意識を変えて未来を選ぶには(15:46)

トム・リヴェット=カーナック(Tom Rivett-Carnac)
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対訳テキスト
講演内容の日本語対訳テキストです。
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このような場所でTEDトークをするとは 思ってもいませんでしたが 人類の半数と同様に 私はCOVID-19パンデミックのために ここ4週間 ロックダウン下の 生活を送っています その渦中にイギリス南部にある 自宅近隣の森に来られる私は 非常に幸運です ここは私にとって 常にインスピレーションの源です 人類が何の回避行動を 取ることもなく 恐ろしいことが 迫ってくることのないよう 自分たちの行動の舵を握り直すための インスピレーションを どう見つけられるか みんな考えようとしている中で ここは皆さんと会話するのに 適切な場所だと思いました まずは6年前に遡る話から 始めたいと思います 私が国連の仕事を 始めたばかりの頃のことです

私自身は 今の世の中において 協調と協力を促進する 国連の役割は 比類なく重要だと 確信しています しかし国連に入る際に 知らされないのが この重要な国連の務めが 全くつまらない 会議という形で行われることです 恐ろしく長くて つまらない会議です 長くつまらない会合なら 経験があると思うかもしれません 事実そうなんでしょうが 国連の会議は次元が違い 国連で働く誰もが 禅の達人でなければ到達できないような 境地で対応しているのです しかし私には その心構えがなく ドラマと緊迫と打開を期待しつつ 任に就きました 私が予想していなかったのは 氷河と同じ速さで進む会議で それも かつての氷河の速さです

そんなある長い会議の最中 メモを受け取りました 私の友人で同僚で 共同執筆者でもある クリスティアナ・フィゲレスからでした その当時クリスティアナは 国連の気候変動枠組条約の 事務局長を務めていました 従って 彼女が負っていた責任は 後のパリ協定となった枠組みへの合意を 国連でまとめ上げることでした 私は彼女の政治戦略の 実行に携わっていたので メモに予想していた内容は 詳細な政治戦略の指示であり その時点で私たちがはまっていた 悪夢のような窮地を いかに抜け出すか ということでした 受け取ったメモには こう書かれていました 「つらいわ でも愛をもって 接しましょうね!」 このメモが好きなのには 多くの理由があります 「つらいわ」という言葉の周りに 細い巻きひげが生えている様が気に入ってます その時の私の気持ちを 目に見える形で上手に表していました でもそれ以上に好きな理由は よくよく眺めてみて 実はそれが政治戦略の指示だと 気付いたからです この苦境を克服できるとすれば これこそが私たちの することなのだと 説明しましょう

私がそういう会議で感じていたのは コントロール(制御)についてでした 私はニューヨークのブルックリンから ドイツのボンに 気乗りしない妻の支えで 生活を移していました 子供達は言葉の分からない 学校に通っています そんな私の個人生活の 混乱への代価は これから起こることに対し ある程度制御ができるとの期待でした 私たちの世代が直面する 決定的な問題は気候危機だろうと ずっと感じていた私が これでやっと 人類に何か貢献できると そんな気持ちでいました ところが託された コントロールレバーを握り 強く引いてみても 何も起きませんでした 私が制御できたのは 日々の些細なことだけでした 「通勤は自転車にしようか?」とか 「どこで昼食をとろう?」とか その一方で私たちの成功を 左右するような問題は 例えば 「ロシアは交渉を 台無しにするだろうか?」 「中国は自国の排出に 責任を持つだろうか?」 「米国は貧しい国々の気候変動の重荷に 手を貸すだろうか?」といったことで この格差はあまりにも大きく その開きを縮められる可能性は 全く見えませんでした 自分を無能に感じ 自分の決断は過ちだったと 思うようになり 落ち込みました

そんな中にあって 気付いたのは その時感じていたことは 初めて気候危機を知った 何年も前の気持ちに 似ているということでした 私は 20代初め 人格形成期の大部分を 仏教の僧侶として過ごしました 僧房生活から離れたのは 20年前のその時点でも 気候危機は既に急速に展開する 緊急事態だと感じ 自分の役割を果したいと 思ったからです しかし仏の道を離れ 普通の社会に戻った自分が 自ら制御できることを 見つめてみると それは自分と身内の CO2排出量 数トン 数年ごとに投票する政党 デモに1つ2つ 参加するかくらいで 結末を左右する 大きな課題はというと 大掛かりな 地政的交渉や 巨額のインフラ投資計画 他のみんなが 何をするかでした ここでも格差は あまりにも大きく 自分の力では差を縮められないと 感じながらも 行動の努力は続けましたが どれも実を結ばず 無能に感じました

これは多くの人に 共通する体験かもしれません 皆さんも経験があるかと思います とてつもなく大きな問題を前に 力がなく 制御できないと感じる時 私たちの意識は 自己保護に働きます 大きな力を前に 自分には制御不能だと感じるのは 嫌なものです そこで心が囁くのです 「さほど重要ではないのかも みんなが言うようなことは 起きていないかもしれない」 あるいは 自分の役割を 軽視するかもしれません 「ひとりの努力ではどうせ無理なんだから やるだけ無駄では?」と

