我が子を成功させる、やりすぎない子育て(14:16)

ジュリー・リスコット=ヘイムス(Julie Lythcott-Haims)
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対訳テキスト
講演内容の日本語対訳テキストです。
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子育ての専門家になる予定なんて なかったんですよ 実際 私は子育てそのものに さほど興味はありません ただ最近の子育てには 独特なやり方があって それが子どもをダメにしたり 子どもの成長のチャンスを 妨げたりしているところがあります 最近の子育ての ある独特なやり方が 邪魔になっているんです

私が思うに 私たちは長い時間をかけて 子どもの生活や教育やしつけに あまり関わろうとしない親のことを 大いに問題にしてきました それは正しいんです ただ その対極にも 大きな害を生んでいる親がいて 子どもが成功する条件として 自分が何かにつけて子どもを保護し 予防線を張り 傍について すべてを把握し 絶えず細かく管理し ごく一握りの大学や職業にたどり着けるよう 仕向けなければと感じています

このように育てた場合― 私も他人事じゃありません なにしろ私自身 2人のティーンを育てていて 自分にも その傾向があるからです 彼らはチェック項目だらけの 子ども時代を送ることになるのです

チェック項目だらけの子ども時代とは こんな感じです 子どもの環境は 安全で健全か 食料や水は足りているか それから ちゃんとした学校に 確実に入ってほしいし ちゃんとした学校で ちゃんとしたクラスに入って ちゃんとした学校の ちゃんとしたクラスで ちゃんとした成績を取ってほしい 成績だけじゃなく 点数も気になるし 成績や点数だけじゃなく 表彰や受賞歴も スポーツや他の活動も リーダーシップも大事です 子どもに言います 「クラブに入るんじゃなく 部を立ち上げなさい 大学に評価されるから」 奉仕活動の項目にもチェック 思いやりがあることを 大学に示さなくちゃ

観衆:(笑)

そのすべてが望ましい 完璧さでなされること 我が子に完璧なレベルで 実行することを求めます 自分たちが求められたこともない レベルです 多くを要求されるため 親は思うのです これは親の私が 先生や校長やコーチや審判に 文句を言ってやらなくちゃ 我が子のために コンシェルジュを務め お抱えトレーナーとなり 秘書もやらなくちゃ

すると私たちは 大事な我が子と過ごす 時間の多くをかけて 後押しし おだて 手引きし 手伝い 口を挟み 時にはガミガミ言ってでも 子どもが失敗していないか 道を狭めていないか 将来を台無しにしていないか ほとんどの志願者が落とされる ほんの一握りの大学に 望みどおり合格できるか 気にしてしまうのです

チェック項目だらけの子ども時代を 過ごす子どもの側はと言うと まず遊ぶ時間なんてありません 午後は予定が詰まっています やることのすべてが 有益じゃなきゃいけませんから まるで 宿題、小テスト、活動の1つ1つが 親の描いた我が子の将来を左右する 重大な局面かのようです だから家事のお手伝いは免除 さらに チェック項目を片づけるためなら 子どもが十分な睡眠を取れなくても 構わないとさえ思うのです チェック項目だらけの子ども時代では 親は子の幸せだけを願うと言いつつ 学校から帰ってきた子どもに 真っ先に尋ねるのは たいてい 宿題と成績のことです 子どもは親の顔色を見て 親からの承認や 愛情や 自分の真の価値をもたらすのは 優秀な「A」の成績だと考えるのです そして親は子の横に付いて歩き おだて続けます ドッグショーのトレーナーみたいに

観衆:(笑)

少しでも高くジャンプし 少しでも遠くまで飛べるよう 毎日毎日 言って聞かせるのです そして子どもは高校に入ると 「どんな勉強が面白そうかな どんな活動をしようかな」 とは考えず カウンセラーに こう言うのです 「ちゃんとした大学に入るには 何をすればいいですか?」 高校で成績がつき始めて 「B」を取ったり あろうことか「C」を 取ったりしようものなら 子どもは慌てて友人たちに メールします 「こんな成績で ちゃんとした大学に 入れた人いる?」

