敵を味方に変えるレッスン(13:26)

リア・ガーセス(Leah Garcés)
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対訳テキスト
講演内容の日本語対訳テキストです。
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2014年の夏のこと 私は敵としか 言いようのない人間と 向き合って座っていました クレイグ・ワッツという男で 養鶏農家です 家畜を守り 工場畜産をなくすために 私はずっと 働いてきました その時まで すべての時間を この男が象徴するすべてと 戦うために費やしてきた私が その男の家の居間にいたのです

私がクレイグ・ワッツに会った時点で 彼は22年間 パーデュー社のために 養鶏をしていました アメリカでも4番目に大きな 鶏肉会社です 若い頃の彼は 州内でも最も貧しい地域で 暮らしていくため 養鶏をしたいと思っていて 養鶏業界が その地域に進出してきたとき これで夢がかなうと思いました 25万ドル借金して 鶏舎を建てました パーデュー社が 鶏の群れをよこし それを育てると お金がもらえて 住宅ローンのように少しずつ 借金を返していきます でも すぐに鶏が 病気になり始めました

工場畜産ですから ぎっしり詰め込まれた 2万5千羽の鶏が 糞にまみれ アンモニア臭に満ちた空気を吸って 生きていたんです 病気になると 死ぬものも出てきます 死んだ鶏には お金が貰えず クレイグは借金が返せなくなり 誤りを犯したことに 気付きましたが 彼はもはや年季奉公人の身でした 私が会った時には 限界に達していました 借金の支払いには きりがなく 鶏の死と 病気と 絶望にも きりがありませんでした

できるだけ酷い 不当で汚らしく 残忍なフードシステムを いくら考え出そうとしても 工場畜産より酷いものは 思い付かないでしょう 世界では年に 800億匹に上る家畜が 育てられ殺されています 檻や厩舎に詰め込まれ 陽の光を見ることもありません これは家畜にとってだけの 問題ではありません 畜産による温室効果ガス排出量は 飛行機と列車と自動車を 合わせたよりも多いのです 耕作可能な土地の3分の1は 人間のためではなく 工場畜産用の飼料を 育てるために使われています そうした土地には 膨大な化学物質が散布されます アマゾンのような 生態学的に重要な生息地が 家畜を飼うために 伐採され 焼き払われています

私の3人の子供が 大人になる頃には シロクマも スマトラゾウも オランウータンも 見られそうにありません 私が生きている間にも 鳥や 両生類や 爬虫類や 哺乳類の数が 半減しています その主な原因は 肉や 乳製品や 卵の 需要を満たすためです そして その日まで 私から見た悪党は クレイグ・ワッツだったんです

彼の居間にいる間に 私の恐れや怒りは 別のものに変わりました 恥ずかしさです 私はずっと彼のことを 非難し 憎んできて 病気にでもなればいいと 思っていました 彼の苦しみや選択について 考えたことは ありませんでした 彼が味方になることなど あり得るのか? 鶏みたいに囚われたように 彼が感じていようとは 思いもしませんでした

何時間も話し込み 昼時だったのが午後になり 日が暮れ 夜になり 彼がふと 「じゃあ 鶏を見ますか?」と言いました 暗い中を 長い灰色の建物のほうへ 歩いて行きました 彼が扉を開けて 一緒に中へ入ると 圧倒されるような 臭気に包まれ 体中の筋肉がこわばり 咳込んで 涙が出ました 肉体的不快感に圧倒され 最初は周りが 見えていませんでしたが その光景が目に入ると 私は泣き出しました 何万という 生まれたばかりのヒヨコが 暗い倉庫の中にいて どこへ行くことも 何をすることもできずにいました

それから数か月の間に 私は映画作家のレーガン・ホッジと そこを何度も訪れ 記録を取り 理解し クレイグと信頼関係を築きました 鶏舎を一緒に歩きながら 彼は鶏を拾い上げました 死んでいるものもいれば 脚の曲がったもの 上手く呼吸できないもの 歩けないものもいました そのすべてを映像に収めました それから 彼にしろ私にしろ 最初会った時には考えもしなかったことを することにしました その映像を 一般公開することにしたのです 私たちのどちらにとっても 危険なことでした 彼は収入や 家や 土地を失い 近所の人たちから憎まれることに なるかもしれません 私も所属組織が 訴えられるかもしれず 彼がすべてを失う元凶になる かもしれませんでしたが それでも やらなければと 思いました

ニューヨークタイムズが記事にして 最初の1日で百万人が その映像を見ました 瞬く間に広まって 突然 工場畜産について議論する 世界的な場ができました クレイグと協力したことで 私は考えるようになりました 他にも 考えもしなかった 味方がいるのでは? 新たな展開や学べることが 他にも あるのでは— 敵との境界線を超えさえすれば?

