「共通の基盤」を見つけることのすばらしさと複雑さ(13:21)

マット・トロンブリー(Matt Trombley)
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対訳テキスト
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私たちの物語は 何年か前に始まりました 妻と私が 苦情の手紙を 受け取ったときです 差出人は匿名のご近所さんでした

(笑)

目の前で妻が豹変した様子が 目に焼き付いています 感じ良く 穏やかで 優しい女性から 子どもを守ろうとする怒れる母熊へと それはもう強烈でした 何が起こったのか お話しします

これが私の家族です 妻と私 そして5人の 最高の子どもたちです かなり騒がしく そしてやんちゃです それが私たち家族です 子どものうち2人が 私と妻に似てないことに お気づきでしょう それは2人が養子として 我が家に来たからです でも 例のご近所さんは 見た目の違う子ども2人が 毎日家の外で遊んでいる様子を見ていて ある結論に達しました 私たちが違法に学童保育をやっていると

(ざわめき)

我が家の子どもを そんな目で見られて ひどく腹が立ちました でも これはどちらかというと マイナーな人種的偏見の一例です ですが これは私たちが 異なる考え方や異なる信条の人々 さらには異なる投票行動を取る人々に対して 取りがちな対応ではないでしょうか 真の隣人同士として接する代わりに 距離を置くのです そのような人々に対する私たちの行動は その人々を自分たちと同じように 物事を見る人々だと見なすか そうではないと見なすかで左右されます

うちのご近所さんが陥ったのは 「アゴニズム」という心理状態です そして私たちもまた 同じ状態に陥ることがあるのです アゴニズムは病気ではありませんが 感染力があります アゴニズムとは何かについて 少しお話ししましょう アゴニズムの定義の中でも 私のお気に入りは 「戦時下ではない状況で 戦時下のような心構えになること」です アゴニズム(agonism)は ギリシャ語「agon」が語源で 苦痛(agony)の語源も同じです なんとも的確な表現ですね 私たちがアゴニズムの症状を示すのは 2つの強い信念に しがみついているときであると 最初に指摘したのは 作家リック・ウォレンでした 1つ目の信念は「人を愛するなら その人のすることや信じること全てに 賛同する必要がある」というもの 2つ目の信念はその逆で 「ある人に賛同できないということは その人を恐れているか 憎んでいることを意味する」というもの

人間関係が壊れるとき この考え方がもたらす苦痛を 私たちが本当に認識しているかは わかりません なぜなら 私たちは 賛同するかしないかのどちらかに どうしても決めないといけないと 考えるからです 思い当たる会話が これまでにあったでしょう ブレグジットや香港デモに関する話 イスラエル入植地問題や (大統領の)弾劾に関する話など 私たち誰にでも このような会話のせいで 気まずくなるか 果てには終わってしまった 人間関係に1つは心当たりがあるはずです ひどい場合は もっとずっと些細な話が原因だったことも あるかもしれません アゴニズムを解決することは 不可能ではありません 問題はどうやるかです

私が経験から学んだ 2つの解決策を ご紹介しましょう 1つ目の解決策は「共通の基盤」を はぐくむことです つまり共通点に焦点を当てるのです 私が とても慎重に言葉を 選んでいることにお気づきでしょうか 「はぐくむ」とはつまり 相手と共通の基盤を見つけようと 積極的に取り組むこと 農家の人が土地を はぐくむようにです 「共通の基盤」は一般的な表現なので この言葉に込められていない 意味だけでも説明すると 双方が完全に一致しているという意味でも 完全に同意しているという 意味でもありません 私がこの言葉で意味しているのは 他の人との関係の中で 双方を結びつける1つの共通点を 見つけるということです

その1つの共通点を 見つけるのも難しいときがあります これから 私の個人的な話をしますが その前に 私自身について もう少し お話しします 私は白人で 性別は 生まれたときから男性 中流階級で 福音派のキリスト教徒です 今の話を聞くなり 私について 何らかの認識を持った人が いると思います そして その認識は 肯定的なものばかりではないでしょう それは 仕方ありません しかし 同じ信仰を持つ方々にも 言っておきますと 私は これから皆さんの 期待を裏切ります 皆さんも私の話が 入ってこないかもしれません もし途中で 私の話を聞くのが苦痛になってきたら あなた自身が アゴニズムに 陥りかけていないか 振り返ってみて頂きたいのです なぜなら もしあなたが 世の中を見る目が違うというだけで 私を拒絶しているとしたら それこそが 今ここでお話ししていることですから では よろしいですか

