が6・61人で最多だった。

     インフルエンザは1医療機関あたり28・30人だった。前週(21・66人)の1・31倍と2週連続で増加し、「警報」の基準(30人)に近づいている。都道府県別では、北海道の51・90人、長野の51・83人など、23道県で警報レベルを超えた。

     厚労省の担当者は「新型コロナ、インフルともに感染拡大が懸念されるので、必要に応じて、こまめな換気や手洗い、マスク着用などの感染対策を取ってほしい」と呼びかけている。
  •  厚生労働省は1日午前の中央社会保険医療協議会で、医療機関や薬局が卸売業者から医薬品を仕入れる市場価格(9月分)の調査結果の速報値を報告した。患者が医療機関や薬局で受け取る際の公定価格(薬価)より平均約6・0%安かった。調査結果を踏まえ、政府は医療費の抑制に向け、2024年度の診療報酬改定では「薬価」部分を引き下げる方針だ。

     診療報酬の改定は近年、「薬価」を引き下げつつ、医師や看護師らの人件費などにあたる「本体」を微増させ、全体をマイナスとする調整が行われることが多い。医療界は、「医療従事者の賃上げが急務」として「本体」の大幅な引き上げを主張している。

     一方、仕入れ価格と薬価の差は、前年度比で1・0%縮まり、診療報酬の前回改定時に参考にした21年度より1・6ポイント縮小した。材料費の高騰などが理由で、政府内では「薬価の大幅な引き下げは厳しい」(厚労省幹部)との見方が出ている。

     診療報酬のプラス改定は、国費の歳出増や保険料の負担増につながるため、財務省はマイナス改定を求めている。今後、年末の改定に向けて「薬価」と「本体」のバランスを含めた議論が本格化する見通しだ。
  •  厚生労働省は来年度、脳死判定を受けたドナー(提供者)からの臓器摘出手術を行う地域の医療機関に、移植医療の実績が豊富な拠点病院から、臓器の状態をチェックする医師や、摘出手術に携わる看護師らを派遣する取り組みを始める。脳死判定から臓器摘出まで一貫して人材不足の病院を支援する。ドナー不足の中、提供の意思を確実にいかし、脳死移植の増加につなげる狙いがある。

     脳死判定から臓器の摘出までは、臓器が移植に適した状態かの評価や、ドナーの血圧などの全身管理が必要だ。集中治療医や看護師、移植医ら多様な専門職が関わり、人手がいる。

     厚労省によると、臓器移植法の運用指針に基づき脳死下の臓器提供が可能な施設は3月現在で895か所で、その約半数(459か所)は臓器摘出までの体制が整っていない。救急医学が専門で移植医療に詳しい横田裕行・日本体育大教授は「人材確保が難しかったり、経験や設備が十分でなかったりする医療機関も少なくない。患者や家族に提供の意思があってもかなわない場合もある」と指摘する。

     厚労省は2019年度、大学病院などの拠点病院から地域の病院に医師や看護師らを派遣する連携事業を始めた。ただ、派遣された医療者の支援は脳死判定までとなり臓器の評価や摘出手術の人員不足は解消されず効果が限定的だった。

     そこで、拠点病院を従来型の病院と「移植医療支援室(仮称)」を持つ病院に再編し事業を拡充する。

     新たなタイプの拠点病院は原則、脳死ドナーからの臓器移植も実施することが条件だ。脳死の可能性がある患者が出た地域の病院に同室から、医師や看護師、臨床検査技師らを派遣して、臓器のチェックやドナーの全身管理、臓器摘出手術まで一連の流れに携わる。

     厚労省は、来年度予算の概算要求に支援室の人件費などを計上した。新たなタイプの拠点病院は、現在の拠点病院(17か所)や移植医療に積極的に取り組む病院の中から選ぶ考えだ。

     移植を望んで日本臓器移植ネットワークに登録する患者は10月末時点で約1万6000人いるが、移植を受けられる患者は年約400人にとどまる。
  •  厚生労働省の専門家部会は27日、米製薬大手ファイザーが開発した妊婦を対象としたRSウイルスワクチンについて、製造販売の承認を了承した。厚労省が近く承認する。生まれてくる乳児がウイルスに対する抗体を母親から受け継ぐことで、感染による重症化を防ぐ。米国では8月に承認されている。

