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ドクターズゲートの配信する医療ニュースについて
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  •  米製薬企業バイオジェンの日本法人は21日、難病・筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療薬「トフェルセン」について、厚生労働省に製造販売の承認を申請したと発表した。ALS患者の約2%を占める、「SOD1」と呼ばれる遺伝子に変異がある患者が対象になる。遺伝子の働きに作用する薬はトフェルセンが国内で初となる。

     ALSは、体を動かす神経に異常が生じ、全身の筋肉が徐々に衰えていく進行性の難病で、根本的な治療薬はない。国内の患者は約1万人とされる。

     トフェルセンは、SOD1が、筋力低下を招く有害なたんぱく質を作り出すことを抑える効果が期待される。米食品医薬品局(FDA)は昨年4月、「患者にとって利益があると合理的に予測できる」として迅速承認した。国内でも患者団体などが早期の審査承認を求める要望書を出していた。

     同社によると、日本人も参加した最終段階の臨床試験では、トフェルセンを投与したグループで神経損傷で生じる血液中の物質が減少していた。
  •  胎児の体の中で出現して次の世代へとつながる生殖細胞を、人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)から大量に作り出す技術を確立したと、京都大のチームが発表した。精子や卵子ができる仕組みの理解や不妊の原因の解明につながる成果で、論文が20日の科学誌ネイチャーに掲載される。

     人の生殖細胞は、受精卵ができて約2週間後に胎児へと変化する段階で、さらに次の世代となる最初の「始原生殖細胞」が現れる。その後、胎児が男性の場合は「前精原細胞」へ、女性の場合は「卵原細胞」へと変化する。

    京都大の斎藤通紀教授(細胞生物学)らは、これまでに人のiPS細胞から始原生殖細胞を作製。さらに、より卵子に近い卵原細胞へと変化させることにも成功していたが、効率が悪く、5000個の始原生殖細胞からできる卵原細胞は500個程度だった。

     斎藤教授らは今回、人のiPS細胞から作った始原生殖細胞に「BMP2」というたんぱく質を加えることで、前精原細胞や卵原細胞へと効率良く変化させることに成功。細胞は活発に増殖し、培養開始から約4か月後には細胞数が100億倍に増えた。

     前精原細胞や卵原細胞は出生後、それぞれ精原細胞や卵母細胞になり、思春期を迎えてから精子や卵子へと成熟する。斎藤教授は「前精原細胞や卵原細胞をたくさん作れるようになり、研究が世界でも飛躍的に進むだろう。不妊の遺伝子を調べるなど生殖医学にも貢献できる」と話している。

     林克彦・大阪大教授(生殖遺伝学)の話「人の体の中でも数が限られる前精原細胞や卵原細胞をこれほど大量に作られるようになったことは驚きだ。試験管内で人の体に近い形で作製できるようになったことで、精子や卵子にいたるまでのメカニズムを解明する研究がより進めやすくなることが期待される」
  •  iPS細胞(人工多能性幹細胞)やES細胞(胚性幹細胞)から卵子や精子などを作って活用する研究について、「期待する」との回答が8割に上ったことが、一般市民を対象にした内閣府の調査で明らかになった。

     iPS細胞などから卵子や精子、受精卵に似た構造を作って研究に利用する技術が急速に発展している。こうした研究を「強く期待する」と回答した人は18・6%、「どちらかというと期待する」は58・6%に上った。期待する理由(複数回答可)として、「生まれつきの病気の原因解明」(62・9%)や「不妊症の原因解明」(56・6%)などが上位を占めた。

     ただ、iPS細胞やES細胞を「ある程度知っていた」とした人は1割で、9割は聞いたことがある程度か、知らなかった。

     iPS細胞由来の卵子や精子を受精させる研究は現在認められておらず、受精卵に似た構造を作る研究は、国内ルールがまだ整備されていない。政府の生命倫理専門調査会が、一定の規制の下で研究を容認する方向で議論している。

