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国内の新興企業が開発を進める新技術を使った新型コロナウイルスワクチンについて、動物実験で感染を防ぐ中和抗体の量が1年間維持されたと医薬基盤・健康・栄養研究所(大阪)などのチームが発表した。実用化すれば接種間隔を延ばせる可能性がある。論文が国際科学誌に掲載された。
このワクチンは、米ファイザーや米モデルナが実用化したメッセンジャーRNAワクチンに改良を加えた「レプリコン(自己増殖型)」と呼ばれるタイプだ。
新興企業VLPセラピューティクス・ジャパン(東京)が現在、実用化に向けて治験を実施している。新型コロナの変異株に加え、未知の感染症への対応も視野に入れている。
レプリコンワクチンは有効成分が体内で自己増殖するため、接種量は既存のワクチンの100分の1から10分の1ほどで済み、免疫が長く続くとされる。
チームは、人間と体の構造が似ているカニクイザルにこのワクチンを打ち、中和抗体の量が1年間、十分に保たれていることを確かめた。既存のワクチンでは数か月から半年程度で低下する。チームの山本拓也・同研究所難病・免疫ゲノム研究センター長は「年1回接種で効果があるようなワクチンにしたい」と話す。
杉浦 亙・国立国際医療研究センター臨床研究センター長(ウイルス学)の話「中和抗体の量が長期間持続することをデータで示せた意義は大きい。安全性を丁寧に確かめ、未知の感染症に対応できるワクチン開発の基盤技術として育てることが重要だ」
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新型コロナウイルスの感染状況について、厚生労働省は26日、全国約5000か所の定点医療機関から、15~21日の1週間に報告された感染者数が1医療機関あたり3・56人だったと発表した。前週(8~14日)の2・63人と比べ1・35倍となり、厚労省は「緩やかな増加傾向が続いている」としている。
都道府県別では、沖縄が1医療機関あたり10・80人で最も多く、石川が6・38人、岩手が6・32人、新潟が6・11人で続いた。42都道府県で前週より増加した。報告された感染者数の合計は1万7489人だった。
谷口清州・国立病院機構三重病院長(感染症疫学)は「5類移行に伴って医療機関を受診しない人などが増えていることも考慮すると感染者は確実に増えている。都道府県ごとの数値に注目し、地域の感染対策に役立ててほしい」と話す。
このほか、厚労省は全国の医療機関から報告された入院患者の総数は24日午前0時時点で、前週比1110人増の5622人、うち重症者数は41人増の138人だったと発表した。
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【瀋陽=川瀬大介、北京=大原一郎】中国で新型コロナウイルス感染が再拡大している。専門家は6月末にピークを迎え、1週間当たりの新規感染者は6500万人に達するとの見方を示す。中国政府は4月末に全国の感染状況に関する統計発表をやめたため実態は不明で、住民から不安の声が上がっている。
中国メディアの羊城晩報(電子版)は22日、感染症対策の第一人者として知られる鍾南山氏が、1週間当たりの新規感染者が5月末に4000万人、6月末には6500万人に達するとの予測を示したと伝えた。
北京市の衛生当局が18日に発表した統計によると、今月8~14日に確認された感染症全体の患者数は1万8081人で、前週から7573人増えた。最も多いのはコロナ患者だった。
習近平政権は昨年12月、厳しい移動制限を伴う「ゼロコロナ」政策を急転換し、全国で爆発的に感染が広がった。中国疾病予防コントロールセンターは、2月上旬までに全人口の82・4%が感染したと推計しており、その時に感染した人の抗体が減ったことが今回の再拡大の要因との見方がある。
習政権はゼロコロナで深刻なダメージを受けた経済対策を最優先する構えで、同センターは4月29日を最後に1週間ごとの全国の感染状況の統計を発表していない。
