不安な時代にこそ、母親のように考えよう(10:15)

イファット・サスキン(Yifat Susskind)
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対訳テキスト
講演内容の日本語対訳テキストです。
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18年前のある朝 私はニューヨークの地下鉄から外へ出ました 9月の美しい日でした 暖かなまぶしい光が降り注ぎ 空は真っ青に澄みわたっていました 私は生後6ヶ月の息子を 何でも見えるように前向き抱っこ紐に入れて 歩いていました でも 6番街で右折した瞬間 息子の目に映ったのは 炎に包まれる世界貿易センターでした

ビルが攻撃されたのだと気付くなり 私がとっさに取った最初の行動は 息子を後ろ向きにすることでした 目の前の出来事を見て欲しくなかったのです ただただホッとしたのを覚えています 息子がまだ幼ないために これが意図的に起こされた惨事だと 伝えなくてよかったからです

9・11事件は いってみれば 国境越えのような出来事で 殺伐とした国境を越え 危険な未知の領域に 足を踏み入れたようなものでした 世界は突然 未知の恐怖に落とされ そんな中で私は母親になったばかりでした 覚えているのは 頭の中を 駆け巡る不安な思いの数々 「どうやってこの子を守ったらいいの?」から 「どうやったら眠れるの?」まで

今年で息子は18才になりました 9・11のあの日に赤ん坊だった 他の大勢の人たちと同じです あの時期 私たちは危険な未知の領域に 入ってしまいました 異常気象 絶えない紛争 経済メルトダウン 深刻な政治的分裂 世界は多くの危機に直面しています 私が列挙するまでもないですね 日々 皆さんのニュースフィードで 騒ぎ立てられていますから

でも 18年間子育てをしてきて そして 国際的な女性の権利団体を引っ張ってきて あることに気づきました こうした世界の危機に 立ち向かう方法があるのです しかも 圧倒されたり 絶望したりせずに済む方法です シンプルですが強力な方法です それは母親のように考えることです

どうぞ誤解のないように この方法は女性でなくても 親でなくても使えるのです 母親のように考えることは 誰もが使えるレンズのようなものです 詩人アレクシス・デヴォーはこう記しています 「母性とは 出産という 生物学的な過程のみを指すものではない 世界が何を求めているかを 理解することである」

私たちの望むような世界作りを阻む 数々の障害に注目するのは簡単です 強欲 不平等 暴力 確かに 世界はそんな障害だらけです でも そうではなく 種を植え— といっても別の意味の「種」を植え 自分が願うような姿に育てる という選択肢もあります 危機の渦中だろうと関係ありません

イラクのマジドはこの選択肢を理解する人です 塗装業を営む彼は 女性の同権を強く支持しています 自身の住むイラク北部にISISが侵攻した時 地元の女性組織と協力して 地下鉄道組織を作るのに貢献しました 女性の権利を求める活動家や LGBTIQ(性的少数者)など 暗殺の標的にされた人々の逃亡ルートです マジドに なぜ自分の命を危険にさらしてまで 人々を助けようとしたのかと尋ねると こう答えてくれました 「明るい未来を見たいなら 暗闇の中にいる今 行動しないと いつか光の中で生きるために」 これこそ社会正義の考え方であり 母親の考え方でもあります 私たちが今 行動するのは 実現したい未来を考えてのことです

卓越したアイデアは往々にして 初めは不可能に見えるものです しかし 私が生きてきた間だけでも アパルトヘイトが終わり 女性の権利が人権として認識され 同性婚が認められ 何十年も君臨してきた 独裁者たちが失墜するなど たくさんのことが起こりました 全て 初めは不可能に見えたことです 人々が行動を起こして実現させるまでは そして 実現するやいなや 必然の結果だと思われるようになったのです

私が子供の時 渋滞にはまったり 家族に災難があったりすると 母はこう言ったものです 「これから何か良いことが起こるはず 今は何か分からないだけ」 そんな母を 兄弟と からかってしまうことは認めます でも しょっちゅう周りから 聞かれるんですよね 難民キャンプや被災地での 活動中に目にする苦難に どう対処しているのか と そんな時思い出すのは 母のことや 母が私の中に植えてくれた 可能性の「種」のことです なぜなら 何か良いことが起きると信じて その実現に向けて行動していると 苦難の先を見越せるようになるからです どんな未来が「可能」なのか を

