天然痘に似た感染症「サル痘」の患者が欧米で増え続けていて、世界保健機関(WHO)は警戒を強めています。日本では、新型コロナウイルスの水際対策が緩和されるなか、感染者が広がる懸念はないのでしょうか。東京医科大病院渡航者医療センター特任教授の濱田篤郎さんに、話を聞きました。(聞き手・利根川昌紀)
――どのような感染症ですか。
1958年に、サルから見つかったことが名前の由来です。ウイルスは、ネズミなどのげっ歯類が保有しています。
人への感染は1970年に初めて確認されました。
――感染すると、どのような症状が出るのですか。
潜伏期間は5~21日(通常6~13日)で、熱が出て、筋肉痛などインフルエンザのような症状が出ます。その後、顔や手足などに発疹ができます。発疹は水ぶくれのようになって 膿うみ がたまり、やがて、それがかさぶたのようになります。発症から治るまでには、2~4週間かかります。
致死率は3~6%程度とされ、特に子どもや免疫力が弱っている人は重症化しやすいと言われています。
――どのように感染するのですか。
ウイルスを保有する動物にかまれたり、その肉を食べたりすると、感染する危険があります。
また、感染した人の 飛ひ沫まつ を浴びたり、体が接触したりした場合も感染するリスクがあります。発症してできた水ぶくれは、治ってくるとかさぶたのようになりますが、それまではジュクジュクした状態です。それに触れてウイルスが体内に入ると感染する可能性が高まります。
患者が使用したシーツなどの寝具から感染することもあります。
――感染を防ぐ方法はありますか。
せっけんやハンドソープを使って手洗いをしたり、アルコール消毒をしたりすることが大切です。
また、天然痘のワクチンを接種することで、約85%予防できると言われています。「テコビリマット」という抗ウイルス薬があり、治療効果が期待できるとされています。
夏本番を前に、子どもたちの「脱マスク」に学校現場が苦慮している。熱中症を防ぐため、体育の授業や部活動、登下校時はマスクを外すよう呼びかけているが、新型コロナウイルス感染への不安などから着けたままにする子も多い。専門家からは、外さない子にも配慮しつつ、外す必要性を丁寧に説明すべきだとの指摘が出ている。
「皆さん、マスクを外しましょう」。16日、大阪市立大池小(生野区)の講堂で体育の授業が始まると、6年3組の千坂尚登教諭(34)が、自分のマスクを取りながら児童24人に呼びかけた。換気のために扉は全て開放。見学の児童2人以外は全員、マスクを外してマット運動を行った。
児童(12)は「運動する時にマスクは息苦しい。先生が外してくれると私も、と思える」と笑顔だった。
教員が率先してマスクを外す取り組みは、市教育委員会が13日に各小中学校などに通知した。児童や生徒からは「先生が着けていると外しにくい」との声が寄せられていたといい、市教委の担当者は「『マスクを着けなくても大丈夫』というメッセージが伝われば」と語った。
「脱マスク」が進む背景には、暑さが本格化し、コロナ感染よりも熱中症で体調を崩すリスクが高まっていることがある。
大阪市中央区の大阪女学院中学・高校では2日、体育大会中に生徒ら30人が体調不良を訴え、救急搬送された。学校側はマスクを外すよう促していたが、多い時には生徒の4割ほどが着けたままだった。
神戸市東灘区の私立高羽六甲アイランド小学校でも8日、体育の授業を受けた児童30人中12人が体調不良となり、うち6人が病院に運ばれた。学校側は「マスクを外してもいい」と伝えていたが、30人の半数が着用していたという。
文部科学省は以前から、気温や湿度が高い日はマスクを外すよう求めてきた。今冬に流行が始まったオミクロン株の重症化率が低いことも踏まえ、5月24日には全国の教育委員会に対し、体育の授業などでマスク着用は必要ないとの通知を発出。熱中症疑いの集団搬送事例が相次いだことを受け、6月10日に重ねて通知した。
しかし、徹底は難しい面もある。
【ワシントン=冨山優介】米食品医薬品局(FDA)は17日、生後6か月以上の乳幼児を対象にした米ファイザー製と米モデルナ製の新型コロナウイルスワクチンの接種について、緊急使用許可を出した。
米国ではファイザー製による5歳への接種が対象年齢の下限となっていたが、今回の許可でほぼ全ての年齢層が対象となる。米政府は、今後見込まれる感染の拡大を出来るだけ抑えたい考えだ。
米疾病対策センター(CDC)によると、米国内の累計感染者のうち0~4歳は3%を占める。ファイザー製は生後6か月~4歳へ計3回、3~8週間の間隔を空けて接種する。モデルナ製は生後6か月~17歳が対象で、計2回、4週間の間隔を空けて接種する。
米政府は全米へのワクチン発送の準備を進めており、来週以降、乳幼児への接種を本格化させる方針だ。FDAのロバート・カリフ長官は声明で「多くの親たちが待ち望んでいた。これで幼い子供らを守ることができる」と強調した。
新型コロナウイルス禍を受け、政府が検討している感染症対策の抜本的強化策案の全容が14日、分かった。国立感染症研究所と国立国際医療研究センターを統合し、米疾病対策センター(CDC)にならった「日本版CDC」創設を盛り込む。
強化策は岸田首相が15日に方針を示し、17日にも政府の新型コロナ感染症対策本部で決定する。強化策案では、日本版CDCは「感染症に関する科学的知見の基盤・拠点となる新たな専門家組織」に位置づけた。現在の感染研は感染症研究の中核、国際医療研究センターは新たな感染症対応を含む高度な治療・研究の拠点となっている。
日本版CDCとは別に、内閣官房に政府の司令塔となる「内閣感染症危機管理庁」(仮称)を創設し、トップを「感染症危機管理監」(仮称)とすることも明記した。政府は首相が昨年9月の自民党総裁選で掲げた「健康危機管理庁」(仮称)を検討してきたが、任務が感染症対応だと明確にするために仮称は変更した。有事には関係省庁職員を招集して指揮下に置き、首相の指揮命令が徹底されるよう一元的に対応に当たる。日本版CDCとも連携する。
厚生労働省内の関係部署を統合した「感染症対策部」(仮称)も新設し、日本版CDCは同部の所管とした。
感染拡大の初期から迅速に対応するため、新型インフルエンザ対策特別措置法に基づく国の権限も強化する。緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の適用前の段階での都道府県知事らに対する国の指示権限追加も検討するとした。
【ワシントン=冨山優介】米疾病対策センター(CDC)は10日、米国へ空路で入国する際、旅行者に新型コロナウイルス検査の陰性証明を求める措置を廃止すると発表した。12日から適用される。米国の観光・航空業界は、政府に廃止を求めていた。
CDCは昨年1月、航空機に搭乗する3日前までに受けた検査での陰性証明を入国の要件とした。昨年12月からは、変異株「オミクロン株」の拡大を受け、対策強化として1日前まで短縮された。
米メディアは廃止の理由について「ワクチンや治療の普及によって検査はもはや必要ないとCDCが判断した」との米政府高官のコメントを伝えた。
CDCは今後90日間、感染状況を注視する方針で、新しい変異株が出現すれば陰性証明を求める措置が復活する可能性もある。