子どもたちは 高校を出る頃には どんな状況かに関わらず みんな息切れしています 傷つきやすく 燃え尽きたようになっていて 年より少し老けています 大人たちにこう言ってほしかったと 思っています 「もう十分だよ」 「子ども時代 よく頑張ったね」 子どもたちは高い確率で不安症や うつを患い弱っています 中には こういう疑問を持つ子もいます 自分の人生に価値があったと 思える時なんて来るのだろうか

私たち親から見れば 価値があるのは 間違いありませんよね でも子どもは親の態度から もし親の思い描く大学や職業の 狭き門をくぐれなかったら 自分に未来はないと 思っているような 印象を受けるのです

あるいは もしかしたら 親は怖れているだけかもしれません 子の将来が 友人に自慢できたり 車の後ろに貼って見せびらかしたり できるものにならないのではと お分かりですね

観衆:(拍手)

でも親として やってきたことを振り返れば きちんと振り返る勇気を持てば 見えてくるはずです 子どもは自分の価値が成績や 点数にあると思っていること そして発達段階の大切な子どもの 頭の中に住む私たちは まるで映画『マルコヴィッチの穴』を 地で行くように こんなメッセージを送っていることに 「私がいなかったら 何ひとつ達成できやしないでしょ」 私たち親は 過度に手助けし 過度に保護し 過度に指示し 世話を焼くことで 子どもが自己効力感を育むチャンスを 奪っているのです 自己効力感は人間の精神の 根本をなす概念です 親が褒めそやすたびに子どもが得る 自尊心なんかより ずっと大事なものです 自己効力感は自らの行動が 結果につながったと感じられた時に 育まれるもので― ですよね?

観衆:(拍手)

親が代わりにやった行動ではなく 自らの行動が結果につながった時に 育まれます 簡単に言えば 子どもが自己効力感を持つのは 必須のことですが そのためには 子どもは今よりずっと多く 考え、計画し、決断し 実行し、望み、対処し、 試行錯誤し 夢を抱き 人生経験を積まなくてはなりません すべて自力でです

さて 私の話は 「子どもは皆 勤勉でやる気に満ち 親が子の生活に 首を突っ込む必要はないから 黙って放っておけ」と 聞こえました? まさか!

観衆:(笑)

そんなこと言ってませんよ 私が言っているのは 成績や点数や表彰や受賞歴を 子ども時代の目的にし すべては一握りの大学に入り 限られた数の職業に就くという その望みを広げるため という考えは 我が子の成功の定義として あまりにも狭いということです 親の助けにより 子どもが 短期的に成功することはあるでしょう 助け過ぎですが 親が宿題を手伝えば 成績は上がるでしょうし 親が助ければ 子ども時代に残せる 実績は増えるでしょう ただし そのすべては長期的な代償を伴い 子どもの自意識が犠牲になるのです 親は 我が子が受験したり 入学したりするかもしれない 特定の大学のことなど 心配していないで どこへ行っても成功できるような 習慣や考え方や技能や健康を 我が子が備えているかを もっと心配すべきなのです 私が言っているのは 子どものために 親は成績や点数への執着を弱め 成功の土台を作れるような 子ども時代に もっともっと興味を向ける 必要があるということです その元となるのは 愛情や 家事です(笑)

観衆:(拍手)

家事ですよ 家事 聞こえました? 本当にそうなんです 理由を説明しましょう これまでで最も長い時間をかけて 人間の変化を追った研究は ハーバード大学の 「グラント・スタディ」です それによると 親の望みである 人生における職業的な成功の源は 子どものうちにやった 家事であることが分かりました 始めるのは早ければ 早いほど良いです 腕まくりして手伝おうという マインドセットが こう語りかけるんです 「イヤな仕事だけど 誰かがやんなきゃ 私がやろうかな」 聞こえてくるんです 「全体の向上のために 自分が頑張ろう」 それが職場での出世に つながるわけです 心当たりがあるでしょう よく分かりますよね

観衆:(拍手)

誰もが知っています なのに チェック項目だらけの子ども時代では 子どもが家事を手伝うのを 免除していますから 成人した若者として 職場に行っても チェック項目を待っている というわけです そんなもの ないのにです より重大なのは やろうという気持ちや勘の欠如です 腕まくりして自ら手伝いに行き 周りを見回して 「どうすれば仲間の役に立てるかな?」 「上司の望みの数手先を打つには?」と 考えることができないのです

