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ドクターズゲートの配信する医療ニュースについて
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  •  国内の腎細胞がん患者の7割に、日本人特有の遺伝子変異のパターンがあるとする研究成果を国立がん研究センターなどの国際研究チームが14日、発表した。未知の発がん要因で引き起こされている可能性が高いという。世界11か国の約960人を対象にゲノム(全遺伝情報)を網羅的に調べる「全ゲノム解析」の結果で判明した。論文は、科学誌「ネイチャー」に掲載された。

     腎細胞がんは、尿をつくる細胞にできるがんで、腎臓がんの8~9割を占める。チームは、腎細胞がんで最も多い「淡明細胞型」について、日本人36人を含む962人のがん細胞から、発症を招く遺伝子変異のパターンを調べた。

     その結果、「SBS12」というパターンが、日本人患者の72%で検出されたのに対し、海外の患者では2%程度だった。このパターンの要因は、加齢や喫煙、肥満などすでに知られている発がんのリスクとは異なるとみている。

     同センター研究所の柴田龍弘・がんゲノミクス研究分野長は「今後、日本人特有のパターンを招く要因を解明することで、予防や治療薬の開発につなげたい」と話している。
  •  救急・消防車両と防災ヘリ、ドクターヘリをつなぎ、患者情報や互いの位置情報などを同時に把握できるシステムを岩手県の消防本部が開発した。2026年度から導入する。救急とヘリは依然、電話や無線でやりとりするなどアナログ対応が主流だ。このシステムで、災害現場での救助や救急搬送の時間短縮が期待される。

     開発したのは盛岡地区広域消防組合消防本部(盛岡市)。総務省消防庁や宇宙航空研究開発機構(JAXA)が協力した。同庁は「全国初のシステム」としている。同消防本部の指令センターで搬送する患者の年代や容体、通報場所など119番の内容を入力すると、瞬時に救急・消防車両やヘリの専用端末に伝達される。全地球測位システム(GPS)を活用し、互いの位置を即時に把握できる。

     同消防本部によると、ドクターヘリによる患者の搬送や防災ヘリによる山火事の現場では、着陸する際に地上の消防隊が周囲の安全管理を行うなど、ヘリと消防車両の連携が必須だ。

     現在はドクターヘリ、防災ヘリ、消防車両の3者が異なるシステムを採用しており、電話や無線で位置情報などをやり取りするため時間を要し、伝達ミスの恐れもある。新システムでは常時3者が情報共有することで効率良く現場で合流し、活動を迅速化できるという。

     岩手県は北海道に次いで全国2位の面積。東日本大震災の経験も踏まえ、広域的な消防活動でヘリと消防車両の連携が課題となっていた。指令センターでは、26年度から県内87%のエリアの指令をカバーする。現在の38%から大幅に拡大することから、22年度に新システムを提案。総務省消防庁やJAXA、岩手医大付属病院に働きかけて開発を進め、23年に実証実験を行っていた。

     同庁広域応援室の武田康孝航空専門官は「他県から同様の依頼があれば協力したい」と話している。
  •  「握手しましょう」

     4月中旬、東京都内で、脳波でロボットアームを動かすテストが行われた。実験者は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の武藤将胤さん(37)。音声で握手を予告し、目を閉じた。

     30秒ほど意識を集中させると、頭や耳に付けた10個の機器が脳波の動きをキャッチ。腕の位置に付けたロボットアームがおもむろに動き出し、ロボット研究者、吉藤オリィさん(36)の手を握った。

     「オーケー」「ばっちり!」。仲間たちの歓声に、武藤さんはほほえみながら応えた。「僕の指令で動いた、僕のアクティブな腕」

     11年前に発症。全身の筋力が衰え、気管切開後は声も発せなくなったが、「テクノロジーが身体機能を補完するだけでなく、拡張させ、活動の場を広げてくれる」。会話は視線で文字入力し、音声を合成して行う。デジタル上で音楽を作り、自身のアバター(分身)で海外イベントに参加する。

     昨秋、体外受精によって娘が誕生。今回の実験成功で「病気が進んでも妻や娘と触れ合える。未来への希望が強くなった」。吉藤さんは「いずれは脳波で電動車椅子を操作し、外出も可能になるはずだ」と話す。

