がんとの闘いの新しい戦略(23:44)

デイビット・アガス(David Agus)
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対訳テキスト
講演内容の日本語対訳テキストです。
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私はがんの専門医です。オフィスを出て病院の中の薬局の横を抜けた時―3~4年ほど前のことでした。目に止まったフォーチュン誌のカバーです。

『何故私たちはがんとの戦いに勝てないのか』

薬局の窓からこれが見えたのです。。そして、がんの専門医としてこれを見ると、少々落胆します。ですが、自身もがんのサバイバーであるクリフの記事を読むと―彼も臨床試験により救われました。実験的治療のため、彼の両親はニューヨーク市街から近郊の街まで運転し、ホジキン病(悪性リンパ腫)の治療を受けさせたのです―その記事の中で優れた論点を示しています。それは「私たちは 生物学の見解やがんに関して 還元主義に囚われてしまった」というものです。過去50年間、個々の遺伝子を取り扱うことでがんを理解しようとして来ましたが、がんのコントロールには至りませんでした。びっくり仰天するようなグラフです。これは、医療の現場にいる私たちを毎日でも暗い気持ちにできます。明らかに、私たちは心血管疾患治療において目覚ましい進歩を遂げました。しかし、がんの死亡率は50年前と変わっていません。わずかに慢性骨髄白血病に関して、100%の患者を寛解させる薬の開発により、小さな勝利を得ました。しかし、総合的に見てがんとの戦いには大した力を発揮できていないのです。

そこで、今日は皆さんに、なぜがんとの闘いに対してはこういう状態なのか、そして、自分のコンフォートゾーンから脱して研究者達とがんとの闘いがどこへ向かっているのか、私たちが推し進めて行こうとしている新しいがん治療のアプローチについてお話したいと思います。この状況は間違っているからです。まず始めにがんとは何でしょうか? しこりを見つけたり、異常な血液検査結果のために医師を訪ねたとします。医師はそこに針を差し込みます。今日の診断方法はパターン認識で行われているのです。これは、正常に見えるか、それとも異常に見えるか? 病理学医はこのペットボトルを見ているようなものです。

これは正常な細胞で、こちらががん細胞です。これが、今日のがん診断の最先端です。分子テストも行わず、遺伝子配列解析も行われず、染色体の難しい分析も行われません。これが今日、最先端とされて用いられているやり方なのです。がん専門医としてよくわかっていることは、進行したがんは治療できないということです。余談ですが、私は、早期発見に関する分野には大きな期待を寄せています。早期発見が勝算を得る唯一の方法です。ほとんどのがんは予防することができます。私の前の講演者は、心臓病の予防についてお話しされましたが、がんに対しても同じようなことができます。私は「ナビジェニックス」という会社の共同創立者です。試験管にツバを吐き出し、35から40の病気の遺伝子マーカーを調べ、それらのすべては多くのがんにおいて進行を遅らせることができるので、どんな病気にかかる可能性があるのか確認した上で、それらの病気の予防を行うことができるのです。

進行がんになってしまうと、統計の示すように、今日私達に出来る事が限られていることが問題なのです。がんは年配者がかかる病気です。なぜ年配者がかかる病気なのでしょうか? 子孫を残した後は進化の仕組みが関係しないからです。子育ての年齢までは進化に守られてきました。しかし、35歳から40歳、そして45歳になるともう関係ないということになります。なぜなら、もう子孫を残しているからです。と言うわけで、子供のがんの症例は極めて少ないのです。それも、一年に数千という数に留まるのです。しかし、年を取るにつれてがんはとてもよくある症例となります。なぜそんなに治療が難しいのでしょうか?