ところが ここで 不思議なことが起きています 最重要課題に対し 人が持続的で献身的な行動を取るのは かなりの程度制御可能だと 感じる時だけなんでしょうか? この一連の写真を見てください ここに写っているのは 介護職員や看護師で この数ヶ月間世界を COVID-19が席巻する中 人類がこの病気に立ち向かうのを 助けている人たちです この人たちは 病気の拡大を 防ぐことができるでしょうか? いいえ 患者の死を防ぐことは できるでしょうか? 一部は救えるでしょうが その他は どうにもできない ということになるでしょう だとしたら 彼らの貢献は 無駄で無意味になるのでしょうか? そう仄めかすことさえ侮辱です ここに見る人々の行いは 人間が一番脆弱な時に 仲間の人類として 助けることです その務めには 非常に大きな意味があり それを裏付けるには この写真を見るだけで 十分に明らかです 彼らの行動が示す 勇気と人間性は 彼らの仕事を 人間が行いうる最も 意味のあることにしています たとえ結果を制御することが できなくともです

これは興味深いことです それは結末が 制御できない時でも 人間は献身的で持続的な行動を 取ることができると 示しているからです しかし ここに 別の問題があります 気候危機に関していうと 私たちの行動と その影響との間には距離があります あの写真に写っている 看護師たちは 世界を変えようという高邁な目標を 支えにしているわけではなく 他の人が一番弱っている時に 世話をしてあげるという 日々の満足に 支えられています 気候危機の場合には そこに大きな隔たりがあります 以前は時間が その隔たりとなっていました 気候危機の影響は もっと遠い将来のことのはずでした ところが今 その将来が すでにやってきています 大陸は燃えています 都市は浸水しています 国が浸水しています 何十万人もが気候変動を理由に 移動を余儀なくされています ところが 今やその影響が 時間により隔てられていなくても いまだに 直接的な結び付きを 感じ難い状態です 他の場所で 他の人に 起きることであったり これまで経験したことが ないような形で起こります 看護師の話は 人間性の持つ何かを 表わしていますが 気候危機の問題となると 持続的に関わり合うための 違う方法を 探さなくてはなりません

それが可能な方法があります 真剣に支援する姿勢と 一貫性のある行動との 力強い組み合わせが 共通の目標に向かって 社会全体が献身的な行動を 持続的に行うことを 可能にします このやり方は歴史を通して 大変有効に使われてきました その一例を 歴史から振り返ってみましょう

私が今いるのは イギリス南部の自宅に近い森です この森はロンドンから そう遠くありません 80年前 ロンドンは 戦火に見舞われました 1930年代後半の英国市民は ヨーロッパ征服を目論むヒットラーが 何物にも止まらないという現実を どうしても直視しようと しませんでした 第一次大戦の記憶が まだ生々しく ナチスの侵攻に恐怖を感じ 現状の直視を 何としても 避けようとしたのです 結局は その現実が やってきました チャーチルに関しては様々なことが記憶され 肯定的なものばかりではありませんが チャーチルが あの戦争初期にとった行動は 英国人が自分たちに言い聞かせていた 自分たちが何をしているのか 何が迫っているのかに対する 話の流れを変えました それまでは不安と緊張と恐怖しか なかったのが 「冷静な覚悟」 「孤高の島」 「最も偉大な瞬間」 「最も偉大なる世代」 「海岸だろうが 丘陵だろうが 街中だろうが 戦う国」 「決して降伏などしない国」 ということになりました

不安と恐怖から いかに暗い現実だろうが それを直視するという意識の変化は 勝利の見込みとは 全く無関係でした 戦いが好転しているとの 前線からの報告も 強力な同盟国が参戦して 勝算が増したという話も その時点では なかったのです それは ただの選択でした 真剣で覚悟を持った 揺るぎない楽観が生まれたのです 押し寄せてくる暗い現実を 避け否定するのでなく 脅しを拒否する姿勢です 揺るぎない楽観は強力です それは 良い結末に なるだろうとの見込みや 将来に向けた希望的観測には 依存しません それは行動を活発化させ 意義を与えます その時から 危険や困難にかかわらず 大いなる目的のある 意義ある時だという意識が生まれ 様々な記述が裏付けるように 「英国空中戦」の パイロットから じゃがいも掘りのような 単純なことに至るまで 行動が意義に満ちていました 人々は共通の目的と共通の結果を 目指して奮い立ちました

このようなことは歴史を通して 時に 見受けられます 真剣で覚悟を持った揺るぎない楽観と 行動が結合し 楽観が覚悟ある行動を導くと 自ずと回っていくようになります 揺るぎない楽観がなければ 行動は持続しません 行動が伴わない揺るぎない楽観は ただの態度です 楽観と行動が一体となって問題を一変させ 世の中の行方を変えるのです