     ロボットやICT(情報通信技術)などを用いて、身体能力や知覚能力を広げる「人間拡張」。誰もが理想の暮らしを送るためのアプローチとして、期待が集まる。

     内閣府が2020年に始めた「ムーンショット型研究開発制度」では、50年までに実現したい10個の未来像の一つに「身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会」を掲げる。

     人間拡張が進んだ未来では、寝たきりの人がロボットを遠隔操作したり、リアルの自分とアバターの自分が別々の職場で同時に働いたりするのが日常になり得る。触覚を遠隔で共有する技術開発などに取り組む、慶応大の南澤孝太教授は「誰もがもう一つの身体を持ち、自分らしく豊かな人生を送れるようになる」と目指す方向性を語る。

     今年2月、米アップルが米国内で発売したゴーグル型端末「ビジョン・プロ」も、個人の活動領域や役割を広げ、人口減社会の課題解決に寄与するツールになるかもしれない。
  •  生まれつき耳が聞こえにくい「先天性難聴」の赤ちゃんの割合は、1000人あたり1・62人とする調査結果を、信州大の研究チームがまとめた。長野県の新生児15万人超を対象にした大規模調査で、両耳難聴の原因では「遺伝性」が半数強を占めた。論文が国際医学誌に掲載された。

     先天性難聴は早期発見し、補聴器などを使用して適切な療育を受ければ、言語の発達などが期待できる。生後直後に産院で、赤ちゃんが寝ている時などに音を聞かせ、脳や耳の反応を確認する新生児聴覚スクリーニング検査が実施されている。

     チームは、2009~19年に長野県で生まれた15万6038人のうち、同検査を受けた15万3913人を対象に、先天性難聴の割合と原因を調べた。精密な聴力検査を経て、普通の声の大きさの会話が聞き取りにくい「中等度以上」の先天性難聴と診断されたのは249人(1000人あたり1・62人)だった。

     遺伝子や画像、難聴を引き起こすウイルスの検査で原因を調べると、両耳が難聴の130人(同0・84人)では56%が遺伝性だった。片耳が難聴の119人(同0・77人)では、40%が聴神経の形成不全だった。

     新生児聴覚スクリーニング検査は厚生労働省が公費での実施を自治体に求めている。こども家庭庁の22年度の調査では、全国で95・2%が受けた。

     吉村豪兼・信州大医学部講師は「原因が分かれば最適な時期に適切な治療ができる。全国で原因を調べてもらいたい」と話す。

      守本倫子・国立成育医療研究センター耳鼻咽喉科診療部長の話 「先天性難聴の割合と原因が実測値で示されたことで子どもの状況を家族に説明しやすくなる」
  •  生まれつき永久歯の数が少ない先天性無歯症を治療する「歯生え薬」の臨床試験(治験)を9月から始めると、北野病院(大阪市北区)などのチームが2日発表した。歯を一部失った健康な男性30人を対象に投与して安全性を確かめ、その後2~7歳の患者へと対象を広げる計画。2030年頃の実用化を目指しており、実現すれば歯を生やす世界初の薬になるという。

     永久歯は親知らず4本を含め、全て生えると32本になるが、「先天性無歯症」では一部が生えない。欠損の本数が多い遺伝性の患者は国内に約12万人いるとみられる。放置するとあごの発達などに影響するため、成長に伴って入れ歯を何度も作り替えたり、成長後、人工の歯をあごの骨に直接固定するインプラントなどで対処したりする必要があった。

    チームはマウスを使った実験で、歯の成長を抑えているたんぱく質を突き止め、この働きを妨げる抗体医薬を作製した。

     治験では、虫歯などで歯を一部失った30~64歳の男性30人に薬か偽薬を点滴で投与し、1年ほどかけて副作用の有無をみる。安全性が確認できれば、26年頃に歯が4本以上少ない2~7歳の患者50人ほどを対象に、有効性などを確認する計画だ。

     チームによると、先天性無歯症のマウスや犬で行った実験では薬の投与によって歯が生えてきた。たんぱく質によって成長が止まっていた「歯のもと」になる組織から生えたとみられる。

