コラム・連載

2020.02.15|text by 高須 克弥

第1回 美容外科のニーズ

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美容外科のニーズ

日本での美容整形は顔周りのニーズが多く、一方で世界では顔以外の依頼が4割あると聞きました。

国によって違いますね。ブラジルはボディがほとんどです。年に一度のカーニバルで山車の上に乗ったときに立派なお尻とおっぱい、くびれたウエストだと思わせたいブラジル人と、就活や婚活のために顔だけ立派にすればいいという日本人の国民性の違いでしょう。

国民性でニーズが違うんですね。

日本で今、伸びているのはアンチエイジング産業です。若い子たちは若くなりたいわけではなく、ハンサムになりたい、美人になりたい。お年寄りは昔の自分を取り戻したい。だから、よく似ているようだけど、全く違うジャンルです。若さと美容は全く違うもので、いくら皺をとっても、ブスはブスだし、いくら鼻を高くしても、二重にしても、おばさんはおばさんです(笑)。ブラジルの場合はアンチエイジングを楽しめるほど所得がないんです。若いときに全財産をはたいて、カーニバルや山車で思い切り着飾って、年に一度の花を咲かそうとします。日本で言えば、昔の歌舞伎役者のような感じですね。

時代によっても違いますか。

時代によっても、国家の政策や国民の経済力によっても変わってきますね。私の少年時代に人気だった石原裕次郎は八重歯が魅力でしたが、ヨン様は真っ白な粒ぞろいの歯です。私が開業した頃に一番流行ったのは処女膜整形手術です。その頃は皆、処女を失うと嫁に行けない、処女を取り戻すとまた嫁に行けると考えていたんです。祇園や島原の人たちは水揚げでひと稼ぎしますが、間違いがあれば大変なので、処女膜を作ってくれという依頼が一杯ありました。今はそんな依頼は全くありません。それから、高度成長以後はいいクルマに乗り、いい格好をして、いい女の人と付き合いたいということで、若者たちが包茎手術に来ました。私が「包茎を治さなければ一人前の男とは言えない」というビジネスモデルを作ったからでもあります。しかし、これも今は需要がありません。今は包茎だからといって嫌われることも、恥ずかしくてサウナに行けないということもありません。割と開き直っている人が増えたんでしょう。

ご著書である『ブスの壁』にも基準が変わった話が出てきますね。

戦争に負けるまで日本にはブスは少なかったんです。一重まぶたの胴長短足が美人画の定番でしたが、アメリカの植民地政策の成果で、アメリカ人のような顔になりたい女性が急増したんです。本当は胴長短足、一重まぶた、丸顔でぽってりした唇で黒髪の日本人は美しいのです。

切らないフェイスリフト

最近は切らないフェイスリフトというものについてもよく聞きます。そういった最新のお話も伺っていきたいです。

切らないでフェイスリフトをするのが一番の理想です。ただ、たるみきってしまったら仕立て直しをしなくてはいけないところが洋服と人間の身体はよく似ています。洋服はなるべく大事に使って、壊れないようにうまく着ることも大事ですが、好きなように着て、破れたら縫ったり、シミができたら抜いたり、たるんできたらアイロンをかけたり、仕立て直しをすることもあります。人間の顔は必ず内部崩壊して崩れて、たるんできます。そこで、たるんでくる前に、顔の中に鉄筋を入れるみたいに金の糸やコラーゲンに変わる糸などを埋め込み、顔のたるみを防ぐという発想が昔からあったんですね。私はその発想を一歩進めて、少しのたるみなら吊り上げることができるのではないかと考え、パテントを取りました。私が言い始めたものを今は皆がやっています。

すごいですね。

でも限界があるんです。たるむ前や少しのたるみであればいいのですが、たるみが酷くなってからだと顔が余るので、ダーツができるんです。ダーツができると、そこをまた持ち上げてやって、またたるんできたら、そこを持ち上げます。日本で一番初めにやったのが野村沙知代さんです。彼女は60本の糸を入れました。ものすごく腫れるので、皆に見せられないから、ナポリの病院を1カ月借り切って、私が手術したんです。フジテレビと東京メトロポリタンテレビの番組2つを一緒に連れていきました。しかし、そんな贅沢治療はショーのためにやっているようなものだから、車の業界で言えばF1レースに出すフォーミュラカーみたいなもので、一般人が受けられるものではありません。私の目的は「できるよ」ということをショーとして世界に見せるものであって、一般の人がするのは経済的にも時間的にも難しいです。だから、皆やったとしても3本から6本が限界なので、やったなりに効果はありますが、私がやったようなものは絶対にできません。サッチーのようにはならないんです。手間暇のかけ方が違いますからね。ときどき、勘違いした人が「高須先生と同じようにやってくれ」と言ってこられますが、一般の人が全部やったら破産しますよ(笑)。