私は福音派のキリスト教徒として ジェンダーの流動性に関する 共通の基盤を いかに見出すかについて よく考えています 私のようなキリスト教徒は 神が 私たち男と女を 創造したと信じています だからといって ただ 投げやりに 「私はトランスジェンダーや LGBTQIAの人とは かかわりません」と言うべきでしょうか? いいえ それでは アゴニズムに 屈することになります

そこで 自分の信仰の 根本的な側面を見つめました 第1の側面は 私たち人間を形成している 30億の遺伝子です ちなみに この遺伝子の99.9%は人類共通です この30億の遺伝子は「偉大なる知性」が 作り上げた賜物だと私は信じています すなわち 私には誰とでも 共通の基盤があるということになります このことは同時に 同じ「偉大なる知性」から 私たち1人ひとりに 生きる権利が 与えられているという 私の信念にも繋がります

しかし 私は さらに掘り下げてみました 私の信仰は 相手が私と同じ考えを持つか あるいは 自分が相手を説得できるまで 議論するところから つきあいを始めなさいとは 教えていませんでした そうではなく 私の信仰は 人類という同等の仲間として愛することから つきあいを始めよと教えています 正直なところ 私と同じ信仰を持つ人の中には 問答無用で 相手が望むジェンダーの代名詞で 呼ぶことを拒否する人がいます でもこれは 人に敬意を払うためには 自分の信念を捨てる必要があるという うそではないでしょうか?

時代をさかのぼり 今が20年前だとしましょう モハメド・アリが あなたの家の玄関口にやってきます あなたはドアを開けます あなたは彼のことを モハメド・アリと呼びますか? それとも以前の名前の カシアス・クレイと呼びますか? 皆さんのうち ほとんどは モハメド・アリと呼ぶでしょう また ほとんどの人は 彼をモハメド・アリと呼ぶためだけに 自分も今すぐイスラム教に改宗しなければ などとは考えないでしょう 彼に敬意を払うことで 私たちが何か犠牲を払うことは まったくありませんし 敬意を払うことは 人間関係を築くための 共通の基盤になります そして アゴニズムを解決するのは この人間関係であり 信念を捨てることではないのです

私が自分の信仰を尊重するということは このようなアゴニズムの がんこな症状を拒絶するということです つまり 私は人を愛することができます 受け入れることもできます 人を愛したり受け入れるためには 自分の信念を捨てるか さもなければ その人をおそれ 憎むしかないという うそを私は信じなくてよいのです なぜなら 私はお互いの共通点に 焦点を当てているからです

人との共通の基盤が ほんの少しでも見つかると 相手の その人らしい魅力や 複雑さや 偉大さを理解できるようになります

アゴニズムの2つ目の解決策は 私たちに (息を吸う音) 呼吸し いったん立ち止まり 心を静め アゴニズムを解決する人間関係を築く 機会を与えます そして その人間関係を維持する方法も 教えてくれます 2つ目の解決策は 惜しみなく 許し(grace)を与え合うことです

(笑)

ここでも 率直に言っています バレエ教室で習うgrace(優雅さ) ではありません それは変ですよね

(笑)

私が言いたいのは 1つの誤りで すべてをご破算にしないということです その誤りで あなたが腹を立てたとしても それどころか 激怒したとしてもです ホロコースト生存者コーリー・テン・ブームが このことをうまく言い表しています こういう言葉です 「人を許すとは 囚人を解放し自由にすること そうして初めてその囚人は 自分自身だったと気づくことだ」 私の信仰は 人間は決して完全ではない と教えてくれています 当然 私自身も含まれます だからこそ 救い主の許しが必要なのです 私の場合 それはイエス・キリストです 私は信仰という文脈で 「許し」を定義しましたが 別の方法で 別の定義をしている人も たくさんいます 私のお気に入りのひとりは ラジオアナウンサー オズワルド・ホフマン 彼はこう言います 「許しとは 愛らしくない人を愛し 愛しようのない人をも愛する愛である」 私はこの「許し」のかたちが大好きです なぜなら 私自身 また 皆さんの多くが そうだと思いますが 愛しようのない人間だった自分に 心当たりがあるからです

