自らの創造性を最大限に生かす素晴らしい方法(17:21)

ティム・ハーフォード(Tim Harford)
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対訳テキスト
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「二兎を追う者は一兎をも得ず」 マルチタスクを戒める 良い格言ですよね ローマの詩人 プブリリウス・シルスが 言ったともされます よくある話で おそらく シルスの言葉ではないでしょうが 私が知りたいのは 本当にその言葉どおりなのかです 夕食中のメールや 運転中のテキストメッセージ TED講演の実況ツイートなどは 明らかに その言葉どおりでしょう でも こと重要な活動に関しては 同時に2つ あるいは 3つや4つのことをすることこそ 目指すべき姿ではないか というのが私の主張です

アルベルト・アインシュタインを 見れば明らかです 1905年に 彼は傑出した科学論文を 4編 発表しています 1つはブラウン運動に関するもので 原子の存在の経験的証拠を示し その数学理論は 金融経済学の多くの基礎になっています もう1つが特殊相対性理論です そして もう1つが光電効果という 太陽光発電の仕組みにかかわる スグレモノです これがノーベル賞の受賞理由になっています そして4つ目の論文で 皆さんもご存じであろう関係式― E = mc^2 を世に出しました これでも 同時に複数のことを すべきでないと言えますか?

さて当然ながら ブラウン運動や特殊相対性理論 光電効果の研究を同時に進めるのと 『ウエストワールド』を見ながら スナップチャットするのとでは 同じマルチタスクと言えども別物です 全然違いますね アインシュタインは― まあ アインシュタインですから 唯一無二の存在なんですが アインシュタインが見せた行動パターンは 決して珍しいものではなく 創造力が非常に高い人に共通して よく見られるものです 芸術家でも科学者でもそうです 名付けて 「スローモーション・マルチタスク」です

スローモーションとマルチタスクは 直感的に相いれないことのように思えます ここでイメージしているのは 複数のプロジェクトを同時に走らせ その時々の気分や状況で 取り組むものを変えることですが その時々の気分や状況で 取り組むものを変えることですが 直感的に相いれないと感じるのは マルチタスクは 切羽詰まってすることが 多いからでしょう 焦って すべてを一緒に やろうとするんです でも マルチタスクを ゆっくりやれたら それが素晴らしく効果的なことが 分かるでしょう 60年前 若手心理学者の バニース・エイデュソンが ある長期的な研究を始めました 名だたる科学者40人を対象に その性格や作業習慣を調べる研究です 名だたる科学者40人を対象に その性格や作業習慣を調べる研究です アインシュタインの没後でしたが その研究対象のうち 4人はノーベル賞受賞者で ライナス・ポーリングや リチャード・ファインマンも入っていました この研究は数十年にもわたり エイデュソン教授の死後も 研究は続けられました この研究が明らかにしたことの1つが なぜ 科学者の中には 生涯にわたり 重要な業績を出し続けられる人がいるのかです なぜ 科学者の中には 生涯にわたり 重要な業績を出し続けられる人がいるのかです 彼らは何が違うのか? 性格なのか スキルなのか それとも日々の習慣なのか? 性格なのか スキルなのか それとも日々の習慣なのか?

彼らに共通して見られたことは明確でした 驚かれる方もいるでしょう 一流の科学者は 取り組むテーマを変え続けていたのです 最初に発表された研究論文 100編を見ると テーマがたびたび 変えられているのが分かります 何回くらいだと思いますか? 3回? 5回? いいえ そういう高い創造力を 保ち続ける科学者は 平均すると 最初の研究論文100編で 43回もトピックを変えていました 創造力の秘訣はマルチタスクを スローモーションですることのようです 創造力の秘訣はマルチタスクを スローモーションですることのようです エイデュソン教授の研究は マルチタスクを復権させ その秘められた力を 再認識すべきことを示しています このことに気付いたのは 彼女だけではありません 様々な研究者が 様々な手法を使って 様々な創造力の高い人たちを研究した結果 そうした人たちは大概 複数のプロジェクトを同時進行させており そうした人たちは大概 複数のプロジェクトを同時進行させており 普通の人より 趣味にも 真剣に取り組むことが多いとしています スローモーション・マルチタスクは 創造的な人たちの間では普通のことなのです でも なぜでしょう?

