コラム・連載

2021.02.15|text by 高須 克弥

第9回 最近の美容外科に警鐘を鳴らす

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最近の美容外科に警鐘を鳴らす

最新のフィラーについて、お聞かせください。

私の場合は昔から使い慣れているものを使っています。最近のフィラーは自分の身体にも使っていないですし、不気味ですから、患者さんには使いません。私の患者さんには私自身が打ったことのあるものだけを使い、目で見て分かることだけを匠の技で一生懸命にやっています。

匠の技をどのように磨いてこられたのですか。

数多くやっていますもの。50年近くやっていれば、誰でも上手になりますよ(笑)。

後進を育てていこうとはなさらないのですか。

美容外科医は数が増えすぎているから、あまり育てなくてもいいですし、自然淘汰しないといけないですね。今は歯科医院よりも美容外科の方がオーバーフローしています。歯は抜けたり、痛くなったりするので、歯科治療は絶対に必要なものですが、鼻を高くしたり、おっぱいを大きくするのはそんなに大勢ですることでもないでしょう。

高須院長のご活躍を見て、自分もと思われるのではないでしょうか。

あまり活躍していないです。こつこつと地道にやっているだけですし、美容外科だけをやってきたわけではありません。美容外科の高須院長と言われますが、私としては不本意です。私は整形外科や形成外科の専門医であり、美容外科もできますよというだけのことです。美容外科の専門医制度は私たちが作りましたが、私は美容外科に一生を捧げるつもりはありませんでした。たまたまライバルが少なすぎて、目立っただけです。

時代が良かったと思われますか。

時代は悪かったですね。親戚のおじさんたちに「高須家の恥だ」「そんなのは人間の仕事ではない」と説教されたこともあります。でも今はおじさんたちの言っていたことがようやく分かってきました。美容外科医は必要な仕事ですが、大勢はいりません。医師のうちの20%が美容外科医になったら、国が滅びます。最近、女性医師の夢は美容皮膚科医になることみたいです。好きなときに働け、急患は来ないし、当直もないし、訴えられることもなければ、給料も良く、休みたいときに休め、辞めてもいいです。そういう女性が嫁入り道具にいいということで医学部に入ってこられたら、地域で働きたいという志があるけれども、成績が悪かった受験生が落ちてしまいます。

今は医学部志望の女子が増えています。

私の母も妻も医師で、女性医師で保っているウチではありますし、息子の嫁たちも医師で、嫁に来てくれたのは嬉しいことですが、美容皮膚科の女性医師はそこまでいらないでしょう。美容皮膚科の倒産は増えています。私は美容皮膚科の医師会長をしていますので、保険診療を中心にしながら、自費診療でフィラーか何かをちょっと打って荒稼ぎしているような医師が経営危機に陥っているのを見てきています。

そういった医師は一般の診療に戻るのですか。

時代遅れになってしまうし、戻れないでしょう。美容外科一本槍で、フィラーしか打てない医師や顔以外に注射したことない医師は困ります。おっぱいを大きくするための怪しげなフィラーは厚生労働省も止めろと言っているのに、まだやっている人たちがいます。全部廃棄したと思っても、経営状態が悪いと在庫を使わざるをえないから、続けてしまう。流行っているクリニックの薬や手術はどんどん新しいものが入るから安心ですが、患者さんが来ていないクリニックだと危ないです。薬や注射、美容のための色々なものには使用期限があります。でも経営状態が悪いと、古いものも使うんです。例えばヒアルロン酸でも、私は1アンプル以上打ちますが、お金のない患者さんに1アンプルの10分の1を10分の1の料金で打つ医師がいます。そして余ったヒアルロン酸をボトルキープのように冷蔵庫の中にしまっているんです。次の患者さんにはその冷蔵庫のヒアルロン酸を打ちます。そういう恐ろしい話を山ほど聞きます。

それは驚きですね。

そうした美容外科医は普通の医療の方に目を向けてほしいです。流行らない美容外科医は食べていかないといけないから、ヘンな人に手をつけます。これはマイケル・ジャクソン病といって、「先生、鼻をもっと高くしてください」と頼んでくる患者さんです。そして、これ以上は誰もできないというぐらい、無理矢理に鼻を高くして爆発させてしまいます。美容外科は腕のいい医師が少しいるという状態が繁栄するコツなんです。なぜなら、大学で美容外科を教えていないからです。昭和大学は私の寄付で美容外科学講座を作りましたが、ほとんどの医師が大学を卒業後にどこかで見様見真似で始めます。

どこかで習うのですよね。

雇う方も本当に稼いでくれる人が欲しいから、ヒアルロン酸を打つだけの人、ボトックスを打つだけの人、フォトフェイシャルをするだけの人、包茎手術をするだけの人というように仕事を分けているから、色々なことができない医師が増えてしまいました。それで労働者に徹しているのならいいのですが、自分で何でもしたい、一国一城の主になりたいと思って開業します。しかしフォトフェイシャルしかしたことない人が「エラを削ってください」「おっぱいを大きくしてください」と言われても、「できません」とは言えません。それでなんちゃって手術をします。患者さんに分からないだけに、本当に危ないですよ。

恐ろしい話です。

消費者生活センターに聞けば、分かりますよ。美容医師会にも騙されたという方々の声が届きますが、美容医師会は医師の互助会であって、取り締まるのは警察の仕事ですからね。

厚生労働省はどう対策しているのでしょうか。

こういうものをおっぱいに入れてはいけないなどの方針を示し、打つ手は打っています。でも自由競争ですから、自然と淘汰されると思います。これは歯科医師と同じ構造です。歯科医師は儲かるといって、多くの歯学部を作りましたが、コンビニよりも歯科医院の数が多くなり、下手な歯医者さんのところはどんどん潰れています。美容外科もしばらく経つと、数が減り、生き残るべきところが生き残る世の中になるはずです。

著者プロフィール

高須克弥院長 近影

著者名:高須 克弥

高須クリニック 院長

  • 1945年 愛知県幡豆郡一色町(現 西尾市)で生まれる。
  • 1969年 昭和大学を卒業する。
  • 1973年 昭和大学大学院を修了する。
  • 1974年 愛知県幡豆郡一色町に高須病院を開設する。
  • 1976年 愛知県名古屋市に高須クリニックを開設する。
  • 2011年 昭和大学医学部形成外科学(美容外科学部門)客員教授に就任する。
バックナンバー
  1. インタビュー 高須克弥先生に訊け
  2. 09. 最近の美容外科に警鐘を鳴らす
  3. 08. 社会貢献活動
  4. 07. 愛知県に暮らす
  5. 06. 新型コロナウイルス
  6. 05. 新しい美容外科
  7. 04. ミケランジェロ™
  8. 03. 国際交流
  9. 02. 血液クレンジング
  10. 01. 美容外科のニーズ

 

  • Dr.井原 裕 精神科医とは、病気ではなく人間を診るもの 井原 裕Dr. 獨協医科大学越谷病院 こころの診療科教授
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