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ドクターズゲートの配信する医療ニュースについて
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  •  移植医療体制改革を検討してきた厚生労働省の臓器移植委員会は5日、移植希望者が移植を受ける施設の複数登録を可能にし、臓器あっせん機関の日本臓器移植ネットワーク(JOT)から業務の一部を新設法人に移行する最終案を了承した。脳死下の臓器提供数の増加で、移植施設が人員や病床の不足などから臓器の受け入れを断念している問題などを受け、抜本的に見直す。

     1997年の臓器移植法施行後初の大幅な改革となる。国内の待機患者は今年10月末現在で約1万6500人いる。移植施設が臓器受け入れを断念しても別の施設で移植を受けられるよう患者が登録する施設を現在の原則1か所から複数にする。今年度中にJOTのシステムを整備し、当面は登録できる施設を2か所までとする。

    患者が施設を選ぶ手がかりとして施設ごとの待機患者数や移植実施数なども公表する。移植後の患者の生存率といった移植成績に関する情報については、関連学会で検討を進めるとした。

     JOTから、臓器提供者(ドナー)家族への臓器提供の説明や同意取得などを切り離し、地域ごとに置く新設法人に移譲する。

     臓器提供の経験が浅い施設を支援する拠点施設を大阪府や北関東、甲信越などに設置する。

     また、知的障害などで意思表示が困難な15歳以上の人について、家族の臓器提供の同意があっても提供を見合わせるとしている臓器移植法の運用指針も改正する。本人の意思を丁寧にくみ取り、臓器提供の可否を判断するように見直す。

     同委員会での議論や障害者団体などからの意見を踏まえ、厚労省は、障害があっても意思の推定が可能であれば、臓器提供を可能とする方針を示した。今後、改正への意見を募るパブリックコメントを実施する。

     厚生労働省は5日、今年9月に公表した臓器受け入れ断念の初の実態調査結果について、2023年に人員や病床の不足など院内態勢が整わないことを理由に臓器の受け入れを断念したのは25施設から26施設に、移植が見送られた患者数は、のべ509人から803人に訂正すると発表した。

     集計ミスに加え、左右に一つずつある肺と腎臓について集計方法を変えたことが理由としている。
  •  iPS細胞(人工多能性幹細胞)から作った網膜の細胞を移植する臨床研究を進めてきた神戸市立神戸アイセンター病院は、早ければ来年1月にも、この治療を入院や検査の費用に公的保険を利用できる「先進医療」として厚生労働省へ申請することがわかった。認められれば、iPS細胞を使った細胞移植治療では初となる。

     神戸アイセンター病院の栗本康夫院長らのチームは、網膜を支える色素上皮細胞の層が変性して視力が低下したり、視野の中心部がゆがんだりする「網膜色素上皮不全症」の患者の目に、iPS細胞から作った網膜色素上皮細胞を、髪の毛ほどの太さのひも状に加工して移植する治療法の開発を進めている。

     この方法は手術が比較的容易で、移植した細胞が定着しやすいと期待されている。これまでに30~60歳代の男女の患者3人の網膜に移植を行い、安全性などが確認できた。見え方が改善した人もいるといい、栗本院長らは6日から大阪市で開かれる学会で、3人の治療後の詳しい経過を報告する。

     先進医療は、まだ実施例が少なく、保険適用されていない先駆的な治療や検査について、費用負担を抑えることで実施例を増やし、将来の保険適用を目指す仕組みだ。治療そのものの費用は患者や医療機関が負担するが、入院費など関連する医療費の一部は公的保険を使うことができる。

     チームは、移植する細胞の数を増やして患者15人に実施する新たな臨床研究を計画している。

     厚労省の再生医療の専門部会は昨年以降、この計画について先進医療の申請を認めるかどうかの検討を行っており、申請後は同省の先進医療に関する専門家会議で議論される。

     栗本院長は「先進医療になれば多くの施設で移植ができるようになり、より一般的な治療に近づく」と話している。
  •  新型コロナウイルスの治療薬「ゾコーバ」と「ラゲブリオ」について、厚生労働省は4日、妊娠する可能性のある女性への投与に際しては慎重に検討するよう添付文書に追記する方針を決めた。専門家調査会で了承された。胎児に悪影響が出る恐れがあるため、妊婦らへの使用は禁じられているが、投与後に妊娠が判明した事例の報告が続いており、処方する医師らに改めて注意喚起する。