3つの理由が考えられます 1つ目は最もシンプルなものです 新たな創造が生まれるのは多くの場合 アイデアを それが元々あった状況から 別の状況に移したときです 様々な分野を行き来している方が 既存の枠にとらわれずに 考えやすいのです 例として ある独創的なひらめきが 生まれた場面を考えてみましょう アルキメデスは 難しい問題に 取り組んでいました あるとき 彼はパッとひらめき 水位の変化を使って その難問が解けました 本当か分かりませんが 彼がこの着想を得たのは お風呂に入っていて 体を沈めながら 水位が上下するのを見ていたときです お風呂に入りながら問題を解くことは マルチタスクに他ならないでしょう お風呂に入りながら問題を解くことは マルチタスクに他ならないでしょう

マルチタスクが良い2つ目の理由は 1つのことが うまくできるようになると 他のこともできるように なることが多いからです どのアスリートもクロストレーニングは 効果があると言いますが 頭もクロストレーニングできます 数年前 ある研究グループは 無作為に抽出した医学生18名に フィラデルフィア美術館で 講座を受けさせ 視覚芸術作品を 批評 分析する手法を学ばせました 講座の終わりに これらの学生を 対照群となる他の同級医学生たちと 比較したところ 美術の講座を受けた学生たちは 写真分析による 目の病気の診断などが 非常にうまくなったことが 分かりました より優れた眼科医というわけです ですから 今やっていることを 上達させたいなら 何か別のことをする時間を 持つべきなのかもしれません たとえ その2つが 眼科学と美術史ほど 畑違いのことに見えたとしてもです

もう1つの例として アインシュタインよりも 身近な人物を紹介しましょう 『ジュラシック・パーク』『ER』の作者 マイケル・クライトンです 1970年代 元々医者としての 教育を受けていた彼は 小説を何冊か書き 『ウエストワールド』の最初の映画の 監督もしました そして これは あまり知られていませんが 彼はノンフィクション作家として 美術や医療やプログラミングを テーマに書いてもいます 1995年に こうした様々な活動が実を結びます 彼の書いた本が 商業的に世界的大成功を収め 彼のテレビドラマが 商業的に世界的大成功を収め そして彼の映画も 商業的に世界的大成功を収めました そして1996年に 彼は再び 同じ偉業を成し遂げます

スローモーション・マルチタスクが 問題解決につながる3つ目の理由は スローモーション・マルチタスクが 問題解決につながる3つ目の理由は 行き詰ったときに 助けてくれるからです 問題解決は一瞬で というわけにはいきません クロスワード・パズルをやっていて 答えが分からないときが ありますが それは 間違った答えが 頭から離れないからです そんなときは 簡単です 何か他のことをしましょう テーマを変え 状況を変えることで 間違った答えを忘れると 頭に 正しい答えがパッと浮かぶのです

私が関心を持つ もっとゆっくりとした 時間スケールでは 行き詰まりは ずっと深刻なものです 融資を断られたり 細胞培養に失敗したり 手がけたロケットが次々墜落したり 自分の書いた魔法使いの学校を描く ファンタジー小説を どこも出版したがらない あるいは 今取り組んでいる問題の 解決策が見つけられないかもしれない こんな風に つまずくと 閉塞状態になり ストレスを感じ 鬱になりかねません でも 他にも面白くて やりがいのあるプロジェクトがあったら 1つのつまずきは 別のことをやるチャンスでしかありません