北京市中心部の病院では23日、発熱外来を訪れた患者が列を作り、防護服姿の職員らが対応に追われる様子が見られた。中国メディアは、上海や広東省広州でも発熱患者が増え、ある病院では受診まで3時間かかる状況と伝えており、SNSには「周囲は再感染した人ばかり。怖い」と不安視する投稿が増えている。
中国メディアは、専門家の「再感染者の多くは症状が軽い。過度の心配は必要なく、経済や生活に影響させるべきではない」との見方を伝え、住民の不安払拭に努めている。
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総務省消防庁は23日、熱中症で15~21日の1週間に全国で1763人(速報値)が救急搬送されたと発表した。5月の統計を取り始めた2015年以降の同期比では過去最多で、5月の1週間単位では過去2番目に多かった。
岐阜県揖斐川町で17日、全国で今年初の猛暑日となる35・1度を観測するなど17~18日に各地で季節外れの暑さとなり、搬送者は前週(8~14日)の308人から急増した。
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マイナンバーカードと一体化した健康保険証(マイナ保険証)について、埼玉県保険医協会が会員を対象に行ったアンケート調査で、オンラインで保険資格を確認するシステムを導入した開業医の7割が「患者情報が表示されない」などのトラブルを経験していることがわかった。
マイナ保険証は、誤って別人の情報がひもづけられるトラブルが全国で相次ぐ。これを受け、同協会は16日に開業医3426人を対象に実施。193人から回答を得た。
オンラインで保険資格を確認するシステムの導入は、経過措置が設けられたものの、原則として今年4月から医療機関の義務となった。調査の結果、システムを運用していると回答したのは72%。うち70%でトラブルがあった。内容(複数回答)は、「患者情報が表示されない」(48人)、「受け付け時の混雑」(40人)、「システム障害」(37人)などだった。23人は「氏名などの誤った表示」を挙げ、これらは別人の情報だった疑いがある。
政府は来年秋に現行の健康保険証を廃止してマイナカードに一本化する方針だ。だが、調査では「保険証は存続すべき」との回答が85%に上った。「取り扱い説明が不十分」「今まで通りで事足りる」などの理由が挙げられた。
同協会は「見切り発車では現場も混乱する。安定して運用できるようになってから、健康保険証廃止の議論をすべきだ」としている。
埼玉県美里町は19日、別人の顔写真をつけたマイナンバーカード2枚を誤って交付したと発表した。2月28日に町役場で交付を申請した町民の女性2人の顔写真が入れ替わっていた。受け付け時の確認不足が原因で、顔写真以外の個人情報は2人とも申請者のものだった。受け取った後の今月18日に町に連絡があり、ミスがわかった。
町は2人に謝罪し、再交付の手続きを進めている。
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大分市は18日、市内の私立高校でインフルエンザの集団発生があり、16日までに生徒約500人の感染が確認されたと明らかにした。全校生徒約2000人の4分の1にあたる。
同高などによると、9日に体育祭を開催後、体調不良を訴える生徒が相次ぎ、12日までに160人の感染が判明。その後も増え続け、16日までに497人となった。重症者はいないという。
宮崎市の高校でも、16日時点で計491人のインフルエンザ患者が確認される集団感染が起きている。
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愛知県は18日、天然痘に似た感染症「エムポックス(サル痘)」の感染者が県内で初めて確認されたと発表した。国内では7日までに135人の感染が確認されている。
発表では、感染したのは県内在住の40歳代男性。発疹や発熱など症状が出て、16日に医療機関を受診。検査の結果、18日に陽性が判明した。海外渡航歴はなく、感染経路は不明。容体は安定しているという。
サル痘は、感染すると発熱や頭痛などが0~5日続き、発熱の1~3日後に発疹が出る。多くは発症から2~4週間で治癒する。
県は症状がある場合は、かかりつけ医や最寄りの医療機関に相談するよう呼びかけている。