第一の教訓は 気まずい状況を 嫌がらない必要があること 同意できる相手としか 話さなければ 問題は解決しません 進んで相手の領分に 入っていく必要があります 解決しようとしている 問題を変える力を持っているのが 敵だというのは よくあることです 私にどうにかできる鶏は 1羽もおらず それができるのは 養鶏農家や食肉会社です 問題を解決するには 相手の領分に入っていく必要があるのです

クレイグと組んだ2年後に そんなことするとは思わなかったことを またしました さらに大きな“敵”と 話をしたのです ジム・パーデューその人— あの映像で悪役にした相手です 再び 気まずさと 話しにくい話を経て パーデュー社は 鶏肉会社として初めて 動物の適正な取扱いに関する 基準を作りました 欠いているとして 映像で批判した 鶏舎に窓を付けるといったことも 盛り込まれ そのための資金も 出しています これは私にとって すごく大きな教訓でした

第二の教訓は 敵と向き合って交渉するときに 忘れてならないのは 目の前の相手にも 人間的な面があるということ おそらくは思っているよりも 多くの共通点があるということです

私はこのことを 大手の鶏肉会社の本社に 招待され訪問したときに学びました 私の組織にせよ 他のどの組織にせよ その会社に招待されたのは 初めてのことでした オフィスを歩いていくと パーティションから 顔をのぞかせた人たちが 動物の権利活動家がどんなものか 一目見ようとしていました 私はこんな格好だったし 彼らが何を期待していたのか 分かりません

(笑)

会議室に入ると 責任者の重役が座っていました 腕組みして 私なんか見たくない という感じでした 私がノートPCを開くと 壁紙にしていた 3人の子供の写真が見えました 娘は息子たちとは 見た目が違います その写真を見ると 彼は腕組をほどいて 頭を少し傾け 身を乗り出して 「お子さんですか?」 と聞きました 「ええ ちょうど娘として迎える 手続きをしたところで—」 仕事の打ち合わせにはふさわしくないくらい おしゃべりしました 彼が口をはさみました 「私も2人養子にしてますよ」 それから20分くらい ずっとその話をしていました 養子のこと 親になるということ その間 何のための会議かも 忘れていました その間 何のための会議かも 忘れていました 壁が崩れて 溝に橋がかかりました 私たちの人間的な 繋がりのおかげで その会社とは ずっと大きな進展がありました

3つ目の教訓は “敵”と話し合うときには 共に勝つ道を求めなければ ならないということ クレイグ・ワッツのような 農家と取り組むときには 「農家をやめさせなければ」 と考えるのではなく どうすれば 麻とか キノコとか 他の種類の農家になる 手助けができるだろうと 考えるようになりました 後に協力した農家の人は まさにそうしました 彼は私と一緒に暴露をし 映像を作り 再びニューヨークタイムズに 載りましたが 彼はそこからさらに進んで 鶏の工場畜産をやめました 実のところ あの長い灰色の鶏舎は 別のものの栽培に ピッタリだったんです

(笑)

(拍手)

麻ですよ 麻!

(笑)

これは環境にやさしく その土地を離れずに お金が稼げて 菜食主義の動物の権利活動家も 養鶏農家も 支持できる方法です

(笑)

大きな食肉会社をどうすれば 潰せるか考える代わりに どうすれば別の業態に移行する 手助けができるかと考えるようになりました タンパク質を屠殺動物でなく 植物から取れるようにするとか まさかと思うかもしれませんが 大企業がそういう方向に 動き始めているのです カーギル社や タイソン・フーズ社や パーデュー社が 植物性タンパク質の製品を 扱い始めています パーデュー氏自身が 言っています 「私達は高級タンパク質食品会社であり 動物性のものに限るなどとは 言っていません」 私が住んでいるアトランタでは KFCがビヨンド・ミート社といっしょに 一日限定で試験的に 植物由来のチキンナゲットを提供しました すごかったですよ 行列が角の向こうまで続き 交通に支障が出たくらいで ビヨンセのチケットの無料配布でも しているみたいでした この転換をする準備が みんなできているんです

みんなが入れる大きなテントを 建てる必要があります 養鶏農家から 巨大食肉会社や 動物の権利活動家まで これらの教訓は 様々な問題に適用できます 別れた相手や お隣さんや 姻戚相手だろうと あるいはもっと大きな 搾取や抑圧の問題— 工場畜産 女性蔑視 人種差別 気候変動が相手でも 大きな問題でも 小さな問題でも 相手を叩きのめすことでは 解決せず 双方が勝つ道を共に探すことで 解決するのです そのためには 「我々 対 彼ら」という 考えを捨て 我々はみんな ひとつであり みんなで一緒に 不当なシステムと 対決しているのだと気付く必要があります それは難しく 混乱し 気まずいものですが 重要なことです それが 鶏にも 養鶏農家にも 巨大食肉会社にも 私たちみんなにふさわしい 思いやりあるフードシステムを 作るための 唯一の方法かもしれません

ありがとうございました

(拍手)

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このプレゼンテーションについて

問題の反対側にいる敵とどう和平を結び、問題を共に解決しようとしますか? 動物の権利活動家のリア・ガーセスが、鶏の工場畜産をなくすための野心的な計画を生み出そうと、協力者として最も予期しない相手、養鶏農家と組んだときに得た3つの教訓を語ります。

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