時間にまつわる人種政治(12:29)

ブリトニー・クーパー(Brittney Cooper)
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対訳テキスト
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時間には「人種」がある と言ったらどう思われますか アメリカ人が現在理解する意味での 「人種」です 基本的に 私たちが言う「人種」は 黒人白人問題です 私が生まれ育った アフリカ系アメリカ人のコミュニティでは 多世代に渡り長く受け継がれてきた ジョークがあります いわゆる「CPタイム」 「有色人種(colored people)時間」です 今では アフリカ系アメリカ人を 「有色(colored)」とは呼びませんが この昔からあるジョーク― 教会やバーベキュー 家族の行事には必ず遅刻し 自分たちの関わる葬式にさえ遅刻するという― ジョークは残っています

私自身は時間にうるさいです 私が小さい頃 母親が言ってたのと同じです 「ああいう黒人にならないわ」と だから 私たちは大抵30分前には 会場にいるのです

でも今日お話ししたいのは 時間の政治的な性質についてです もし時間に人種があるとしたら それは白人だからです 白人が時間を所有しているのです

ええ 分かっています こんな「扇動的な意見」を言うと 気まずい雰囲気になりますよね 人種にこだわる時代は とっくに過ぎ去ったはずです 「人種」って強引な概念じゃないですか 賢明で 進歩的な自身となって 「人種」のような役に立たない概念は 歴史のゴミ箱に捨てるべきです 人種を問題にし続けて 差別を乗り越えられるのでしょうか おそらく 「人種」に関する概念は タイムカプセルに 閉じ込めて 土に埋め 1000年後に掘り出し 未来にいる 明らかにより啓発された 人種差別をしない人類が 見つめるべきものなのかもしれません でも お分かりのように 人種や人種差別の影響を和らげたい という願望は 時間をどう管理し 歴史をどのように語り どのように現在の否定的な真実を 過去へと押し込んでいるのか 私たちが望む未来は 今 生きている現在なのだと 主張する態度に表れます

2008年にバラク・オバマが アメリカ大統領になった時 多くのアメリカ人は 人種差別は過去のものだと言いました 私は 何にでも「ポスト」をつけたがる 学問領域で働く人間です 私たちは ポストモダン ポスト構造主義 ポストフェミニストの時代にいます 「ポスト」は単に学術的な付属物で いろいろな言葉にくっつけて 過去のものであったことを 意味するんです でも接頭辞だけでは 人種や人種差別を 過去のものにはできません アメリカが「プリ人種差別」 であったことはありません 黒人やラテンアメリカ系や 先住民が受けている人種差別に 未だ取り組まず 人種差別は終わったと主張するのは 不誠実です 人種差別の無い未来を 祝おうとしていた まさにその時 アメリカの政治環境は過去50年間で 最も人種差別的になりました

そこで今日は過去 現在 そして未来という時間に関して 人種差別や白人支配との 戦いに繋がる 3つの見解を提案したいと思います

まずは過去 時間には歴史があり 黒人にも歴史があります しかし私たちは時間の経過を 考慮に入れず ずっとそのようであり 先住民からの土地の略奪や 集団虐殺— 祖国からのアフリカ人略奪と 深く結びついている政治的歴史など 時間の中には 存在しないかのように 白人男性である欧州の哲学者たちが 時間と歴史を概念化しようと考えた時 ある1人がこう宣言しました 「アフリカは世界の歴史の一部ではない」 基本的に彼が言ったのは アフリカ人は時代への影響もせず 進歩に貢献することもなく 歴史の外にいる人々だ ということです

黒人は歴史にとって 何の影響力も無いというこの考えは 白人至上主義の 基本的な考えの1つです これがカーター・G・ ウッドソンが 1926年に「黒人歴史週間」を作った理由です アメリカで毎年2月に 「黒人歴史月間」を 祝う理由です

さて 私たちは 黒人が時間という枠組みの外にいる あるいは— 過去にとらわれているという考え方を 次のような状況の中に見てとります ―今 私がしているように 黒人が立ち上がって 人種差別は今でも問題なのだと主張すると ある人が — たいてい白人ですが こう言います 「なぜ過去にとらわれるんだ? 君たちは前に進めないのか? 黒人の大統領がいるんだ もう過ぎたことだろう」

フォークナーは こんな言葉を残しています 「過去は決して死なない それは— 過去でさえない」 私のよき友人 ドットソン教授は こう言います 「私たちの記憶は人の一生分よりも長い」 私たちは皆 家族や社会集団の希望や夢を 持っています 過去を水に流すという ぜいたくは許されません でも時々 政治状況がひどく混乱して 私たちが生きているのは 過去なのか現在なのか 分からなくなるときがあります 例えば「Black Lives Matter」のデモ隊が 警官による不当な黒人市民殺害に対して 抗議を行った時 そのデモの写真を見ると 50年前に撮られたもののようにも 見えます 過去は私たちを手放してくれませんが 現在へと後押ししてくれています

現在 私が言いたいのは 私たちが抱える人種的な争いは 時間や場所についての 衝突だということです どういうことかというと さきほど 白人が時間を 左右していると言いました 権力のある白人が 労働時間のペースを決めています 私たちの時間が実際の価値として いくらになるかを決めています リップシッツ教授の主張では 社会的包摂のペースさえも 白人が決めています 少数民族グループが 今まで闘ってきた権利を勝ち取るまでの 実際にかかる期間を決めるのも彼らです