     厚労省によると、投与後の妊娠判明事例は、今年10月末時点で、ゾコーバが計54人(うち今年度17人)、ラゲブリオが計19人(同2人)報告されている。改訂案では、投与前に十分な問診を行い、妊娠している可能性がないことを確認することや、投与の必要性を十分に検討することを求めた。
  •  医療費が高額になった場合に患者の自己負担を一定額に抑える「高額療養費制度」を巡り、厚生労働省は自己負担の上限額の引き上げ幅を5~15%とする方向で検討に入った。受診控えにつながらないよう、低所得者の引き上げ幅は抑制する方針だ。4日の自民党社会保障制度調査会や、5日の社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の医療保険部会で提示する。

     高額療養費制度は、1か月あたりの自己負担の上限額を超えた場合に超過額が払い戻される仕組み。現行制度では、医療費が月100万円かかった場合の自己負担額は、年収370万~770万円で約8万7000円、年収1160万円以上で約25万4000円となっている。

     11月の医療保険部会では「一定程度の引き上げ」を目指す方針が了承された。厚労省は引き上げ幅の検討を続けており、年末までに結論を得たい考えだ。

     上限額の引き上げには、現役世代の公的医療保険料の負担を軽減する狙いがある。現在、上限額は年収に応じ、70歳未満では五つ、70歳以上では六つに区分されているが、厚労省は区分も細分化する方針を示している。

     厚労省の試算によると、各区分で一律に5%引き上げた場合、1人当たりの保険料は年額600~3500円軽減される。15%引き上げた場合は、1200~5600円軽減される。厚労省は早ければ2025年夏に自己負担の上限を引き上げ、26年夏に区分の細分化にも取り組む考えだ。

     高齢化の進展や医療の高度化で、高額療養費の支給総額は12年度の2・1兆円から21年度には2・8兆円に膨らんだ。厚労省は、引き上げの理由として、賃上げなどを通じて世帯収入が増加していることや、物価上昇が続く中で現役世代を中心に保険料負担の軽減を求める声が多いことを挙げている。
  •  微熱や切り傷といった緊急性がないか低い症状で救急搬送された場合、病院が患者から「選定療養費」として原則7700円以上を徴収する取り組みが2日、茨城県で始まった。都道府県単位で制度として適用するのは初めて。軽症患者の搬送による救急業務の 逼迫ひっぱく は全国的な課題になっており、現場の負担軽減につながるかが注目される。

     軽症患者の救急搬送が多くなると、救急車の運用や病院の受け入れ体制が逼迫し、重篤患者の救急搬送が遅れて命を落とすことになりかねない。

     県内の救急搬送は2023年に14万3046件(速報値)と過去最多を更新したが、このうち47・9%が軽症だった。県は制度の導入により、搬送患者数が「2割ほど減る」とみる。

     選定療養費は、200床以上の大規模な病院で紹介状なしに受診した初診患者から徴収する特別料金で、16年の健康保険法改正で導入された。料金は医療機関に支払われる。茨城県は今回、制度の対象を救急搬送患者に拡大した。医療機関の医師が緊急性がないと判断した場合に徴収し、県内22の病院が適用する。

     同県つくば市の筑波メディカルセンター病院では、年間で6000人近い救急搬送患者を受け入れる。阿竹茂・救命救急センター長(62)は「このままでは重症患者の受け入れができなくなる。現状が改善される」と新制度に期待する。

     ただ、県議会からは「緊急性の高い患者も119番を躊躇するのでは」との懸念も出ている。このため県は10月、「微熱のみ」「軽い擦り傷」など、徴収の可能性がある12の例を記した指針を公表した。県民に対しては、救急車を呼ぶべきか迷う際には「#7119」や「#8000」などの電話相談を活用するよう呼びかける。

     総務省消防庁によると、全国の救急出動数は増加傾向にあり、救急搬送の適正化が課題になっている。23年は763万7967件(前年比40万8395件増)と過去最多を記録したが、このうち軽症のケースが48・4%を占めた。