     対象は、24~36週の妊婦。同社が公表した臨床試験結果によると、生後3か月以内の乳児について、ウイルスによる肺炎などの重症化リスクを8割下げる効果があった。

     国内では9月、英製薬大手グラクソ・スミスクラインが開発した60歳以上を対象にしたワクチンが承認されている。

     RSウイルスは、感染すると風邪のような症状が出て、免疫力が弱い乳児や高齢者では重い肺炎を起こすことがある。
  •  海外で承認された薬が日本で使えない「ドラッグロス」を解消するため、厚生労働省は、製薬会社が新薬開発を複数の国で進める「国際共同治験」の実施条件を大幅に緩和する。日本人で安全性を確かめる事前試験を求める独自ルールが障壁となり、欧米と比べ実施数が低迷している。このため、年内にも事前試験を原則不要とし、日本でも薬を迅速に使えるようにする。

     薬の承認を得るための臨床試験は一般的に3段階あり、少人数の患者らに薬を投与してから、最終段階は大人数を対象に実施する。

     国際共同治験は、それぞれの国で承認を得るために必要なデータを集めるもので、主に最終段階の試験で行われる。副作用や効果の人種差も調べる。欧米のメガファーマ(巨大製薬会社)を中心に実施されているが、医薬産業政策研究所によると、2000~21年の国別実施数で、首位の米国をはじめ、欧米各国が上位を占め、日本は23位にとどまる。

     これは、日本の独自ルールが妨げになっているとの指摘がある。日本が国際共同治験に参加する場合、厚労省は製薬会社に対し、原則として、事前に日本人で安全性などを確かめる臨床試験を実施するよう求めてきた。欧米ではこうした試験が必要となるケースはなく、多大な費用や時間がかかることから、欧米の製薬会社が国際共同治験の対象から日本を外すことにつながっているとみられる。

     そこで、このルールを見直し、患者が少ない小児がんや難病の薬、他の投与データで日本人での安全性を確保できると判断できる場合は、事前試験を求めないようにする。

     厚労省などによると、20年時点で直近5年に欧米で承認された新薬のうち、日本では72%(176品目)が未承認で、16年時点の56%(117品目)から増加した。日本での承認が遅れる「ドラッグラグ」にとどまらず、使えないままになる「ドラッグロス」へと事態が深刻化している。例えば、希少がんの「消化管間質腫瘍(GIST)」の治療薬「アバプリチニブ」は日本で使えない。

     これまでの事前試験で日本人特有の有害な影響が起きた事例はほとんど確認されていない。ただ、抗がん剤など重い副作用が起きやすく、臨床試験の情報も少ない場合は慎重に判断するよう促す。事前試験をしない場合は安全
  •  国立大学の約6割が入試制度で地元に就職することなどを条件にした「地域枠」を設けていることが、読売新聞の調査でわかった。「地域枠」は、若者の流出を食い止めたい地元と、優秀な学生を確保したい大学の思惑が一致した結果といえる。中でも地方で人材不足が課題となっている医学部と教育学部については、各大学とその地元で様々な工夫や努力がみられる。(北海道支社 宮下悠樹)

     「都会の大規模病院より、医師の少ない地方で若いうちから責任が重い仕事をするのが理想」

     北海道旭川市にある旭川医科大2年の山口大翔さん(21)は、医師不足に悩む地元の釧路市で地域医療を担いたいと考え、同大の地域枠を受験した。道東・道北地方出身で同地方での勤務という条件も、希望通りだった。共通テストで一定の水準を超えれば、個別の学力試験がなく論文や面接で受験できるのもメリットだったという。

     地域枠は、医師の偏在解消のため過疎地で一定期間働くことなどを条件に、2000年代に医学部で広まった。文部科学省によると、22年度に地域枠で入学した医学部生は私大を含め約1700人で、同学年全体の18%を占める。医学教育や地域医療に詳しい筑波大の前野哲博教授は「過疎地の医師不足解消に一定の貢献をしてきた」と話す。

    「地域枠は、小学校の教員になる意欲を持った方を対象としています」

     埼玉大で8月下旬、25年度の入学生を対象に教育学部に設ける地域枠の説明会で、大学職員が熱っぽく訴えた。教員は近年、長時間勤務の常態化など過酷な労働環境が問題視され、全国的に志望者が減少。埼玉県では小学校の教員が不足しており、県教育委員会やさいたま市教委の要望に大学が応えた形だ。

     高校側は好意的に受け止める。同大教育学部に毎年、合格者を出している県立川越女子高の進路指導主事は「意欲がある地元の生徒が入りやすくなるのはありがたい」と歓迎する。

     18歳人口は1992年度の205万人から減少し、2022年度には112万人に落ち込んでいる。こうした中、地域枠は各大学で増えている。広島大は今春の入学生から情報科学部で、三重大は来春から生物資源学部で導入。それぞれ地元で活躍するデジタル人材や農漁業関連
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