がんは異種遺伝子性で、そのことは、がんの中での進化を支持します。悪性で侵攻性の細胞が選ばれて行きます。これはクローン選択と呼ばれます。 しかし、私たちががんは単なる分子の不具合から起こるのではなく、それ以上の何かが原因となって起こると気づいた時、新しい治療法を発見することができるのです。がんに関する根本的な問題は、私たちががんを形容詞、つまり症状のみの説明で片付けてしまっているということです。『私は疲れた、むくんでいる、そして痛みに苦しんでいる』などです。そして、体の構造に関する説明を受けます。CTスキャンを受けます。
『肝臓に3センチの腫瘤がありますね』。それから身体の各部分の状況説明があるでしょう。『(腫瘍は)肝臓、乳房、そして前立腺にあります』。それだけです。私たちががんを説明する辞書はとても、とても貧弱です。がんは症状によって表現されます。ということは、症状の発現によって表現されるのです。

過去2~3年の間に、米国政府は4億ドルを投じています。それ以外にも、10億ドルの追加資金も、癌ゲノム・アトラス・プロジェクトに投じられました。がんの遺伝子をすべて読み取ろうという発想から起こった事業で、がんを説明する上での新しい語彙、辞書を生み出そうというわけです。1850年代の半ば、フランスで、がんを体の部位ごとに説明する習慣が始まりました。それは150年たった今も何ら変わっていません。がんを体の部位ごとに説明するのは絶対的に「古い」のです。
前立腺、乳房、筋肉というように考えてみれば、これは無意味なことです。今日では、明らかにテクノロジーがあります。そしてここ5~6年すればそれも変わって来るでしょう。皆さんはもはや乳がんクリニックには行く必要がなくなります。HER2を増幅したり、eGFR(推算糸球体濾過量)を活性化するためにクリニックに通うことでしょう。そして個々のがんを引き起こした病原障害のいくつかに焦点をあてるようになります。願わくば、私たちが技術の医療から科学の医療へ変貌を遂げ、感染症の治療で行うように、生体や細菌を見て抗生物質がその患者に効くかどうかを判断できるように、科学的根拠から治療をできるようになることです。

私たちはH1N1にさらされている時はタミフル(抗インフルエンザ薬)を飲み、症状を著しく緩和して色々な病気の発現を予防することができます。なぜか? 患者が何を患い、どういう治療が効果的かを知っているからです。この国では、ワクチンを開発することまではできませんが、それはまた別の話です。癌ゲノム・アトラス・プロジェクトは成果を挙げ始めています。最初の症例は脳がんで、来月の12月の終わりには卵巣がん、数月後には肺がんの解析が完了します。プロテオミクスの分野もあります。プロテオミクスがこれから病気を分類し理解していく上で 私達を次の段階へリードしてくれる分野だと思います。しかし、ゲノム学やプロテオミクスを追及して、要素だけを突き詰めるつもりはありません。これらの追求から、何と闘えば良いかを明らかにしようとしているのです。その重要な違いに関しては後ほどお話しします。今日の医療で、私たちは患者の最後の2年間に最も多くの資金を投じています。私たちがどのような病と闘っているのかという事の解析にはほとんど資金が投じられていません。もっと私たちがこの点に力を注ぐことが出来れば、数段状況は改善されるはずです。更に予防まで出来れば、状況を劇的に変えることが出来るでしょう。

私たちは、がんとの戦いにおいて前進して行かなければなりません。これは全米癌研究所(NCI)のサイトです。ここで申し上げたいのは、これが間違っているということです。
癌研究所のサイトに、がんは遺伝性疾患であると書かれています。ウェブサイトは、最初の個別の変異から2度、3度と変異が重なり、がんが発現するとしています。しかし、がん専門医としての私の見解は、これは遺伝性疾患ではない結腸がんのある肝臓です。そして顕微鏡を覗くと、がんが侵したリンパ節が見えます。CTスキャンでがんが肝臓にあることが確認できます。がんは増殖制御ができなくなった細胞と環境との相互作用により起こるのです。抽象的な意味でなく、環境との相互作用によって起こる、これが私たちがシステムと呼ぶ現象なのです。
私のがん専門医としての目標は、がんを理解することではありません。私たちはがんを理解しようと努力して来ました。それがここ5年間の根本的な間違いなのです。実は目標とすべきは、コントロールすることなのです。それにより、全く違う最適化戦略を私たちそれぞれの為に立てられるのです。

2万人もが集まる大きながん研究の集会、米国癌研究学会(AACR)の会議で、私は「私たちは間違いを犯しました」と言いました。
「要素だけを還元主義的に考え、視野を狭く持ったあまり、私も含め皆間違いを犯しました。私たちは一歩後ろに下がって考え直さなければならない」。
信じがたいですが、ブーイングをする人もいました。皆うろたえました。でもこれは前進のためには避けられないのです。