フェイスリフトをご希望の方は多いですか。

多いですね。色々な種類を用意して、その方の経済状態やライフタイムに合わせて、行っています。これまでフェイスリフティングという名前の手術しかなかったので、何でもフェイスリフトといいますが、要するに顔のたるみを治したり、顔が萎びたのを治す、肌を綺麗にするだけでも、ものすごく多くの種類があるんです。フェイスリフトはたるみを引き上げて、余った皮膚と脂肪を切り取ります。切り取った組織は廃棄物となりますが、ここに良質のコラーゲンが含まれています。野村沙知代さんをはじめ、この切り取った組織の再利用を望む患者さんのために、私は別に会社を作り、組織冷凍保存をしています。マイナス60度で保存し、再利用する時期が来たら解凍して、コラーゲンを分離抽出します。自分のコラーゲンの再利用で、10年ほどは若々しい肌を保てますよ。

「切らない」ものが主流ですか。

「切らない」のが主流というのではなく、経済的な問題が大きいです。料金も安いし、回復期間も短いから、手軽にできるというのが増えてきています。ユニクロの洋服が流行っているようなもので、それはそれでニーズがありますが、高級なのは高級なので別にあります。

HIFU

最近はHIFU(ハイフ)も注目されています。

HIFUは最近ではなく、昔からあります。大昔から熱刺激で顔のたるみを取ってきたんです。ロシアなどでしていたのはニクロム線を巻いたものを顔に当て、熱で刺激を与えて火傷を起こさせるというものです。確かに、顔は上がるんですよ。手作りで、火傷を起こさない程度の火傷を負わせます。サンクトペテルブルクに世界一の人がいて、取材に行った人がものすごい技術だということで、皆ができるといいなと言っていたら、高周波で上げるものが作られ始めました。それで大発明と言っているのですが、昔の職人がやっていたことを簡単にできるようにして、皆が始めただけなんです。

そうなんですね。

ケミカルピールも同様です。これも20世紀初頭からあるんです。顔の上にフェノール酸を塗って、火傷を起こさせます。すると顔が引き締まって、小じわが全部取れます。でも不整脈も起こるし、大火傷するし、ものすごく痛いので、命がけなんです。医師側も痛みのコントロールなどの術後管理が大変です。それで、私はソフトケミカルピールを始めました。うすーく火傷を起こさせる化粧品のようなものを作って、顔に塗るんです。ハードなケミカルピールは大富豪が受けていたものだから、皆が憧れるのですが、それをできる人はとても限られた人になってしまいます。日本人でそんなハードなケミカルピールをしたのは私だけです。私に続く人はいません。私がやったものはYouTubeに出ていますよ。実際にやってみたものの、恐ろしかったです。妻をはじめ、皆が見て勉強したのですが、恐ろしくて、結局、誰もできませんでした。私はイスラエルにいた世界一の人を日本に呼んで、やってもらいました。その人しかできない名人芸というものは世界中に色々とあり、名人の名前をうまくとってネーミングします。HIFUもその一つです。

HIFUは特に新しい医療ではないのですね。

何も新しくありません。高周波で顔のたるみを上げるものですが、ニクロム線で顔を焼いていた時代と変わらないんですよ。すごい効果はありません。HIFUの一番ポピュラーなウルセラは私どもが最初に始めて、ゴールデンディスクもいただいています。恐らく、私どもが日本で一番多く施術していると思います。

著者プロフィール

高須克弥院長 近影

著者名:高須 克弥

高須クリニック 院長

  • 1945年 愛知県幡豆郡一色町(現 西尾市)で生まれる。
  • 1969年 昭和大学を卒業する。
  • 1973年 昭和大学大学院を修了する。
  • 1974年 愛知県幡豆郡一色町に高須病院を開設する。
  • 1976年 愛知県名古屋市に高須クリニックを開設する。
  • 2011年 昭和大学医学部形成外科学(美容外科学部門)客員教授に就任する。
バックナンバー
  1. インタビュー 高須克弥先生に訊け
  2. 05. 新しい美容外科
  3. 04. ミケランジェロ™
  4. 03. 国際交流
  5. 02. 血液クレンジング
  6. 01. 美容外科のニーズ

 

  • Dr.井原 裕 精神科医とは、病気ではなく人間を診るもの 井原 裕Dr. 獨協医科大学越谷病院 こころの診療科教授
  • Dr.木下 平 がん専門病院での研修の奨め 木下 平Dr. 愛知県がんセンター 総長
  • Dr.武田憲夫 医学研究のすすめ 武田 憲夫Dr. 鶴岡市立湯田川温泉リハビリテーション病院 院長
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