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厚生労働省は、新型コロナウイルスに感染した脳死ドナー(臓器提供者)からの臓器移植を容認した。ドナーが感染していても、移植を受けた患者らへの感染拡大のリスクは低く、感染症法上の位置づけが5類に引き下げられたことに伴い判断した。
厚労省は、自治体や臓器移植をあっせんする日本臓器移植ネットワークなどに文書で通知した。
新型コロナの感染が拡大した2020年3月以降、厚労省は、臓器移植を受ける患者や周囲への感染拡大を懸念し、感染したドナーから臓器を移植しないよう、医療現場に求めてきた。実際にドナーの感染が判明し、臓器提供を中止したケースもあった。
しかし、今月8日から5類に移行したことを受け、医療現場に対応を委ねることにした。海外の研究報告では、肺移植を除けば、感染したドナーから移植による感染拡大は起きていないという。
同ネットワークによると、脳死ドナーからの臓器提供は19年は97件だったが、新型コロナの影響で20、21年は70件弱に減少した。その後は22年が93件、23年も4月末までで54件と回復傾向にある。
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麻疹(はしか)への感染が相次いで確認されたことを受け、加藤厚生労働相は16日の閣議後記者会見で、「疑われる症状があった場合、必ず受診前に医療機関に連絡し、公共交通機関の利用は控えてほしい」と述べ、注意を呼びかけた。感染者が不特定多数の人と接触した可能性がある。
加藤氏は「海外に渡航を予定する人で感染歴がなく、ワクチンを接種していない人などは、予防接種を検討してほしい」と述べた。
厚労省などによると、インドから帰国した茨城県内の男性は4月27日に感染が判明。この男性と新幹線で同じ車両に乗っていた東京都内の男女2人の感染も確認された。うち1人は発症後の5月4日、静岡県の三島駅から午後6時54分発の東海道新幹線「こだま740号」10号車に乗車し、新横浜駅まで移動したという。
はしかは感染すると、約10日後に発熱やせき、鼻水など風邪に似た症状がみられ、2~3日続いた後、39度以上の高熱や発疹が出る。感染力が非常に強く、接触や 飛沫ひまつ による感染のほか、空気感染でも広がる。
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先進7か国(G7)は、広島市で19~21日に開くG7首脳会議(サミット)で、途上国にワクチンを公平・迅速に分配するための国際的枠組みの創設で合意し、首脳声明に明記する方向で調整に入った。新型コロナウイルス禍の教訓を踏まえ、先進国と新興・途上国が連携し、新たなパンデミック(感染症の世界的な流行)に備える。
複数の政府関係者が明らかにした。国際的枠組みは、G7各国とインドなど主要20か国・地域(G20)の有志国、世界保健機関(WHO)や世界銀行といった国際機関で構成する見通しだ。
コロナ禍では、国により、ワクチンの普及に大きく差がついた。途上国で、ワクチンを低温で輸送・管理する「コールドチェーン」が未整備だったことなどが要因だ。WHOなどが設立したワクチンを共同購入・分配する国際的枠組み「COVAX(コバックス)」は資金集めに苦労し、十分に機能しなかった。
新たな枠組みでは、平時から、ワクチンの製造・購入費用を確保して分配に備え、各国のコールドチェーンの増強や、ワクチン接種を担う医療関係者の育成などの体制整備を支援する。
日本政府は、コロナ禍で約80か国を対象に、ワクチンの低温輸送に必要な保冷庫などを提供した。インドはワクチン製造能力に定評がある。枠組みに参加する国や組織はそれぞれの強みを生かせる役割分担を定めておき、パンデミック発生時のワクチン分配を円滑にすることも目指す。
国境を越えて広がる感染症への対処には、国際協力が不可欠だ。G7議長の岸田首相は、先進国と「グローバル・サウス」と呼ばれる新興・途上国が協力を深める分野としても、感染症対策を重視している。広島サミットでは、感染症危機対応に関する個別文書の発出も検討している。
枠組みの詳細な制度設計は、9月にインドが主催するG20首脳会議に向け、詰めの協議を行う。