     アンケートは内閣府が委託したコンサルティング会社がインターネットを通じて1月に実施し、一般市民3095人が回答した。
  •  国内の腎細胞がん患者の7割に、日本人特有の遺伝子変異のパターンがあるとする研究成果を国立がん研究センターなどの国際研究チームが14日、発表した。未知の発がん要因で引き起こされている可能性が高いという。世界11か国の約960人を対象にゲノム(全遺伝情報)を網羅的に調べる「全ゲノム解析」の結果で判明した。論文は、科学誌「ネイチャー」に掲載された。

     腎細胞がんは、尿をつくる細胞にできるがんで、腎臓がんの8~9割を占める。チームは、腎細胞がんで最も多い「淡明細胞型」について、日本人36人を含む962人のがん細胞から、発症を招く遺伝子変異のパターンを調べた。

     その結果、「SBS12」というパターンが、日本人患者の72%で検出されたのに対し、海外の患者では2%程度だった。このパターンの要因は、加齢や喫煙、肥満などすでに知られている発がんのリスクとは異なるとみている。

     同センター研究所の柴田龍弘・がんゲノミクス研究分野長は「今後、日本人特有のパターンを招く要因を解明することで、予防や治療薬の開発につなげたい」と話している。
  •  救急・消防車両と防災ヘリ、ドクターヘリをつなぎ、患者情報や互いの位置情報などを同時に把握できるシステムを岩手県の消防本部が開発した。2026年度から導入する。救急とヘリは依然、電話や無線でやりとりするなどアナログ対応が主流だ。このシステムで、災害現場での救助や救急搬送の時間短縮が期待される。

     開発したのは盛岡地区広域消防組合消防本部(盛岡市)。総務省消防庁や宇宙航空研究開発機構(JAXA)が協力した。同庁は「全国初のシステム」としている。同消防本部の指令センターで搬送する患者の年代や容体、通報場所など119番の内容を入力すると、瞬時に救急・消防車両やヘリの専用端末に伝達される。全地球測位システム(GPS)を活用し、互いの位置を即時に把握できる。

     同消防本部によると、ドクターヘリによる患者の搬送や防災ヘリによる山火事の現場では、着陸する際に地上の消防隊が周囲の安全管理を行うなど、ヘリと消防車両の連携が必須だ。

     現在はドクターヘリ、防災ヘリ、消防車両の3者が異なるシステムを採用しており、電話や無線で位置情報などをやり取りするため時間を要し、伝達ミスの恐れもある。新システムでは常時3者が情報共有することで効率良く現場で合流し、活動を迅速化できるという。

     岩手県は北海道に次いで全国2位の面積。東日本大震災の経験も踏まえ、広域的な消防活動でヘリと消防車両の連携が課題となっていた。指令センターでは、26年度から県内87%のエリアの指令をカバーする。現在の38%から大幅に拡大することから、22年度に新システムを提案。総務省消防庁やJAXA、岩手医大付属病院に働きかけて開発を進め、23年に実証実験を行っていた。

     同庁広域応援室の武田康孝航空専門官は「他県から同様の依頼があれば協力したい」と話している。
  •  「握手しましょう」

     4月中旬、東京都内で、脳波でロボットアームを動かすテストが行われた。実験者は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の武藤将胤さん(37)。音声で握手を予告し、目を閉じた。

     30秒ほど意識を集中させると、頭や耳に付けた10個の機器が脳波の動きをキャッチ。腕の位置に付けたロボットアームがおもむろに動き出し、ロボット研究者、吉藤オリィさん(36)の手を握った。

     「オーケー」「ばっちり!」。仲間たちの歓声に、武藤さんはほほえみながら応えた。「僕の指令で動いた、僕のアクティブな腕」

     11年前に発症。全身の筋力が衰え、気管切開後は声も発せなくなったが、「テクノロジーが身体機能を補完するだけでなく、拡張させ、活動の場を広げてくれる」。会話は視線で文字入力し、音声を合成して行う。デジタル上で音楽を作り、自身のアバター(分身)で海外イベントに参加する。

