性別に基づくマーケティングがビジネスに有害なのはなぜか(10:40)

ギャビー・バリオス(Gaby Barrios)
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対訳テキスト
講演内容の日本語対訳テキストです。
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世界中の多くの人々が そうだったように 今年の夏 私と友人達は 女子ワールドカップフランスに 夢中でした 私達が見守る中 優秀なアスリート達が 爽快なゴールをいくつも決め 反則もなく それでいて手に汗握る試合でした 一方で 競技場の外では同じ選手達が 報酬の平等を訴えていました 国によっては それ以前の問題で 報酬自体を出せという話でした 熱中していた私達は 試合をリアルタイムで見たいので 国内で放映されていた スペイン語チャンネルで 観戦しようということになりました そこで 試合をいくつか見ているうちに ふと友人の1人が言いました 「なんだか 化粧品や洗剤や ダイエット関連商品のCMばかり 見ている気がする」

確かにその通りだと思いました それが 私達の気にし過ぎなのか 男性達と見ていたせいなのかは わかりませんが CMのターゲットが女性だということが あからさますぎると感じました

それが必ずしも間違っている というわけではありません 誰かが試合を見て言いました 「これは女性が見ることを 想定してるんだろうね ヒスパニック系女性が出てるのは スペイン語チャンネルだからだし 女性の試合だからだね つまり女性に絞ったCMだけ流すには ちょうどいい場所ってことだろうね」 マーケティング担当者としての私は この現象が仕方ないことだと よくわかっていました マーケター達は 課された仕事をしているだけです 予算がごく限られている状況で ブランディングしなければならないため ターゲットとなりうる人々を いっしょくたに 分類したくなるのです より早くターゲットを絞るためです これは言ってみれば 近道のようなものです ターゲットとする消費者への 近道として性別分類をするのです

一見 合理的な考え方ですが 問題があります 性別分類は実際は 有効な近道ではありません 今この時代に 盲目的に性別分類を使った マーケティングをしているとしたら はっきり言って愚策です 広告で男女のステレオタイプを 強調すること以前の問題です それはそれで非難の的に なっている現実の課題なのですが それとは別に 性別の分類が なぜ愚策かというと お金の無駄遣いだからです 性別というものは 消費者を絞るのも ターゲティングするのも 論ずるのも簡単すぎるため 自社のブランドを通して 事業を成長させる 他の有益な要素から 目を逸らしてしまいます そして同時に 男女間に隔たりをつくり続け ステレオタイプを増長します つまり性別中心のマーケティングは ビジネスに有害であり 社会的害悪でもある 二重の不幸なのです 今まで性別は他の統計分類と同じく マーケティングにおける 有効な近道とされてきました ですがいつの間にか私達は 本質的には ターゲットとする ニーズの中心は 料理や掃除 身だしなみ 車やスポーツなどであることを忘れて すべてをいっしょくたにしてしまい 男女を区別しさえすればいい ということにして それに慣れてしまい 疑問すら持たなくなったのです 実に興味深いというか 私が無茶苦茶だなと思うのは いまだに こんな分類方法が 通用していることです 過去から踏襲した偏見と言っても 差し支えないくらいです

裏付けもなく そう発言しているわけではありません ブランドの設計やターゲット設定を 行うにあたって まず性別を見るのは 賢明ではないということを示す データは十分にあります 更に踏み込んで説明すると よほど性別に特化した 製品カテゴリーでないかぎり おそらく性別は 消費者を想定する材料となる 他のどの分類と比べても 最も役に立たない分類方法です

この結論は わざわざ 証明しようとしたものではありません 偶然発見されたものです コンサルティングとは 顧客のビジネスを理解し 顧客のブランドが成長する 機会を見つけることです そして私たちの信条は 顧客が劇的な成長を遂げたければ 消費者に対する考え方を 白紙に戻して臨むべきであるというものです 偏見を捨て 今まで意味があると 考えていた分類方法を捨て どこに成長の余地があるかを ゼロの状態から 探さなければいけません 私達はそれに特化した アルゴリズムを開発しました 例えば ある人が 製品やサービスについて 何か選択をするとして その人に関する情報には 性別はもちろんですが 住んでいる場所や収入など 他の分類情報があります その人が下す選択の背景情報には その時どこに誰といたかに加え その時の気分などがありますが 他にも色々な要素を 加えることができます 消費者本人の志向や 分類への反応や行動を 知ることができるのです

このような個人情報を集めた塊から成る ビッグデータをイメージしてください とても大雑把にいうと 統計情報のトーナメント戦を行う アルゴリズムを構築したのです これはつまり 巨大なデータに対して こう聞くようなものです 「データさん あなたが現時点で 消費者について知っている全ての情報のうち 消費者のニーズについて より多くを教えてくれて 最も役に立つ要素は何ですか?」 トーナメントには勝者と敗者がいます 勝者となるのは 消費者について多くの情報を与えてくれ ニーズの把握に役立つような 要素や切り口です 実用性で劣る要素は敗者となります この選別は重要です 予算とは限りがあるものなので 蓋を開けてみればニーズが同じなのに わざわざ資金を費やして アプローチ方法を分けるのは 無意味ですからね