ここで一度過去に戻って 例を挙げてみましょう 公民権運動を考えてみてください その先導者が「今こそ自由を」 と叫んでいるとしましょう 白人の悠長な社会包摂ペースに 挑戦していたのです 投票権法が可決された1965年までに 南北戦争の終結から 黒人社会に投票権が与えられるまで 丸100年かかりました 内戦という緊急性にもかかわらず 社会的包摂を実現するのに 丸100年もかかったのです

2012年以来 アメリカ中の保守派の州議会が 画策したことは 制限的な有権者ID法を採択し 事前投票の機会を減らすことによって 黒人の投票権を後退させることでした この7月に連邦裁判所は ノースカロライナ州の有権者ID法を 「...黒人をピンポイントで狙っている」 として無効にしました

国政の場で黒人包摂を制限するのは 時間を管理し 支配することで 人を管理し 支配しようとする 主たる方法です 一方 もうひとつ 時間と空間の衝突が見られるところは 「高級住宅化」した都市です 例えばアトランタ、ブルックリン フィラデルフィア、ニューオーリンズ ワシントンDCのような 何世代にもわたって黒人人口の 多いところなのです 現在 これらのコミュニティーは 21世紀への進展のための 都市再生と進歩の名の下に 排除されてしまいました

ホーランド教授はこんな疑問を持ちました もし時間内に存在する人が 空間を占有するだけの人に 会ったらどうなるのか これらの人種的闘争は 場所を奪う人と見なされる人たちと 世界を作る人と見なされる 人たちとの闘いです 歴史の流れや推進力を管理する人々は 時間を所有し 使いこなす人々 世界を作る人とみなされます つまり「白人」です ヘーゲルがアフリカは 世界の歴史の一部ではないと言うのは 単に地球の底を占めている 大きな大陸にすぎない という意味なのです アフリカ人は場所を奪う人なのです だから今日 白人は歴史の流れや推進力を 管理し続ける一方で 黒人のことを 居る権利のない場所を 占めている存在として 扱うのです 最も弱い人々に向けられた 驚くほど強い攻撃を 正当化するために 時間と進歩が持ち出されます この弱者は世界を作る人ではなく 場所を奪う人とみなされているため 21世紀に参加させるという口実で 住んでいる場所から 追い出されるのです

住居地によって寿命が異なるという事実は 時間と場所が 黒人の人生における 不当な扱いに結びついているという ほんの一例なのです ニューオーリンズの郵便番号70124地区に 生まれた子どもたちは 93%が白人ですが 60%が黒人である― ニューオーリンズの郵便番号70112地区に 生まれの子どもたちより 寿命が25年長いとされています メリーランド州の裕福な郊外で 生まれた子どもたちは ワシントンDCのダウンタウンに 生まれた子どもたちより 寿命は20年長いとされています

タナハシ・コーツはこう言います 黒色人種に分類されると 免れることなく 時間を盗まれることになる 我々は時間の差別を受けている と彼は言います 構造的にだけではなく 個人的にもです 喜びの瞬間が失われ 絆の瞬間が失われ 愛する人と過ごす時間が失われ 健康で質の高い命が何年分も失われます

将来に黒人が見えますか? 黒人に未来はありますか? もし あなたが 常に時間と闘わされている その人種に属しているとすれば どうでしょう? あなたの所属する集団が 未来を全く想像されなかったものだとしたら? これら 時間と空間の衝突— 抗議者と警察や 高級化を目指す人々と 居住者との衝突は アメリカが黒人の未来に望む光景に 暗い影を投げかけます もし現在が 未来を表すものだとしたら 黒人の子どもたちは 十分な教育が受けられず 病気により多くの犠牲者が出て 住居は手の届かないもので あり続けるでしょう

だから もし未来を語る用意が 本当にあるのなら 私たちが時間の外にいることを 認めることから始めるべきでしょう 私たち黒人は 常に時間の外に置かれています 時間は私たちが所有するものではないのです 私たちの人生は永久に緊急状態です 時間は私たちを排除するのに使われ 逆に 私たちはただ我慢するように 絶え間なく要求されることで 現状に満足するよう促されるのです しかし 過去が序章であるなら 時間の外にいることを捉えて 自由を今すぐにと 緊急性をもって 要求しようではありませんか

未来は私たちが作るものだと信じています しかしまず 時間が私たち全員に 属していると決めなければなりません 全員が平等な時間を得ることはありませんが 手に入れる時間が公正で自由なものだと 決めることはできます 郵便番号(住居地)で 生涯が決まってしまうことを やめさせられます 行き過ぎた停学や退学で 黒人の子どもたちから 学習時間を奪うことをやめさせられます 暴力の関与しない犯罪で 長期間投獄し 黒人の時間を 奪うことをやめさせられます 行き過ぎた実力行使で 警察が 時間と黒人の生命を 奪うことをやめさせられます

未来は私たちが作るものだと信じています しかし 有色人種の時間で そこに到達することはできないでしょう 白人の時間でも あなたの時間でも 私の時間でもできないでしょう 皆の時間でなし遂げるのです 皆の時間でです

ありがとうございました

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このプレゼンテーションについて

「もし時間に人種があるとしたら、それは白人でしょう」と文化理論家のブリトニー・クーパーは言います。この示唆に富むトークの中で、クーパーは人種主義や差別について時間というレンズを通して再考します。歴史の至る所で時間が有色人種からどのように奪われたかを示し、その結果、楽しい、関わりの時が奪われ、健康で質の高い生命を何十年も奪われ、何十年も進歩が後れてしまったのだと語ります。

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