数年ほど前、ダニー・ヒリスに会う機会に恵まれました。お互いせき立てられて引き合わされたので私は「コンピューターをデザインしたディズニーの社員に会ってどうするのだろうか?」そして、ダニーは「また別の医者に会ってどうするんだろう?」と思っていました。私たちは周りの押しに負けて会うこととなりましたが、それが全く仕事人生を変えるような出来事となりました。私たちは、複雑な仕組みとしての体内のがんのモデルを、多くはダニーとそのチームの仲間の発想のお陰でデザインしました。

これから、あるデータをお見せします。今までと違う結果の出せる新しいがんへのアプローチとは、要するに、これらのデータを見る時にその入力されたデータの詳細について理解することが必要だという事です。皆さんの体温を30日間測ったとします。体温の平均値は?と問いかけ、答えは約36.7度であれば素晴らしいと言います。しかし、もし皆さんの体温がその内6時間の間に約38.8度まで上がっていて、解熱剤のおかげで熱が下がっていたとしたら、私はその情報を全く見逃しているのです。ですから、医療の根本的な問題は、私たちが主治医に診てもらうのは1年に1度だけだということです。これで診る事ができるのは一時点でのデータのみで、時間による変化はわかりません。

この装置を2ヶ月半使っています。これは驚異的な装置です。毎日私が何キロカロリー消費したかがわかるからではなく、この装置は24時間私が何をしたかを把握できるからです。3時間私が机に座っている間中、自分が全く動いていないことに気づきませんでした。入力されたインプットのデータだけでは、表層的な事だけしか読みとれず、その裏に隠された真相を理解するのは難しいのです。がんをひとつのシステムとして考えた場合、インプットとアウトプットの間に、ある状態が存在します。この状態は病歴や患者自身であり、環境や食生活、治療や遺伝的突然変異がインプットとなり、症状がアウトプットとなります。痛みはあるか? がんは成長したか? 膨張感はあるか?等、状態のほとんどは明らかではありません。私たちの分野では、積極的な化学療法を用いてインプットを変えようとします。そしてアウトプットが改善されたか、痛みが改善したかと問います。難しいのは、これが単一のシステムではなく、スケールの異なる複数のシステムであることです。複数のシステムからなるシステムです。癌新生の組織を顕微鏡で神経細胞を観察すると、あちこちに突出した模様がとても見事です。しかしそれらを複雑なひとつのシステムとしてまとめると、それらが脳となり、その脳が知能を形成し、がんもそのような複雑なシステムのひとつとして体内で形成されていくことに気づきます。

悪いニュースは、これらの堅牢な―そして堅牢ということがキーワードになります―新たに生まれてくるシステムを詳しく理解するのは非常に難しいということです。一方で良いニュースは、これらのシステムに変化を加えることが出来る事です。新生システムのすべての基本的な要素を理解しなくても、このシステムをコントロールしようとすることはできます。ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(NEJM)2月号に掲載された、最も重要ながんの臨床試験の一つで、乳がんの中でも最悪のケースである、閉経前の乳がん患者に化学療法を受けさせた後、患者達を無作為試験により半数を偽薬のグループに、残りの半数に骨を形成するゾレドロン酸薬を投与しました。ゾレドロン酸は、骨粗しょう症に使われる薬です。参加者はゾレドロン酸を年に2回投与されました。これら1800人の女性らのデータから、骨をつくる薬を年に2回投与するだけで、がんそのものに触れることすらない薬により、がんの再発率を35%も減少させることに成功できたのです。例えれば、土壌を変えてしまえば種は実らないようなものです。だから、システムを変えれば、がんに対して著しい効果を発揮することができる―誰もが今まで気づかなかったのです。

