歴史的なブラックホール画像の舞台裏(10:07)

シェパード・ドールマン(Sheperd Doelema)
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対訳テキスト
講演内容の日本語対訳テキストです。
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(クリス・アンダーソン) 来ていただき ありがとうございます 飛行機がバンクーバーに着いたのが 文字通り2時間前でした 本当にありがたいです アインシュタイン方程式からどうやって ブラックホールの存在が示されたのか 説明していただけますか?

(シェパード・ドールマン) 百年以上前に アインシュタインは 空間が歪むという 幾何学的な重力理論を 見出しました 物質は時空を歪め 一方で時空は 周辺にある 物質の運動を決定します ごく小さな領域に 大量の物質があると 時空に穴ができて 光さえ抜け出せず 重力が光を 閉じ込めるようになります

(アンダーソン) つまり 地球が太陽の周りを回るのは 太陽が地球を 引っ張るからではなく 空間の形が 変わっているからで 地球は太陽の周りを いわば落ちているのだと

(ドールマン) ええ 時空の幾何学が 太陽の周りで地球がどう動くかを 決定しているのです ブラックホールがまさに 時空に穴を開けようとしていますが すごく深くなった時に 光がブラックホールを 周回するようになります

(アンダーソン) それがここで 起きていることなんですね これは写真ではなく ブラックホールの周りの 事象の地平面を コンピューターで シミュレーションしたものです

(ドールマン) 先週まで ブラックホールが 本当のところどう見えるのか分からず スパコンでシミュレーションするのが せいぜいでした ここでも光の輪が見えますが これは光子の周回軌道です 光子がブラックホールの周りを 動き回っていて そこに高温のガスがあり ブラックホールに引き寄せられています 高温なのは摩擦のせいです 多くのガスが 小さなところに 入ろうとして熱くなるんです

(アンダーソン) 数年前に ブラックホールの写真を撮るという ミッションに着手されたわけですが 遙か遠くにある— この銀河に的を絞りました この銀河について 聞かせてください

(ドールマン) ズームしていくと思いますが これはM87という銀河で 5500万光年離れています

(アンダーソン) 5500万光年!

(ドールマン) 遠くです その中心に 太陽の65億倍の質量を持つ ブラックホールがあります ちょっと想像しにくいですが 65億個の太陽が1点に 凝縮されているのです それが この銀河の中心の エネルギー論を支配しています

(アンダーソン) それほど巨大なものでも すごく遠いので その姿を捉えるのは 難しいことでしょう すごい解像度が 必要になります

(ドールマン) ブラックホールは 既知の宇宙で最も小さな存在ですが 銀河全体に 大きな影響を及ぼします それを見るためには 地球ほどの大きさの 望遠鏡が必要になります 私達が見ている ブラックホールは おびただしい電磁波を 絶えず発しています おびただしい電磁波を 絶えず発しています

(アンダーソン) その地球サイズのを 作ってしまったと

(ドールマン) その通りです 私達は世界各地の望遠鏡を使い 原子時計で完璧に同期させ ブラックホールからの光を捉え 1枚の画像にするために すべてのデータを貼り合わせました

(アンダーソン) そうするためには— すべての望遠鏡の場所で 同時に天気が 良くないといけませんね

(ドールマン) 私達は様々な面で 幸運に恵まれる必要がありました 時に優れていることより 幸運の方が重要なこともあります 私達は両方だったと 思いたいですが ブラックホールから 光が来てもらわねばなりません 銀河間の空間を通り 地球の大気を通りますが 水蒸気に吸収されたりします すべてがうまく 噛み合いました あの光の波長 1ミリの波長で 5500万光年離れた あのブラックホールが 見える解像度を得るには 地球は ちょうど良い 大きさだったんです どうすれば良いのか 宇宙が教えてくれてるかのようでした