     治療にかかる費用は150万円程度を見込んでおり、将来は虫歯などで歯を失った人の治療も視野に研究を進める。北野病院の高橋克・歯科口腔外科主任部長は「入れ歯、インプラントに続く第3の選択肢になるよう、研究を進めていきたい」と話した。
  •  北海道内で2023年、仕事中に熱中症で死傷した人は計153人で、過去最多だったことが、北海道労働局のまとめで分かった。100人以上となるのは統計を取り始めた14年以降、初めて。昨夏の記録的暑さが影響したとみられ、屋内作業での死傷者も目立った。今夏も平年より気温は高くなる見通しで、同局が注意を呼びかけている。

     死傷者数はこれまで19年の計68人が最多だった。22年は30人で、23年は前年の5倍に増えた。

     同局によると、153人の内訳は死亡1人、4日以上の休業62人、3日以下の休業90人。業種別では建設業が48人と最多で、次いで製造業の21人だった。接客・娯楽業でも10人いた。発生状況別では、屋外作業が87人、屋内作業は66人。年齢別では労働者に占める割合の高い40、50歳代が各32人、20歳代が26人と続いた。

     同局健康課によると、気温が高い日の屋外の危険性はよく知られているが、屋内作業については見落とされがちだ。高温になる機械の近くやキッチンなどで、長い時間立ち仕事をする場合も体力の消耗は激しく、熱中症になりやすい。昨年死亡した1人も、ボイラー室で作業中の70歳代だった。屋内外問わず、暑さ指数計で周囲を確認しながら作業することが重要で、屋内では冷房の導入も検討する必要があるという。

     札幌管区気象台によると、道内では昨年7~9月に過去最長となる44日間連続で真夏日が観測された。今年も6~8月は平年より気温が高くなる見通しだ。

     昨年は5月から、ビニールハウス内の作業で熱中症の労災が起きており、同課の担当者は「暑さに体が慣れてない今の時期から熱中症対策をしてほしい」と話している。
  •  腸とつながる肝臓の血管付近には、腸から侵入する腸内細菌を撃退しつつ肝臓の炎症を抑える特殊な免疫細胞が存在することがわかったと、大阪大の石井優教授、宮本佑特任研究員らのチームが発表した。慢性肝炎の予防や新しい治療法の開発につながる可能性があるといい、科学誌ネイチャーに論文が掲載された。

     食物から腸で吸収された栄養分は、門脈という血管を通って肝臓に届く。腸が傷つくと門脈から腸内細菌などが侵入し、肝臓に炎症を起こすことがある。チームはマウスの肝臓で、免疫細胞の動きを詳細に観察できる独自技術を駆使し、門脈付近では炎症が起きにくいことを発見した。

     通常、体内に侵入した細菌を免疫細胞が攻撃すると炎症が起きるが、この場所にいるマクロファージという免疫細胞の中に、逆に炎症を抑える物質を活発に出すものがあることが判明。細菌を撃退し、炎症も抑えることで、肝臓のダメージを防いでいるとみられる。

     脂質が蓄積して起きる肝炎(MASH)や、肝移植が必要な場合もある難病・原発性硬化性胆管炎(PSC)の患者では、この免疫細胞が非常に少なかった。

     チームは、この細胞が不足するとMASHやPSCの発症につながるのではと推測。この細胞は腸内細菌が作る物質によって増えることもわかり、数を制御できれば、有効な治療法のない肝疾患を予防できる可能性があるとしている。

     肝疾患に詳しい熊本大の田中靖人教授(消化器内科学)の話「原因がわかっていない肝疾患の発症メカニズムの一部を説明しうる成果。腸内細菌との関連も興味深く、新しい治療法につながることを期待したい」
  •  海外で承認された薬が日本で使えない「ドラッグロス」の問題を改善するため、厚生労働省は、小児がんなどの希少疾患の新薬について、承認申請の要件を緩和することを決めた。日本人の臨床試験データがなくても申請できる新たな仕組みを、5月にも導入する方針だ。海外の製薬企業による申請を促し、薬の実用化の時期を早める狙いがある。

     製薬企業は治療薬を開発する際、効果や安全性を調べる臨床試験を行う。国への承認申請時に試験結果を提出して審査を受け、国内で薬を製造販売する承認を受ける。

     薬によっては、人種などで効果や副作用に差が出ることもあるため、通常は日本人を対象に行った臨床試験の結果も提出する必要がある。臨床試験が海外先行で既に終了している場合は、日本で追加試験を行うよう求められるが、多大な費用がかかる。このため海外企業が日本での申請を見送ることがあり、ドラッグロスの一因と指摘されていた。