ショッキングですが、がんの細胞に実際に触れるほとんどの化学療法が、今まで一度も成し遂げれなかったことです。組織培養皿の上で行われる見事な技が、このがんに薬を投与すれば細胞に効力を発揮することができる。培養皿の上の薬の量は、人の体内に投与される量とは比べ物になりませんが、乳がんを患う女性にタキソールという薬を投与すれば、週に3回―それが基準の量です―40%の転移性がんを持つ女性が素晴らしい反応を示します。その反応とは、50%の収縮です。大きさの順序の問題ではありません。それはまた別問題です。がんは再発を重ね、毎週同じ薬を投与する。すると以前反応しなかった30%が反応する。そしてまた再発し、私は同じ薬を投与する。96時間以上の静脈点滴を続けて、残りの20%~30%の患者が反応します。異なる大きさのものは、同じ仕組みでは動いてはいないのです。化学療法が、複雑なシステムを阻害するものという考え方で、骨が形成されることによってシステムを妨害し再発を防いだように、化学療法も同じようにシステムの妨害によって効果を発揮するかもしれません。 臨床試験のすごいところは、新しい主要ながんを30%も減少させたことです。問題は、あなたも私も、我々の身体のシステムは常に変化しているということです。これらは常に動的なのです。これは避けられない問題の恐ろしい一面です。

これは世界の肥満を現しています。数字が見えにくくて恐縮です。赤などの濃い色で示されている国の人口の75%以上が肥満です。 10年前、20年前を見てみると、著しい違いがあります。私たちのシステムは劇的な変遷を遂げているのです。状況は20年前と全く変わっています。今日私たちが向き合っている病気は、数十年前のシステムによるパターンが反映されていますが、これからの十年かそこらで劇的に変化するでしょう。これは40ギガバイトにも関わらず美しい、プロテオームの全体像を映した画像です。これは超伝導電磁石を潜り抜けた血のしずくです。この解像度で見られます。体中のすべてのタンパク質を見ることができます。このようなシステムが見れるのです。赤い点はそれぞれタンパク質です。電磁石の力はここまで可能にしたのです。このテクノロジーで個々の中性子を見れるのです。これが「応用プロテオミクス」というグループで、私たちがダニー・ヒリスと行っていることです。個々の中性子の違いを観察し、今まで見た事もないような角度からシステムを見る事ができます。要素だけを考える代わりに、一歩立ち戻りました。

46歳の女性です。肺がんを再発しました。脳、肺、肝臓に再発が見られました。カルボプラチン+タキソール、カルボプラチン+タキソテール、ゲムシタビン、ナベルビンが投与されました。それでも病気は悪くなるばかりでした。この患者には3人も12歳以下の子がいるのに。

CTスキャンです。患者の体の断面です。中央の部分が心臓です。左側に見えるのが大きな腫瘍です。もし治療しなければ、数週間でこの腫瘍が死に至らしめるでしょう。がんシグナル伝達経路をターゲットにした薬が一日に一度投与されます。経路は、システムががんの中にあったのか実は定かではありませんが、伝達経路をターゲットに治療した結果、一ヶ月後には見事にがんは消えました。6ヶ月経ってもがんは消え去ったままです。しかしそのがんは再発し、患者は3年後に肺がんで亡くなりました。しかし、彼女は薬のお陰で3年延命できたのです。彼女の主な症状は痤瘡(にきびのような皮膚炎)。それくらいです。問題は、臨床試験が終わった時―私たちはその臨床試験に関わり―この基本的で重要な第三相臨床試験で偽薬の使用を拒否しました。あなたのお母さんや兄弟が末期の肺がんで数週間の命だとしたら、偽薬を使わせますか? 答えは明らかにノーでしょう。このグループには、偽薬ではない薬を投与しました。10%の患者がここで見られるような劇的な反応を示したのです。この薬は米国食品医薬品局(FDA)に送られました。FDAでは、どうやって偽薬無しの試験でこの薬によって良い結果が得られたと言えるのかと、FDAの会議があった朝、これがウォールストリートジャーナルの社説に載りました。『"FDAから患者へ案内:ドロップ・デッド"』(笑)