ですから もしこんなことをしたら 偽善の極みになってしまいます あえて言うと 自分の信仰の観点でも 受け付けないことです それは もし私が 自分に釣り合わない 無条件の許しと愛を 神から受けていながらも その一方で 自分が人に与える愛には 条件を付けることです どう考えてもおかしいですよね 「惜しみなく」ということは 度を超えて行うという意味です 仕方なくやるのではありません 子供の頃の話で 親に言われて 強制的に 誰かに謝るはめになり 相手に近づいて (怒った調子で) 「ごめんなさい」と言って 済ませたことがありましたよね? そういう話ではありません ここでの話は 嫌々許しを与えるということではなく 自ら選び 進んでやることです それが惜しみなく許しを与え合う ということなのです

理論倒れの話にしか 聞こえないかもしれません そこで 私のヒーローについて お話したいと思います 許しのヒーローです 場面は2014年の イランです 息子を殺された母親が 広場にいます 彼女の息子を殺した男も その広場にいます 絞首台の上です 椅子か何かに乗って 首になわをかけられ 目隠しをされています 母親 サメラー・アナハッドは その国の法律の下で たった一人 この男を許すか あるいは 処刑を執行する権利を 与えられていました 言い換えれば 彼女は男を許すこともできましたし 男が乗っている椅子を けり外すこともできました

(息を吐く音)

私には サメラーと男が 双方 このとき味わったであろう苦痛が 想像もつきません 選択を迫られるサメラーと 記事によると ただ泣きながら 許しを乞う男 そして サメラーは決断しました 彼女は男に近づき 彼の顔を平手打ちしました それが彼女なりの「赦免」の合図でした この話には続きがあります

このできごとのすぐ後に 誰かが彼女に尋ねました インタビューに答えて 彼女はこう言ったそうです 「心の中から怒りが消え 血が血管を再び流れ始めたように感じた」 素晴らしい話ですね なんという許しのかたち なんという許しのヒーローでしょうか そして ここに私たちの教訓があります それは神学者ジョン・パイパーが言う 「許しとは力である 赦免のみにとどまるものではない」 考えてみると 許しは私たちが人間関係を はぐくむ人たちへの贈り物であり その人間関係は 両者を隔てるものより はるかに重要であることを 伝えています さらに深く考えるならば 私たちは皆 人間関係の中で 「処刑」する力も「赦免」する力も 両方持っているのです

私たち家族は匿名のご近所さんの正体を 突き止めることはありませんでした

(笑)

しかし もし突き止めていたら こう言いたかったですね 「コーヒーでもどうですか?」 皆さんにも コーヒーを一緒に飲み 共通の基盤を見つける必要がある人が いるでしょう あるいは皆さんが すでに人間関係を持っている人と 惜しみなく許しを与え合う 必要があるかもしれません まず自分から踏み出してみてください

今日 お話した2つの解決策から 私は 人間関係の中で 惜しみない許しを与え合う方法と 「偉大なる知性」が設計した 近所の人々と仲良くする方法を学びました 今後も アゴニズムより人間関係を 選び続けていきたいと思います 皆さんもそうしませんか?

ありがとうございました

(拍手)

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このプレゼンテーションについて

どのようにすれば私たちは敬意を持って、生産的に、お互いに異なる意見を持つことができるだろうか? この示唆に富んだトークの中で、組織でのチーム作りの専門家マット・トロンブリーが、「アゴニズム」(問題に対して融通のきかないスタンスをとる傾向)を考察。「合意すること」の様々な側面を見つけることが問題解決の最初のステップになり得る理由を説明し、「人との共通の基盤がほんの少しでも見つかると、その人のすばらしさ、複雑さ、偉大さを理解することができる」と語ります。

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