ハーバード・グラント・スタディによる 大変重要な発見の2つめは 人生における幸福の源は 愛情だということです 仕事への愛じゃありません 人間に対する愛です 配偶者やパートナー 友人や家族への愛です 子どものうちに 愛することを教える必要があります まず自分を愛せなければ 他者を愛することはできません そして親が無償の愛を注がなければ 子は自分を愛せるようになりません

観衆:(拍手)

そうなんです ですから 成績や点数に執着するのではなく 大切な我が子が学校から帰ってきたり 自分が仕事から帰宅した時 電子機器は閉じましょう 携帯は脇へやって 子どもの目を見て 数時間ぶりに我が子に会えた喜びが 私たちの顔に表れているところを 子どもに見せるのです それから 必ずこう言います 「どんな1日だった? 今日 よかったことは何?」 うちの娘のようにティーンともなると 「ランチ」と答えます こっちが聞きたいのは数学のテストで ランチはどうでもよくても やはりランチに興味を示さなくては いけません こう言うんですよ 「今日のランチは何がよかった?」 子どもが親にとって大切なのは 人間としてであって 成績評価は関係ないと 子どもに分からせるのです

さて皆さん こうお考えでしょう 「家事や愛情は大いに結構だが ちょっと待ってくれよ 大学が求めているのは 高得点や最高の成績 表彰や受賞歴じゃないか」 私の答えは「まぁ確かに」 最高級ブランドの大学が 子どもたちに求めるのはそれです でも 朗報があります 大学ランキング商法が 私たちに 信じさせようとする情報とは裏腹に

観衆:(拍手)

人生において成功と幸せをつかむために 最高級のブランド大学へ行く 必要はないんです 成功し幸せになった人には 地元の公立校を出た人も 無名の小さな大学や コミュニティ・カレッジ出身の人も 大学へ行ったけれど 退学になった人もいます

観衆:(拍手)

その証拠は この会場にも 私たちの社会にもあり それが真実であることを示しています 私たちが視野を広げ より多くの大学に目を向けようとし 自分のエゴを捨てたなら 私たちはこの真実を受け入れ 気づくことになるでしょう 我が子が有名ブランド大学に 行かなくても この世の終わりには まずならないと さらにもっと大切なのは あの非道なチェック項目に 従わずに子ども時代を過ごしたなら 子どもは大学に進むとき それがどこの大学であれ 自らの意思で行き先を選ぶのです 自らの熱意に支えられ 行った先でうまくやる力を 備えているのです

ひとつ白状させてください 私は2人の子持ちだと言いましたね ソーヤーとエイブリーです 2人ともティーンエイジャーです かつての私の ソーヤーとエイブリーに対する感覚は 盆栽を育てるようなものでした

観衆:(笑)

2人を入念に剪定して 人間として完璧な形に仕上げようと していました あわよくば 超一流の大学にも入れるくらい 完璧に作り上げようとしていたんです でも気づきました 何千もの他人のお子さんと接し―

観衆:(笑)

そして自分の子育てをする中で うちの子たちは盆栽じゃない 子どもは野の花なんだって ナニ属ナニ種かも わからない 野生です

観衆:(笑)

私の役目は栄養たっぷりの環境を与え 家事を通じて子どもを強くすることと 他者を愛し 愛を受け止められる子になるよう 子どもを愛することです 大学や専攻や職業は 本人たち次第です 私の役目は 自分が仕向けたとおりの 子どもを育てることではなく 子どもが自ら輝いていくのを サポートすることです

ありがとうございました

観衆:(拍手)

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このプレゼンテーションについて

過度な期待をかけまくり、子どものやることなすことを細かく管理する親は、子どもの助けになっていません。少なくともジュリー・リスコット=ヘイムスにはそう見えています。かつてスタンフォード大学で新入生担当学生部長を務めた彼女が、情熱とひねりの利いたユーモアをこめて主張します。親は子どもの成功を成績やテストの点数で決めるのをやめ、昔ながらの考えに立ち返って「無償の愛」を与えることに集中すべきなのです。

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