しかしながらこの薬は認可されたのです。驚くべき事には、他の会社が、正しい方法で偽薬と薬とをそれぞれ半数ずつの患者に投与し、臨床試験を行っていたためでした。そこで重要なことがわかりました。この研究は偽薬の処方が、より倫理的とされる南米やカナダで行われました。薬の認可を受ける為、最終的には米国でも偽薬を使った試験が行われたので、アメリカでも、ニューヨーク州北部で少なくとも3人の患者が臨床試験に参加したはずです。その臨床試験により、薬に反応を見せなかった患者の70%が、偽薬を受け取った患者より元気で長生きしました。これは私たちががんについて知っていたすべてに疑問を投げかけました。反応を得る必要はない。がんを縮小させる必要はない。ただ進行を遅らせるだけで、がんを縮小させるよりも患者の生存率、アウトカム、精神状態などについてより多くの恩恵が得られるのかもしれないのです。問題は、私が医師で、CTスキャンを行い患者の肝臓に2cmの腫瘍が確認されるとします。3ヵ月後の検診でその腫瘤は3cmになっていた。果たして薬は効果があったのか? 何を基準に判断できるでしょう。薬を投与しなければ10cmになっていたでしょうか。それとも、薬が何の効果も無くコストだけがかかっていたとしたら? これは根本的な問題なのです。

ここで新しいテクノロジーが役に立ちます。目標は医師の診察を受けに行って、究極の目標はすべての病気を防ぐことですよね? それが最も効果的でコストのかからない、今日最適の方法なのです。しかし、不運にも病気にかかってしまったら、検診で採血すればその病気と闘う方法がわかるのです。我々はプロテオミクスの分野に取り組み、システムを観察し、全体像を把握しようとしています。このような技術につきものの問題は、体内のタンパク質を見た時に11段階にわたる差異があることです。高濃度タンパク質と低濃度タンパク質の間には、11段階の差異があり、それを網羅する技術は未だありません。工学の原理を取り入れ、ソフトウェアを取り入れ、ダニー・ヒリスのような人々が多くを試みてきました。連続体の上にある色々な要素に目を向けられるようになりました。

先程、分野を超えたコラボレーションの話題がありましたが、今始まっている事のひとつに、様々な分野の人々ががんの研究に加わり始めています。昨日、全米癌研究所が新しいプログラムを発表しました。物理科学と腫瘍学、物理学者や数学者ががんの研究に加わり始めているのです。今までがんの研究とは無関係だった研究者達です。昨日発表されたのですが、ダニーと私は1600万ドルを受け取り、この問題に取り組みます。抗がん剤を大量に投与する代わりの全く新たなアプローチ。違う仕組みに基づいた、体の中で何が起こっているかを画像で見るアプローチです。

これらの技術がどう機能するか見て理解することは重要です。体内のタンパク質が磁気を帯び、タンパク質が吹き付けられ、電磁器がそれらをかき回し、それらが取付けている質量と補充を調べる検出器にあたると解像度がある程度のレベルであり、磁石が十分な大きさであれば、正確に体内のタンパク質の全てを検出することができ、個々のシステムを理解し始める事が出来ます。がんの専門医としては、病歴を紙に書いてまとめたこんなにぶ厚いカルテではなく、これからの診察室のデータはこういった画像により支配されるでしょう。血のしずくがギガバイトのデータをつくりだす。電子によるデータの要素が病気をすべての角度から捉える。もちろん、目標は患者との出会いから学ぶことです。そして前進することです。

根本的な学習なしに患者との出会いばかりを重ねるのではなく、結論としては、要素だけを還元主義的に考えることから脱却するべきです。革命的な考え方をし始めなければなりません。皆さんに、新たな視点を持ち新しいアイデアを生み出して頂きたいのです。そして、私を含めこの研究分野の人々にそれを伝えて欲しいのです。ここ59年来何も変わっていないからです。

私たちには、革命的に違ったアプローチが必要です。インテルの取締役会長であったアンディ・グローブがその座から降りる時、アンディは良き師であり、タフな人でありました。アンディが退官する時、こう言いました。「どのテクノロジーではなく、テクノロジーそのものが勝つ」 医療界、特にがんに携わる者の一人として私は確信しています。幅広いプラットフォームのテクノロジーが私たちを前進させ、患者を近い将来救うことを期待しています。

ありがとうございました。

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このプレゼンテーションについて:

デイビット・アガスは、従来のがん治療は個々の細胞を攻撃することに焦点をあてた、視野の狭いアプローチだったと説明します。そして、今までになかった薬やコンピューター・モデリング、タンパク質の解析などを活用し、分野を超えて体全体を分析し治療する新しいアプローチを提案します。

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