今の時代 現時点では不可能に見えても ゆくゆくは必然だったと思えるような 実現すべきアイデアはいくつも残っています 女性に対する暴力の根絶 紛争をこの世からなくすこと 手遅れになる前に 自然との共存を始めること 幸せに生きるために必要なものを 誰もが手にできる世の中 などです

もちろん そんな未来を 想像できるからといって 実現方法も分かっている ということにはなりません でも母親のように考えれば 実現のヒントも得られます 数年前 東アフリカを飢饉が襲いました 私の知るソマリアの女性たちは お腹を空かせた子供たちを抱いて 何日も歩き続けたそうです 食糧と水を求めてです 25万人が死にました その半数が乳幼児でした こんな大惨事が起こっていたのに あまりに多くの人たちが 見て見ぬフリをしました でも スーダンの ある農婦たちは違いました ファティマ・アフメドもその一人です トウモロコシを持っている女性です 飢饉のことを聞いた農婦たちは 収穫物を売ってできた余剰収入から かき集めた義援金を ソマリアの母親たちに送るように 私に依頼してきました 自分たちは無力で 何もできないと 諦めることもできたはずです 自分が生計を立てるので精一杯 という人もいました 電気もなく 家具もない生活をしていました でも それを物ともせず 母親なら当然することをしたのです 自分たちが解決しようと考え 行動を起こしたのです

子供がいる人なら いつもやっていることです 子供の医療や教育や幸福に関する 重大な決断を下しています 自分が医師や教師やセラピストでなくても やっていることです 子供に必要なものを察知して それを与えるために最善を尽くします 母親のように考えるということは 世界全体を 最も 弱い人々に責任を負う 立場から見ることなのです 自給自足の農家と慈善家とは 結びつけて考えにくいものですが でも農婦たちの行動は 慈善活動の真髄そのものでした つまり人類への愛です

母親のように考えることの 中心にあるものとは 意外でもなんでもなく 愛なのです

愛とは単なる感情にとどまりません 愛は包容力であり 行動でもあり 永遠に再生可能な力の源であって 個人の垣根を越えるものです 公共の場では憎悪が目につきます ヘイトスピーチやヘイトクライムなど でも愛は見当たりません 公共の場における愛とは何でしょうか? コーネル・ウェストは 母親ではなくても母親のように考える人で こう うまく言い表しています 「正義こそ 公共の場における愛の形だ」 あらゆる政策は社会的価値観を 表現したものであるということを思い出せば 愛こそスーパースター級の価値観です 最も弱い人たちを守るのに 最も適した価値観です 何事にもまず愛を念頭において 政策を決定すれば 社会に関する根本的な問いへの 新しい答えが見つかります 「経済は何のためにあるのか?」 「ハリケーンの被災者への責任は何か?」 「国境にたどり着いた人たちを どうやって迎えれば良いのか?」

母親のように考える時 優先するのは大多数の人のニーズであって 少数の人のワガママではありません 母親のように考える時 海岸沿いに防波堤を築いたりはしません そんなことをすれば氾濫した水が 防波堤のない地域を襲うからです 母親のように考える時 砂漠を越えて来る人々のために 水を用意しておいたからと 誰かを起訴しようとしたりはしません なぜなら…

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なぜなら 移住という行為は 母親のように行動するのと同じく 希望が原動力だからです

ただ 母親の誰もが母親のように 考えるわけではありません 岐路に立たされた時 誤った選択をしてしまった人もいます 武器や有刺鉄線や特権の影に隠れ 自分以外の世界を否定してしまった人たちです 自らの安全を確保する手段を 人種差別や外国人嫌悪を燃料とする 武装した救命ボートのように 考えてしまっているわけです 母親の誰もが手本であるとは限りませんが 私たちには誰でも選択する力があります 武装した救命ボートに飛び乗りますか? それとも 皆が乗れる母船を 協力しあって作りますか?

あなたは その母船の作り方を そして 世界を修復し 苦難を緩和する 方法を知っているはずです 母親のように考えてください 母親のように考えることは 自分が望む世界を作るために 誰もが使える道具なのです

ありがとうございました

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このプレゼンテーションについて

世界の差し迫る問題の数々に立ち向かう、シンプルだけど強力な方法がある、と女性の権利の活動家イファット・サスキンは言います。「母親のように考える時、優先するのは大多数の人のニーズであって、少数の人のワガママではない」— この考え方を実行した世界各地の人々の感動的なストーリーを例に、母親の視点が、いかに苦難の先を見越してより良い世界を作るのに役立つのかを語ります。

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