     昨秋、体外受精によって娘が誕生。今回の実験成功で「病気が進んでも妻や娘と触れ合える。未来への希望が強くなった」。吉藤さんは「いずれは脳波で電動車椅子を操作し、外出も可能になるはずだ」と話す。

     ロボットやICT(情報通信技術)などを用いて、身体能力や知覚能力を広げる「人間拡張」。誰もが理想の暮らしを送るためのアプローチとして、期待が集まる。

     内閣府が2020年に始めた「ムーンショット型研究開発制度」では、50年までに実現したい10個の未来像の一つに「身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会」を掲げる。

     人間拡張が進んだ未来では、寝たきりの人がロボットを遠隔操作したり、リアルの自分とアバターの自分が別々の職場で同時に働いたりするのが日常になり得る。触覚を遠隔で共有する技術開発などに取り組む、慶応大の南澤孝太教授は「誰もがもう一つの身体を持ち、自分らしく豊かな人生を送れるようになる」と目指す方向性を語る。

     今年2月、米アップルが米国内で発売したゴーグル型端末「ビジョン・プロ」も、個人の活動領域や役割を広げ、人口減社会の課題解決に寄与するツールになるかもしれない。
  •  生まれつき耳が聞こえにくい「先天性難聴」の赤ちゃんの割合は、1000人あたり1・62人とする調査結果を、信州大の研究チームがまとめた。長野県の新生児15万人超を対象にした大規模調査で、両耳難聴の原因では「遺伝性」が半数強を占めた。論文が国際医学誌に掲載された。

     先天性難聴は早期発見し、補聴器などを使用して適切な療育を受ければ、言語の発達などが期待できる。生後直後に産院で、赤ちゃんが寝ている時などに音を聞かせ、脳や耳の反応を確認する新生児聴覚スクリーニング検査が実施されている。

     チームは、2009~19年に長野県で生まれた15万6038人のうち、同検査を受けた15万3913人を対象に、先天性難聴の割合と原因を調べた。精密な聴力検査を経て、普通の声の大きさの会話が聞き取りにくい「中等度以上」の先天性難聴と診断されたのは249人(1000人あたり1・62人)だった。

     遺伝子や画像、難聴を引き起こすウイルスの検査で原因を調べると、両耳が難聴の130人(同0・84人)では56%が遺伝性だった。片耳が難聴の119人(同0・77人)では、40%が聴神経の形成不全だった。

     新生児聴覚スクリーニング検査は厚生労働省が公費での実施を自治体に求めている。こども家庭庁の22年度の調査では、全国で95・2%が受けた。

     吉村豪兼・信州大医学部講師は「原因が分かれば最適な時期に適切な治療ができる。全国で原因を調べてもらいたい」と話す。

      守本倫子・国立成育医療研究センター耳鼻咽喉科診療部長の話 「先天性難聴の割合と原因が実測値で示されたことで子どもの状況を家族に説明しやすくなる」
  •  生まれつき永久歯の数が少ない先天性無歯症を治療する「歯生え薬」の臨床試験(治験)を9月から始めると、北野病院(大阪市北区)などのチームが2日発表した。歯を一部失った健康な男性30人を対象に投与して安全性を確かめ、その後2~7歳の患者へと対象を広げる計画。2030年頃の実用化を目指しており、実現すれば歯を生やす世界初の薬になるという。

     永久歯は親知らず4本を含め、全て生えると32本になるが、「先天性無歯症」では一部が生えない。欠損の本数が多い遺伝性の患者は国内に約12万人いるとみられる。放置するとあごの発達などに影響するため、成長に伴って入れ歯を何度も作り替えたり、成長後、人工の歯をあごの骨に直接固定するインプラントなどで対処したりする必要があった。

    チームはマウスを使った実験で、歯の成長を抑えているたんぱく質を突き止め、この働きを妨げる抗体医薬を作製した。

     治験では、虫歯などで歯を一部失った30~64歳の男性30人に薬か偽薬を点滴で投与し、1年ほどかけて副作用の有無をみる。安全性が確認できれば、26年頃に歯が4本以上少ない2~7歳の患者50人ほどを対象に、有効性などを確認する計画だ。