    海外で承認されたが日本で使えない薬は増えている。厚労省によると、昨年3月時点で、欧米で承認されているが日本で未承認の薬143品目のうち、86品目は国内で申請されておらず、40品目は患者が少ない病気の薬だった。

     新たな仕組みでは、海外での試験結果をもとに、日本人患者にも薬の効果が高く副作用を考慮しても恩恵が大きいと見込まれる場合は、日本人のデータがなくても申請を認める。〈1〉海外での臨床試験が既に終了している〈2〉患者数が数百人以下など少なく日本での追加試験が難しい〈3〉病気の進行が速く命に関わる――などの条件を満たした薬が想定される。

     製薬企業は承認手続きや国内の医療現場で使われる段階で、日本人を対象にしたデータを収集して、提出する。国は追加データで、効果や副作用を確かめる。

     希少疾患の新薬開発はコストがかかる一方で患者が少ないため、収益性が低い。米国などでは創薬の主体は新興企業などに移りつつあり、厚労省はこういった新薬を国内に取り込む施策が必要だと判断した。
  •  政府は、電子カルテの導入が進まない診療所に普及させるため、基本機能を必要最小限に絞り込んだ新しいシステムの開発に乗り出す。入院に対応する機能は省き、外来機能に特化して導入コストを抑える。2024年度中に開発し、来春から数か所の地域で試験導入する。電子カルテは30年までに、ほぼ全ての医療機関に普及させる目標を掲げており、新システムを活用することで達成を目指す。

     診療所向けの電子カルテシステムは、デジタル庁で開発する。診療所では病院向けの高機能な電子カルテは必要ない。このため、患者の病名や症状、アレルギー情報、検査、薬の処方情報など項目を絞って入力できるものを想定する。医師から看護師への指示など、病床がある場合に必要な機能などは省略して使いやすくする。足りない機能があれば、個別に追加できる形にする予定だ。

     民間事業者が販売する既存の電子カルテは、導入コストとして数十万から数百万円かかるとされるが、診療所向けは、できるだけ安価なものを目指す。医療DX(デジタルトランスフォーメーション)の一環で、政府は24年度中に、電子カルテの情報を全国の医療機関で共有できるシステムの運用を始める予定だが、これに対応する機能を標準搭載することで導入メリットを高める。

     厚生労働省の調査によると、電子カルテの普及率は20年時点で、400床以上の大規模な病院では91・2%に達するが、200床未満の中小病院や診療所では5割程度にとどまる。費用の負担感やシステム操作の煩雑さなどがネックになっているとみられる。政府は診療所への試験導入の状況を踏まえ、中小病院への普及も進める考えだ。

     電子カルテや電子処方箋などが普及し、医療機関や薬局で患者情報の共有が進むと、患者は検査や投薬が重複せず、最適な治療が受けられるほか、問診の効率化や待ち時間の短縮にもつながるなど、メリットは大きい。

     厚労省の担当者は「電子カルテを導入しない医療機関があると、患者情報の共有が十分にできなくなる。質の高い医療をどこでも受けられるようにするためにも安価なものを開発し、普及を図りたい」としている。
  •  2023年度に医療機関の休廃業・解散が前年度比37・1%増の709件に上り、過去最多となったとの調査結果を帝国データバンクがまとめた。開業医の高齢化が背景にあり、診療所が8割を占める。電子カルテなど医療DX(デジタルトランスフォーメーション)の普及に対応できないケースもあるとみられる。

     23年度の休廃業・解散件数は19年度(561件)を上回り、最多を更新した。内訳は、診療所が580件(81・8%)、歯科医院110件(15・5%)、病院が19件(2・7%)。診療所は10年前と比べ2・4倍、歯科医院は2・8倍に急増する一方、病院はほぼ横ばいとなっている。

     同社によると、診療所は「65~77歳ぐらいの開業医が多く、高齢化が顕著」という。新型コロナウイルス対策として、政府が実施した実質無利子・無担保の「ゼロゼロ融資」の返済が23年度以降、本格化していることも影響している。電子カルテやオンライン診療など、医療DXへの対応が重荷となるケースもある。

     同社の担当者は「デジタル化などについていけず、診療を続けるべきか迷う人も多い。診療所の休廃業は今後も増える可能性が高い」と指摘している。
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