コラム・連載

2019.12.15|text by 中島 貴子

中島貴子 教授 コラム連載開始!

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総合内科を学ぶ

大学を卒業後、どちらで研修をなさったのですか。

大森赤十字病院です。大森は東京都大田区の下町で、大森赤十字病院は当時も地域医療を頑張っている病院でした。今の初期臨床研修制度ではスーパーローテートが義務づけられていますが、当時はまだスーパーローテートで研修できる病院は少なかったのです。私はスーパーローテートができる市中病院を探して、自分で決めました。

医局には入られたのですか。

そのときは入っていません。その頃は卒業と同時にどこかの医局に所属して、大学病院を中心に研修することがメジャーな進路でしたので、当時としては珍しいと思います。

どうして、そのような選択をなさったのですか。

卒業するときに専攻科を絞り切れていなかったので、研修医の間にローテートをしたいという思いがまずあったからです。それから、若いときにcommon diseaseをできるだけ多く診たいという希望があり、それなら大学病院よりも地元密着の市中病院の方がいいなと考えたんです。今からすると、今風ですよね(笑)当時は総合内科という考え方もまだ浸透していない時代でした。

大森赤十字病院のどういうところが魅力的でしたか。

自分が回りたい診療科を自分で自由に選べるところです。ほかにも、そういう病院はあったのですが、私自身が思い立ったのが遅くて、試験が終わってしまっていた病院もいくつかありました。そういう事情もあって、大森赤十字病院になったんです。

外科系も回られましたか。

外科も産婦人科も回りましたし、内科系も一通り回りました。当時の大森赤十字病院には精神科はなかったので、大森赤十字病院とコラボレーションしていた東京都立松沢病院にも行きました。

卒後3年目で神奈川県立足柄上病院に移られたのですね。

そうです。大森赤十字病院での2年間の研修が終わる頃、私は総合内科的な医局に入りたいと思うようになっていました。そこで、大森医師会の先生にご相談したのですが、その先生が横浜市立大学のご出身で、「大学で腰を据えてやっていくのもいいぞ」とおっしゃって、旧第二内科を勧めてくださったのです。旧第二内科は総合内科的であり、一般的な内科をほぼ診られる先生方が揃っていると伺い、紹介していただきました。

そこで入局なさったのですか。

旧第二内科に入局して、入局と同時にその関連病院である足柄上病院に勤務することになりました。

足柄上病院はいかがでしたか。

都心の病院ではありませんので、幅広く診る必要がありましたから、私は総合内科医のように、内科全般を診ていました。当時の院長は宮本一行先生で、今でも一番尊敬している先生です。今は院長職は引退なさっていますが、現役の総合内科医でいらっしゃいます。私は宮本先生のようになりたいと思い、上部、下部の内視鏡をはじめ、気管支鏡検査、それから肝臓がんのIVRまでやっていました。そうした毎日を過ごす中で、がんの内視鏡診断が非常に難しいと感じ、宮本先生と内視鏡の師匠である横山知子先生に「がんセンターで勉強したい」とご相談したのです。そうしたらお二人とも賛成して下さったので、がんセンターに行くことになりました。

著者プロフィール

中島貴子教授 近影

著者名:中島 貴子

聖マリアンナ医科大学臨床腫瘍学講座教授、聖マリアンナ医科大学病院腫瘍内科部長、腫瘍センター長

  • 1971年 東京都江東区に生まれる
  • 1990年 東京大学教養学部理科II類に入学する。
  • 1991年 横浜市立大学医学部に再入学する。
  • 1998年 横浜市立大学医学部を卒業後、大森赤十字病院で研修を行う。
  • 2000年 神奈川県立足柄上病院内科に勤務する。
  • 2002年 国立がんセンター(現 国立がん研究センター)中央病院にレジデント、がん専門修練医として勤務する。
  • 2007年 国立がん研究センター東病院臨床開発センターにリサーチレジデントとして勤務する。
  • 2007年 国立がん研究センター中央病院消化器内科・外来化学療法科に医員として勤務する。
  • 2010年 聖マリアンナ医科大学臨床腫瘍学講座講師に就任する。
  • 2012年 聖マリアンナ医科大学臨床腫瘍学講座准教授に就任する。
  • 2016年 聖マリアンナ医科大学臨床腫瘍学講座教授に就任する。

 
日本内科学会認定医・総合内科専門医指導医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医・指導医、日本癌治療学会認定医、消化器病専門医、日本消化器内視鏡専門医。

バックナンバー
  1. シリーズタイトルが入ります
  2. 05. 腫瘍内科医に求められるもの
  3. 04. 緩和ケアについて
  4. 03. 聖マリアンナ医科大学で臨床腫瘍学講座を立ち上げる
  5. 02. 腫瘍内科に出会う
  6. 01. 総合内科を学ぶ

 

  • Dr.井原 裕 精神科医とは、病気ではなく人間を診るもの 井原 裕Dr. 獨協医科大学越谷病院 こころの診療科教授
  • Dr.木下 平 がん専門病院での研修の奨め 木下 平Dr. 愛知県がんセンター 総長
  • Dr.武田憲夫 医学研究のすすめ 武田 憲夫Dr. 鶴岡市立湯田川温泉リハビリテーション病院 院長
  • Dr.一瀬幸人 私の研究 一瀬 幸人Dr. 国立病院機構 九州がんセンター 臨床研究センター長
  • Dr.菊池臣一 次代を担う君達へ 菊池 臣一Dr. 福島県立医科大学 前理事長兼学長
  • Dr.安藤正明 若い医師へ向けたメッセージ 安藤 正明Dr. 倉敷成人病センター 副院長・内視鏡手術センター長
  • 技術の伝承-大木永二Dr
  • 技術の伝承-赤星隆幸Dr