     三重県松阪市では6月、選定療養費の徴収制度を基幹3病院で導入した。市は8月末までの3か月間で、救急車の出動件数が前年同期比で21・9%減ったとする調査結果を10月に公表。帰宅した軽
  •  現行の健康保険証は2日に新規発行が停止され、マイナンバーカードに保険証の機能を持たせた「マイナ保険証」に原則として移行する。混乱を回避するため、従来の保険証は2025年12月1日までの最長1年間使用できる。マイナ保険証の利用は低迷しており、円滑な移行には今後、利用の促進をどこまで図ることができるかが課題となる。

     マイナ保険証の利用登録は、10月時点で7747万人が手続きを済ませている。全国の医療機関や薬局の92%(9月時点)がマイナ保険証に対応する。

     従来の保険証の使用は、市区町村が運営する国民健康保険と後期高齢者医療保険では来夏までが基本で、会社員らが入る健康保険組合や全国健康保険協会は最長の1年間になる。

     従来の保険証の期限切れ前に、マイナ保険証を持っていない人や、マイナカードを保険証として利用登録していない人には、申請しなくても健保組合などから「資格確認書」が交付される。病院で提示すれば、従来の保険証と同じように保険診療を受けられる。

     マイナ保険証を使った場合、本人が同意すれば、医師は病院の受診歴や処方薬の履歴を確認できる。従来は新規加入や転居・転職時に新たに保険証を発行してもらう必要があったが、マイナ保険証は継続して利用できるメリットもある。

     ただ、他人の情報がひも付けられたトラブルなどの影響で、マイナ保険証の利用率は10月時点で15%にとどまっている。高齢者を中心に不安を抱く人が多く、政府は国民の不安 払拭ふっしょく に向け、利便性の理解につながる情報提供に力を入れる方針だ。
  •  子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を防ぐワクチンについて、厚生労働省は27日、接種機会を逃した女性を対象にした救済措置「キャッチアップ接種」の期間を条件付きで1年延長する方針を決めた。来年3月末までとしていた期間内に1回でも接種した人に2026年3月まで2、3回目の接種を公費で認める。

     同日の専門家部会で了承された。HPVワクチンは小学6年~高校1年相当の女子を対象に13年に定期接種となったが、接種後の痛みなどの報告を受け22年3月まで積極的な接種勧奨が中止された。この間に接種の機会を逃した1997~2007年度生まれの女性を対象に、22年4月から救済措置が行われてきた。

     今夏以降ワクチンの需要が急増。供給が一時不安定となり、接種できなかった女性に配慮した。期間中に1回接種していれば、25年度に定期接種の対象外となる現在の高1相当(08年度生まれ)も含めて3回目まで公費で認めることとした。
  •  病気で声を失った患者の口元の動きから話そうとしている内容を人工知能(AI)で推定し、本人そっくりの人工音声を流す「読唇アプリ」を、大阪大などの研究チームが開発した。患者の意思疎通が楽になるといい、チームは実用化を目指し、大阪大病院で患者に試験的に使ってもらうことを計画している。

     喉頭がんや下咽頭がんなどの治療では声帯を切除して声を失う場合がある。代替の発声方法として、食道の粘膜をふるわせる「食道発声」や、気管と食道の間に穴をあけて器具を取り付ける「シャント発声」などがあるが、元の声とは異なる上、習得が難しく、体への負担も大きい。

     日本語は母音が5種類しかなく、例えば「あ」と「か」では口元の動きがほぼ同じため、母音が10種類以上ある英語などより読唇が難しいとされる。

     チームの御堂義博・特任准教授らは、母音に加え、前後の音の並びによって変化する口元の動きを16種類に分類した「口形コード」という手法に着目。まず話している口元の膨大な映像と、その動きに対応するコードをAIに学習させ、口元の動きをコードに変換する手法を開発した。

     さらに別のAIを使い、コードを自然な日本語に置き換える2段階のシステムで、話そうとしている言葉を推定できるようにした。

     事前に録音した患者本人の声をもとに、人工音声でそっくりに再現するシステムも組み合わせ、アプリを完成させた。語尾が不正確になりやすいなどの課題はあるが、大半は意味が伝わる会話ができたという。