     チームによると、先天性無歯症のマウスや犬で行った実験では薬の投与によって歯が生えてきた。たんぱく質によって成長が止まっていた「歯のもと」になる組織から生えたとみられる。

     治療にかかる費用は150万円程度を見込んでおり、将来は虫歯などで歯を失った人の治療も視野に研究を進める。北野病院の高橋克・歯科口腔外科主任部長は「入れ歯、インプラントに続く第3の選択肢になるよう、研究を進めていきたい」と話した。
  •  北海道内で2023年、仕事中に熱中症で死傷した人は計153人で、過去最多だったことが、北海道労働局のまとめで分かった。100人以上となるのは統計を取り始めた14年以降、初めて。昨夏の記録的暑さが影響したとみられ、屋内作業での死傷者も目立った。今夏も平年より気温は高くなる見通しで、同局が注意を呼びかけている。

     死傷者数はこれまで19年の計68人が最多だった。22年は30人で、23年は前年の5倍に増えた。

     同局によると、153人の内訳は死亡1人、4日以上の休業62人、3日以下の休業90人。業種別では建設業が48人と最多で、次いで製造業の21人だった。接客・娯楽業でも10人いた。発生状況別では、屋外作業が87人、屋内作業は66人。年齢別では労働者に占める割合の高い40、50歳代が各32人、20歳代が26人と続いた。

     同局健康課によると、気温が高い日の屋外の危険性はよく知られているが、屋内作業については見落とされがちだ。高温になる機械の近くやキッチンなどで、長い時間立ち仕事をする場合も体力の消耗は激しく、熱中症になりやすい。昨年死亡した1人も、ボイラー室で作業中の70歳代だった。屋内外問わず、暑さ指数計で周囲を確認しながら作業することが重要で、屋内では冷房の導入も検討する必要があるという。

     札幌管区気象台によると、道内では昨年7~9月に過去最長となる44日間連続で真夏日が観測された。今年も6~8月は平年より気温が高くなる見通しだ。

     昨年は5月から、ビニールハウス内の作業で熱中症の労災が起きており、同課の担当者は「暑さに体が慣れてない今の時期から熱中症対策をしてほしい」と話している。
  •  腸とつながる肝臓の血管付近には、腸から侵入する腸内細菌を撃退しつつ肝臓の炎症を抑える特殊な免疫細胞が存在することがわかったと、大阪大の石井優教授、宮本佑特任研究員らのチームが発表した。慢性肝炎の予防や新しい治療法の開発につながる可能性があるといい、科学誌ネイチャーに論文が掲載された。

     食物から腸で吸収された栄養分は、門脈という血管を通って肝臓に届く。腸が傷つくと門脈から腸内細菌などが侵入し、肝臓に炎症を起こすことがある。チームはマウスの肝臓で、免疫細胞の動きを詳細に観察できる独自技術を駆使し、門脈付近では炎症が起きにくいことを発見した。

     通常、体内に侵入した細菌を免疫細胞が攻撃すると炎症が起きるが、この場所にいるマクロファージという免疫細胞の中に、逆に炎症を抑える物質を活発に出すものがあることが判明。細菌を撃退し、炎症も抑えることで、肝臓のダメージを防いでいるとみられる。

     脂質が蓄積して起きる肝炎(MASH)や、肝移植が必要な場合もある難病・原発性硬化性胆管炎(PSC)の患者では、この免疫細胞が非常に少なかった。

     チームは、この細胞が不足するとMASHやPSCの発症につながるのではと推測。この細胞は腸内細菌が作る物質によって増えることもわかり、数を制御できれば、有効な治療法のない肝疾患を予防できる可能性があるとしている。

     肝疾患に詳しい熊本大の田中靖人教授(消化器内科学)の話「原因がわかっていない肝疾患の発症メカニズムの一部を説明しうる成果。腸内細菌との関連も興味深く、新しい治療法につながることを期待したい」
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