これは様々な状況で 幾度も見られました ローザ・パークスが バスの席を譲るのを拒んだ時 ガンディーが海岸までの 長い塩の行進をした時 「勇気が あらゆるところで勇気を呼び覚ます」と 婦人参政権論者が呼びかけた時 そしてケネディ大統領が 10年以内に 月に人間を立たせると宣言した時 その時代の人々に感動を与え 暗く恐ろしい敵と戦うという 共通の目的に団結させました たとえ どう達成するのか 分かっていなくても この全ての例において 現実的で肝の据わった 覚悟ある揺るぎない楽観は 成功が生んだ結果ではなく 成功の原因だったのです

これはパリ協定の合意に向けた 道のりでも見られた 変化でした 困難な 複雑で 悲観的な 会議の様子に変化が見られたのは 徐々に多くの人が 今こそ腰を据える時だと 我々は責任を放棄しないと 腹をくくり 可能なはずの結果を 実現する決意をしたからです 多くの人が徐々に この見方に考えを変え 行動に移し 最後には それが 勢いを持った波となって 私たちみんなを巻き込み 多くの困難な課題に対し 最初の期待を大きく超えた 結果をもたらしたのです 何年も経った今 ホワイトハウスに 気候変動否定論者がいるにもかかわらず あの時私たちが始動させた取り組みは 今でも展開し続けていて これから先の年月において 気候危機に対処していくためのものは すべて揃っています

現在 ほとんどの人たちは 生涯に直面する中でも最も厳しい時期を 経験しています 個人的な悲劇に見舞われたか 否かにかかわらず COVID-19の世界的大流行は 誰にとっても恐ろしい体験ですが 巨大な変化の前に自分を無力と思う 私たちの思い込みを 揺るがしてもいます ほんの数週間で 私たちは結集し 人類の半数の人々が 一番脆弱な人たちを守るために 思い切った行動をとりました それが可能なのであれば 人類共通の問題に立ち向かうために どこまでできるのか 我々の限界はまだ 見えていないのかもしれません

今や 自分たちは無力だという諦めは 捨てなければなりません 確かなことは 私たちが向かいつつある悲劇を避けるために 今できる行動をとらずにいれば 気候危機はこのパンデミックよりも はるかに大規模な被害を もたらすということです 無力だと感じているような 余裕はありません 後の世代の人々はきっと 畏敬の念を抱きながら この瞬間を 振り返ることでしょう 再生可能な未来を選ぶか 未来を見捨てるかの 分岐点に立つ私たちの姿を 実は この移行期に多くのことが うまく行っています クリーンエネルギーの価格は 下がっています 都市は変貌しています 土地は再生されています 一世代の間 見たことが なかったような 気迫と粘り強さを 見せながら 人々が変化を求める声を 上げています この移行において 本当に成功することは可能であり 本当に失敗することも ありえます それ故にこそ 今は生きていて 最も刺激的な時なのです 私達は 今 決断できます この困難に対し 揺るぎない気骨ある 現実的で覚悟を持った楽観で取り組み このパンデミックを抜け出し 再生可能な未来へ向け 自分にある全ての力を使い 道を切り開いていくと たとえ暗い日々が 待ち受けていようとも 自分たちが 人類の希望の光となり 責任を持つと腹をくくり 今後10年の間に 温室効果ガスの排出量を 最低50%減らすと決め パンデミックから回復するために 必要なことが行われ 私たちが願う社会が 再建されるように 政府や企業と協力するための 行動を起こすと決心できます 今なら この全てが可能です

あのつまらない会議室に 戻りましょう 私がクリスティアナからの メモを見ている場です メモを改めて見ることで 人生を大きく変えた経験を 思い出します 僧侶として学んだ 多くのことのひとつは 聡明な知と喜びに溢れた心は 人生の道であり目的であるということです 揺るぎない楽観というのは 愛を応用したものなんです それは私たちが 創造したい社会であり そんな社会を創造できる 手段でもあります 私たち全てに与えられた 選択です 揺るぎない楽観を抱きながら この瞬間と向き合うことで 私たちの人生の意義と目的を 満たせるかもしれません そうすることで私たちは 歴史の筋道に手を添え 自分たちが選んだ未来に向けて 曲げることができます

確かに今は 生きることさえ 制御できないように感じられます 怖く 恐ろしい 未知のものと感じます でも私たちに向かってくる この重要な移行の時に ためらうのは止めましょう 揺るぎない覚悟ある楽観で 立ち向かいましょう

今起きている世の中の 変化を見るのは 確かにつらいかもしれません だからこそ 愛をもって 接しましょう

ありがとうございました

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このプレゼンテーションについて

生きる上で深刻な問題に直面し、分岐点に立たされることがあります。自分は大きな変化には無力だと諦めるのか、それともその挑戦に立ち上がるのかという選択です。この緊急の行動の呼びかけの中で、政治戦略の専門家トム・リヴェット=カーナックは、気候変動に(あるいは何であれ私達に降りかかる危機に)立ち向かうために必要なのは、揺るぎない楽観をもって再生可能な未来を築くため継続的に行動することだと主張します。「揺るぎない楽観は、人生を意義と目的で満たしてくれる」と彼は言います。

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