      大上研二・東海大教授(耳鼻咽喉科・頭頸部外科)の話 「練習が不要で体への負担もないため、声を失ってすぐに使えるのは大きなメリットだ。より即時性を高め自然な会話に近づけられれば、患者さんにとって大きな福音になる」
  •  「がん免疫療法」の安全性を高めるカギとなるたんぱく質を、マウスを使った実験で突き止めたと、大阪大のチームが発表した。このたんぱく質の働きを抑えれば、がんを攻撃する免疫細胞が活性化する一方、副作用は軽減できる可能性があるという。論文が22日、科学誌サイエンスに掲載される。

     免疫細胞には、ウイルスやがんを攻撃して体を病気から守る「キラーT細胞」などのほか、逆にキラーT細胞などの働きにブレーキをかけ、過剰な免疫反応を抑える「制御性T細胞(Tレグ)」も存在する。がん免疫療法では、これらの免疫細胞に働きかけ、効果的にがんを攻撃させる複数の薬が開発されているが、全身で炎症が起きるなどの副作用が出やすいことが課題だ。

     阪大の山本雅裕教授(免疫学)らは、がんになったマウスの体内で、特にがんとの関係が深く、キラーT細胞などの攻撃からがんを守る特殊なTレグが増えることに着目。詳しく調べた結果、がんの内部の細胞が「PF4」というたんぱく質を分泌し、特殊なTレグが増えることがわかった。

     がん細胞を移植したマウスにPF4の働きを抑える薬を与えると、特殊なTレグは減少し、がんが大きくなるのも抑えた。このTレグはがん患部に集中していると考えられ、薬を与えても体重が減少するなどの強い副作用はみられなかったという。

     国立がん研究センターの西川博嘉分野長(免疫学)の話「特殊なTレグができる仕組みを突き止めたことは有意義だ。今後は人で効果があるかどうかや、がんの種類によって影響に違いがないかどうかを確かめる必要がある」
  •  こども家庭庁は来年度から、発達障害の可能性を見極めるのに有効な「5歳児健診」の普及に乗り出す。早期に障害がある子どもを支援し、症状の改善につなげるのが狙い。健診に必要な医師らを確保する費用や研修費を自治体に補助し、14%にとどまる実施率を2028年度までに100%にすることを目指す。

     母子保健法は、1歳半と3歳児の健診を自治体に義務付けているが、5歳児健診は任意となっており、22年度の実施率は14・1%。多くの子どもは3歳児健診後、小学校入学前に受ける「就学時健診」まで、約3年の空白期間がある。

     文部科学省によると、22年度に自閉症などの発達障害があって特別支援学級に通う児童は、約13万人に上った。就学時健診を機に発達障害が判明しても、進路選びや学校側の支援体制の構築に時間が足りないという課題があった。

     5歳になると社会性が高まり、発達障害が認知されやすくなる。5歳児健診を実施している大分県竹田市で行われた研究では、自己表現や集団行動が苦手だった発達障害の子どもの多くが、支援を受けた結果、通常学級で過ごした。

     全国的な普及に向け、こども家庭庁が健診を行っていない自治体に聞き取りをしたところ、「医師が確保できない」「発達障害児の支援体制の整備が難しい」といった声が寄せられた。

     このため、同庁は来年度から医師の派遣に必要な費用のほか、発達障害児をサポートする保健師、心理士向けの研修費を補助する。5歳児健診を行う自治体への補助額についても、1人あたり3000円から5000円に引き上げる。

     自治体には発達障害と判明した場合、子どもが在籍する保育所などで個別の支援計画を作るよう要請。円滑な学習や集団生活につなげるため、入学先の小学校にも伝えるよう求める。総務省の人口推計では、23年10月1日現在の5歳児は約91万5000人だった。

     小児神経科医でもある鳥取県倉吉保健所の小倉加恵子所長は「5歳児健診は子どもの状態に応じた支援の必要性を保護者がとらえ、就学後に本人が学校に適応していくために重要だ。地域で発達障害がある子どもを支援する体制を作るためにも、制度を定着させる意義は大きい」と指摘する。
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