ここまでくれば 展開はお分かりですよね 先ほどお教えしたばかりですから とにかく 私達が発見したのは 20ヶ国以上で 200のプロジェクトを行い 統計情報のトーナメントを 十万回程度 実施した結果 ご想像通り 性別分類が消費者の ニーズ把握に最適な予測値となるのは ごく稀だということです 約十万回のトーナメントのうち 性別分類が勝者の要素として 判定されたのは ほんの5%程度でした ところで これは世界中で共通の真実です 伝統的な性役割が 比較的はっきり異なる地域でも 同じことを実施してみましたが 結果は全く同じでした 性別の重要度は5%を少し上回りましたが 要素としては使えません この事実から何が言えるかというと どんな視点から消費者分析を行おうと 他のいかなる分類も 性別よりは 有用となる可能性が高いということです 何かしら 消費者を知るために 重要な情報があるはずなのに 全てを性別に紐づけて考えていると 重要な情報から目を逸らしてしまいます だから お金の無駄遣いだと言ったのです 性別は簡単です 性別に基づいて 広告をデザインするのも ネットやTVの視聴者を 性別で分けるのも簡単です でも結局そこから 劇的な成長は生まれません 例えば 食料品会社にとって 重要度が高い要素とは 消費者がどこで食事するのか 誰と食事するのか 栄養バランスに気をつけているかなどです こういった要素のどれもが 性別を知るよりも 遥かに有効で実用的なのです 分類の選択は重要です 限られた予算を注いで マーケティング活動を行うのですから 女性と若い男性で分けるより 利用目的別のソリューションを 考えるほうがよいでしょう

もう1つの例はアルコール飲料です 世界中のアルコール消費者の35~45%は 実は女性なのですが 「女性はビールを飲まない」などと よく言われがちです ですが実際には ほとんどの場合 同じ状況下で男女が抱き得る 感情的欲求や生理的な欲求は とても似通っています ただ 1つだけ例外があります そう 例外はあるんです デート中の男女などがそうです 男性は格好をつけようとして 女性は仲良くなろうとして 自然体ではなくなるからです そういう例外もあると 理解しておきましょう 金融の分野においても 男女の違いが 頻繁に語られますが 実際には 男女を 違うものとして論ずることで 背後にある要素から 目が逸れてしまいます 非常にざっくりと 「女性は投資が好きでない」 「女性は資金運用が嫌いだ」 「男性はリスクに積極的だ」 などと言われますが 本質は 男か女かではなく 別のところにあります ようは 資産運用に関して 興味や余裕や知識を持っている人か そうでないかの違いです ですから 議論を 男女差の話から 本質的なものへ移せば 女性を侮るような見方も おそらく改まるでしょうし 投資に対して身構えている男性も 顧客に変えられるかもしれません

もう1つ例を挙げましょう 最初に話した女性アスリートの話に戻ると スポーツ用品について 調査を行ったところ 色々な国で共通していた 興味深い発見の1つは 競争心のある人が 体を動かしている その最中は ニーズに男女の差は ないということです アスリートはアスリートです 男性でも女性でも 若年でも年配でも アスリートには変わらず 厳しい競争下で戦っている人であれば 役に立つスポーツ用品が 必要なのです サッカーの女性選手と 男性選手には多くの共通点があります 競技場の外の話は関係ありません 服装や趣味など 人それぞれですが 競技場ではニーズに男女差はありません

ご紹介してきたのは 性別分類が最適ではないと私達が特定した 数々の分野のほんの数例です ここでの論点は フェミニズムを推進しよう という話でもなんでもありません 私達が性別分類に慣れてしまっている というだけの話です この状態から脱却し 逆戻りしないために 消費者に関する 性別以外の測定項目を 探し始めることが重要です 私は現実派ですから まだ 性別分類を使いたいと感じたり 使いやすいと思う気持ちはわかりますが 是非を議論すべきなのは 明らかですよね ビジネスにおいては 性別分類が 成長のための視点として 本当に最適なのかを問うべきです

ですから もしあなたが私みたいに ビジネスに身を置き 社会で起きている さらに広い議論での 自分の役割は何なのか そんなことが常に気になる人間なら ご自分のビジネスの中で こんな会話を耳にしたら要注意です 「私のターゲットは女性だ 私のは男性だ」 「これは女児向けだ 男児向けだ」 このような性別の会話になっていたら さっきも言ったような よほど性別に特化した 特殊な製品カテゴリなら別ですが 危険だと思ってください まず こんな会話を続けていれば ステレオタイプや 男と女は違うのだという考えを ひたすら助長することになりますし さらに ここではビジネスの話をしていて それを成長させたいという話なので 性別分類を使いたくなる衝動に 少なくとも抗ってください 性別はおそらくサービスや製品の ターゲット選定に最適な指標ではないと 統計からわかっているからです 成長は全くもって簡単なことではありません 性別分類のような時代遅れの視点が 消費者市場で有効だと思う 根拠がわかりません

易しきへ流れるのをやめ 正しきへ進みましょう それはビジネスだけでなく 社会にも良いことなのですから

ありがとうございました

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このプレゼンテーションについて

企業は顧客の選定をする際にターゲットを性別で絞りがちですが、これは時代遅れのステレオタイプを助長するだけでなく、ビジネスにも有害であると、マーケティングのエキスパート、ギャビー・バリオスは言います。性別に基づくマーケティングはなぜ我々が思うような成果をもたらさないのか、また、どうすれば企業は消費者に近づき、自社のブランドを成長させられるのか。明快で、かつ具体的に実践しやすい内容を交えたこのトークで、バリオスが解説します。

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