(アンダーソン) そして膨大な データを捉え始め— これは1つの望遠鏡から得た データの半分だとか

(ドールマン) 彼はチームの リンディ・ブラックバーンで メキシコの標高4600メートルの 山の上にある 大型ミリ波望遠鏡で 記録したデータの 半分を前にしています 0.5ペタバイトあって みんなに分かる 言い方をするなら 5000人の一生分の セルフィーが入る容量です

(笑)

(アンダーソン) 大量すぎて インターネットで送れず ディスクを配送したのだとか すべてのデータが 1箇所に集められ コンピューターによる 解析作業が行われましたが そこから何が出てくるのか 本当のところ 分からなかったんですね

(ドールマン) 私達の使った手法は いわば鏡を粉々にして それぞれの破片を 別な場所に置くようなものです 普通の鏡なら 光は完璧な表面で反射して 1点に同時に集まります 私達は原子時計の精度で それぞれの記録を取り あとでスパコンを使って 完璧に時刻を揃えました そうやって地球サイズの レンズを作り出したんです データを運ぶ唯一の方法は 飛行機でした ハードディスクで満杯の747に 勝てる回線はありません

(笑)

(アンダーソン) そして何週間か 何ヶ月か前 コンピューターの画面に 現れ始めたわけですね この瞬間が

(ドールマン) だいぶ時間がかかりました

(アンダーソン) ご覧ください— これです! これが初の ブラックホールの画像です

(拍手)

これが何か 説明していただけますか

(ドールマン) 今だ感動を覚えます

(笑)

ご覧になっているのは 光子の最後の軌道です アインシュタインの幾何学が 姿を見せています 時空の穴があまりに深く 光が周回しています この後出てくると思いますが ブラックホールの 裏側の光が回り込み あの軌道のところで平行線になって こちらへやってくるんです あの軌道の半径は 27の平方根に 基本物理定数を いくつかかけたものです 考えるとすごいことです

(アンダーソン) ブラックホールというと あれが事象の地平面で 大量の物質があり 光があの形で回っているのかと 思っていましたが 実際はもっと複雑なんですね このアニメーションで説明してもらえますか 周りで光がどう曲がるのかというのを

(ドールマン) 後ろから来る光のあるものは レンズのように曲げられ あるものはブラックホールの周りを 一回りします ブラックホールの周りを回る 高温のガスが発する光が 十分にあれば その光線が このスクリーンに集まり— その光線が このスクリーンに集まり— これは私達の代わりですが このリングが姿を現し始めます アインシュタインが百年以上前に 予言していたものです

(アンダーソン) すごいものですね ここで見ているものについて もう少し伺いたいんですが なぜ他より明るい部分が あるんですか?

(ドールマン) このブラックホールは 回転しているんですが 下側ではガスが 私達に向かっていて 上側では遠ざかっています 近づいてくる列車の汽笛が 高音になるのと同じように こちらに近づいてくるガスは 遠ざかるガスよりも エネルギーが高くなります 下側が明るくなっているのは 光がこちらに向かって 後押しされているからです

(アンダーソン) どれくらいの 大きさなんですか?

(ドールマン) 太陽系がすっぽり あの暗い部分に納まります あの暗い部分が 事象の地平面の 存在を示す形跡で あの暗い部分が 事象の地平面の 存在を示す形跡で あそこからの光が 見えないのは あそこから来る光は 事象の地平面に 飲み込まれてしまうためです つまり— そういうことです

(アンダーソン) ブラックホール周りからは 膨大な光が噴出し それがこちらに 向いているはずですが なぜそれが 見えないのでしょう?

(ドールマン) これは非常に 強力なブラックホールで 宇宙的な基準では そうでもありませんが— ブラックホールの 北極と南極からは ジェットが出ていると 考えられています ジェットの構造全体を見るには 近すぎるんですが この時空を照らしているのは そのジェットの根本の部分です それがブラックホールの周りで 曲げられているんです

(アンダーソン) あの周りを回る 宇宙船に乗っていたら 一周するのに どれくらいかかるんですか?

