島や海岸線を“成長”させる新しい方法(07:20)

スカイラー・ティビッツ(Skylar Tibbits)
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対訳テキスト
講演内容の日本語対訳テキストです。
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私たちの自己集合研究室では 10年近く ある種の材料システムに 取り組んできました 自ら変形し 自ら組み上がり 環境に適応するようなものです 例えば「4Dプリンティング」の 初期の作品では プリントしたものを 水に浸すと 温度や日光に反応する オークセティック構造へと変わります もっと最近では 体温に反応して気孔率を変化させる アクティブな布地を開発し 「高速液体プリンティング」で プリントした膨らむ構造物は 気圧によって変形し ある形から別の形へと 変わります 自己集合の作品では 水の中のパーツが 波のエネルギーに反応して 家具のような 明確な形へと 自ら組み上がります

もっと大きなスケールの作品では 1メートルの気象観測気球群が 風のエネルギーによって 建築現場の上空で 集合します 危険な環境や 厳しい極端な場所で 人や装置を持ち込むことが 難しい場合に 上空で組み立てることができ ヘリウムが抜けると 地面に降りてきて 大きなスペースフレーム構造が あとに残ります

これらの研究はどれも シンプルな素材に 重力 風 波 温度 日光といった その環境にある力で 変形や組み立てといったことを 行わせています どうすれば スマートな物を 複雑な電気機械装置なしで 構築できるか?

最近モルディブの人たちから 相談を受けました このような研究や考え方を 気候変動のために直面している問題に 適用できないかと モルディブの人たちからの 依頼ということなので まず第一に 現場を確認したいと言いました

(笑)

いいところですね

モルディブに行って 気候変動の未来への まったく違った視点を 持ち帰ることになりました 皆さんが考えるのは モルディブは沈みつつある 終わりだ どうしようもない ということでしょう でも 私はそれが 未来の建造環境の モデルになるかもと思ったんです 固定的な人工構造ではなく 適応性のある弾力的なものです

気候変動による海面上昇に対しては 主に3つの対応方法があります 1つは できることはないと 逃げ出すということで これは大変まずい考えです 世界人口の4割以上が 沿岸部に住んでおり 海水面が上昇し 嵐が激しさを増すにつれ 水面下になる地域は 広がっていきます この難問の解決は 避けて通れないのです

2つ目は防壁を構築する というものです その問題は 静的な解決法 だということです 相手は超ダイナミックで 高エネルギーの問題です たいていは自然が勝利を 収めることになります これも上手くいきそうに ありません

3つ目は浚渫(しゅんせつ)です 大量の砂を 海の底から吸い上げて 浜に積み上げるのです 北東部や西部の海岸に行くと 毎年毎年 浚渫を繰り返してるのが 見られますが 単なる時間稼ぎで あまり良いやり方では ありません

モルディブでも 同じことをやっていて 浚渫によって新たな島を 1か月で作ることができます でもこれは海洋の生態系に 甚大な影響を及ぼし また毎年繰り返す 必要があります

ところが彼らが島を 1つ作っている間に 砂州が3つ 自然にできたのです 膨大な量の砂で 船をつけることができます これは現地視察というやつです とても大変な仕事です

(笑)

ボストンでは冬でしたしね 膨大な量の砂が 自然に集積しています 波の力と 海底の地形だけで 集積が起こるのです

そこで なぜ砂州が形成されたのか 調べ始めました その仕組みが分れば うまく利用できる かもしれません 海の中のエネルギーの量と 地形によって 砂の集積は起きます 私達が提案しているのは 自然の力を使って 破壊ではなく構築を行うということです MITの私の研究室では 造波水槽を用意して ポンプで波を起こし 水中に地形を拵えました あらゆる地形を 試してみました 波が地形に作用して 乱流が起き 砂が集積し始め 砂州がひとりでに 形成されます これは上から見たところです 左側は広がりつつある浜で 中央には形成された 砂州があります 地形と波の力が協同して 作り上げているのです

ボストンで2月に 実作に取り掛かりました 長い帆布のロールを 使っています 生物分解性でとても安く 扱いも簡単です それを縫い合わせて 大きな袋を作り モルディブに飛びました 何か連想したかもしれませんが ファイアフェスティバルではありませんので

(笑)

正真正銘の本当の話です 帆布の袋を旅行鞄に入れて 現地に飛び 冬のボストンから来て 日焼けしています 袋に砂を詰めて 水中に沈めます 先程の水槽の中にあったのと 同じ形状で 単に大きいというだけです 砂の詰まった大きな物を 水中に配置し ごく単純な地形を作ります 砂袋の前では 水が澄んでいます 波が越えていき 水はとても澄んでいます 砂袋の裏側では 乱流が起きていて 砂と水が混じり合っています 沈殿物が移動して 砂が集積します 訪ねてきた人懐っこい エイが見えますね 左が1日目 右が3日目です 光が当たっている所に 砂が波紋のように集積しているのが見えます 2日でこんなに変わるんです

これが2か月前で 今も進行中の話です この研究は 始まったばかりです 来年かもっと先に 衛星画像や 水深測量データを調べて 自然な砂の集積が環境に及ぼす 短期的・長期的な影響を 把握するつもりです もっと大きなビジョンとして 水中地形を作りたいと 考えています 潜水艦のように 浮き沈みさせられるものです 順応性がある人工の 岩礁のようなもので 嵐の来る方角や 季節の変化に応じて 展開させることができ この融通のきく岩礁を使って 波の力で砂が 集積するようにします これは世界の多くの 沿岸地域や島国で 活用できると思います

スマートな環境を作るとか スマートなビルや スマートな車や スマートな服というと 電気や バッテリーや 装置や コストや 複雑さを加えて 結局失敗することに なりがちです スマートなものを より少ないもので どう作れるかと私達はいつも考えています シンプルでスマートなものを どう作るか? 私達の研究室や このプロジェクトで提案しているのは 砂のようなシンプルな材料を使い 波のような環境にある力を生かし 集積や適応をさせる ということです

この考え方を発展させ 拡げ 適用していくために 皆さんと協働したいと 思っています これは気候変動に対する 異なるモデルであり 抵抗や怖れで対するのではなく 適応力と復元力を生かすのです 自然破壊を 自然の構築に変えるため 力を貸してください

ありがとうございました

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このプレゼンテーションについて

海の動きを生かして海面上昇から沿岸地域を守れたとしたらどうでしょう? デザイナーでTEDフェローのスカイラー・ティビッツの研究室では、ダイナミックで順応性がある水中構造を開発し、波の力を使って砂を集積させ、浸食される海岸線を回復しようとしています。自然の力を破壊ではなく構築のために使うのです。

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