誰でも つまずくことはあります アルバート・アインシュタインでさえそうです 先ほどご紹介した 奇跡のような独創の年から10年後 アインシュタインは 最高の業績となる一般相対性理論を まとめつつありました でも疲れ果てて 別のやりやすい問題に目を向けます そして電磁波の誘導放出 (ser) を 理論的に発見しました レーザー(laser)の "ser" の部分です こうして レーザー光線の 理論的基礎を築いたのですが それをしながらも 彼は気持ちを新たに 一般相対性理論に立ち戻ります そして その理論が意味するものに 気付きます 宇宙は静的なものではなく 膨張しているのだと このアイデアは非常に驚くべきもので アインシュタイン自身も 長い間 信じられなかったのです ですから つまずいたときは アインシュタインのように レーザー光線の研究でも始めたら 皆さんも きっとうまく行きますよ

(笑)

スローモーション・マルチタスクは こんな感じです これで皆さんが アインシュタインになれるとは言いませんよ もちろん マイケル・クライトンに なれるとも言いませんが これは自分の創造的活動を進める 強力な方法なのです

ただ問題もあります たくさんのプロジェクトで 押しつぶされないようにするには? 思いついたアイデアを どうやって全部覚えておくのか? シンプルで実践的な 解決策があります アメリカの偉大な振付家 トワイラ・サープに学ぶのです ここ数十年 彼女は ジャンルの境界を曖昧にし 分野を織り交ぜ 数々の賞を受賞し フィリップ・グラスからビリー・ジョエルまで どんな音楽にも合わせて踊りました 本も3冊書いています 彼女は間違いなく スローモーション・マルチタスクをしています 彼女は「あなたは すべてのものに ならなきゃいけない どうして除外するの? あらゆるものにならなければ」 と言っています たくさんのプロジェクトで一杯一杯に ならないために サープが取っている方法は たくさんのプロジェクトで一杯一杯に ならないために サープが取っている方法は シンプルなものです プロジェクトごとに 大きな段ボール箱を用意し 箱の側面にプロジェクト名を書きます そして箱の中に DVDや本 雑誌の切り抜き 劇のプログラムや物など 創造的なインスピレーションを与えるものなら 何でも入れていきます そして彼女は言います 「その箱があるから 忘れる心配をしなくていいのです 創造的な人は 素晴らしいアイデアを思いついても 書き留めて安全なところに しまっておかないと 忘れてしまうのではないかと すごく心配します 私はそんな心配がありません どこにあるか分かっているからです 箱の中にすべてあるんです」 こうすれば 多くのアイデアを管理できます 物理的な箱でも デジタルな箱でも構いません

ですから 皆さんにはぜひ スローモーション・マルチタスクの技術を 身に付けていただきたい 急いでいるからではなく 急がなくて良いからです

最後にもう1つ例をご紹介しましょう 私のお気に入りの例 チャールズ・ダーウィンです 彼のゆっくり進めるマルチタスクは 非常に驚くべきもので すべて説明するには ダイアグラムが必要なほどです

ダーウィンがその時々で 何をしていたかは 創造性を研究する ハワード・グルーバーとサラ・デービスが 彼の日記やノートを分析したので 分かっています 18歳で学校を終えた彼が 最初に興味を持ったのは 動物学と地学の2つでした そしてすぐに測量船「ビーグル号」の 船上博物学者になります この船は最終的に5年をかけて 地球の南の海を航行し ガラパゴス諸島に立ち寄り インド洋を抜けました ビーグル号の航海中に 彼はサンゴ礁の研究を始めます 彼が関心のあった動物学と地学の間で 素晴らしいシナジーが起こったのです 彼が関心のあった動物学と地学の間で 素晴らしいシナジーが起こったのです そして ここから 時間のかかる過程について考え始めます でも航海から戻ると 関心はさらに 心理学や植物学にまで広がり その後の人生で 彼は こうした様々な分野を 行ったり来たりしています どれ1つとして 捨てることはありませんでした