(ドールマン) まず その宇宙船に乗れるんだったら 私は何だって差し出します

(笑)

どうか乗せてください ちょっと大ざっぱになりますが 最内安定円軌道と 呼ばれるものがあって 物質がブラックホールに 落ち込まずに周回できる 一番内側の軌道 ということですが このブラックホールの場合 3日から1ヶ月の間です

(アンダーソン) すごく強力であり あるレベルでは奇妙に遅くもあるんですね 自分がそこにいたら 事象の地平面に落ちているのに 気付きもしないというのは

(ドールマン) 「スパゲッティ化現象」というのを 聞いたことがあるかもしれません ブラックホールに落ちていくとき 足の位置での重力場が 頭の位置での重力場よりずっと強くて 引きちぎられて しまうことですが このブラックホールは とても大きいため スパゲッティに なることはありません 事象の地平面を 通っていくだけです

(アンダーソン) 巨大な竜巻の ようなものですね ドロシーが竜巻に飲み込まれたときは オズの国に辿り着きましたが ブラックホールに落ちたら どこに行き着くんでしょう?

(笑)

(ドールマン) バンクーバーですかね

(笑)

(アンダーソン) うわー目が回る

(拍手)

これはあの 赤い部分だったんですね いや 真面目な話

(ドールマン) ブラックホールは 現代の大きな謎で 量子の世界と重力の世界が 交わるところです 中にあるのは特異点です すべての力が統一されます 重力が他の力に負けないくらい 強くなるからです でもそれは私達から 隠されています 宇宙は究極の見えないマントで 覆っているのです そこで何が起きているのかは 分かりません

(アンダーソン) 我々の銀河系にも 小さなのがあります 私達の美しい銀河を 出してもらえますか? この天の川の真ん中にも 別のブラックホールがあって それを見付けようと しているそうですね

(ドールマン) そこにあることは分かっていて データも取っています 今そのデータに 取り組んでいるところです いつとは言えませんが 遠からず何か得られると期待しています

(アンダーソン) ずっと近くにあるけど ずっと小さいので 見た目の大きさは 同じくらいなんだとか

(ドールマン) そうです 先ほど見た M87のブラックホールは 太陽65億個分の 質量があります でも遠くにあるので 小さく見えます 我々の銀河系の中心にある ブラックホールは 質量は千分の1ですが 千倍近くにあります だらか空に同じ視野角で 見えるんです

(アンダーソン) 最後に素晴らしいチームの人々を 紹介してもらいましょうか 彼らは誰なんですか?

(ドールマン) これはチームの 一部です ブラックホールの写真への 反響には驚いています 新聞の一面トップになるぞ と言われたら 信じなかったと思いますが 本当になりました これは大いなる謎であり 心を掴まれます みんなにもそう 感じてもらえたらと思います これはチームのほんの一部で 200人強のメンバーがいて 60の組織 20の国や地域からなっています 地球規模の望遠鏡を作ろうと思ったら 地球規模のチームが必要です 世界の望遠鏡を繋げるために 使った手法は 私達を分断している問題のいくつかを 容易に回避できます 科学者として 私達は このようなことを やるために 自然に集まってくるんです

(アンダーソン) まったく TEDにも すごい刺激になっていますよ あなた方の成し遂げたことと 来てくださったことに感謝します

(ドールマン) ありがとうございます

(拍手)

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このプレゼンテーションについて

5500万光年離れた銀河の中心に、太陽数十億個分という超大質量ブラックホールがあります。史上初めて、その姿を見ることができます。「イベント・ホライズン・テレスコープ」チームのリーダーである宇宙物理学者シェパード・ドールマンが、TEDのクリス・アンダーソンを相手に、ブラックホールの初の画像と、その撮影のための壮大な世界規模の努力について語ります。

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