1837年 彼は 2つのとても面白いプロジェクトを始めます 1つはミミズです もう1つは小さなノートで 「種の変移」という表題が 付けられていました そしてダーウィンは 私の専門である経済学を研究し始めます 彼は経済学者の トマス・マルサスの本を読み ひらめきを得ます 種が生まれ ゆっくり進化するのは 「適者生存」のプロセスによるのだと パッとひらめいたのです そう思い至り 彼はすべてを書き留めます あのノートには 進化論の重要な要素が すべて書かれています あのノートには 進化論の重要な要素が すべて書かれています

それから また新たなプロジェクトが生まれます 息子のウィリアムが誕生したのです 自然実験の材料がすぐそこにあり 人間の子供がどう発達するのか 観察できます すぐにダーウィンは 記録を取り始めます もちろん 彼はまだ進化論の 研究も続けています 人間の子供の発達研究と同時に でも この間に 彼は分類学の理解が不十分だと気付き 分類学の研究を始めます 8年後には 彼はフジツボの 世界的権威になっていました 8年後には 彼はフジツボの 世界的権威になっていました

そして『自然選択』がきます 生涯 書き続け 完成しなかった本です 『種の起源』が出版されたのは ダーウィンがそのすべての基本要素に 着手した20年後のことでした その後 議論を巻き起こす本 『人間の由来』を書き さらに人間の子供の成長に 関する本を書きます 息子のウィリアムが 目の前で床をハイハイするのを見て 着想を得たものです その本が出版されたとき ウィリアムは37歳でした この間ずっと ダーウィンはミミズの研究を続けています 彼はビリヤード室を ガラスで蓋をした容器に 入れたミミズでいっぱいにしました 彼は ミミズに光を当て 反応を見ていました ミミズのそばに焼けた火かき棒をかざし 逃げるか見ました そして 煙草を噛んで―

(吹く)

ミミズに息を吹きかけ 嗅覚があるか見ました ミミズに向けて ファゴットを演奏したりもしました

この偉大な人物が 疲れてストレスを抱え 『人間の由来』の反響に不安を覚えながら どうしていたのかと思います 私たちならFacebookを見たり テレビをつけたりするかもしれません ダーウィンはきっと ビリヤード室に行き ミミズを熱心に研究することで リラックスしたのでしょう ですから 彼の素晴らしい業績の 最後を飾るものの1つが 『ミミズと土』であるのも もっともなことです

(笑)

彼はその本に44年をかけました 私たちはもはや 19世紀に生きてはいません 創造的あるいは科学的なプロジェクトに 44年もかけられないでしょう でも スローモーション・マルチタスクをする 偉大な人たちから学ぶことはあります アインシュタインや ダーウィンから マイケル・クライトンや トワイラ・サープまで 現代の世界は私たちに 1つの選択を与えているように見えます ブラウザのウインドウを次々に 切り替えていく生活をするか 世捨て人のごとく生き 他はすべて切り捨てて 1つのことに集中するか でもこれは誤ったジレンマです マルチタスクをうまく使って 私たちが元々持っている創造性を 解き放てば良いのです ただ ゆっくりするだけです

ですから― やりたいプロジェクトを リストアップしましょう 携帯電話を置き 段ボール箱をいくつか用意し さあ取りかかりましょう

ありがとうございました

(拍手)

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このプレゼンテーションについて

世界で最も創造力のある人たちから、私たちは何を学べるでしょうか? 彼らは複数のプロジェクトに取り組み、そのときの気分で取り組むテーマを変え、それでいて焦ることもない「スローモーション・マルチタスク」をしているのです。作家のティム・ハーフォードが、アインシュタインやダーウィン、トワイラ・サープ、マイケル・クライトンといった革新的な人物がいかにして頭のクロストレーニングをし、ひらめきを得て生産的になったのかを紹介します。

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